「九条の会・わかやま」 17号を発行(2006年12月22日) 17号は、1面はまず各地の取組です。「平和アピール七人委員会」講演会(井上ひさし、武者小路公秀さんら)、東海地方の「中部経営者九条の会」発足講演会、「くまの平和ネット」講演会などの取組紹介。さらに、「九条の会」憲法セミナー講演要旨①(加藤周一さん)を掲載しています。2面には、当会呼びかけ人で僧侶の高木歓恒さんが「真の勇気とは、戦いをしない勇気」と題して、「戦争放棄」の意味を力強く解明しています。そして「九条噺」です。 | |
平和アピール七人委員会/井上ひさしさんらが講演会 世界平和アピール七人委員会は11月11日、都内で講演会「日本はどこに行くのか。今これだけは言っておきたい」を開いた。作家で七人委員会の井上ひさしさん、武者小路公秀大阪経済法科大学アジア太平洋研究センター長、物理学者の伏見康治大阪大学名誉教授の3氏が憲法の意義について講演。 後退せず前向きに 井上ひさしさん 朝鮮戦争が始まった1950年前後から国内で改憲ムードが高まった。自民党は55年の結党以来、50年余りにわたって憲法を変えようとしてきたが、いまだに変えることができないでいる。最近、中央アジア非核兵器地帯条約が署名され、全米市長会議では8割の市長が核を持つことに反対の意思を示した。広島と長崎に続いて核兵器で攻撃された都市もない。これらの事実は、世界で唯一、被爆体験をへて平和憲法を持った日本の人々の力によるものだ。決して後退せず前を見て生きていこう。核兵器と人類は共存できない。15年戦争で310万人の日本人、1554万人のアジアの人々が死亡した。このことをふまえずアジアとつきあおうとすれば道を誤るだろう。 憲法は人類の到達点 武者小路公秀さん
かつて世界を巻き込んだ戦争をおこしたことの反省に立って、日本国憲法はつくられた。憲法は人類の歴史の到達点といえる。憲法前文は全世界の国民が平和に生きる権利を持つと宣言しており、このことから戦争放棄と戦力・交戦権否認の第9条が出てくるのは当然だ。 伏見名誉教授はノーベル物理学賞受賞者の湯川秀樹、朝永振一郎両博士の平和運動での功績について語った。 (いずれも連合通信)
経営者が九条の会 ▼東海地方 東海地方の中小企業経営者が26日、「中部経営者九条の会」発足記念講演会を名古屋市中区でひらき、約100人が参加しました。準備会代表の江崎信夫・愛知中小企業家同友会顧問の挨拶と協賛行事に続いて、もと中日ドラゴンズ代表取締役の佐藤毅氏が「日本国憲法の危機」と題して講演。改憲の狙いを「日本を海外で戦争できる国にする」と指摘。これを暴露し、反対運動を広げようと呼びかけました。なお、東京と京都の経営者「九条の会」代表も駆けつけて連帯の挨拶をしました。 改憲48対護憲2の国会情勢 ▼くまの平和ネットが講演会 和歌山「くまの平和ネットワーク」と「大逆事件の犠牲者を顕彰する会」の共催で11月24日、新宮市福祉センターで「安倍内閣がめざす改憲と今の政治状況」をテーマに早野透朝日新聞編集委員の講演会を開き、200人が聴講。早野氏は「憲法を議論する衆院の憲法調査特別委員会も、委員50人のうち、48人は改憲勢力で、護憲の側は共産と社民のわずか2人だ」と国会情勢を説明し、「憲法を守りたいと思っている人は大勢いる。しかし油断はできない。ムード次第で一気に崩される危険がある」と指摘。「九条を子孫に引き継ぐためには、草の根で運動を続けるしかない」と訴えました。 (このニュースは朝日新聞地方版11/26付も報道しました)
【「九条の会」憲法セミナーより・講演発言要旨】 第1回「九条の会」憲法セミナーで挨拶した加藤周一さんと、講演した辻井喬、澤地久枝両氏の発言要旨を3回連続で掲載します。1回目は加藤周一さんです。
一つは、憲法をそのままにして独立する。2番目は、憲法はそのままだが従属する、独立の程度が低い。3番は改憲して独立を強める。4番は改憲をすると同時に、従属的な態度をとる、この四つの選択肢です。 1番は理想的です。憲法を守りながら、独立の外交政策の自由度が大きくなる。それを使って周辺国との緊張関係をなくしていくことができる。平和が強まれば軍備の必要も減っていく。2番は現状のまま。平和主義だが外交での自由は非常に限られる。長い時間がたつと、だんだんと外国いいなりが嫌だという考えが強くなる。嫌ならアメリカから離れて軍備を増強するか。それが3番です。しかし、アジアの緊張を高め、アメリカからも歓迎されない。どんどん軍備を増強すると、ある段階で核兵器も、ということになる。すべての国との関係が悪化する。非常に非現実的です。 4番はどうか。これが今進んでいる改憲の方向です。そこで軍隊を増強すれば、米軍に従属したものとなる。日本人が日本のためでなく外国のために戦死することになる。そんなことは受け入れられない。一番現実的で未来のために必要なのは1番です。武器による安全保障ではなく,外交的手段で安全を保障することは、アジアでも非常に歓迎されます。どの可能性が一番現実的で日本人にとって受け入れやすいのか良く考えて、その可能性を推進すべきだと思います。 (次回は澤地久枝さんです。九条の会HPより)
真の勇気とは、戦いをしない勇気
