「九条の会・わかやま」 33号を発行(2007年5月10日付)

 33号が5月5日発行されました(10日付)。1面は、4月27日の青法協和歌山支部「憲法施行60周年 憲法を考える夕べ」での糸数慶子さん講演、朝日新聞(5月2日)の憲法世論調査発表、6月2日品川正治氏憲法問題講演会の案内、そして「九条噺」、2面は「集団的自衛権の解禁に突き進む安倍首相」として「有識者会議」の検討課題や問題点を示しています。
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[本文から]

  憲法施行60周年記念行事「憲法を考える夕べ」
糸数慶子氏、基地の島沖縄の平和への願いを語る

     4月27日、「青年法律家協会和歌山支部」の主催、「憲法9条を守る和歌山弁護士の会」「9条ネットわかやま」「九条の会・わかやま」の後援で「憲法を考える夕べ」が開催され、前参議院議員・糸数慶子氏が「平和を目指して9条の実践―基地の島沖縄から」と題して講演されました。以下その大要を紹介します。

 軍隊は住民を守らなかった
自分の生い立ちとともに、沖縄戦、集団自決、朝鮮人労役や、朝鮮人慰安婦を沖縄の133箇所の慰安所で働かせた加害など、軍隊は住民を守らなかった。

 基地ゆえの悲劇がつづく
1972年の沖縄の日本復帰は平和憲法の下に帰ることであったはずだったが、基地抜きにはならず、上空から落下したトラクターに女子高校生が押しつぶされた事件、米軍人による女児レイプ事件、大学へのヘリコプター墜落など基地ゆえの悲劇と危険が続き、米軍再編で基地機能のますますの強化が続いている。

 永井博士は言う
長崎・永井隆博士は『この子を残して』の中で「生残った人は惨たらしい戦争はもうこりごりだ。これっきり戦争を永久にやめることにしよう。そう叫んでおきながら、何年か経つうちに心が変わり、何となく戦争がしたくなってくるのである。私たち日本国民は憲法で戦争をしないことに決めた。憲法9条はどんなことがあっても戦争をしないというのである。我が子よ、憲法で決めるだけならどんなことでも決められる。これは良い憲法だから実行せねばならない。これを破ろうとする力を防がねばならない。これこそ戦争の惨禍に目覚めた日本人の声なんだよ。日本人の中から戦争放棄の条項を削れと叫ぶ声が出ないとも限らない。その叫びがいかにも、もっともらしい理屈をつけて、世論を日本再武装に引き付けるかもしれない。その時こそ、誠一よ、茅乃よ、例え最後の2人になっても、どんなののしりや暴力をうけても、きっぱりと戦争絶対反対と叫び続けておくれ」と書かれているが、これはまさに今のことを言っておられると思う。

 参院選挙の勝利で
最後に糸数氏は、「戦争を起すのは人間、戦争を起させないのも人間」。戦争反対の声を守り、7月の参院選挙の勝利で「戦争をしない国」を守り続けようと訴えました。

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  朝日新聞 憲法60年世論調査

9条「平和に貢献」は78%
「自衛軍支持」は18%、「自衛隊のままでよい」が70%
「憲法改正が必要」という人も8割が「新しい権利を盛り込む」というもの

朝日新聞社は5月2日、全国世論調査結果を発表しました。その内容を紹介します。
●日本がこの60年間平和でありつつけたことに、 憲法9条は役立ってきたと思いますか
  はい:78%  いいえ:15%
●「自衛隊」を「自衛軍」に変えるぺきだと思いますか
  はい:18%  いいえ:70%
●憲法9条を変える方がよいと思いますか
  はい:33%  いいえ:49%
●憲法を改正する必要があるという人の理由
  自分たちの手であたらしい憲法を作りたい: 7%
  第9条に問題があるから        : 6%
  新しい権利や制度を盛り込むべきだから :84%
●憲法を改正する必要はないという人の理由
  改正するほどの問題点はない      :33%
  9条が変えられる恐れがある      :39%
  自由と権利の保障に役立っている    :25%

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【九条噺】
 4月24日、「新憲法制定推進の集い」で安倍首相は、あろうことか「現行憲法は占領下のGHQの素人が起草した」などと発言し、改憲への決意を語ったと聞く▼現憲法がまるで「素人原作の粗悪品」とでも言いたかったのかもしれないが、逆にその知性・見識のなさ、軽薄さにあきれる思いだ▼慰安婦問題でのドタバタ発言でアメリカのメディアからも「二枚舌」と批判された安倍首相。この憲法問題でも、翌日の「日本国憲法施行60周年式典」では一転して、「憲法施行以来、わが国は戦後の荒廃から豊かな社会を築き上げてきた」「憲法の基本原則の普遍的価値をあらためて深く心に刻み、さらに前進する決意を新たにする。」と挨拶。一部マスコミから「また二枚舌」と指摘された。前日の集いはいわば「身内」で本音が言える場。対して、この日は総理大臣として的確な挨拶が求められる式典だから、官僚の「作文」に頼り「二枚舌」と相成った次第か▼安倍首相には、長崎市の伊藤市長銃撃事件の時も驚かされた。会見で感想を求められ、「やはり真相が早く究明されるよう望みます」と、まるで感情のこもらない一言だけ。案の定、翌日の朝日新聞の投稿川柳で「普通の人は一に悲しみ二に真相」と痛烈な一撃。そのためでもなかろうが、首相はこの日、「断じて許されぬ云々」と初めて「心」を加えた。こんな「鈍感力」だけは願い下げだ。  (佐)

