「九条の会・わかやま」 36号を発行(2007年5月30日付)

 36号が5月30日付で発行されました。1面は、憲法60周年記念市民集会(5月11日)での月山桂弁護士の発言@、朝日新聞「60歳の憲法と私」より元最高裁判事滝井繁男さんの意見、九条噺、2面は、長谷川千秋さん(元朝日新聞大阪本社編集局長・木津九条の会)「07年憲法世論調査報道を読むA」、書評『我、自衛隊を愛す 故に、憲法を守る』です。
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和歌山弁護士会主催「憲法施行60周年記念市民集会」
 討論「憲法どうすんねん!」
月山桂弁護士(「九条の会・わかやま」よびかけ人)の発言要旨

 本紙35号でお知らせしました5月11日の市民集会での月山桂弁護士の発言要旨をご提供いただきましたので、4回に分けて、掲載します。(見出しは編集部)

【第1問 憲法を変える必要はあるか → ない】
今の憲法を変える必要は全くない

 押しつけ憲法だから、自分の手で新たに作り直そうという考え方に対し、私は必ずしも押しつけ憲法とは思っていない。敗戦をきっかけとして生まれた憲法ではあるが、問題は中味である。
 憲法の中味は、当時、探求されていた世界人権宣言の趣旨などに沿う、世界中が最も優れたもの、正しいものとしていた考え方、それに合致するものである。押しつけられたかどうか、それを判断するのは誰か。当時、国民の殆んどは、戦争放棄は、押しつけられたものという受け止め方はしていなかった。長い年月、軍に自由を抑圧され、暗幕の下での生活を強いられてきた国民にとっては、軍からの解放、戦争の永久放棄は、軍国主義の束縛からの解放として、心から喜ばれたものであった。現在の憲法9条は、自衛隊の現実に合致していないし、現実に合わない憲法の規定は意味がないという考え方があるが、違法行為を合法とするため、法律の方を変更せよという考えは、法律家として許されない考え方。これは全く逆。徐々にでも違法状態を適法な状態、理想とする方向にもどすべきである。これが人類の理想に近づくための必要な努力である。
 それと、憲法の掲げる基本的三原則、国民主権(民主主義)、基本的人権の擁護、平和主義(国際協調)、この三原則は、現在、機能している。9条にしても、機能していればこそ、容易に海外派兵は許されなかったし、軍備拡張の抑止的機能も不充分ながらも果たしてきた。非常に貴重な ことと思う。
 それに、アメリカから押しつけられた憲法だから改憲というのであれば、今またアメリカの強い要請により、アメリカの負担を軽減するために、アメリカに代わって軍隊を海外にも派兵できるよう憲法を改正しようというのは、何とも首尾一貫しない論である。(次号へつづく)

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〔改憲論〕 変える必然性 見えない

    滝井繁男さん 元最高裁判事
     大阪弁護士会会長をへて、02年6月〜06年10月、最高裁判事。在任中に参院選定数訴訟、小泉前首相の靖国神社参拝を巡る訴訟の判決にかかわった。
 憲法の条文には性格の違う2種類の規定がある。一つは国民主権、基本的人権、平和主義といった原理原則。もう一つは国会議員の任期、選挙権の年齢などの大原則とはいえないものだ。
 そのうち基本的人権については、裁判所の判断の積み重ねの中で、プライバシーや「知る権利」のような、憲法に直接書かれていない新しい権利を含めてその輪郭を形作ってきた。改憲論の中には環境権やプライバシーを書き加えるという意見もある。しかし、こうした権利はこれまでの判例で明らかにされている。あえて憲法に加えることで権利像がどう変わるのかを改憲派は示していない。
 9条についても同様のことが言える。自衛権の問題は、時代とともに解釈を変えることで対応してきた。今、国民の大多数が平和主義の大原則を変えて集団的自衛権を認めるようにするべきだというなら、改憲もあり得るだろう。しかし、国民が今、それを求めているとは思えない。
 「改憲はいかん」というのではない。憲法の原理原則のどこを改め、その結果、内容をどう変えようとするのか。今の改憲論にはその必然性が見えてこない。  「今の憲法は米国に押しつけられたものだから変えよう」という人たちがいる。民主国家と戦争して負けたファシズム国家の憲法が変わるのは当たり前のことで、当時の国民は押しつけられたと思ったのだろうか。
 憲法は革命や敗戦後などの混乱期につくられることが多い。完全なものでなくても解釈で時代に合わせていくもので、今の憲法の原理原則に格別改めるべきものはない。ムードに流された改憲論には危うさを感じる。
 まず、憲法改正案をつくり、国民投票法案をはかるのが順序ではないか。憲法をどんな風に変えるのかによって投票や議論の仕方は変わってくる。
(朝日新聞4月29日「60歳の憲法と私」より)

