「九条の会・わかやま」 30号を発行(2007年4月15日)

 30号が4月15日発行されました。1面は、改憲国民投票法案の強行採決批判で、多様な根拠を挙げて「拙速、廃案に」の批判が続出した中央公聴会、議員要請行動の報道、そして「九条噺」。2面は、中央公聴会での意見の続き(中立的な手続法でなく改憲に直結、公務員・教員の運動規制、最低投票率定めず、等)、さまざまな運動規制、新刊紹介です。
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[本文から]

国民投票法案 強行採決の暴走止めよう

124人中、108人反対 中央公聴会の公述人一般募集者

 9条改憲をしやすくする国民投票法案の中央公聴会に向けた公述人の一般公募で、応募した124人中108人が与党案、民主案の両案に反対していることが、3日の衆院憲法調査特別委員会の理事懇談会で明らかにされました。
 応募状況の立場別内訳は、「両案反対」108人、「民主党案賛成」2人、「両案賛成」2人、「与党案修正後賛成」1人、「その他」11人となっています。理事懇談会では中央公聴会で8人から意見を聴くことを決めましたが、「できるだけ異なる意見を聴く」(自民党理事)との立場から「両案反対」の立場の公述人の採用はわずか3人となりました。日本共産党の 笠井亮議員は、「ここまで反対意見が多いとは、予想外の応募状況だったのではないか」と指摘。応募した人たちの意見をくみつくすためにも「今回限りにせずさらに採決を前提としない 公聴会を開くペきだ」と主張しています。

緊迫の事態伝え 終日議員要請や行動提起

 週明けの12日にも国民投票法案の強行採決を狙う自民、公明の暴走を許さないと多くの団体でつくる「2007年5・3憲法集会」実行委員会は5日、衆院議員面会所に150人がつめかけ、この日開かれた公聴会の傍聴や議員への要請を行いました。「この事態を広く知らせていこう」と宗教者や市民が次々と決意を表明。憲法改悪阻止各界連絡会議の玉田恵さん(新日本婦人の会事務局長)は 「平和と憲法を大切と思う国民の感情と国会の動きがあまりにもかけ離れているということを全国の新婦人の会員にも知らせ、反対行動をおこしていきたい」 と力を込めました。日本共産党の笠井亮、社民党の辻元清美の両衆院議員が公聴会の様子を報告。笠井議員は「これだけ意見が出ても与党は法案ごり押しの姿勢を変えない」と厳しく批判しました。許すな!憲法改悪・市民連絡会の土井登美江さんが行動提起をし、12日の「STOP!改憲手続き法案大集会」(午後6時半、東京・日比谷野外音楽堂)や5月3日の1万人銀座パレードの成功を呼ぴかけました。
 キリスト者平和ネットの女性(81)は「これまでも公述人や参考人がどんなに反対していても、与党は何ら耳をかさず、数でごり押ししてきました。憲法を守るぺき立場の首相が早期成立を指示し、立法府に介入するのもおかしい。こんな政治を許してはならない」とのペ、終日、議員要請に参加しました。

「拙速審議だ 廃案に」 中央公聴会で批判相次ぐ

 5日の中央公聴会は、7人の公述人のうち5人が法案に反対や慎重審議を要求。法案内容への批判とともに、「採決日程」が繰り返し報道される中、公聴会の開き方への批判も相次ぎました。
 弁護士で自由人権協会代表理事の庭山正一郎氏は「改憲の中で憲法の基本原則がなし崩しになる危ぐを感じる」と表明。改憲案が憲法の基本原理を踏み越えていないか審査する制度や最低投票率の導入を主張しました。高知から参加した女性の地方公務員は「住民のために憲法を実現するのが公務員の仕事。住民の利益にならないことには反対、…憲法に深くかかわってい る公務員の意見こそ尊重されるべき」と述べ 「9条改憲や国家が国民を縛る内容の自民党新憲法草案と一体の手続き法案はいったん廃案にして出直すべき」と求めました。千葉県在住の主婦(公述人)は「公聴会の方法が限定され公募周知期間が短いことや、回数も限られていることなど「公聴会を拙速なやり方で行うことに異議を唱えたい」と主張。公務員の運動規制について「憲法を熟知し法律知識をもつ公務員の意見を聞けなくするのは本当にもったいない」と述べました。
 弁護士の森川文人氏は「そもそも国民は改憲を必要としていない」と指摘。街頭での緊急アンケー卜の結果を示し、拙速審議を強く戒めました。また、有料CMが資金力のある改憲派に独占される危険を指摘する声も多く、全面禁止を求める公述人もいました。
 ただ一人、与党修正案に賛成を表明した日本大学教授の百地章氏は、教職員の護憲運動に敵意を示し、公務員・教員の「地位利用の禁止」の「必要性」を強調しました。(二面に詳細)

