「九条の会・わかやま」 14号を発行(2006年12月1日)

 14号は、1面に、全国の取組特集。2面には、呼びかけ人牧宥恵さんの随筆、早乙女勝元氏講演⑤、「九条噺」です。
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[本文から]

日ごと広がる 九条守ろう の声
 毎日どこかで 九条守る 元気な取り組み [取組 特集]

 マスコミが伝えないのなら 全国九条の会機関紙が伝えよう

「九条改悪は許さない/山形県 共同集会」に2000人
■「10.21 山形県民集会」

 県平和センター、県労連、県生協連、県医労連など九団体でつくる同条行委員会が主催した「10.21 山形県民集会」が、山形市の霞城公園で開かれました。
労働者、市民など2200人が参加。「憲法を県民一人ひとりが自分のものにし、九条を守る一点で手をつなごう」とアピールしたあと、市内中心部をデモ行進。代表挨拶で伊藤寛県生協連会長は憲法九条改悪阻止で団結した集会の意義に触れながら、「多くの県民の運動参加を」と呼びかけ、参加者アピールでは看護師が「再び白衣を戦場の血で汚させない」、自治体職員が「公務員だからこそ憲法九条を守る行動を積極的に」とそれぞれ決意を語りました。

「輝け九条!憲法制定60周年のつどい」に1000人
 かつてない規模の集会に ■ 「加古川九条の会」

 11月2日、俳優の米倉斉加年さんを招いて、加古川市民会館で開かれた「輝け九条!憲法制定60周年のつどい」(加古川市、高砂市、稲美町、播磨町にある六つの九条の会でつくる実行委主催)に約千人が参加。
 この地域の集会ではかつて経験したことのない規模となりました。立花俊治実行委・事務局長も「私自身、こんなにも多くの人をひきつける憲法九条の偉大さを思い知らされ、大きな元気をもらいました」と感動覚めやらぬ表情で語りました。

「11.3 戦争はダメ!九条で平和を!
 憲法九条は変えたらあかん・岐阜のつどい」に1200人

 11月3日、岐阜市とその周辺の九条の会や地域・職域の29の九条の会主催の「岐阜のつどい」に1200名が参加、九条を守ろうの熱い思いを確信しました。歌手の横井久美子さんのコンサー卜からスター卜、万雷の拍手のなか「九条を守るために集まった岐阜の人たちの心意気に感激した。九条を守ることは私達の暮らしを守り人間を守ること‥‥」と訴えたあと、アイルランドの公民権運動を歌った「おいでいっしょに」や地元郡上の民謡「げんげんばらばら」、戦意高揚の歌を復員兵を励ます歌につくり替えた「里の秋」や「太陽を」「人間を返せ」など横井さん思い入れの歌が続き、ヒットラー批判を歌にした「戦争入門」で締めくくる。平和への想いを熱く歌う横井さんの第1部は感動的であっという間に終わる。
 第2部は高橋哲哉さんが「これからどうする?このニホン」で講演。「自衛隊を軍隊にするために九条改憲の流れが進む。教育基本法は、国のために命を捨てることを勧めた教育勅語の否定から、個人の尊厳、人格の完成、民主国家の主権者をめざして60年維持してきたが、与党改正案では『伝統と文化の尊重』『わが国と郷土を愛する』と『愛国心』が強調され、国家主義教育に戻そうとしている。愛情とはおのずから生まれてくるもの、それを法律で強制するのは危険なナショナリズムであり、愛国心の行き着くところは靖国神社である。天皇が参拝できない靖国神社は不正常なので、国営化し天皇参拝が日常化できるようにするという。新しい日本軍が軍事行動し戦死者が出たら、国営靖国神社に祀り 天皇が参拝する。自民党新憲法草案前文は国を守ることを『国民の責務』としている。そのために国家のための教育と靖国の国営化をすすめる。これはすでに破綻した国家主義への道だ。憲法と教育基本法を守り、新しい日本軍と靖国国営化にストップをかけなければならない」(要旨)と訴えました。高橋哲哉さんの明快な話に会場いっぱいの参加者は熱心に聞き入り、あらためて教育基本法と憲法攻撃をセットで進める危険な企てを確認しました。閉会挨拶で事務局長の木戸季市さんは「9条を守る運動を、9条を広げる活動に発展させ、全国に、世界に広げよう」と呼びかけました。

