「九条の会・わかやま」 69号を発行(2008年5月30日付)

 69号が5月30日付で発行されました。1面は、県民の会主催「5月の風にWe Love 憲法」での和田進氏講演・藤藪庸一氏連帯挨拶、九条噺、2面は、7.5和歌山県「9条の会」交流集会、9条の集客力(朝日新聞から)、「和歌山市ひがし9条の会」結成 です。
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5月の風に We Love 憲法

 5月10日、プラザホープ(和歌山市)で「憲法9条を守るわかやま県民の会」主催の講演会が開かれ、和田進・神戸大学教授が講演されました。講演に先立ち、「九条の会・わかやま」呼びかけ人・藤藪庸一さんの連帯の挨拶がありました。講演と連帯挨拶の内容の一端をご紹介します。

9条改正は抑圧者、加害者への道
平和的生存権は侵すことができない人権である

  神戸大学教授・和田 進 氏が講演

 日本国憲法は日本と世界の共同綱領である。前文の主語は「全世界の国民が」となっており、平和的生存権を世界の先頭に立って掲げ、奮闘する決意を表明した。国家が武装力を持つことを否定し、武力行使の手段を持ち得ない形にすることによって全世界の国民が平和的生存権を樹立することができる。平和的生存権は、狭い意味での平和の問題にとどまらない。まさに、生活・暮らしに関わる権利である。

2つの課題に立ち向かう平和的生存権

 今、世界には2つの課題がある。1つは新自由主義的構造改革による社会福祉や社会保障の切捨て、格差分断であり、もう1つはイラクへのアメリカの先制攻撃に示される一方的な軍事力行使である。戦争という極限に行くまでに、我々の日常生活が全世界的規模で破壊されている。これらの2つの課題に立ち向かうものとして世界に先がけて提唱した平和的生存権の思想が世界の共同綱領として存在している。平和的生存権は9条の根底にある思想・理念である。
 近代立憲主義は国民の自由を確保することが目的であり、この目的を達するために公の武力が必要だとする。君主国から共和制を守る必要があったからだ。しかし、共和制の国家形態が安定すると武力の性格が転換する。国家が戦争をする場合はルールを決めてやろうとした。しかし、軍事技術の進展で、とりわけ第1次世界大戦の莫大な人的・物的被害により、1928年、パリ不戦条約で戦争を違法とした。それにもかかわらず、第2次世界大戦が起こり一層の惨禍をもたらすこととなり、1945年の国連憲章は武力行使を否定することになった。

9条2項は国連憲章も踏み越えて

 憲法9条第1項はパリ不戦条約から国連憲章へと流れてきた系譜の上に登場した。ところが第2項は世界の到達点である国連憲章を踏み越えて、武力行使の否定だけでなく、その手段である戦力を持たない、交戦権を否認するところまで突き進んだ。日本国憲法も国連憲章も第2次世界大戦のあまりにも悲惨な状況を見据えて登場してきたのは同じであるが、日本国憲法が国連憲章を越えたのは、人類絶滅兵器といわれた核兵器が実際に使用された後に議論されたというところが大きかった。

人権とは誰からも侵害されないものである

 平和的生存権とは何か。以前の考え方は、一旦国家が戦争という手段を採用し、その結果として国民が様々な被害を受けたとしても、それは一般国民の当然の犠牲として受忍しなければならない。これは「戦争違法体制」の下でもそうであり、平和に生存していても国家が戦争という手段を採っていないからにすぎないというものである。日本国憲法の平和的生存権はこの考え方を根底から否定して、人権として平和を求める。人権とは権力によって侵害されない、譲り渡すことができない権利である。平和の内に生存していくことは人権であり、それを破壊することは人権侵害だということは、平和的生存権が人権として提出されて始めて可能な議論である。過去の様々な権利章典は人権を無条件に保障しているが、実は「但し、戦時は除く」という但し書きを隠し持っていた。日本国憲法は表裏なしに人権を保障するものである。

全世界の国民が平和的生存権を有する社会の実現をめざす

 日本国憲法は、「武装力が全く意味を持たないとは言えない歴史段階で、国家が武装力を否定するという危険性があるにもかかわらず、アジア諸国民に対する戦争責任の自覚の上に立って、二度とアジア諸国民に対して加害者、抑圧者にならない」という反省の側面と、同時に、「日本は多少の犠牲を覚悟の上で、武力をもたないことによる危険性をも覚悟しながら、新しい国際社会は一切の国家が武装をしないことによって、全世界の国民が平和の内に生存する権利を有する、そういう国際社会を実現するため、その先頭に立つのだ」という決意の側面がある。これが日本国憲法前文の教えだ。前文の「この崇高な理想と目的」とは「全世界の国民が平和的生存権を有する社会の実現」ということであり、そのために全力をあげるということだ。

9条を守ることは加害者にならないこと

 今日本が遂行している日米同盟の路線や、ましてや憲法9条を改正する路線は、世界の他国民、他民族に抑圧と加害の役割を日本が、私たちが担っていく道を許すのかどうかという問題になっている。アメリカの従属者として、抑圧者になっていくのか、全世界の平和を愛する諸国民と連帯して、そういう道を阻止し、世界で平和的に生存する権利を確立する道に進むのかの正念場に立たされている。

