「九条の会・わかやま」 65号を発行(2008年4月10日付)

 65号が4月10日付で発行されました。1面は、澤地久枝さん講演会(大阪府・堺市民会館)、映画「靖国」上映中止、九条噺、2面は、NHK・ETV特集『小田実 遺す言葉』A です。
    ――――――――――――――――――――――――――――――
[本文から]

I LOVE 9条 このみちをゆこうよ
─澤地久枝講演会─
  今、世界が世直しを必要としている


 3月29日、堺市民会館で「九条の会」呼びかけ人澤地久枝さんの講演会が開催されました。講演の要旨をご紹介します。なお、小田実さんの「遺す言葉」については前(64)号、本(65)号裏面をご参照下さい。

 今の日本社会は壊れかけている。あってはならない生命の殺傷に痛みを感じないのはど うしたことか。この背景に今の日本の深刻な経済不況があるのだろう。「もう私は力が尽きた」と言ったら、ともかく最低限の生活ができる救い、つまり「文化的で健康な最低限の生活」が保障されねばならない。憲法に生存権があるのに、今やどんどん削られ、追いつめられて息切れしそうになっている。憲法9条を中心に世直しできないかと考えるのは、憲法の様々な条項が無視され、侵されていると心から感じるからだ。
 ───────────
 イージス艦「あたご」が漁船を沈めた。僚船が捜索している時に、防衛省中枢部は何とかもみ消そうとした。憲法が自衛隊を認めているか否かについて国民投票もやったことがないのに世界有数の軍隊になり、ハイテクをうたいながら漁船を見落とし、日本国民を殺してしまった。自衛隊は私たちにとってマイナスはあっても、プラスはない。防衛費は年々増えて、その跳ね返りとして医療費などの社会保障がどんどん削られている。
 ───────────
 日本の社会はいつの間にか、金をいっぱい取る人間が偉いという空気に変わった。不正な金を動かし、秘密情報を教えられ、買ってはいけないものを買う。この国の責任ある地位にいる人は金に換えて恥というものを失ってしまった。
 ───────────
 小田実さんは、戦後の日本のよかったことは「中流」の人たちを作り、軍需産業に依存せず平和産業で復興したことだと言った。これは日本だけでなく、世界にとってもいいことだ。軍需物資でなく、平和的なものを作ることで、ほどほどにみんなが豊かになれるということのお手本に日本がなれるいうことだ。
 ───────────
 戦争は何も解決しないことが分かっているのに、何故日本は逆コースどころか、戦前の歴史そのままの、もっとひどい方向に行こうしているのか。日本は私たち主権者で成り立っているのに、政治がこんなに間違った方へ行って、私たちの生活は破綻の渕まできている。足下まで崩壊が始まっているのに、手を施すどころか、もっと絞るという感じだ。税金は上がる、消費税も上げたい、物価も上がってきているなど、生活費はどんどん上がり、年金は先細りだ。
 ───────────
 日本は軍需産業の方に舵を切ろうとしている。日本はポツダム宣言で兵器を作ることを禁じられて戦後をスタートした。武器輸出三原則もある。しかし、産業界は作りたくて仕方がない。金の取りばぐれがなく、再生産できるのは戦争に使われるものだ。モデルチェンジはどんどん行なわれ、いらなくなったものは売ってはならない国に売って儲けている。
 ────────────
 私が9条を思うのは、憲法には法の下での平等とか、生存権とか、基本的人権とか大切なことがたくさんある。だけど、一番肝心な一点に絞るとすると、人間的な暮らしをするための大前提は戦争をしない、平和であることだ。その意味で憲法9条を一つの砦としなければ、私たちの生活はもうありえない。
 ────────────
 小田実さんが「遺す言葉」で最後に言ったのは「この国はもっと値打ちのある国だ。それを今壊そうとしている。だから今は憲法を守ることをやらねばならない」「小さな人間が動けば世の中は変わる。それ以外に道はない」。今、世界が世直しを必要としている。小田実さんの『終らない旅』を読んでほしい。彼は私たちに終わってはならない大事な旅のバトンを渡して死んでいったと思う。
 ────────────
 よりよい社会・地球を残そうとして、出来る努力をする、ちょっとした勇気を自分に課すということは美しいことだ。世界の未来のために、種を蒔く人になってほしい。

    ------------------------------------------------------

映画「靖国」上映中止
憲法21条(表現の自由)をないがしろにする事態


 毎日新聞などの報道によると、香港国際映画祭で最優秀ドキュメンタリー賞を受賞した映画「靖国」の4月上映を決めていた5映画館が上映中止を決めました。嫌がらせなどによって「お客様に万一のことがあってはならない」との理由です。しかし、右翼などの嫌がらせは1館しかないとのことです。
 これで思い起こすのは日教組集会をキャンセルしたプリンスホテルです。客や周辺への迷惑を理由に上映や集会を断ることは憲法21条に保障された集会、言論などの表現の自由をないがしろにするものであり、理不尽な妨害や嫌がらせに屈するものです。
 しかも、今回の事態の発端は自民党・稲田朋美衆院議員らの公的助成金に対する言動です。稲田議員が上映中止などの意図はないと言うのであれば、今からでも上映を呼びかけ、支援活動をしなければなりません。しないのなら、やはり上映妨害であったと言わざるをえません。国民の抗議によって、幸い5月以降の上映予定館が増えてきたとのことです。
 表現の自由は民主主義社会の根幹です。暴力で表現の自由を侵そうとする理不尽な圧迫ははね除けていかねばなりません。そうしないと、私たちの憲法を守る運動に会場を貸せないなどという事態にならないとも限りません。