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【九条噺】
 「グリーンカード兵」と呼ばれる「米兵」が増えているという。メキシコなどからアメリカに移住し、国籍の取得を願う人たちに、必要な居住年数を短縮する「優遇措置」を条件に入隊させる兵士たちのことだ▼今や支持率も2割台に落ち込んだブッシュ大統領。議会でイラク増派の予算が否決されても懲りる気配はない。だが、実際は派兵要員の確保すら困難になり、軍の幹部が学校で入隊を訴えたり、無職の貧困層の青年たちを必死で勧誘する姿が先日のテレビでも報じられた。「グリーンカード兵」も欠かせぬ存在なのだ▼そしてイラクの米軍には、今ひとつ「PMC」なる「軍隊」も加わる。ペンタゴンが戦争を委託した民間会社の「軍隊」で、南アフリカやネパール、フィジーなど貧困諸国で格安(それぞれの国では高額)で雇った民間人による「軍隊」である▼このPMCの派遣兵は正規の米兵と行動を共にするが、戦死しても発表される戦死者数にはカウントされない。また、米兵の戦死者の遺体は本国まで戻されて、丁重に葬られるが、PMC兵はイラクの砂漠に埋められるか、ヘリコプターから投げ捨てられることもあるという▼世界の貧困層を踏み台に暴走を続ける大統領。諸外国撤退の流れの中、孤塁を守り#Mいエールですか、アベさん。《イラク特措法2年延長へ》 (佐)

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07年憲法世論調査報道を読む A
長谷川千秋氏(元朝日新聞大阪本社編集局長・木津九条の会)
市民の声がメディアを変える

 マスコミの世論調査報道は、設問の仕方、出てきた数字の解釈など恣意的な分析、意図的な報道内容のあり方が従来から問題とされてきました。憲法世論調査も同様で、近年、読者・視聴者・市民の間から、それを批判する声が高まってきたことは、大変よいことです。まだ部分的ではありますが、その効果が出始めたのも今年の特徴でしょう。
 朝日新聞を例に取ります。9条問題で同紙が昨年、従来の設問の仕方を変えて複雑にし、その結果、「変更、維持の民意拮抗」としたことに強い抗議の声が起こりました。私も批判しました。今年の調査で同紙はこの設問方式を止め、単純明快な従来の仕方に戻しました。その結果は、9条を「変える方がよい」33%、「変えない方がよい」49%と出ました。毎日新聞は九条問題で昨年同様、複雑な設問を続けているばかりか、新たに恣意的な設問を増やしています。
 朝日新聞が国民投票法案の問題で3月、世論調査を行い、「国民投票『必要』68%」と打ち出したときも、市民の怒りを買いました。単に「国民投票の手続きを定める法律を作ることは必要だと思いますか」と問うた答えに過ぎなかったからです。憲法学者の水島朝穂・早大教授はただちに同氏のホームページで、「もし、日弁連や野党などが指摘しているこの法案の問題点を具体的に列挙して、『そのような問題を含む法案を、いま、あえて急いで制定することに、あなたは賛成しますか』と問えば、『賛成』と答える人はグッと減るだろう。世論調査は設問の仕方で、回答をいかようにでも操作できるという例である。だから、朝日新聞がこの時期このタイミングで『68%』という数字を出したことは、法案成立に向けて、国民多数が支持したというふうに勘違いさせるおそれなしとしない」などと痛烈に批判しました。市民のブログをのぞいていると、鋭い発言が続出していました。インターネットで抗議文を流した方もいます。
 その後、この法案が持つ問題点についての野党や市民団体などの批判が強まるなか、朝日は自公与党による法案強行突破の重大性に気付いたのか、「与党だけで押し切るな」「廃案にして出直せ」と社説を連発しますが、その過程で、4月14・15日に実施、17日付朝刊で発表した。世論調査では、問題点の一つ、最低投票率問題を設問に入れ、投票率が一定の水準を上回る必要があると思うか、と尋ねます。結果は「必要がある」79%、「その必要はない」11%。この調査は、今回憲法世論調査と同じときに行ったものでしたが、同紙はこの件だけを抜き出して先行報道し、「国民投票法案 最低投票率『必要』79%」と1面トップで扱ったのです。同19日付社説では「最低投票率を論議せよ」と主張します。同紙は最低投票率問題を世論調査で取り上げた背景を説明してはいませんが、読者・市民からの抗議、運動が、国民投票法案問題をめぐる同紙の姿勢に一定の影響を与えたことは間違いないと私は思っています。
 それにしても、遅すぎました。法案が衆院を通ってしまってからだったからです。最低投票率問題以外にも、広報協議会のあり方、有料CM問題、教員と公務員を狙い撃ちした運動規制など、いまようやく様々な問題点が全国紙の紙面に出始めましたが、これらは昨年8月22日、日弁連が発表した「憲法改正手続に関する与党案・民主党案に関する意見書」にほとんどすべて含まれています。あのころから報道機関が問題点の解明に努力していたら、事態は相当違ったものになっていたでしょう。私たちは引き続き、メディアに目を光らせ、国民の「知る権利」にこたえよ、と要求していかなければなりません。(次号へつづく)

