「九条の会・わかやま」 27号を発行(2007年3月20日)

 27号が3月20日発行されました。1面は、国民投票法案(改憲手続き法案)の不公平さ、改憲への道であることを解き明かす坂本修弁護士(自由法曹団団長)の発言<連載3回の①>、そして「九条噺」。2面は、憲法9条の価値と役割を話し合った国際シンポジウム、改憲手続法阻止で二つの集会、事務局スタッフのコラム「戦争&石油屋」です。
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[本文から]

〔国民投票法案(改憲手続き法案)〕
金の有る改憲勢力に有利
稀代の不公平法案を国民に知らせよう① 弁護士・坂本修(自由法曹団団長)

 国民が正体を知れば 必ずこの法案は潰せる

 全国の弁護士、大企業の顧問弁護士など党派を超えすべての弁護士が参加をしている日本弁護士連合会は、昨年八月に、この法案について自公民案も民主党案も憲法の基本に反する重大な問題があるという、厳しい批 判の声明を全会一致で提出しました。これは単に弁護士だからというのではなく、それこそ党派に拘わらず、改憲に賛成の人を含めて、これは許せない法案だからです。

(1)改憲原案を審議するための「憲法審査会」ができるが…

 この法案が今国会でもし通ったならば、その次にどんなことが起きるのか。
 まず、よく国民投票法と言われているので、国民投票の手続きかと思っているとそれは違います。この法案の後ろの本当に目立たないところに、国会法の一部改正というのがあって、法案が成立した直後の国会から、 国会に憲法審査会というのが作られます。この憲法審査会は改憲原案の審議をし、作成をし、国会に出すというところまでの権限を持っています。今までの憲法調査会は、憲法問題について調査をするという権限しかあ りませんでした。こういうふうに改憲したほうがいいとか、だから改憲は必要なのだとか、そういうことを少なくとも公式には語ることのできない組織でした。ところが、この法律が通りますと、これがドンドン進みま す。普通、国会閉会中審査については特別な手続きがいるというのが国会法ですが、この憲法審査会に関しては、国会が止まっていようが、止まっていまいが、引き続いて審議ができるということになっています。ですからこの法案が通りますと来年の国会から、国会の二つの憲法審査会で次々と自民党の新憲法草案を原案として、こうしたほうがいい、ああしたほうがいいということで改憲談合が進み、それがメディアを通じて国民にドンドン流され、私たちがいろい言っているうちに「えっ!もうそこまで進んだの?」「いつからそうなったの?」ということが起きるというのがまず第一です。

 (2)広報協議会が作った「改憲広報」が国民に配布されるが…

 国民投票に関する規定については、この法案が通ってから2年後に発効するとなっています。
 安倍さんは5年以内、できるだけ前倒しでやるといっていますから、5年から2年プラスαの時間帯で、国民投票法案が私たちの反対にも拘わらず強行採決されたとすると、さて、何が起きるか。
 まず、皆さんの家に改憲広報というのが届きます。改憲広報は誰が作るのかと言うと、広報協議会というのが両院委員から10人ずつ出して、合計20人の広報委員会が作ります。広報委員会の構成は、議席比ですか ら、共産党と社民党はゼロです。自公民しかいません。それではいくらなんでもひどすぎるというので、法案には「できるだけ配慮するもの」と書いてある。ですから、たぶん二〇人中、社民一人、共産一人、多くみても二人ずつでしょう。ですから、16対4ないし18対2で広報協議会をやる。この広報協議会が改憲広報を作ります。改憲広報については、改憲案についての解説をします。アメリカと一緒に海外で戦争をする国にする、そのために9条を変えます、と書いてくれるわけではありません。「新しい、美しき日本のために、国民みんなが幸せになる国のために…」そう書くに決まっています。それが皆さんの家に届きます。もちろんそれだけではみっともないから、端っこのほうに改憲反対派の意見も載せるでしょう。賛成派と反対派を両方書くとか言っていましたから。でもお分かりでしょ?協議会は改憲を美化したものをポーンと書いてしまう。改憲賛成と反対とが等量でばらまかれたとしても、できあがった改憲広報は圧倒的に改憲PR広報です。