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【九条噺】

 いわゆる「従軍慰安婦」問題が再燃している。アメリカ下院外交委員会の決議案に対して、安 倍首相が「強制連行を裏付ける証拠はない」「アメリカの決議に従うつもりはない」と述べたことに端を発する▼輪をかけて、下村官房副長官が記者会見で「旧日本軍の関与」を明確に否 定した▼シンガポール紙は「日本は言行不一致で歴史の真相を尊重せず、歴史に対し『不誠実・無責任』で、人権を尊重しない国家である」と述べているという。「国家」というと我々も含まれているような気がするので、「現政権」とか言ってほしいところだが、「安倍政権」はまさにその通りである▼問題の核心は「強制連行」ではない。1993年の河野官房長官談話で述べているように「慰安所における生活は、強制的な状況の下での痛ましいものであった」ことである▼安倍首相をはじめとする勢力は「歴史の真実を回避することなく、これを歴史の教訓として直視し、永く記憶にとどめ、同じ過ちを決して繰り返さないという固い決意を表明する」という河野談話を覆そうとしていると言われても仕方がない▼この問題は歴史認識の根本といっても差し支えない。「従軍慰安婦問題」は過去の問題ではない。今の問題なのである▼歴史に学ばず、まともな反省をせず、人権を尊重しない彼等が、憲法9条をかえて「海外で戦争をする国」づくりをしようとしている。空恐ろしいことである。日本人の誇りをドブに捨て去ろうとする彼等は、日本とアジアと世界の一層大きな批判に曝されざるを得ないだろう。(南)

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狙いは「改憲反対」の取締まり
 改憲に反対する公務員・教職員の封じ込め狙う

 「いまなぜ改憲の必要があるのか」「公務員規制はおかしい」。
 5日に開かれた国民投票法案(改憲手続き法案)の中央公聴会では、一般公募による公述人7人が意見を述べ、法案のねらいや問題点がいっそう浮き彫りになりました。

 改憲案を通すため

 「すでに自民党の新憲法草案が出され、安倍首相が改憲を声高に唱えている現在、改憲本体と国民投票法をいまさら別個に論じられないことは明らか」。第二東京弁護士会の元副会長、森川文人弁護士はこう述べました。その上で「改憲案を迅速に通すために…民主的要件を満た さない本法案を拙速に成立させたいという意図があからさまだ」と批判しました。自由人権協会代表理事の庭山正一郎弁護士は、「(国民投票法案が)『改憲の一環』という人も多く、中立的な手続きだという『安心感』は急速に薄れている」とのぺました。地方公務員の立場から発言した高知県本山町職員・松繁美和さんは「憲法尊重擁護義務の宣誓をした公務員が憲法の在り方にかかわることができないなどということは憲法の理念に反する」と法案に盛り込まれた公務員規制を批判。「地位利用」というあいまいな規定で教員・公務員の意見表明を規制することによる萎縮効果にもふれ、法案の廃案を求めました。国民投票法は「当然必要」という大宮法科大学院大学の南部義典氏も、公務員法における公務員の政治的行為の制限規定を、国民投票では「適用除外」とすることを求めました。 また、投票日2週間前まで自由とされている有料CMについて「資金力の違いが宣伝力の格差になる」(松繁さん)などの批判が相次ぎました。