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「自衛隊九条の会」を期待する
『我、自衛隊を愛す 故に、憲法9条を守る』を読んで

南 本   勲 九条の会・わかやま(事務局)

 自衛隊は合憲か違憲か、「九条の会」の中にも両方の意見が存在する。本書の著者3氏は防衛庁の元幹部であり、当然「合憲論」に立つ。しかし、その根底にあるのは「専守防衛」であり「憲法9条をしっかり守る」という信念である。
 小池清彦氏は「日本が海外派兵をしなくても、世界は非難しない。日本は祖国防衛のための防衛力整備に努めつつ、平和憲法を高く掲げ、平和国家として、世界平和に大きな役割を果たしていくべきである」と述べる。
 竹岡勝美氏は「自衛隊員の死を賭してでも守るべき価値とは、より多くの国民の生命でしかない」「日本の安全と名誉のために、南北朝鮮や中台の和平の確立に日本も貢献し、その成果として日米安保条約を日米友好条約に切り替え、在日米軍の縮小から撤退への道を切り開くべきだ」「今『平和憲法』『専守防衛』の金看板を廃棄するのは、わが国の安全保障と徳義のため、周辺隣国への影響からも、余りに惜しい。改憲に何のプラスがあるのか。どの国と戦うつもりか。それで世界から賞讃されるのか」と述べる。
 箕輪登氏は「イラク戦争は何の大義もない侵略戦争だ。そのアメリカに加担する日本は侵略戦争の『共犯者』だ。自衛隊法には、『自衛隊は、祖国日本の防衛のために行動せよ』と書いてあるが、『侵略戦争に加担せよ』とは書いていない。日本国憲法は、すべての侵略戦争を固く禁じている」と述べる。  3氏には、自衛隊は日本国民の生命を守る存在に徹し、「専守防衛」を厳守、海外で戦争をする国を目指す憲法9条改悪には、体を張って阻止しなければならぬという強い思いがある。
 ほとんどの自衛隊員は祖国と日本国民を守ろうとして志願したものであろう。現に本書でも「自衛隊員が最も張り切るのは災害派遣」と書かれている。海外で戦争をする国になれば、自衛隊員の離隊が続出、志願者はなくなってしまう。その対応策が「ワーキングプア作り」「教育改悪」だと思える。そして最後に来るものは徴兵制だ。
 「九条の会」は、「憲法を守るという一点で手をつなぐ」ものであり、自衛隊員であるか否かは参加の条件ではない。そうであれば、「海外で戦争をする国」に反対する自衛隊員が「自衛隊九条の会」をつくっても、何の不思議もない。「自衛隊九条の会」ができれば、全国民に大きなインパクトを与え、運動は大きな盛り上がりを見せるに違いない。
 本書は憲法9条改悪の阻止のためには、自衛隊員とも手をつながねばならないという思いを強くさせるものであった。

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(2007年6月24日入力)
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