第一生命という保険会社が実施している「サラリーマン川柳コンクール」は、1987年(昭和62年)にスタートして今年ですでに19回を数える。その間、実に75104句にのぼるという。サラリーマンが日常に起きる何気ない出来事をユーモアと風刺のセンスで表現したもので、笑い、怒り、悲哀、嫉妬、涙、etc …と、時流を反映した作品に納得、勉強させられるとともに、そのおかしさに思わず吹き出してしまうのである。今年のベスト10を見てみよう。
① 昼食は 妻がセレブで 俺セルフ …………………… (一夢庵) ② 年金は いらない人が 制度決め ………………… (元平社員) ③ ウォームビズ ふところ常に クールビズ …… (環境財務大臣) ④ 2歳だろ トロウニ選ぶな 卵食え …… (詠み人知られたがらず) ⑤ 妻の口 マナーモードに 切り替えたい ……… (ポチのパパ) ⑥ 片付けろ! 言ってた上司が 片付いた ………… (清掃業者) ⑦ 痩せるツボ 脂肪が邪魔し 探せない …… (雪乃このひとりごと) ⑧ ダイエット 食費以上に 金かけて …………………… (蓮華) ⑨ 買っていい? 聞くとき既に 買ってある ……… (エレキ猫) ⑩ 散髪代 俺は千円 犬一万 ………………………… (下流の夫) 「昼食は 妻がセレブで 俺セルフ」私は平日の朝7時ごろ、たまに和歌山駅東口へ子どもを車で送っていく。そこで見かける光景は、旅行会社が企画した日帰りグルメツアーのバスに乗り込む人々の群れである。よく見れば、その8~9割までが女性である。多分、いや間違いなく、歌舞管弦鑑賞と某有名ホテルのセレブランチであろうか。ところが夫はそのとき社員食堂で、お決まりの「日替わり定食」を注文している。もちろんセルフサービスで……。作者一夢庵さんの「やってられないよー」の声が聞こえてくる。だが、そんな妻に小言でも言おうものなら大変だ。「妻の口、マナーモードに切り替えたい」夫の小言の何倍、何十倍も機関銃のごとく返ってくる。クワバラ、クワバラ。 そのグルメ好きも度が過ぎると「苦は楽の種、楽は苦の種」となる。「痩せるツボ、脂肪が邪魔し、探せない」妻には恐くて口出しもできないが、かといって知らぬ振りもできない。いろいろ買いたいものがあるらしく、相談持ちかけられたと思いきや「買っていい? 聞くときすでに買ってある」「ダイエット、食費以上に金かけて」何もいえない夫がそこにいる。夫の言える愚痴は愛犬に対する嫌味だけ。「散髪代、俺は千円 犬一万」小遣いを増やすには髪の毛も自分でカットしようかな、などと金と居場所のない日々に忸怩たる思いを抱くのである。男女同権、いや女性が強いのは平和の証拠か?「お父さん頑張れ!日本 仲間いる」と思わず私も叫んでしまった。このような光景を「平和ボケ」といわれるとそれまでだが、「戦争をしない」と決めたからこその平和ではないのか。 日本国憲法第9条「戦争の放棄」の文言は重い。これこそがわが国の文化の象徴であり、世界に類を見ない平和憲法である。胸を張って世界に宣言できる理念である。憲法作成の経緯はいかにあろうとも、戦後国民はこの憲法とともに生きてきた。「戦争を永久に放棄する」と明記された憲法が、永久ではなくわずか60年で改正とは何ごとか。世界情勢の変化、大国の圧力を理由に改正とは、いかにも弱腰で理念を欠き、一貫性のない国であるかを世界に発信しているようなものだ。こんな信念すら貫けない国が、どうして国際貢献などできようか。発した言葉の乾く間もなく「永久に放棄」を放棄するのは詐欺師、ペテン師以外の何ものでもない。 命をかけて、戦争することは多大の勇気が必要である。しかし、戦いをしない勇気は、その何十倍もの勇気がいるのである。弱い国ではなく、戦争を永久に放棄する真の勇気を持った強い国になろうではないか。さらに「美しい国」とは、人を騙すことなく、真の勇気を持った人々の住まいする国のことであると私は考える。 ―――― 筆 者 紹 介 阿弥陀寺住職 和歌山刑務所教誨師 京都西山短期大学非常勤講師
【九条噺】 安倍内閣は、教育基本法改悪を国会の数の力で、強行した。▼日本弁護士会や教育学会などは強く改悪に反対を表明し、国民の側にも教育基本法改定賛成の声が広がっているわけではない▼元東大総長であり、戦後の学者・知識人を代表する人に南原繁がある▼気骨の人で、自由党の吉田茂首相に真っ向から異を唱え、日本の全面講和を強く主張したことでも広く知られている▼南原繁は、教育刷新委員会の中心となって現行教育基本法制定にかかわった。南原繁は、「日本における教育改革」(1955年)で次のように書いている▼「新しく定められた教育理念にいささかの誤りもない。今後、いかなる反動の嵐が訪れようとも、何人も教育基本法の精神を根本的に書き換えることはできないであろう。なぜならば、それは真理であり、これを否定するのは歴史の流れを堰き止めるに等しい。‥‥」▼今、戦後最大の反動の嵐が吹く。改悪のねらいは、教育の目的、教育行政の責務など教育基本法の根本精神を変えるところにある。憲法第9条改悪を見据えるものだ▼絶対に諦めずたたかいを続けよう。 (阪)
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(2006年12月28日入力)
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