 歌とトークで 「輝け憲法9条・文化のつどい」
  ■文化団体連絡会議

 日本文化の発展を願う文化団体でつくる「文化団体連絡会議 (文団連)」は、11月12日、都内の発明館ホールで「輝け憲法9条・文化のつどい」を開催、約1000人が参加しました。新俳句人連盟の鴨下昭さんは戦前の治安維持法による俳句への弾圧と、俳壇の戦争責任について発言。音楽集団ともしぴの寺谷宏さんは「あの日の授業」などお得意の歌を披露。 日本民主主義文学会の森与志男さんは、東京都の「日の丸・君が代」押し付けの異常について「表現者として、きな臭い動きには抗っていかねばならない」と訴え、アニメ監督の有原誠治さんも「日米支配層のメディア・コントロール」の現状を報告。新日本歌人協会が短歌を、詩人会議の秋村さんは詩をそれぞれ朗読しました。文団連らしい歌とトークの集いになりました。

「憲法60周年」で学習・宣伝の強化を決める
  ■憲法会議

 憲法会議は11日、東京都内で幹事会を開き、安倍政権が露骨な改憲方針を掲げ、改憲反対の多数世論の逆転をねらい、北朝鮮の核実験などを口実にした周辺事態法の発動や核武装論、国民投票法など制度確立を急いでいることが報告され、憲法公布の今月から施行の来年5月までを「憲法60周年学習・宣伝強化期間」 とすることを確認。①学習会の重視 ②要求と結んだ憲法運動の推進、共同センターの強化 ③運動交流の強化 ④団体間の共同の追求などを決めました。

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[牧 宥恵の心の拠りどころ]
ダライ・ラマ14世の魅力
   九条の会・わかやま 呼びかけ人  牧宥恵(画僧)

 不思議なオーラを出す人である。この感想しか思いつかないのだからしようがない。その人というのは、ダライラマ14世である。
 祖国チペット(中国領チペット自治区)から亡命し、現在はインド北部のダラムサラに多くのチベット人と住む。仏教を基本に日本の密教に似た教義を持ち、ダライラマを観音菩薩の化身として信仰の中心とするラマ教の活仏として、全世界に独立・解放と仏教の教えを展開、ノーベル平和賞を受賞している。亡命したのは、一言でいうと中国がチベットの解放、独立を許さないからである。中国政府のチベット人への人権蹂躙は国際社会の目の触れないところで日常化している。チベット亡命政府の調べによると、1949~79年の間に中国当局の弾庄で、チベット人口の5分の1にあたる約120万人が命を落とし、6千を超える寺院が破壊されたという。
 ダライ・ラマ14世は、現在いろいろな仏教行事や講演会で来日しておられる。そして日本政府は、中国を刺激しないために無関心を装っている。ダライ・ラマ14世は、僕にとって興味のある人でもあった(少しミーハー気分もあるが‥‥)。それが降ってわいたように「講演会後の食事会に列席しませんか」と主催者から打診があり、先月日に東京を日帰りで往復してしまった。その感想が、不思議なオーラを出す人だった。
 全チベット人の人望と仏に例えられる徳を備えるダライ・ラマ14世は、僕が西チペットやインドで出会ったラマ僧とそう変わりないように見える。講演の内容もそう目新しい(失礼)ことを話された訳でもなかった。しかし、時折見せる眼光の鋭さの中に、国を追われ、民族の不幸を一身にまといながら、このふくよかさは一体何なのだろうと考え込んでしまうこともあった。会う前まで、一緒に写真でも撮って帰ろうと思っていた気分は、とうの昔に消えてしまった。「人権は人間だけが持つ特権だと思われているが、本来は生き物全てに当てはまるのだ」と話される時、広くて深い思慮のある方だなあと思えてきた。食事中も日本人の眼から見て決して行儀が悪いとは言えないのだが、不思議な磁場を放っていた。そう何回も会える人ではないだろうけど、これから先も政治の嵐や菩薩の道にあっても、チベット文化と宗教を身に担って活動している姿にチベットの人たちは、仏(観音=慈悲)を見ているのだと確信した。大丈夫か日本仏教である。

