「九条の会・わかやま」 29号を発行(2007年4月10日)

 29号が4月10日発行されました。1面は、改憲国民投票法案の危険な中身を解き明かし違憲立法と断じる坂本修弁護士(自由法曹団団長)の発言<連載3回のB完結>、国民投票法案の問題点を考えるメディア関係者集会、そして「九条噺」。2面は、「9条まもれ、曼荼羅に学べ」と説く鶴見和子さん遺著『遺言』の紹介、「東京大空襲を語り継ぐ集い」での井上ひさしさん講演の紹介です。
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[本文から]

《国民投票法案》圧倒的多数でたたかおう
稀代の不公平法案を国民に知らせようB
 弁護士・坂本修

    坂本修弁護士が語る国民投票法案(改憲手続き法案)の危険な中身は今回で完結です。しかし、情勢はなお緊迫しています。今後も関連情報は随時掲載します。

公務員が改憲運動をすると2年以下の禁固刑
教育者は1年以下の禁固刑

 そんな中でも草の根から運動を起こそうと思って個別訪問で一生懸命に頑張ろうと国民投票運動、改憲に反対だと言って歩けば、国家公務員と地方公務員、教育者、私学の先生も含め、合計で450万とも500万とも言われているこの人たちは、それだけで地位を利用で、国家公務員と地方公務員は二年以下の禁固、または30万円以下の罰金です。教育者は2年以下の禁固または30万円以下の罰金です。(相談しただけで共謀罪?)

 憲法96条生殺し法案だ いますぐ、反対の声を

 私は一つひとつが重大な問題だと思います。今までいろいろ活動された皆さんはご存じだと思いますが、この国の憲法を守り抜くために、私たちが本当に主権者として行動しようとするときに、国家が作った法律が全部私たちに襲いかかってくるということです。私はどんな法律になっても、どんな体制になっても、最後の一票は私たちが持っているのですから、国民の中に改憲を絶対に許さないという圧倒的な多数派を作ってたたかいたいと思います。これほど危険なものが国会にかかっているときに、声も上げないのは間違っていると思います。この法案の内容があまりにもひどい、実に粗雑で、まともに国民の前に晒して議論したら、とてもじゃないけれど、通せるものではないということに私は確信を持ちました。今の国会のむちゃくちゃな議席比と、非民主的な運営を見ると、議会の中の論戦で食い止めること、国民が声を上げるしかありません。国会議員全員がもし改憲の発議をしたところで、決めるか決めないかは私たちです。それならば、情報とか発言の機会とか運動とか、運動は自由でなければならないし、情報を得る手段は平等でなければならないし、発言が平等でなければならない。国民の半数がギリギリ競り合って、半数を巡って、9条改憲賛成か反対かを競り合っているときに、なぜ私たちの税金で95%の改憲宣伝、デマ宣伝を浴びせかけられなければならないのか。私は改憲勢力が今、考えている法律は、生きながらこの憲法96条を殺したいために、96条をまず切り離して、それ自身をも破壊するという違憲立法だと思っています。  [この項は完結]

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憲法がカネで変えられる

 国民投票法案 メディア関係者ら集会

 国民投票法案の問題点を考える集会「国民投票法案の『カラクリ』 力ネで変えられていいの?」が3月10日、日本マスコミ文化情報労組会議、日本ジャーナリスト会議の共催で東京で開かれ240人が参加しました。
 報告者は「中立的な手続きを定める法案ではない。改憲案を通すためのからくりが潜んでいる」と指摘。国民の投票行動に影響を与えかねない広告のあり方についても、議論をしました。渡辺治・一橋大学教授は、与党と民主党の合計議席が衆院で97%、参院で96%を占めると指摘。「この圧倒的多数による改憲発議が投票で否決されると、国会が国民多数の意思を代表していないことになる。彼らにとって失敗は許されない。だから法案には市民運動の規制など、改憲案を絶対に通すエ夫を凝らしている」と話しました。法案は、投票日直前を除き、メディアに改憲の意見広告を載せることを規制していません。桂敬一・立正大学元教授は「2001年参院選での公明党のCM量が社民党の21・6倍、自民党は12・4倍に達する」「全国紙が政府広報を何度も掲載している」などを挙げ「広告料の大盤ぶるまいを受けるメディアに、公正な役割は期待できない」と危ぐします。会場からも「一定の広告規制」を求める意見も出ましたが、放送業界誌『放送レポー卜』の岩崎貞明編集長は「法律で放送内容を規制していいのか」と問題提起し「放送界が自主的に公平なルールをつくるよう求める運動が必要だ」と言い、最後に渡辺教授が「このような非常に重要な論点をおきざりにしたまま、与党と民主党は法案成立を目指している」と批判、廃案を求めました。

