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「憲法九条を守れ」を超えて
緊急・広範・強力な運動が求められている
「九条の会・わかやま」呼びかけ人 瓦野 昌治 (和歌山県保険医協会理事長)
▼危険な安倍内閣
安倍内閣が発足し、著書「美しい国へ」を読まれた方も多いと思います。ソフトな語り口で、表現を和らげています。自主憲法制定の急先鋒で、歴史教科書でも「自虐史観」を強く批判してきた安倍氏のものとしては主張が弱いので
は、と感じた人も多いのではないでしょうか。教育基本法の改悪についても言及せず、本音は隠した書です。しかし、随所で現憲法を否定し、おとしめ、矮小化しています。
安倍氏は「憲法前文には、敗戦国としての連合国に対する『詫び証文』のような宣言がもう一つある。《われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めている国際社会において、名誉ある地位を占めたい》という箇所だ‥‥一見、力強い決意表明のように見えるが、じつは、これから自分たちは、そうした列強の国々から褒めてもらうように頑張ります、と
いう妙にへりくだった、いじましい宣言になっている。」として現憲法を憎み、葬り去ろうとしています。安倍氏は現憲法を否定しているのです。ところが首相になってからは、村山談話や従軍慰安婦に関する河野元官房長官談話は政府として引き継ぐと言っています。しかし自身は村山談話や河野談話を認めたわけでは
ありません。安倍氏は、自主憲法制定論者であり、靖国史観を強固に信奉しています。憲法改正は5年を目途に達成すると公言しています。
▼「美しい国」とは
政府の教育基本法案には、「伝統と文化を尊重し、それらを育んできた我が国と郷土を愛する…態度を養うこと」と書き込み、愛国心教育を教育の中心においています。
ご存知のように、国旗・国歌法制定の際は、国旗・国歌を強制することはしないと言明していたにもかかわちず、東京都において「03年10月23日の教育委員会通達」によって公立学校における国旗・国家強制が行われています。従わない教員には厳しい処分や指導が執拗に行われています。9月21日、東京地裁で『通達や都教委の一連の指導は、教職員に対し、一方的な一定の理論や観念を生徒に教え込むことを強制することに等しく、教育基本法10条1項で定めた「不当な支配」に該当し違法』との判決が下りました。現教育基本法がなかったら、この判決はなかったでしょう。教育基本法案には「国家による不当な支配に屈することなく」を巧妙に変更し、「国家による国家のための教育」に変質させています。教育基本法が改正されたら、愛国心教育が吹き荒れることになるでしょう。
安倍首相は「美しい国へ」第7章、教育の再生の初めに「戦後日本は、60年前の戦争の原因と敗戦の理由をひたすら国家主義に求めた。その結果、戦後の日本人の心性のどこかに、国家=悪という方程式がピルトインされてしまった。だから、国家的見地からの発想がなかなかできない。いやむしろ忌避するような傾向が強い。戦後教育の蹉跌の一つである」。安倍首相はこの国家=悪という方程
式を取り除きたいのです。首相の理想とする「美しい国」は「若者が国のために命を捧げる」国であり、戦争を肯定し賛美する教育が行われる国なのでしょう。
▼共謀罪法案
共謀罪法案では、実行行為がなくても合意したと警察が見なすと逮捕され、最高5年の懲役を受けます。共謀罪の成立する犯罪の数は実に619を超える多数の犯罪が含まれています。法務大臣は国会の答弁で、目配せでも成立すると答弁しており、また処罰の対象となる「団体」の範囲が不明確なままです。法案が成立すれば、かつての治安維持法以上の弾圧法として運用されることは明白です。考え、話し合うだけで逮捕され罰せられる、憲法違反の思想・信条を罰する法案です。しかも、密告者は罰せられないという密告を奨励し、相互に監視しあう社会を目指しています。こんな悪法が成立したら大戦前の暗黒社会が到来するでしょう。安倍内閣は、このような憲法を根底から否定する法案の成立を期しています。