《この項、次号に続く》
 この項は、昨年10月11日に開かれたマスコミ九条の会のパネル討論会「だれが決める?憲法の行方・メディアと改憲手続法を考える」(パネラー・坂本修、小森陽一、桂敬一さん)から、坂本修弁護士の発言を抜粋し「マスコミ九条の会」がHPに公開したものです。手続き法案を知る上でわかり易い内容ですので、ぜひ紹介したいと思いました。紙面の都合上、今回から3回に分けて掲載します。 (一部見出し=編集室)

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【九条噺】

 3月15日付の朝日新聞によれば、シーファー駐日米大使は14日、日米の防衛費について、それぞれの国の国内総生産(GDP)割合を引き合いに出し、米国に比べ日本の負担が少ないと指摘し、日本の負担増を期待した▼大使は「アジア全体の平和維持に貢献している在日米軍は近代化を進めている」と説明し、「米国は05年にGDPで4%以上を防衛費に使い、日本と当該地域のためにも使っている。一方、日本は1%以下だ。日本がもっと出せば、我が国にとっていい影響を与える」と、日本にも経済規模に応じた負担を求めた▼日本は既に世界第2位といわれる4兆8139億円(06年度防衛予算)もの防衛費を使っている。これが平和に貢献するどころか、周辺諸国に緊張をもたらし、イラク戦争をはじめとするアメリカの世界戦略の片棒を担ぎ、平和を脅かす存在となっている▼この要求は、あまりにも露骨で、執拗な改憲要求とともに、「あまりにも図に乗りすぎ」と言わなければならないだろう▼同時に、シーファー大使は、北朝鮮がミサイルを発射したことを引き合いに出し、「威圧的な行動によって政策を実現しようとする国に、その可能性がないことを示さないといけない」と述べたという▼北朝鮮も問題ではあるが、イラクでアメリカが行っていることは「威圧的な行動によって政策を実現しようとする国」そのものではないか。この言葉は熨斗(のし)をつけてアメリカに返さなければならないと思うのは、筆者だけではあるまい。    (南)

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戦争するための改憲 改憲のための手続法 NO!
 世界的に意義ある憲法9条
  都内で国際シンポジウム

 平和的生存権のモデル

 戦争や紛争が絶えないなか、21世紀の平和構築に向けて憲法9条の意義や役割について話し合う国際シンポジウム「世界の中の憲法9条」が、明治学院大学国際平和研究所の主催で、2月24、25の両日、東京都内の大学構内で開かれ海外からも参加しました。

 パリ不戦条約引き継ぐ9条

 国際法の歴史を扱ったセッションでは、中国出身の孫占坤同研究所所員は、不法な戦争や武力行使を禁止するパリ不戦条約(1928年)の考え方は戦後の国連憲章(1945年)にも引き継がれていると述べるとともに「憲法9条は国際社会が長年求め、現代国際法の根幹をなす『戦争・武力行使の禁止原則』に合致している」と語り、日本の平和憲法が世界の規範となるものであることを強調しました。

 日本国憲法は国際的モデル

 北海道大学大学院の岡田信弘教授は日本の憲法について「一国平和主義」などの批判があることに言及。
 憲法は国際法がめざす国際社会の平和的生存権の考え方と同一の理念と方向性をもち、国際性が強いとして国際的に平和的生存権のモデルとなるものだ」と訴えました。
 憲法のもつ国際性はあまり認識されていないとして、「国際社会に向けた議論や活動を積極的に行うことが必要だ」とも述べました。

 共産党の仁比聡平参院議員は、安倍政権のねらい通り、憲法記念日までに国民投票法を成立させるためには、3月上旬に衆議院を通さなければならないが、手続きは大きく遅れていると報告。「推進勢力の思い通りにいかないのは、国民がだれも改憲を望んでいないからだ」と述べ、社民党の福島瑞穂党首は「国民投票ではなく、改憲案つくりのための法案にほかならない。国民投票法を阻止することこそ、改憲反対運動の最も有効な手段だ」と語りました。

改憲手続法はいらない/東京で議員ら二つの集会

 許すな!憲法改悪・市民連絡会、平和をつくり出す宗教者ネット、平和を実現するキリスト者ネットの3団体が呼びかけて、「改憲手続き法はいらない2・22市民と国会議員の院内集会」が2月22日、東京の参院議員会館で開かれ、約120人が参加。民主、共産、社民各党の国会議員があいさつし、力を合わせて憲法改悪のための国民投票法案を阻止しようとそれぞれが訴えました。
 民主党の下田敦子参院議員は自身の戦争体験をふり返り「改憲を叫ぷ安倍首相は本当の戦争を知らない。いかなる名目でも正しい戦争はない。手続き法を阻止するために懸命に努力しよう」と訴えました。
 市民団体の代表も「どれだけ国会外で運動を広げ、国会議員と連携できるかがたたかいのかぎだ」(許す な憲法改悪・市民連絡会)「国会の会期中、議員要請を連日行っている。民主党議員を動かすことが大事だ」(平和を実現するキリスト者ネット)などと述べました。  (以上は連合通信)