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【九条噺】
「ナントカのひとつ覚え」という語彙の貧弱さを揶揄する言葉がある。▼「適正に処理していると思います」「適正に報告していると…」「別に問題ないと…」「仕事で信頼を得ていただければいいのでは」と、失言や嘘音を繰り返す閣僚をかばう安倍総理の言葉は、まさにその類?▼この空疎な言葉でかばいきろうというのだから、あまりにも国民を虚仮(こけ)にしていないか。他人を平気で虚仮にするのは安倍総理のヒンカクかも▼「従軍慰安婦」発言は、いま、国際的な批判を浴びているが、「日本の前途と歴史教育を考える若手議員の会」という右翼集団が1997年に出版した「歴史教科書への疑問」という本に、彼は「…韓国にはキーセンハウスというのがあって、そういうこと(売春)を沢山の人たちが、日常的にどんどんしているわけですね。ですから、それは(韓国では)とんでもない行為ではなく、かなり生活の中に溶け込んでいるのではないか、とすら私は思っている」と書いて、他国民を丸ごと虚仮にしている▼彼は「河野内閣官房長官談話を継承する」といいながら、「狭義だの、広義だの」と理屈をつけ、「実際は強制性は無かった」と印象づけようと試みたが、世界中の人を虚仮にはできない▼一方、「長官談話」の当事者河野衆院議長は「従軍慰安婦自体がなかったと、いわんばかりの議論をするのは変だ。全部ウソだと議論して騒ぐのは知的に誠実でない」「(長官談話は)政治的判断だという人がいるが、そう思っていない。人間としてきちんとしてあげなければと思った」と話している。▼自民党などの長官談話を見直すべきだという声には「そういう気持ちはまったくない。(慰安婦問題を)恥ずかしいことだ受け止めて、今後はしないと誓うことの方がよほど勇気のある正しい行動ではないか」と反論している▼二人の政治家の「ヒンカクのカクサ」を見た。  (編)

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憲法9条と「曼荼羅(まんだら)」の知恵
  鶴見和子の「遺言」
  佐古田武士 「九条の会・わかやま」事務局

 斃(たお)れてのち元(はじ)まる宇宙輝(かがよ)いて
 そこに浮遊す塵泥(ちりひじ)我は

 昨年7月に亡くなられた社会学者鶴見和子さんの短歌である。鶴見さんは15才の頃から佐々木信綱門下で短歌を習い21才で歌集「心の花叢書」を自費出版された。その後アメリカの大学に留学して社会学を学んだのを機に歌の世界を離れ、専ら学問に専念、やがて鶴見さんは「内発的発展論」に代表される優れた理論を展開し、社会学者として世界的にも注目を浴びるようになった。また、南方熊楠の研究家として欠かせない存在でもあった(95年南方熊楠賞)。
 しかし、各地を駆け巡る長年の多忙な研究生活も災いして、95年に脳出血で倒れ、左片麻痺という障害にみまわれた。77歳であった。主治医からは回復の可能性がないことを宣告されたという。冒頭の歌は、その時に詠まれたものだが、鶴見さんは「回復の可能性がないということは、もう戻れないということ。戻れないということは、つまり、前だけを見て歩けということだと。だから、一日一日を大切に、ひたすら前を向いて生きていこうと思った。悲観など何もなかった」と書かれている。しかも、驚くことに、50年余りも遠ざかっていた短歌が、脳出血で倒れた時からなぜか泉のように湧き出してきたのだという。以来、病院や老人ホームで不自由な生活を余儀なくされながら数多くの素晴らしい歌を詠まれ、旺盛に講演や文筆活動を続けてこられた。「遺言」(藤原書店)は死後半年後の今年1月に出版された。そのなかで鶴見さんは「最後にこの世に遺すことは二つだけ」だと言い「9条」と「曼荼羅の知恵」をあげている。