この一事でもってしても安倍内閣は、やわらかい言葉遣いとは異なり、非常に危険な内閣であることは明らかです。
▼「9条を守れ」を超えて
憲法の分身でもある教育基本法改悪、思想弾圧の共謀罪新設法案、防衛庁「省」昇格法案、憲法改定のための国民投票法案など、憲法改悪のための包囲網を許すのか否かが今国会の焦点です。「九条を守れ」の中にとどまらず、緊急に広範かつ強力な運動が必要ではないでしょうか。
参考…村山談話(1995.8.15)
「我が国は、遠くない過去の一時期、国策を誤り、戦争への道を歩んで国民を存亡の危機に陥れ、植民地支配と侵略によって、多くの国々、とりわけアジア諸国の人々に対して多大の損害と苦痛を与えました」。
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【九条噺】
▼母が6年前、82歳のとき脳梗塞で倒れた。私が定年退職したその年の7月のことだった。「お前たちに迷惑かけずにぽっくり死にたい」これが元気な頃の母の口癖。そんな母が、介護保険制度がスタートしたその年から介護保険のお世話になるとは皮肉だ▼脳梗塞の後遺症で左半身が麻痺して、歩くのがやっとの生活が4年。頭能は頗るしっかりしている。2年前に、脳梗塞を再発。ついに車椅子なしでは移動不可能となる。デイサービスやショートステイも利用しながら、家族が限界まで面倒を見る。夜のケアがとくに大変。このままでは家族が壊れる。やむにやまれず、今年の春、ケアマネージャーの勧めで、特養に入所を決意する▼施設は4月にオープンしたばかりで、最近はやりのユニット型個室。部屋にはトイレ、洗面所、テレビもある。室温は常に一定に保たれている。外から見れば申し分のない施設だ。だが、母は「面白くない」「寂しい、家に帰りたい」と嘆く▼どうしてなのかと悩み考えぬく。自分の身と置き換えてみて、やっとたどりついた。「母の生き甲斐」を奪ってしまっていたのではないかということ。新しい施設に入所させて安堵していたのは、母ではなく実は私たち周りのものだったのかも▼今は、家族の誰かが必ず夕方から消灯まで母に寄り添う。入所しているのだからそこまでしなくてもと思いながら。いつまで続くかわからない。幸い弟たちも手伝ってくれるので助かる。介護は家族の絆をも問いかける。 (阪)
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「憲法九条・教育基本法守ろう」
県下各地「九条の会」も 元気で楽しいイベント続々
憲法漫談
「地球のすみずみに、憲法の花を」 会場は爆笑
■田辺・西牟婁連絡会主催
「9条改悪の原因は、アメリカの要求です。日本人は手先が器用。それがアメリカの手先になり、器用な手先で作ったもんがブキ用…。」
10月20日(金)上富田文化会館大ホールに集まった152名がドッと湧きました。
憲法前文を暗誦朗読する場面では、拍手喝采。丸刈り頭に、スーツ姿の見た目はいかつい木藤なおゆきさん(笑工房)ですが、約50分間楽しく、わかりやすい漫談を堪能しました。
憲法漫談「地球のすみずみに、憲法の花を」は、「憲法9条を守る田辺・西牟婁連絡会」が主催し、地域の各「九条の会」が協賛。恒例の「10・21集会」と位置づけて取り組みました。主催者を代表し、地方労働組合評議会西牟婁支部・山本議長の挨拶の後、「教育基本法改悪反対」について教職員組合の前さん、「中小業者の立場からの大増税・憲法・教育基本法改悪反対」について田辺民主商工会の増田さん、「憲法9条を守る運動」について「南部9条の会」の平野さんが、それぞれ発言。会場では「憲法・教育基本法改悪反対署名」をお願いし、憲法ポスターを持って帰っていただきました。
「好きなんよ九条! 教育基本法まつり」に250人
■紀ノ川市那賀町
11月4日「好きなんよ!九条、教育基本法まつり」が、紀の川市の那賀スポレクセンターグランドで 「九条を守ろう那賀の会、教育基本法を守る那賀の会」の主催で行なわれ、家族連れなど250人の参加で賑わいました。