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【連載5】 早乙女勝元氏講演「いのちと平和の尊さを」
安保条約解体こそ平和への道

 最近首相になった安倍政権の政権公約は、①憲法改正、②教育改革を最重点に、③集団的自衛権の研究という交戦権への挑戦です。もっというと①憲法9条2項を変える、②それにともなう軍備増強、③それにともなう法整備、④それにともなう人づくりというものです。この秋の臨時国会の最重点は、教育基本法の改 正です。教育は14歳までに決まります。愛国心を植え付ける最大のねらいがここにあります。
 観ていただきましたコスタリカ、「軍隊を捨てた国」は私の思いを継ぐ娘の作品です。一人踊っている日本人が登場しますが、10年前沖縄で悲惨な事件が起こりました。アメリカ兵による女子暴行事件。そのとき沖縄県民が立ち上がり集会が開かれ、その壇上で「平和な沖縄を返してください」と訴えた中村すが子さ んです。東京であの場面を見ていていつかはと想いこの映画に登場願いました。コスタリカはパラダイスでないけれど、中米和平のまとめ役であるということ。1983年アリアス大統領は、非武装宣言を行いました。後にノーベル平和賞を受賞しますが、なぜまとめ役になれたのか、軍事費を使わずに教育や医療にかけ られたのか、非武装だからです。平和だから軍隊がないのでなく、軍隊がないから平和なのです。しかし、どこからか攻めてきたらどうするという質問が必ず出るでしょう。北の無法者が改めてきたらどうする、北朝鮮報道を見ても日本でもよく起こる議論です。よ<考えましょう。ほどほどの武力というものはないので す。武力は必ず相手より強くなければなりません。刀より銃を、銃より機関銃を、機関銃よりバズーカ砲を、バズーカ砲よりミサイルを、ミサイルより核爆弾をと。攻め込んでくる、攻め込んでくるという議論の前に、もう日本は攻め込まれているじゃありませんか。大事なお方に奥の間に居座られているんじゃないですか。それをアジア諸国から見ればどうでしょうか。恐怖と感じて当然でしょう。また一緒になって攻めてくるんじゃないかと。その大事なお方の編成を変えるだけに3兆円もお支払いするんでしよ。3兆円3兆円と騒いだもんだから2兆円とかごまかし始めていますけれど、先ほどお話しました医療費負担の10年分ですよ。想像力を働かせさえすればすぐわかります。安保条約解体こそ平和への道ではないでしょうか。  (続く)

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【九条噺】

「現に自衛隊があるのだから、憲法上それを認めて、自衛隊の行動に一定の歯止めをかけるのが現実的である」という改憲論がある。それを主張する改憲論者は「今の憲法9条は理想論である」と批判する。▼そもそも「現実論」と「理想論」は対立するものなのか。▼「現実」とは「現に事実としてあること」であり、その反意語は「空想」或は「夢想」であって、「理想」ではない。「空想」とは「あり得るはずがないことをいろいろと思い巡らすこと」(広辞苑)である。▼「理想」とは「考え得る最高の状態。まだ現実には存在しないが、実現可能なものとして行為の目的であり、その意味で行為の起動力である。」(広辞苑)▼「憲法9条は理想論」大いに結構。憲法9条は「考え得る最高のもの」であり、「実現可能なもの」であり、平和を目指す我々の「目的」であり、我々の「起動力」である。▼日本には自衛権がある。当然である。改憲論者は「現実論として自衛のために軍隊が必要だ」と言う。それは本当に「現実論」であろうか。「九条の会」の呼びかけ人・小田実氏は、「日本に石油はあるか?日本に食糧はあるか?そんな日本で、どうして軍隊を機能させることができるのか。『軍隊が必要』と言う方が『非現実的』『夢想的』であり、憲法9条の方がはるかに『現実的』である」と言う。▼「現実的」と「理想的」は決して対立するものではない。我々の進むべき道は「海外で戦争をする国」にすることではなく、憲法9条を守り、世界的な理想に向かって進むことである。それが最も現実的であり、かつ理想的なのである。  (M)

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(2006年12月26日入力)
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