 日比谷 音楽堂に二千人

 「2007年5・3憲法集会実行委員会」は3月2日「STOP!改憲手続き法案」を掲げた集会を日比谷野外音楽堂で開き「憲法改悪のための国民投票法案はいらない」のプラカードを手に憲法団体や・市民・女性・宗教団体から2,000人が集まり「改憲手続き法案を廃案にしよう」と国会に向けてシュプレヒコール。
 「許すな!憲法改悪市民連絡会」の高田健氏は主催者挨拶で「九条の会」が全国につくられている。この力で法案を阻止しようと呼びかけ、日本共産党の笠井亮衆院議員と社民党の福島瑞穂党首が国会報告。笠井議員 は、情勢は緊迫しているが改憲を望まない国民の声は強い、改憲派にすべて都合のいい内容となっている手続き法案のひどい内容を国民に知らせていこうと訴えました。コント劇団のザ・ニュースペーパーが安倍首相にふんして、支持を失っていく政策と姿勢をユーモラスに演じ会場を爆笑で包みました。

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百鬼夜行? 人間として絶対に…
看過も許容もできないこと

   「戦争&石油屋」

 聞くところによれば、アメリカの巨大な企業グループ「カーライル」には米軍から戦争を請け負う民間軍事会社があり、イラク侵攻では巨額の利益を得ているそうだ。このカーライルの大株主にはブッシュ大統領一族だけでなく、サウジの石油で巨万の富を得ているビンラディン一族もいるとのこと(道理でつかまらないわけだ)。前国務長官のパウエル氏もかつてカーライルの顧問だった。イラク侵攻がはじまってから、アメリカ第7位の大手に急成長したハリバートン社も、石油関連企業の他にKBRという戦争請負企業を有して莫大な利益と利権を手に入れたが、この会社はチェイ二ー副大統領と密着しているという。チェイニー副大統領はまた、アメリカの軍事最大手企業と深く関わっていることでも有名だが、最近、サウジアラビアで開催された国際武器見本市でも同社の展示が最も目立ち、何とイランを含む中東各国からの買い付けにも応じていたというか ら驚く。まるで究極の「死の商人」ではないか。
 ライス国務長官はシェブロン(石油関連企業)と密接で、これまたイラクの利権に深くかかわっていると聞く。ラムズフェルド前国防長官はロッキード・マーチン社のシンクタンクとして知られている。何のことはない。要するにプッシュ政権は丸ごと「戦争&石油屋」さんだったのだ。
 ちなみに「戦争請負企業」とは、文字通り政府から戦争を請け負い、貧しい国からアメリカに働きにきた若者や、極貧層の若者を訓練して、米軍兵が行きたがらない最前線に派遣するもので、その際、戦場で犠牲になっても、葬ることもせず、アメリカ側の戦死者数にも入れないので、誰がどこで死んだのかさえわからないのだという。
 大義なきイラク侵攻は、罪もない子どもたち、市民を何十万人も殺りくし、街を破壊しつくした上に泥沼化させた。そして国際的にはもちろん、アメリカ国内でもイラク侵攻への批判が高まり、プッシュ政権内部でも若干の手直しを余儀なくされている。その一方で、巨万の富を得るものと、貧しいが故にゴミのように棄てられていく命があるのだ。そして、当のアメリカですら戦争の大義が問題にされているのに、これをいち早く支持し手助けした小泉政権や、それに習う安倍政権では、未だにイラク侵攻の大義を問い直すこともなく、久間防衛大臣がわずかに疑問をもらすと「問題発言」視し、わけもなく突然来日した副大統領に総理以下が「忠誠心」を誓うというだらしなさ。こんな「戦争&石油屋」たちの意向にそって、世界に誇る憲法9条をゴミのように捨て去るようなことは絶対に許したらアカンのと違いますか?どう思います?    (佐古田)

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