    ------------------------------------------------------

【九条噺】  東京の石原都知事は「自分の責任には馬耳東風、唯我独尊で開き直る知事」である(朝日新聞3/12夕「素粒子」)。「石原銀行」と異名をもつ新銀行東京の経営破たん問題をめぐる知事の無責任な対応ぶりを揶揄してのことだ▼「馬耳東風、唯我独尊」も間違いではないが、テレビで都議会での知事の態度をみていると、むしろ「傲岸不遜」というほうがより似つかわしいのではないかと思われる▼それに、「唯我独尊」は、一般にいい意味で使われることは少ないが、語源はまったく異なる。「天上天下(てんじょうてんげ=この広い世界)唯我独尊」は、仏教の基礎をきずいた釈尊のことばとされ、「この広い世界で私の命はただ一つしかない、かけがえのないものである。同様にいきとし生ける物全てのいのちがそれぞれに一つしかない、かけがえのない大切なものである」という意味がある。つまり「不殺生戒」や「殺すな、殺さしめるな」という仏教の原点と一体をなしており、いま、全国各地でまじめな仏教者の多くが「九条の会」に名を連ねられているのもうなずける▼さすれば、超タカ派で改憲派の急先鋒である石原氏にはまったく似つかわしくない言葉でもある。「唯我独尊」が「独善」「わしが一番エライ」として使用されていることは承知の上で、なおためらうのである。     (佐)

    ------------------------------------------------------

日本はもっと価値のある国だ
NHK・ETV特集『小田実 遺す言葉』A


 3月9日に放映されたNHK・ETV特集『小田実 遺す言葉』より、昨年7月に亡くなった「九条の会」呼びかけ人・小田実さんが遺した言葉を、2回に分けてご紹介しています。今回は2回目。


 最低投票率のない国民投票法は少数者独裁

 「国民の税金を使って憲法を変えろというキャンペーンをするのは憲法違反だ。私はそう思う。そんなことはかつて歴史で聞いたことがない。そのことを新聞・雑誌・テレビも論じないし、論客も論じない。私はこれはけしからんことだと思う。
 今が一番似ているのはワイマール共和国のワイマール憲法を潰して、ナチドイツが出てきた時で、あれとそっくりじゃないかと思っている。
 その一番いい例は国民投票法案で、最低の投票率を決めていない。万が一、20%の投票率で憲法の改悪ができる。それを平気でやるでしょう。それについて国民の関心は非常に低い。そうすると少数者で何でも出来る。これなんかムチャクチャだと思う。少数独裁、少数委任の形でやろうとしている。これには現代民主主義の大事な問題が出てきていると思う。
 ポルトガルのノーベル賞作家サラ・マーゴが書いている。20%から25%の投票率で当選した政府がメチャクチャをする話、独裁国家を作っていく話を。これは現代民主主義の一つの型を表しているんじゃないか。つまり、全権委任されていないのに、少数でやってしまう。
 国民投票法案というのは、それに基礎を置いて、3年前にキャンペーンをして、投票率を40%ぐらいにして、そして憲法を変えてしまえというような動きだ。それをみんなが問題にしない限り、改憲が着々と進行するんじゃないか。私はそれを憂いている」

 民主主義と自由に平和主義を加えて

 「私は日本はもうちょっと価値のある国だと思う。もっと価値ある国として、もういっぺん見直してほしい。ことに若い人に。日本はアカンというようなことを言うのではなく。
 日本は民主主義と自由をアメリカにもらったが、ひとつ非常に大事なものを付け加えた。それは平和主義だ。そうすると平和主義に基いて我々の産業構造も出来上がった。この国の中心部分に軍需産業はない。ところがほかの国はそうではない。フランスも軍需産業の国。ドイツも軍需産業が大きなパーセンテージを占めている。それに対して日本のパーセンテージは非常に低い。日本は軍需産業だ、軍需産業だと言わない、大きく全体を見ると平和産業の国なのだ。平和産業だけで、これだけの繁栄を作ったのは大事だが、繁栄の一番肝心なところは『中流』の生活基盤を作ったこと、経済基盤としての『中流』の生活を作ったことだ。延々と科学技術のもとに作っていった、これはすごいことだ。
 戦前の日本は行く道を間違えた。それは何かというと富国強兵の道。結局、侵略して、メチャクチャしてそれで終わった。そう考えると、胸が・・・、胸がつまってくるよね。富国強兵の道を歩まなければよかった。それを歩んだおかげで、日本はムチャクチャになって終わった。それから我々は反省した。反省して、違う日本を作ろうと思った。そのもとになったのが平和憲法と平和主義。民主主義と自由と平和主義をくっつけて、それに科学技術をくっつけて作っていった。それで今までやってきて『中流』の暮らしの拠りどころを作った。それを今、残念なことに破壊しようとしている。格差をつくって『これこそ世界の資本主義だ』と言っている。これでは一体何をしてきたのか分からないじゃないですか」

    ------------------------------------------------------

2008年 5月6日 10:00〜16:30
 舞洲アリーナ(大阪)
  (JR桜島駅よりシャトルバス)

  9条世界会議・関西

    ――――――――――――――――――――――――――――――
(2008年4月13日入力)
[トップページ]