「九条の会・わかやま」 70号を発行(2008年6月10日付)

 70号が6月10日付で発行されました。1面は、自衛隊派兵恒久法 臨時国会に提出か、和歌山県「9条の会」交流集会、九条噺、2面は、08年憲法世論調査にみる民意① 、9条世界会議・関西 海外ゲストのスピーチ① です。
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[本文から]

自衛隊派兵恒久法 臨時国会に提出か?
与党プロジェクトチーム立ち上げ


 与党は5月23日、自衛隊海外派兵を随時可能にする恒久法に関するプロジェクトチームの初会合を開きました。今国会中に法案「要綱」をまとめることで合意し、8月下旬に召集が検討されている臨時国会に政府が法案を提出でき初会合では恒久法の骨格をなす「恒久法の主要な論点」が配られ、自衛隊の活動メニューとして①停戦監視②人道復興支援③後方支援④警護⑤治安維持⑥船舶検査が検討項目になっています。特に④⑤⑥は武力行使を伴うもので、従来の海外派遣法では盛り込まれなかったものです。これでは米軍の対テロ掃討作戦と変わらず、憲法の禁じる海外での武力行使であることは明白です。6月4日に行なわれた第4回会合では武器使用基準の緩和が議論され、政府側は「警護を追加しないと武器使用ができない。警護を加えることで制度的な解決が望ましい」と露骨です。6月12日までに「要綱」をまとめ、「要綱ができたら民主党にも声をかける」と言っています。

新テロ特措法延長を狙う
臨時国会をさらに前倒しで召集


 政府・与党は、恒久法の制定ができなくても、新テロ特措法の延長で対応できるように臨時国会を8月下旬に召集する方向を示しています。インド洋での給油活動を継続するために、来年1月15日に期限を迎える補給支援特別措置法(新テロ特措法)の延長が参議院で否決されても、再び、衆議院で再議決できるように会期を十分確保することを狙っているのです。例年より前倒しした昨年より、今年はさらに前倒しで、8月下旬に召集しようというものです。

アフガンへ陸上自衛隊派遣も検討

 町村官房長官は5月31日、インド洋での海上自衛隊の給油活動に「プラスアルファして、何らかの活動ができるかどうか。政府として少し視野を広げて考えようとしている」と述べ、アフガンへの陸上自衛隊派遣も視野に検討する考えを示しました。陸上自衛隊の派遣は「戦闘地域への派兵」「海外での武力行使」であり、違憲です。町村長官は「民主党の理解をどう得るのかを念頭に置き、アフガン支援を考える」とも語っています。民主党の小沢代表がISAFへの参加に前向きなことから、民主党を違憲の派兵に引き込む狙いです。
 これに対して、福田首相は6月1日、陸上自衛隊のアフガン派遣について、「状況は整わなければいけない」と、現地情勢を見極めるとしたものの、「陸上の活動は、日本の協力ができる態勢になれればいい。可能性は常々考えている」と、検討していることを明らかにしました。

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【訃報】
九条の会・わかやま」呼びかけ人 多田 道夫 さん
 和歌山大学名誉教授(仏文学)多田道夫さんが6月2日、ご病気でお亡くなりになりました(81歳)。謹んで哀悼の意を表し、ご冥福をお祈りいたします。

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活動を交流し、学びあい、励ましあって、さらに発展を!
和歌山県「9条の会」交流集会

主催/和歌山県「9条の会」交流集会運営委員会

    2008年7月5日(土)開場13:00 13:30~17:00
    プラザホープ4F(和歌山市)

    スピーチ 藤藪庸一さん(牧師)、月山 桂さん(弁護士)

    各「9条の会」の発言・交流
 憲法9条を守るという一点で一致して活動する県下の「9条の会」が集まり、お互いに活動を交流し、学びあい、励ましあって、さらなる発展を期する場です。
 運営委員会は各会代表1名だけでなく、たくさんの方の参加を期待しています。また、集会の運営に役立てるために「わが会の紹介」の作成を希望しています。書式は「九条の会・わかやま」のホームページからもダウンロードできます。eメールか郵送でお送りください。

[URL]http://home.384.jp/kashi/9jowaka/9jonokai-waka.htm
[e-mail]wakayama9jou@yahoo.co.jp
[郵送先]640-8510 和歌山市栄谷930 和歌山大学教育学部柏原研究室気付
和歌山県「9条の会」交流集会運営委員会

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【九条噺】
 大学生たちが9条の大切さについて真剣に議論しあっている。それも日本ではなく、はるか遠く、アフリカはガーナでの光景であり、おもわず画面に見入った▼その夜、「報道ステーション」(テレビ朝日)は、アフリカ諸国51カ国の首脳らが参加して開催された第4回アフリカ会議について報じる中、「(相次ぐ紛争や貧困をかかえる)アフリカ諸国への支援は当然重要」としつつ「こういう支援もあるのだということを知って欲しい」として、過日の「9条世界会議」(幕張)の大盛況ぶりを映し、続けてガーナを紹介した▼ガーナは1956年にイギリスから独立したものの、紛争や貧困をかかえ、港から奴隷として身売りされる人々が絶えない状況が続いてきた。92年になり軍政から民政に移管されるなか、野党も参加してようやく安定の時期を迎えた▼そのガーナで今、日本の憲法9条が人々の熱い視線を浴びている。日本が経済的にも飛躍的に発展した根底には9条があり、「武力に頼らない平和な国づくりをガーナでも」というわけだ。そうした大きなうねりの一コマが冒頭に紹介した画面だ▼国の一部で80年間も続いてきた深刻な部族間紛争も、「力によるのではなく、粘り強く対話を続け」説得した結果、3年間を要して無事収束、双方の部族の長も「武力は結局何ももたらさないことがわかった」と語る▼今更ながら、9条のもつ大きな、輝かしい力に納得の思いだった。(佐)