採決日程優先で拙速

 最低投票率の定めもなく、少数でも改憲案が通されかねない問題についても4人から批判がありました。また、庭山氏は、憲法の基本原理を崩すような改憲案が発議される恐れに言及。「憲法改正の限界を超えた発議がなされた場合の処置を法案に組みこむことが必要だ」と主張し、徹底審議を求めました。
 「4月中旬衆院通過」(与党理事)という、採決日程優先で設置された公聴会や拙速な審議のあり方についても意見が相次ぎました。主婦で公述人の田辺初枝さんが、公聴会の公募について 「インターネットで知らせているだけでは、自分で見つけ出すことはまず不可能」と指摘。わずか3日前に公述人に決まったと通知を受けたこともあげ、「国の最高法規について是非を問う法案の公聴会を拙速なやり方で行うことに一国民として異議を唱えたい」と述べ、公 聴会を全国各地で開催するよう求めました。森川氏は、合計92%の人が法案は「審議が尽くされていない」「分からない」と答えているという緊急アンケー卜の結果を紹介。「国民は改憲を必要としていない」と主調しました。また、田辺さんも「国民として、日常の生活のなかで憲法を変える必要があるとは思えない。改憲の動きがどういう形で出てきたのか」と率直な疑問を述べました。
 松繁さんは「『60年たったから改憲』ではなく、どこまで憲法の理想に近づいたかそれを議論して、理想に近づいてもらいたい」と発言。委員会室に拍手が起こりました。

公務員・教育者 奪われる表現の自由
 労働組合の機関紙・ビラも規制対象

 「憲法改正案」の賛否を問う国民投票が間近に迫っている今――。
 次の行為は合法でしょうか。それとも違法?
 @公務員が休日に「憲法改悪反対」のビラを自宅周辺に配付する
 A中学の社会科教師が授業で「憲法9条は大切」と生徒たちに教える

 いま与党が国会提出している改憲手続き法案が通れば、@Aいずれも違法行為として、取り締まられる可能性があります。法案は、数百万人の公務員、教員が「憲法改正」について自由に発言したり、投票運動に加わることをがんじがらめに規制しているからです。その狙いは「改憲」に反対する公務員、教員の口をふさいでしまうことです。
 一度は「国公法等の公務員の政治的行為の制限は適用除外とする」と、公務員などの国民投票運動の規制を緩和する案に与党は合意していました。ところが、3月27日に国会提出した「修正案」では、一転して規制を強化。罰則規定こそ設けられていませんが、国公法に基づく罰則、さらには刑法の「公務員職権濫用罪」の適用も視野に徹底して取り締まる考えです。禁止されているのは「地位利用による運動」と説明されていますが、どんな行為が地位利用なの かを判断するのは警察や検察。改憲を進める政府の側です。
 公務員と教員を狙い撃ちする理由について自民党の古屋圭司衆院議員は「自治労や日教組が組織的な反対運動を堂々と行なうことが予想される中、とても公正な国民投票が実施できる環境にならない」と指摘。自民党憲法審議会の船田元会長は「ビラや機関紙などの政治活動が自由にできることにしていいのかということ」と国会答弁しています。
 このままでは、公務員労組が「改憲反対」の運動をすることが不可能になってしまいます。

 民間労組・市民団体は「買収罪」で摘発?

 運動が規制されるのは公務員、教員だけではありません。与党「修正案」が盛り込む「組織的多人数買収罪」が、民間労組や市民団体にまで向けられる危険があります。
 組織的多人数買収罪とは、複数の有権者に対して金銭や物品の提供、接待などを組織的に行うことを禁止するもの。しかし、日弁連が指摘するように「そもそも憲法改正国民投票に買収や利益誘導がなされうるのか」が疑問です。さらにその罪の要件もあいまいです。労組や市民団体が、「改憲反対」の内容の映画DVDや漫画パンフなどを配付することが「物品の提供」と判断されて、摘発される恐れも否定できません。(連合通信・他)

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《新刊紹介》

 かもがわ出版 ¥1,470
『我 自衛隊を愛す 故に憲法九条を守る 防衛省元幹部三人の志
  ■ 箕輪 登 ■ 竹岡 勝美 ■ 小池 清彦
 3人はいずれも自衛隊の指導的立場にあられた方で、自らのかつての職務を通して「9条改憲」の狙いが、自衛隊の海外派兵を恒常化させることだと見抜き、「海外で戦争する国づくり」を断じて許さない「九条を守る」という立場にたつ。運動の幅を大胆に広げるうえで非常に大きな勇気をあたえてくれる本です。(編集部)

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