「九条の会・わかやま」 62号を発行(2008年3月9日付)

 62号が3月9日付で発行されました。1面は、9条世界会議in関西 開催!!、新憲法制定議員同盟 役員に民主党幹部加え 憲法審査会始動ねらう、九条噺、2面は、読者からの連帯と激励のメッセージ(九条の会・かわにし 山口慶四郎さん)、井筒監督講演会に参加して(和歌山大学学生 ごぅさん) です。
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[本文から]

9条世界会議in関西開催 !!
2008年5月6日(火・祝)10:00~16:00 舞洲(まいしま)アリーナ


《多彩な出演者》
☆国境なきロックバンド
 ソウル・フラワー・ユニオン
☆香山リカさん
  精神科医。現代社会に厳しく切り込むコメントで、テレビでもおなじみ。憲法と平和を語ります。
☆小山乃里子さん
  パーソナリティ。総合司会。ラジオでおなじみ「ノコサン」が優しい語り口で司会進行します。
☆ベアテ・シロタ・ゴードンさん
  元GHQ民政局員。日本国憲法起草の際に男女平等条項を盛り込む。映画「日本の青空」でもおなじみに。
☆ハンス・フォン・シュポネクさん
  元国連イラク人道調査官。武力では紛争解決できないと発言と行動を広げる。
☆アン・ライトさん
  元アメリカ陸軍大佐・外交官。退官してイラク反戦運動に参加。

「9条世界会議」とは
戦争をしない。武器をもたない。武力によらない平和をめざして、世界に広がる「憲法9条」への思い。未来に残す宝もの、憲法9条を世界の人と語り合い、共感しあうイベントです。全体会は5月4日~6日に千葉県・幕張メッセで開催されます。

9条世界会議in関西 http://www.geocities.jp/article9kansai/

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新憲法制定議員同盟、役員に民主党幹部を加える

  憲法審査会始動をねらう

 読売新聞、毎日新聞などによると、「新憲法制定議員同盟」(会長・中曽根元首相)は3月4日に総会を開き、新役員体制を決定しました。今まで参加がなかった民主党幹部から新たに鳩山幹事長が顧問に、前原副代表、田名部元農水相、渡辺元郵政相が副会長に就任し、自民党からは安倍前首相、伊吹幹事長、谷垣政調会長が顧問に加わりました。自民党・民主党の両幹事長が顧問に就任することになり、自民党では現副会長である二階総務会長、古賀選対委員長に加え、伊吹幹事長、谷垣政調会長も加わり、党四役が全員、「議員同盟」の役員となりました。「議員同盟」には議員191人が参加しています。また、町村官房長官、高村外相、額賀財務相、鳩山法相が副会長に名を連ねていることは、憲法尊重擁護義務(憲法99条)に公然と違反する重大な問題です。
 役員会では憲法審査会の早期始動を求める国会議員の署名が、自民党282人、公明党35人、民主党26人、無所属など10人、合計353人に達したと報告されたとのことです。昨年5月に与党の強行採決で「国民投票法」が成立し、8月に衆参両院に憲法審査会が設置されましたが、参院選での与野党逆転の中で、審査会の組織と運営ルールを定める審査会規程の議決に至らず、まだ始動していません。こうした中で「議員同盟」に民主党幹部が参加するということは、自民・民主の共同で憲法審査会を早期始動させたいという狙いが明白です。現に鳩山幹事長は「民主党として、憲法審査会の始動に向け前向きな方向が出ることを、個人的には望んでいる」(読売2・28)と語り、伊吹幹事長は「憲法審査会が動く状況を作りたい」(読売3・4)と語ったといいます。

  「九条の会」に対抗する

 「新憲法制定議員同盟」は07年4月「自主憲法期成議員同盟」を改称し、改憲派を集めて結成されました。「護憲運動が盛んになっているので、これに対抗する運動を強力に展開する」としています。今回の総会でも「九条の会」を名指しして、「『九条の会』が全国に細かく組織作りをしており、それに対抗していくには、地方にも拠点を作っていかねばならない」と強調し、「各党支部や青年会議所に頼んで拠点になってもらう」と提起しました。
 当面の活動方針としては、①衆参両院の憲法審査会始動への働きかけをさらに強める②民主、公明両党の議員を中心に会員の増強を進める③「九条の会」に対抗していくため地方の拠点づくりを進める、ことを確認しています。
 安倍前首相の突然の退陣によって影を潜めていた明文改憲の動きが、ここに至って再び大きく動き出したということであり、一層、警戒を強めなければなりません。


  「憲法審査会」とは
 国民投票法に基づき衆参両院に設置された憲法審査会は、日本国憲法およびそれに密接に関連する基本法制の広範かつ総合的な調査をする権限、憲法改正原案を審査し提出する権限、日本国憲法の改正手続に係る法律案等を審査し提出する権限を持つ常設の機関です。

