「九条の会・わかやま」 18号を発行(2006年12月30日) 18号の1面は、呼びかけ人月山桂さんの戦争体験「戦争とはかくも虚しきもの」連載第1回、新憲法との出会いから書き起こして時代状況と月山さんの素直な気持ちが伝わります。街頭ラジオで東京裁判判決を聞く場面にひきこまれる。そして「九条噺」。2面は、山田邦子さんも参加した東京の「戦争への道を許さない!歌い語る女たちの集い」、和歌山みなべ「町民過半数署名」。そして「九条の会憲法セミナー講演要旨②澤地久枝さん」です。 | |
呼びかけ人 月山 桂氏 (弁護士)が戦争体験を寄稿
それにもまして満州の陸軍経理学校の卒業のとき校門まで見送って「手を揮って茲より去れば、粛々として班馬鳴く」李白の詩の想いで別れた戦友の多くが未だシベリアから帰れないでいる。戦争とは、何と悲惨な、何と虚しいものか。そんな思いでいた私は、戦争放棄の九条の規定は、理屈なしに受け入れることができた。戦争のない世界、戦争をしない国、軍隊を持たない国、戦火によって人間を不幸にしない国、それは全人類至高の夢であり、憧れである。 日本を再び自分達に歯向かうことのできない国にしようというアメリカや連合国の意図があったにしても、平和主義に表れた戦争放棄の規定は何ものにも代え難い人類の理想であることに相違はない。私は素直に素晴らしいと思ったし、今もそう思っている。 それから2年後の1948年11月のある日、両国の旧国技館で司法修習生の見学会か何かの催しがあり、その帰途、駿河台の英米法研究室に立ち寄るべく蔵前から両国橋近くを歩いていた。大空襲による焦土も徐々に復興し、バラック建てながら店舗が立ち並ぶ。とあるラジオ屋さんの前で数名の人だかりがあった。極東軍事裁判の判決の言渡しを聞く人たちだ。仲間に入れてもらって聞く。間もなく「Hideki Tojo, Death by hanging!」。ウエッブ裁判長による判決の宣告は続く。聞いていた人は皆、特別の反応を示すでもなく、無言で立ち去って行った。私も…。 勝者が敗者を裁く。占領軍の統治下にあって占領軍が被占領軍の戦争指導者を裁く。インドのパル判事ならずとも、裁判に名を借りた復讐に過ぎないと、裁判の国際法的な正当性に疑問を抱いた。しかし私は、すぐにこれでよいのだと思った。戦争犯罪者、それは外国あるいは外国人に対する戦争犯罪者たるにとどまらない。彼ら戦争指導者は、国民の目を蔽い、国民を欺いて正義の戦いと思い込ませ、何百万もの国民を死に至らしめたほか、広島、長崎、この東京をはじめ、50を超す都市を戦火で焼き尽くし、数え切れない犠牲を国民に強いた。彼らの罪は国内的にも許されるものではない。彼ら戦争指導者は、誰かによって裁かれなければならない。しかし、果して日本人が日本の法廷で裁くことができただろうか。彼らの罪は絶対に許されない。私は一方で悔しい思いをしつつ、これで良し、これ以外にないと思った。一人、二人とラジオの前から立ち去る人達も同じ思いだったのではないだろうか。 歴史に学び 理想を求める心を ところが、60年後の今日、かつて許し得なかった戦争指導者を合祀する靖国神社に何のためらいもなく、被害者国民の感情を逆撫でしてまで参拝しようとする現在の指導者。「アメリカから押し付けられた憲法」といいながら、今アメリカの要求に応じて憲法を変え、「戦争放棄」の「放棄」をしようとする現在の指導者。歴史は繰返されるというが、失ってはならないもの、それは歴史に学び、純粋に理想を追い求める心ではないだろうか。 (次号に続く)
安倍首相はMD(ミサイル防衛システム)に関する2003年12月の福田康夫官房長官談話の見直しもあり得ると述べた▼米国に向けて発射された弾道ミサイルを迎撃し、わが国上空で撃ち落とすというのである▼福田談話は「集団的自衛権との関係については、今回わが国が導入するBMDシステムは、あくまでもわが国を防衛することを目的とするものであって、わが国自身の主体的判断に基づいて運用し、第三国の防衛のために用いられることはないことから、集団的自衛権の問題は生じません」と述べている▼MDは憲法で禁じられている集団的自衛権を行使しないことを前提として導入されたのである▼米国に向かうミサイルをわが国の上空で撃ち落すということは、わが国の近くを米国に向かって通過する軍用機や艦船を攻撃するのとどこが違うのか。これを集団的自衛権の行使と言わずして、何といえばよいのか▼久間防衛庁長官ですら「よその国に向かって発射されているミサイルを日本のMDで後から撃ち落すのは物理的に無理。法律論以前の話だ]と述べている▼物理的に無理なものを検討するということは、MDを口実に集団的自衛権を正当化し、「アメリカのために戦争をする国」にしようとしていると言われても仕方があるまい▼現に米国シーファー駐日大使は「ミサイルをどの段階で迎撃するか、その答えは日米同盟の将来に決定的な重要性を持つ」と期待を表明している▼米国の期待に応えるために解釈改憲を進め、明文改憲につなげようという意図が「見え見え」なのである (南)
戦争への道を許さない
12月19日、山田邦子さんらタレントも参加して「戦争への道を許さない! 歌い、語る 女たちの集い」が東京で開かれ、300人が参加しました。市民団体「戦争への道を許さない女たちの連絡会」が主催したもので連絡会世話人で評論家の吉武輝子さんが講演し、各界で活躍する女性がリレートークを行ないました。タレントの山田邦子さんも詩の朗読で参加したものです。 沈黙は権力を利するだけ
リレートークでは、女性九条の会呼びかけ人の江尻美穂子日本YWCA理事長が「黙っていれば日本は戦争国家への道を進む。沈黙は政権を利するだけ。戦争をしない国にすることこそ本当の愛国心だと…」と訴え、弁護士の中島通子さんは「日本の行方が危ないという世論を広げるには、若い人の運動参加をサポートすること、さまざまな分野の人々と力を合わせること、世界の人々と力をあわせることが必要」と語りました。また、脚本家の小山内美江子さんは「海外では日本国憲法は『世界の良心』と言われている。それを知らないのは日本人だけ」と指摘しています。
「町民過半数署名1000筆を超える!」を報道 和歌山・みなべ 11月20日、地元新聞3社(紀伊民報、日高新報、紀州新聞)と、みなべ「九条の会」が町公民館で記者会見。みなべ「九条の会」世話人代表の本多立太郎氏と尾中直次氏、事務局2名が会見に臨みました。日高新報、紀州新聞の2社は11月22日付で、また、紀伊民報は23日付でそれぞれ事実を淡々と報道しました。
【「九条の会」憲法セミナーより・講演発言要旨・2】
……………………………………… 憲法は私たちの願いを体現
人類が第一次世界大戦後、悲願として、痛切な祈りのようなものとして達成したいと考えてきたこと ―平和であれかし、武力・軍事力はいらない、交戦権は封印しよう― 20世紀の歴史のなかでの願いをそっくり体現したのが、私たちの憲法です。 「あきらめる」ことをやめよう
そして、伝えたいのは「憲法を泣かせるな」という言葉です。憲法を泣かせてはなりません。恥知らずな権力と向き合うとなかなか勝つことはできない。しかし、あきらめることはやめたらいい。勝つまでは意思を捨てないことです。
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(2006年12月29日入力)
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