「九条の会・わかやま」 38号を発行(2007年6月27日付)

 38号が6月27日付で発行されました。1面は、6月2日の品川正治氏憲法講演会での質疑応答、九条噺、2面は、「九条の会」が11月24日全国交流会の成功に向けアピールを発表、和歌山弁護士会主催「憲法施行60周年市民集会」での月山桂弁護士(「九条の会・わかやま」よびかけ人)の発言③、「九条の会」東京学習会での渡辺教授講演です。
    ――――――――――――――――――――――――――――――
[本文から]

戦争で儲かる人が戦争を起すのだ
私は決して経済界の中で孤立していない

品川正治氏の憲法講演会の質疑応答

     6月2日、和歌山市のプラザホープで「九条の会・わかやま」「憲法9条を守る和歌山弁護士の会」の共催による経済同友会終身幹事・品川正治氏の講演会「戦争・人間・憲法九条」が開催されました。講演の内容については前号(37号)でお知らせしましたが、講演後の質疑応答の内容を、第二弾としてお知らせします。

◆国民の出番と言われるが、若い人たちに理解を広げる方法は?

 私も「今の若い人たちにどこまで自分の問題として考えてもらえるのか」という問題意識を持っている。もう少し功利的に説得した方がいい場合もあると思う。それは「戦争で儲かる人がいる」ということを教えることだ。世界に紛争はあるが、それを戦争にしないというのが日本国憲法だ。ところが、紛争を戦争にした方が儲かる勢力がおり、それは武器商人、石油資本、軍産複合体とかだが、これらがそれぞれの国の権力をもっている。9条改悪の背景には彼等が戦争をしたがっていると説明した方が分り易い。さらに、今「戦争請負業」というものもある。イラクでは米兵よりも死傷者が多いだろう。彼等は戦争がなければ事業が成り立たない。戦争で儲かる人が戦争を起すのだ。

◆国際開発センターとは?

 アフリカ、東南アジア、中南米の貧困者救済事業をしている。政府と難民のどちらが正しいかを問わず、今一番困っている人から助けることにしている。日本の外務省とは対立する考えだろう。国際開発センターが仕事をする上では、憲法9条2項は非常に大事な役割を果たしている。

◆日本の経済界には品川さんと同じように考える人はいるのか?

 「私は決して経済界の中で孤立していない」とはっきり申し上げたい。
 大阪倶楽部、関西倶楽部、工業倶楽部などで経済人を相手に今日と同じような話をし、拍手を受ける。批判的な質疑でやり込めようというのもあったが、企図した執行部に批判が向いてしまい、質疑打ち切りになったこともある。経済同友会での反応は今日の皆さんの反応と同じだ。
 もっと客観的に考えると、日本の産業構造は6割がサービス産業で、99%が中小企業だ。企業社会というものはヒエラルキー(階層構造)が出来ており、大企業と中小企業の経営者の声は1対1ではない。しかし、国民投票では1対1だ。そこに私は期待をもっている。
 私に孤立意識は全くない。

◆何故、今日本の政治家、経済人が憲法を変えようとしているのか?

 多くの問題があるが、ひとつは中国の台頭だ。中国は政治大国だ。しかし、経済的に日本と競うとは経済人は誰も思っていなかった。中国とアジアのヘゲモニー(主導権)を争うためには、日本も対等な形で論議できる体制をつくりたいと考えており、平和憲法を武器にしてやるのではなく、平和憲法があることが日本の国の欠陥だという考えを持っている。その辺が私の考えと異なるところだ。
 中国は今、極めてていねいな外交をやっている。中国は成長したといっても、まだまだ近代化では遅れている。日本は近代化はとうの昔に終えている。その日本が「もっと近代化」と言い、中国は「現代化」と言っている。「現代の問題は何か」というアプローチをしているのだ。
 中国に対する経済人の考えは「投資を守りたい」「急変されては困るので対等に論議したい」「ASEANを、中国ではなく、日本の方に向かせたい」というものだ。もし、日本が本当にそういうやり方で中国とやり合おうとすると、「日本の後にアメリカがいるから」とASEAN諸国は全部そう見るだろう。経済界は「読みが浅い」としか言いようがない。

    ---------------------------------------------

【九条噺】
 「よく見れば御意、御意の顔揃ってる」(朝日川柳)。安倍首相の諮問機関「集団的自衛権懇談会」設置を皮肉ったもの。集団的自衛権の「研究」が目的と言うが、委員全員が行使に前向きな意見の持ち主ばかり。まさに「最初から結論ありきの出来レース」だ▼「御意」「御意」といえば、そもそも安倍内閣そのものしかり。16名の閣僚のうちナント13名もが「特殊な価値観」で結ばれた「御意」内閣とも言える▼今から十年前、「美しい日本の再建」をめざす「日本会議」と「日本の前途と歴史教育を考える若手議員の会」が設立された。共通項は「靖国神社」で、「あの戦争は正しい戦争」「従軍慰安婦や南京虐殺などもなかった」と強弁し、「村山談話」「河野談話」の取り消しを主張する。掲げる目標は、憲法改正、教育基本法改正、靖国神社公式参拝の定着、正しい歴史教育の推進・・・。安倍首相はもちろん、内閣の13名の閣僚もこれらの会に名を連ねる。さては「美しい日本」の出発点もこれか▼わが日本の政権が、これほど粗野で危険な「御意」の寄せ集めとは肌寒い。最近、またひとつ「価値観外交議連」が結成された。「安倍応援団」のひとつだが、中国を「最大の脅威」とするなど、さらに一歩踏み出した▼そのうち、「教育再生会議」とやらのテーマも、「戦争を知らない子から出来る子へ」(朝日川柳)になるのかも・・・ (佐)