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集団的自衛権の解禁に突き進む安倍首相

 集団的自衛権を研究する有識者会議「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」が安倍首相の指示で発足します。「集団的自衛権の行使」について、具体的な事例を再検討するそうです。
 集団的自衛権については『平成一八年度防衛白書』ですら「これ(集団的自衛権)を行使して、わが国が直接攻撃されていないにもかかわらず他国に加えられた武力攻撃を実力で阻止することは、憲法第9条の下で許容される実力の行使の範囲を超えるものであり、許されないと考えている」と述べています。
 歴代の内閣が踏襲してきた憲法解釈をゆるめて、集団的自衛権の行使に道を開き、解釈改憲を大きく進め、9条の明文改悪に突き進もうとしています。どのようなことを研究しようとしているのか、四月二五日付の朝日新聞から紹介します。

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有識者会議が近く発足 対米ミサイル撃墜など4類型を研究

①米国に向けて発射された弾道ミサイルを自衛隊のMDシステムで迎撃する
 想定するのは北朝鮮の弾道ミサイルだ。北朝鮮が昨年7月に発射した長距離弾道ミサイル「テポドン2」 の射程は太平洋軍司令部など米軍の重要軍事拠点が集中するハワイに迫る。安倍首相は「ミサイル防衛(MD)で米国に向うかもしれないミサイルを撃ち落すことが集団的自衛権にあたってできないのかも研究しなければならない」(06年11月、米紙インタビュー)と語る。

②公海上で米軍などの艦船への攻撃に対して自衛隊が応戦する
 日本周辺の公海上で米軍などの艦船が攻撃された場合、自衛隊が応戦できるかどうかを検討する。首相は「わが国に対する事態が起こった後であれば、公海において米艦が攻撃された場合は個別自衛権の延長線上でいく。しかし、わが国に対する事態が起こっていない中だったらどうか」(06年10月、参院予算委)と述べ、個別的自衛権と集団的自衛権の区別が難しい事例を研究する考えを示している。

③国際復興支援活動で共に行動する他国軍への攻撃に自衛隊が応戦する
イラクの復興支支援活動をイメージするとわかりやすい。サマワに派遣された陸上自衛隊は非戦闘地域で水の供給や道路を整備した。首相は「サマワで活動している自衛隊に対する攻撃ではなく、一緒に活動している英豪軍に対する攻撃があった時に駆けつけることは警察行動ではないかという問題もある」(同)と問題提起している。

④武器輸送などの後方支援を行う
有事の際に展開する米軍に対して、どこまで自衛隊が後方支援ができるか検討する。航空自衛隊が前線に武器や弾薬を輸送するような後方支援は、米軍との「武力行使との一体化」となるため禁じられている。首相は就任前のテレビ番組でナイチンゲールの例を挙げ、 「医療行為で後方支援するのは駄目だという解釈があった。医療行為は武力行使と一体化しないから外れている」(06年9月)と語り、個々のケースで検討する必要性を強調した。

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朝日新聞4月27日付社説より抜粋
集団的自衛権 結論ありきの懇談会だ

 これでは、初めに結論ありきの出来レースだとしか思えない。
 一三人のメンバーを見渡せば、集団的自衛権の行使容認に前向きな意見の持ち主ばかりがずらりと並ぶ。
 この秋に出すという報告書には「行使を容認する」の文字が躍る、そんな場面が目に浮かぶようだ。 「戦後レジームからの脱却」を掲げる首相にとって、集団的自衛権の行使を禁じてきた政府の憲法解釈は、憲法や改正前の教育基本法とならぶ「脱却すべきタブー」のひとつなのだろう。
 メンバーのひとり岡崎氏は「解釈は裁判所が決めたわけでもないし、憲法に書いてあるわけでもない。単に役人が言っただけだから、首相が『権利があるから行使できる』と国会で答弁すればいいんです」
 しかし、わが国は集団的自衛権を持ってはいるが、その行使は憲法上許されない。これが政府の一貫した見解だ。それを支持している有識者も少なくない。なのに、特定の考え方のメンバーだけを集め、わずか数カ月の議論で解釈変更をめざす。そんな強引な一方的なやり方がまかり通っていいはずがない。

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懇談会設置歓迎の姿勢
アーミテージ元米国務副長官は「非常に勇気づけられている。日本は安全保障上の利益になることは参加すべきだ。同盟協力の制約を取り除かねばならない」と歓迎

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自民党内からも異論
 自民党の山崎拓安全保障調査会長は、集団的自衛権の行使を研究する首相の私的諮問機関が設置されたことについて「(行使の)問題は憲法改正をもって正面から堂々と議論しなければならない。解釈改憲を積み重ねれば憲法の土台が揺らぐことになる」と、解釈改憲による行使容認につながりかねないと懸念を表明した。谷垣前財務相も「解釈の変更によって行うべき問題ではない」と語った。

   
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(2007年5月10日入力)
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