犠牲を求める憲法を掲げて
「九条の会・わかやま」呼びかけ人・牧師・藤藪庸一さん

 国益というもののためには戦争も正義だと言われることがある。世界中が国益で正義が歪められ続けている。
 私は人のために犠牲が払える人間になりたい。実は日本国憲法は世界のために、平和のために、私たち日本人がまず犠牲を払おうと、武力を捨て、戦争をやめようと、そう呼びかけている憲法だ。何が起こるかわからないけれど、世界の人々の良心に期待して、まず、私たちが武力を捨てようというものだ。
 人間が健全に成長し、生きていくためには、自分の生涯をかけてもいいと思えるようなビジョンが必要だ。憲法はこの国が目指すべき理想を現したものだ。私は日本国憲法にある犠牲を求めて、なお目指している平和に満ちた世界、そのためならば、喜んで犠牲を払いたいと思う。私の払う犠牲は私の誇りになる。だから私はこの犠牲を求めている憲法に共感を覚える。この社会に憲法を掲げ、憲法に流れている精神を学びたい。歪んだ正義の戦争の中で、多くの人々が願った平和を学んで、生きて、この社会にこの憲法を掲げていきたい。

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【九条噺】
 青年劇場が『族譜』という芝居をもってやってくる。その公演を成功させるために、市民会館と市民がいっしょになって実行委員会をつくり取り組んでいる▼「族譜」、韓国語ではチョッポという。日本の家系図のようなものだが、そこに込められた思いは、日本の比ではないという。かつて日本が朝鮮を植民地支配した時代、皇民化政策として「創氏改名」を押しつけた。それは「族譜」を捨てることの強要でもあった。芝居は、族長の苦悩を描き、歴史の真実を今に突きつけている▼実行委員で沖縄出身のK先生が言った。「戦争の時代、沖縄では、方言の使用が禁止された。言葉を奪われ、名前まで奪われる。その苦痛はいかなるものであったか」と。小林多喜二は、「闇があるから光がある」と言い、闇の苦しさを知っているあなただから、だれよりも光がわかる人だと、恋人への手紙に書いた▼闇と光、喧噪と静寂、束縛と自由。対極を知ることでわたしたちは、そのものの本質をより深く知ることができる。『族譜』は、間違いなく憲法の、自由の対極にあるものを、私たちに観せてくれるだろう。『族譜』、6月17日、和歌山市民会館で公演。(中) 

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活動を交流し、学びあい、励ましあって、さらに発展を!
和歌山県「9条の会」交流集会


2008年7月5日(土)13:30~ プラザホープ4F(和歌山市)
 スピーチ 藤藪庸一さん(牧師)、月山 桂さん(弁護士)
  各「9条の会」からの発言・交流
主催/和歌山県「9条の会」交流集会運営委員会

 運営委員会は5月26日、県下の各「9条の会」宛に、参加要請文書とチラシを発送しました。
 運営委員会は各会代表1名だけでなく、たくさんの方の参加を期待しています。また、集会の運営に役立てるために「わが会の紹介」の作成を要望しています。記入の書式は「九条の会・わかやま」のホームページからもダウンロードできます。eメールか郵送でお送りください。

[URL]http://home.384.jp/kashi/9jowaka/9jonokai-waka.htm
[e-mail]wakayama9jou@yahoo.co.jp
[郵送先]640-8510 和歌山市栄谷930 和歌山大学教育学部柏原研究室気付
和歌山県「9条の会」交流集会運営委員会

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 論説委員室から 「9条」の集客力

 3日間でのべ2万2千人。こんなたくさんの人が集まるとは予想していなかった。4日から千葉市の幕張メッセで開かれた「9条世界会議」のことだ。
 「武力によらない平和、という9条の考え方を世界に広げたい」。翻訳家の池田香代子さんらの呼びかけに、世界各国から賛同者が集まったイベントだ。
 北アイルランドの平和運動家でノーベル平和賞のマイレッド・マグワイアさんの講演や歌手のUA(ウーア)さんらのライブなど多彩なメニューだった。
 実行委は「初日で4千人ぐらい」と予想していた。だが、労組などを通じた宣伝とは別に、ネットで知ったらしい若者たちが初日だけで1万5千人も押し寄せ、3千人が会場に入りきれなかった。  「9条の交戦権の否認は、世界の多くの人々を勇気づけてきた」。マグワイアさんのこんな言葉に送られた拍手は、人気アーティストの熱唱に寄せられる喝采と同じ種類のものだった。
 その3日前。改憲派議員が開いた集会では、安倍前首相が「憲法を自分たちで書く決意が、新しい時代を切り開く魂につながる」と声を張り上げていた。
 安倍さんの力みように比べ、幕張に集まった人たちの言葉や振る舞いは、とてもしなやかで自然だった。
 憲法9条は、ふだん国会で取材をしている政治記者の想像以上に広く、深く、若者たちの間に根を張っているのではないか。世界会議の盛況を見て、こんな思いを強くした。
(5月10日、朝日新聞・夕刊)

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「和歌山市ひがし9条の会」結成

 5月11日、和歌山市東コミュニティセンターで「和歌山市ひがし9条の会」の結成総会が開かれ、75人が参加しました。
 総会では、呼びかけ人の小林民憲・和歌山大学教授の挨拶の後、ビデオ「海にすわる~辺野古600日の闘い~」を上映し、山本暢俊氏が「嶋清一とその時代」と題して記念講演を行いました。山本氏は、戦前、夏の甲子園大会の準決勝・決勝でノーヒット・ノーランを達成するなど大活躍した海草中学の嶋清一の24年という短い生涯を振り返り、「戦争で亡くなった嶋清一や戦争のこと、9条について考えてほしい」と話されました。
 同会は和歌山市の東部(宮・岡崎・西和佐・安原・山東などの地域とその周辺)をエリアとし、昨年9月から準備を始めて、これまでに、賛同会員は146世帯、203人となっています。

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(2008年6月1日入力)
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