高校教育現場の実態、和歌山市大空襲の体験、35人学級を実施しない岩出市の問題、「九条の会」の活動などのテーマでリレー卜ーク。また、和教組那賀支部が「教育基本法の改悪で学校はこうなる」という4コマのコン卜を披露。学校現場の実態のリアルな告発に客席から爆笑と「がんばれ」のかけ声がかかる。各団体の模擬店も大人気。一方、教育基本法を守る那賀の会は、のべ170人の協力でピラと署名用紙入りの封筒三万枚をつくり、100人ほどで全戸配布をしました。市民からすでに千通を超える署名入りの返信が届いているそうです。
バスタをつくって、たべて、憲法学習会
■和歌山東高校9条の会
6月に職場全体に呼びかけて「9条の会・おてぼの(小手穂野)」を結成。未加入の組合員も「いろいろ考えの違いはあるが憲法を改悪することだけは絶対反対」と大勢集まってくれた。二学期に入り、呼びかけ人が相談して、昼の休憩時間に「みんなで料理して食べながら、憲法学習をしよう」という計画を決め、10月になって「PASTAで憲法学習会」を実施。四人一組の班を結成、ワイワイ言いながらPASTAを茹で始める。協力して二種類のPASTAをつくりその場で楽しく食べながらの学習会、講師は「憲法9条を守るわかやま県民の会」事務局長坂本文博氏、参加者は未加入組合員の方々を含めて40名。秋の一日、大変有意義な時間をもちました。
(報告・和歌山東高校 坂本晴美)
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【連載4】
早乙女勝元氏講演 「いのちと平和の尊さ――」
戦争に巻き込まれないブレーキは憲法9条と…
三番目の「そして今日から明日へ」という話です。
8月15日敗戦を迎えても、私自身、平和というものを知らないわけですから平和の実感はありません。昭和6年9月18日満州事変が起こりそれからずっと
戦時体制ですから。しかしその後平和を感じることが二つありました。一つは8月20日の灯火管制解除です。家族が灯火管制の下で暮らすことから急に明るくなったことを覚えています。もうひとつは、翌々年11月3日に公布された新憲法です。私は当時14歳になっていましたが、9つ違いの兄がおりました。兄は教師で教え子を戦場に送り、学徒動員で戦場に行き、帰ってからは生徒の消息を尋ねるという日々でした。彼から憲法を教わり、何度も何度も読み返しました。私はそういう時代でしたから高校にも大学にもいっていませんが、少なからず読むことで劣等感を拭いました。尾崎紅葉の「金色夜叉」徳富蘆花の「不如帰」よく読みました。
いい文章を書くことは、いい文章を読むことです。そして感じたことをノー卜に①②と整理する。そして考える。そうすると同じ感情になっていい文章がかけます。戦後5年たって私もはじめて300枚の文章が書けるようになりました。
憲法9条第1項「日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては永久にこれを放棄する。」そして第2項、「前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力はこれを保持しない。国の交戦権はこれを認めな
い。」第3項にもあたるような最後に、国の交戦権を認めないがついています。
その憲法が出来て明るい気持ちになったものの、朝鮮戦争勃発の1950年に警察予備隊ができて、その2年後には保安隊、そしてまたその2年後に自衛隊となりました。
航空機のことを支援機、戦車のことを特車、駆遂艦のことを護衛艦、護衛艦はいまでもそう言っていますが、そういうごまかしをして重装備でイラク派遣です。しかし後方支援としかいえなかった。もし9条2項の最後がなかったらどうでしょうか、初めはオランダ軍が護衛していましたが早くに撤退。イギリス軍も撤退。サマワの陸上自衛隊は何をしていたんでしょうか。憲法9条に守られていたんじゃないでしょうか。 いまや世界の軍事費の40%がアメリカ、それにつぎ日本が10%、この二国で半分以上です。
この国が実戦に巻き込まれないブレーキになっているのは紛れもなく、①憲法9条、②国民世論、③平和運動、④アジア諸国の警戒感です。 (つづく)
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