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【九条噺】
 NHK番組「爆笑問題の『みんなの憲法入門』」を見た。「爆笑問題」の2人が、本紙39号に掲載した憲法学の長谷部恭男・東京大学教授と対談する▼教授は「世の中には色々違う考え方があるんだってことを認めよう」「最後の判断は各自の問題」「理想社会は何かというのも決着がつくことはない」と言う▼そうなのだ。憲法は19条で「思想及び良心の自由」を、20条で「信教の自由」を、21条で「集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由」を、23条で「学問の自由」をと、個人の考え方、思想、信条を最大限保障しているのである▼人の「理想」とか「幸せ」とかは人によって異なる。しかし、それを保障するベースは存在するはずだ。例えば、戦争になって「幸せ」は追求できるだろうか。「戦争の方が幸せだ」という人は多分いないだろう。食うや食わずの生活で「幸せ」は追求できるのか。ものごとを判断する能力も絶対に必要だ▼だから、憲法は9条で戦争を放棄し、戦力、交戦権を否認する。25条で「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」を、26条で「等しく教育を受ける権利」を保障する▼教授は「人はどう生きるべきなのかということを憲法は教えない」「バラバラの生き方をバラバラのままつなぐ、それが憲法」だと。「バラバラ」とは「好き勝手」ではなく「個性豊かに」だ。憲法9条、25条、26条などを守ってこそ、「個性豊かな生き方」が実現する。(南)

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読者からの連帯と激励のメッセージ
   山口 慶四郎 さん(「九条の会・かわにし」(兵庫県)呼びかけ人、大阪外国語大学名誉教授、 元和歌山大学経済学部助教授)

 「九条の会・わかやま」が会紙第60号を発行されたことに心から敬意を表します。IT時代なので和歌山を離れていても送信される記事を見て、皆さんのご活動を知ることができます。コラム『九条噺』で(南)、(佐)が健筆を振るっておられるのを読むのも楽しみです。
 この送信を目にする時、いつも、60年代後半に結成された和歌山憲法会議のあれこれを想起します。田辺市にある元嶋館を借り切って当時大阪市大教授だった黒田了一さんを講師に憲法学校をもったこと、名古屋大学の長谷川正安教授をお招きし和歌山市で講演会を開催、多くの聴衆を集めたことなどです。
 それに、和歌山市が戦災を受けた7月9日に記念集会を開いて、広島・長崎で開催される原水爆禁止世界大会を前にして、平和運動を県下で高揚させようと、当時よく使われた経済センターのホールを満席にしたことも。この時は、著名人が話をするのではなく、実際に空襲体験した人が数人、壇上でとつとつとその状況を話されたのがとても印象的でした。
 「九条の会・わかやま」に結集される皆さんのますますのご活躍を願って、往時の回想を筆にしました。

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井筒監督講演会に参加して
      和歌山大学学生 (ペンネーム)ごぅ さん

 今回上映された「パッチギ!LOVE&PEACE」は第2作目ということで、前作は見ていなかったのですが、127分の上映時間があっという間に過ぎるほど引き込まれていく映画でした。在日韓国人という事実を隠さなければならない社会、戦争で生き延びるために必死で逃げることの意味など、考えさせられる点が幾つもありました。その中でも、私が特に注目したのは「家族のあり方」です。兄や妹、母、兄の息子、国鉄をクビになった男性などひとつの家にたくさんの人がおり、彼らが互いにぶつかり合いながら日々の生活を送っている姿を見て、「こういうことが幸せなのかなぁ」と感じました。最近は核家族化などの家族形態の多様化が進み、また、家族の中での会話や関わりが昔に比べ減っています。「家族の温かみ」ということを考えたときに、果たしてこれが幸せなのだろうかと疑問に思ってしまいます。この映画では、兄を中心に、妹や母、国鉄をクビになった男性などがたびたび激しくぶつかり合います。荒々しいと言ってしまえばそれまでですが、互いに本音で激突するので、その後はより深い絆で結ばれます。このことは家族だけでなく、人間関係の本質だと思います。私はこの春から小学校の教師になります。子どもたちには、うわべだけではなく本音で人と向き合えるように育ってほしいと強く感じています。「パッチギ!」の本題からは少し横道に逸れてしまったかも知れませんが、私が特に強く印象に残った点です。
 もうひとつ、井筒監督の講演でも様々なことを考えました。「成人」はいったい何歳からなのか、映画撮影の裏側など。最も強く心に残ったのは、「リアリズム」という問題についてです。戦争を題材にしたドラマや映画では、しばしば出征時に「お国のために立派に散ります」といった台詞を耳にします。まるで、戦争で命を落とすことが素晴らしいことであるかのように・・・。しかし、井筒監督は「それはリアリズムではない」と一蹴しました。監督の祖母は、父が出征するときに「はよ帰ってきーや」と言い、戻ってきたときは「なんや、もう帰ってきたんか」と言ったそうです。これが庶民のリアリズムです。なぜ、これほどまでにかけ離れてしまったのでしょうか。私は、マスコミや国家の情報操作という点に着目します。無謀な行動によって起こった戦争を美化するために、先に述べたような台詞が登場したのではないでしょうか。推測の域を出ませんが、世の中にあふれる幾多のニュースも本当に真実を真実として伝えているのか分かりません。どうしても伝える側の意図や策略が込められ、結果として真実が捻じ曲げられてしまう場合があると思います。私たちに求められているのは、常に真実を知ろうとする目を持つことだと感じます。つまり、井筒監督の言う「リアリズム」に目を向けることです。その具体例を監督は私たちに教えてくれました。リアリズムとは、一切の美化や貶(おとし)めを受けない私たち大衆の生活だと思います。

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(2008年3月10日入力)
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