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08年憲法世論調査にみる民意 ①
長谷川千秋氏
(元朝日新聞大阪本社編集局長・木津九条の会)

 憲法擁護の民意は着実に前進

 今年の憲法記念日に当り、日本のメディアが実施した世論調査結果に関する長谷川千秋氏の寄稿を、昨年に引続き4回に分けて、「九条の会」メールマガジンより転載します。


 「任期中に改憲を」と大見得を切った安倍・前首相が退陣して、政界での異様な改憲論議が一段落したのと、日本国憲法施行60年の節目を通り過ぎたこともあって、憲法記念日に向けてのマスコミの憲法世論調査報道は今年、一気に減りました。それでも主要紙が行った調査から、憲法と向き合う現時点での民意は確実につかむことができます。同時に、これまでの各種世論調査データも重ね合わせて、憲法擁護の運動が今後、民意の動向で留意すべきいくつかの具体的課題について考えてみました。

(1)すべての指標で「改憲反対」が前進

 私の目に届く範囲で、憲法世論調査を実施した新聞メディアは読売、朝日、日経、北海道新聞で、テレビはありませんでした。全国紙3紙の調査結果から言えることは、「九条維持」が多数派を占めただけでなく、憲法全体でも「改憲反対」が勢いを伸ばしたことです。いまや7000を超えるにいたった全国の「九条の会」をはじめ草の根からの市民の地道な運動、護憲政党、護憲団体の踏ん張りが、この結果に寄与したことは、改憲派も、言葉はさまざまですが認めざるを得なくなっています。
 読売新聞の調査では、今の憲法を「改正する方がよい」と思う人は前年より3・7ポイント減って42.5%、「改正しない方がよい」と思う人は4.0ポイント増えて43.1%となり、わずかな数字とはいえ非改正派が改正派を15年ぶりに逆転しました。世論調査では普通、1%程度は誤差の範囲内とされ、「改憲賛否ほぼ同数」とうたってもよさそうなのに、1面本記でわざわざ逆転を強調したところに、改憲勢力の牽引車を自負する同紙の危機感が感じられます。
 九条についても、「これまで通り、解釈や運用で対応する」36%(前年と同じ)「9条を厳密に守り、解釈や運用では対応しない」24%(4ポイント増)合わせた九条維持派は60%となり、「解釈や運用で対応するのは限界なので、改正する」31%(5ポイント減)の改正派を大きく上回りました。
 こうした結果について、読売社説(08・04・08付)は「衆参ねじれ国会の下、憲法改正論議の進展は困難、という判断と、憲法改正への首相のメッセージの乏しさが、影響しているのではないか」と分析していますが、政界再編→大連立→明文改憲への願望を語ったにすぎません。06年、07年、そして今年と、憲法擁護の民意は着実に前進しているのです。

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憲法が60年間改正されなかったのは非常にいいものだからだ
[9条世界会議・関西] 海外ゲストのスピーチ①
ベアテ・シロタ・ゴードンさん(元GHQ民政局員)

 5月6日に開催された「9条世界会議・関西」での3人の海外ゲストのスピーチ要旨をご紹介します


 マッカーサーは日本政府が民主的な憲法を書けば、それが一番いいと思っていた。マッカーサーが頼んだ松本烝治はどうしても民主的な憲法を書くことができず、いつも明治憲法と同じものを出してきた。それでマッカーサーは新しい憲法を作ることを自分のスタッフに命令した。
 私は1946年2月4日に民政局長・ホイットニー准将から「あなたたちはマッカーサー元帥の命令で新しい日本の憲法草案を作るのが任務です」と言われた。ケーディス大佐が草案作成の役割を振り分け、人権に関する草案は3人が担当した。男性2人が「あなたは女性だから女性の権利について書いては」と言い、私は賛成した。マッカーサーの命令は、1週間で草案を作ることだった。民政局のメンバーはいろんな国の憲法を参考にした。また、憲法研究会やその他の団体もGHQに草案を送ってきた。だから、日本の憲法にはいろんな国の歴史的英知が入っている。
 日本国民は新しい憲法を喜んで受け入れたが、政府はあまり喜ばなかった。国民は新しい憲法がマッカーサーのスタッフによって書かれたということを知らなかった。1952年に保守的な学者と新聞社がそのことを知り、押し付けられたから改正すべきだと主張した。しかし、マッカーサーが新憲法を日本の政府に押し付けたと言えるだろうか。人が他人に何かを押し付ける時、自分のものよりいいものを押し付けない。日本の憲法はアメリカの憲法よりすばらしい憲法だから押し付けという言葉は使えないと思う。特に、日本の国民に押し付けたというのは正しくない。日本の人々は19世紀から国民の権利を望んでいた。この憲法は押さえられてきた国民の意思を反映したものだ。歴史的に日本はいいものを輸入し、自分のものにしてきた。だから、いい憲法であればそれでいいのではないか。誰が書いたかと詮索することは意味がない。
 60年間、改正がなかったことは世界で初めてだ。この憲法が非常にいいものだから改正されなかったと思う。この憲法を他の国々に宣伝すれば、いろんな国に9条がモデルになる可能性がある。みんなで手をつないで平和を作ることができると思う。

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(2008年6月22日入力)
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