    ---------------------------------------------

「九条の会」がアピールを発表
新たな運動の高まりの上に全国交流集会の成功を

 安倍内閣の発足いらい、日本国憲法、とりわけその9条を変えようとする動きは、いちだんと激しさを増しています。それは、安倍首相が2期6年の自分の任期内に改憲を実現する決意を表明したことにあわせ、自民党内では2011年秋にも国民投票を実施するとの改憲に向けたタイムテーブルがつくられていることにもあらわれています。
 この動きが、アメリカの行う戦争に日本を巻き込むものであることは、ますます明らかとなっています。安倍首相はそのため、憲法の改定以前にも集団的自衛権の行使にさらに踏み込むための憲法解釈の変更を企てています。
 しかし、こうした動きに対する国民の不安、憤りも急速に広がりつつあります。それは各種世論調査において、共通して、9条の改定に反対する世論が、9条を改定すべきとする世論を上回り、その差が年々拡大していることにもあらわれています。改憲をめざす勢力は、この国民世論や、そうした世論をつくりだすことに力を発揮している「九条の会」を敵視し、これを切り崩すための大キャンペーンを展開しようとしています。
 私たちは、憲法9条を守るという国民世論を広げる運動がさらに大きく発展することを願っています。そのため、すでに今秋11月24日(土)には第2回全国交流集会を開くことを決めています。私たちは、この交流集会を成功させるため、全国の地域・職場・分野の「会」が、以下のような取り組みを強め、その豊かな経験を交流集会の場にもちよることをよびかけます。

     ①「九条の会」アピールへの賛同をさらに圧倒的なものへと広げ、改憲の発議をも断念させるものとするため、地域、職場、分野の「会」を、文字どおり思想や信条等の違いを超え、さらに無数に結成しましょう。
     ②9条擁護の世論を切りくずすためのさまざまなキャンペーンを跳ね返すために、地域や職場の草の根で、日本国憲法、とりわけその9条がもつ先駆的な価値についての学習を深め、これを生かすために何が必要かの議論をまきおこしましょう。
     ③無数に生まれている世論や運動を広げているすぐれた経験に学び、それをお互いの運動に生かすため、地域レベル、都道府県レベルでも大いに交流しあい、それぞれの運動をさらに豊かなものにしていきましょう。
 07年5月26日  九条の会

    ---------------------------------------------

和歌山弁護士会主催「憲法施行60周年記念市民集会」討論「憲法どうすんねん!」
月山桂弁護士(「九条の会・わかやま」よびかけ人)の発言要旨

 本紙35号でお知らせしました5月11日の市民集会での月山桂弁護士の発言要旨をご提供いただきましたので、4回に分けて掲載しています。(今回は3回目、見出しは編集部)

【第3問 憲法9条は変えた方がよいか → いいえ 】

9条を変えることは平和主義、国際協調主義を放棄すること

 第1問のとおり、憲法は、国の基本原則を定めるものであり、9条は、平和主義、国際協調主義という基本原則の具体的表現であり、これを変更し、陸海空軍を保有することを憲法上謳い上げることは、国が、平和主義、国際協調主義を放棄することになる、そういうように受けとられる虞れがある。殊に、前大戦で被害を与えた近隣諸外国に、「再び日本は」「日本は再び」という不信と脅威を与えることになる虞れがある。それだけでなくても、国民に対しても、力に頼り、力による解決をはかるといった、とんでもない意識の変革をもたらす虞れがある。
 9条は、先に述べたように、日本国民の願いをうたったものであり、世界中の民族の願いをあらわしたものである。戦争なき社会、武力によらない紛争の解決は、人類の願いであり、長年追い求めて来た理想である。このことは、1791年のフランス憲法、1907年のハーグの国際条約、1920年の国際連盟規約、1928年の不戦条約、1945年の国際連合憲章、このような歴史の歩みを見れば明白である。戦争放棄を憲法に謳っているのは、日本だけではない。憲法を改正して、この人類の夢や理想を放棄しようというのは、人類の歴史の流れ、歩み方に逆行するものである。 (次号へつづく)

    ---------------------------------------------

◆安倍政権の危険な狙い 九条の会の渡辺教授講演
 作家の大江健三郎さんらが呼びかけた「九条の会」が六月九日、東京で学習会「安倍内閣と集団的自衛権問題」を開き、約二百人が参加した。九条の会事務局員の渡辺治一橋大学教授が講演した。
 渡辺教授は、安倍内閣が財界や米国の強い求めに応じて、米軍の海外での軍事行動に自衛隊が参加できるようにすることをねらっていると指摘。その妨げとなっている憲法第九条の改憲をめざして国民投票法を成立させる一方、「集団的自衛権行使は合憲」という解釈改憲も進めようとしていると述べた。「解釈改憲で可能なところまで進めるが、根本は明文改憲でやるという二本立て戦略だ」と渡辺教授は指摘した。安倍内閣は、集団的自衛権行使を盛り込んだ安全保障基本法を〇八年にも国会に提出する考えという。
 渡辺教授は改憲反対の運動にふれて、「明文改憲が発議される三年後まで力を蓄えよう、というのではいけない。有識者懇談会の報告と安全保障基本法は早い時期に出てくる」として、早く運動を立ち上げることを訴えた。同時に、安倍内閣が支持率低下や改憲反対の世論の増加であせっていることも強調。「改憲反対世論が増えたのは九条の会などさまざまな運動の力だ」と強調し、奮闘を呼びかけた。(連合通信6月13日より)

    ――――――――――――――――――――――――――――――
(2007年7月16日入力)
[トップページ]