 九条はありても堰(せき)とならざるを   なくては奈落へ雪崩れゆくらん

 鶴見さんは言う。憲法9条はアメリカの押し付けだという人たちもいるが、9条の祖形は、第一次世界大戦後に交わされた戦争放棄の約束「パリ不戦条約」にあり、9条はアメリカだけの思想ではなく、人類の理想なのだと。そして、日本も第2次世界大戦で、特に中国、アジアに攻め入ってひどいことをした反省の上にたってそれを受け入れたのだ。ところが今、9条があるのに海外派兵をするようなことをしている。だから、9条はあっても歯止めにはならないけれども、もしなければ、どんどんどんどん外国から請われるままに、どこへでも日本から出兵して戦争に参加する。私はその時はもうこの世にいないけれども「死んだ後は野となれ山となれ」なんて、無責任なことはとてもいえない、だから「遺言」の第1は「9条を守ってください」なのだと鶴見さんは訴える。
 「曼荼羅の思想」は、古代インドで生まれ、空海(弘法大師)らが仏教と共に日本に伝えた。「曼荼羅」は、要するところ、ひとつの空間に複数のものが存在(=共生)することをいい、それは、例えば、生物の種類が多いほど地球は安泰であり、文明は安泰であるという考え方に通じる。複数の思想、価値観 考え方、生き方など、異なるものが異なるままに共に生きる道を探求する、それが「曼荼羅の思想」だと鶴見さんは説明し、それは南方熊楠のエコロジーにも相通ずると言う。実はこの思想こそ、鶴見さんの「内発的発展論」の根底を貫く思想にほかならない。
 鶴見さんは「遺言」のなかで主張する。「曼荼羅の思想は、相手が気に入らないから殺しちゃう、排除しちゃうというんじゃないんです。いくら相手が気に入らない、私と違う意見をもっている、違う思想をもっている、それでも話し合い、つきあうことによって補い合うことかできる、助け合うことができる、そういうゆったりした思想なんです。ところがいま、世界中を支配しているのは、自分が持っている文明がもっともいいのだ、これと違うものは排除する、殺しちゃう、破壊しちゃうという思想です。そうすればその文明自身も弱くなる。そういう教訓なんです」と。こうして「私は、わが去りしのちの世に残す言葉として、9条を守ってください、曼荼羅のもっている知恵をよく考えてください。」と結んでいる。
 筆者は、この本に、知恵と元気をいっぱいいただいた。みなさんにもぜひお薦めしたいと思う。(佐)

 我がさりし のちの世に遺す言葉とて
   九条まもれ 曼荼羅に学べ

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東京大空襲を語り継ぐ集い
  井上ひさしさんが講演

東京大空襲は計算された大量虐殺
  東京爆撃計画者に 日本政府が勲章授与

 東京の下町を中心に米軍が民間人を無差別爆撃した大空襲から62年の3月10日「東京大空襲を語り継ぐつどい」が実行委員会の主催で東京都江東区で開かれ、作家 で日本ペンクラブ会長の井上ひさしさんが講演し、550人余が参加しました。
 井上さんは講演のなかで、約10万人が死亡した東京大空襲は「一から十まで人を殺すことを計算し尽くした大量虐殺だった」とのぺました。そして、その爆撃を計画した米軍人に対し、戦後日本政府が勲章を贈った事実を明かし、「このおかしさを絶対に忘れてはいけない」と強調しました。また、非核兵器をうたった条約を結ぶ国々が増え、現在非核兵器地帯が世界の6割に広がっていることを紹介。 「信頼に基づいた条約を結び合い、核兵器をしっかり追い出している事実は私の未来への希望」だと語りました。
 また、「東京大空襲・戦災資料センター」館長で作家の早乙女勝元さんがあいさつ。募金により建てられた同センターが開館5周年を迎え、増築、リニューアルされたことを紹介。戦災資料センターを見学した小中高の生徒たちが感想文や紙芝居を発表し、東京大空襲を体験した女性は、「この子どもたちに二度と戦争を体験させてはいけない。優しい平和な時代になってほしいと願い、私は語り継いでいる」と話していました。

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(2007年4月10日入力)
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