「九条の会・わかやま」 73号を発行(2008年7月10日付)

 73号が7月10日付で発行されました。1面は、和歌山県「9条の会」交流集会 開催、集団的自衛権行使容認を求める 「安保法制懇」報告書、九条噺、2面は、08年憲法世論調査にみる民意④ 、和歌山うたごえ九条の会 結成、ストップ「集団的自衛権行使容認」⑮ です。
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和歌山県「9条の会」交流集会 開催

218人・56団体が集う

 和歌山県「9条の会」交流集会が7月5日、和歌山市のプラザホープで開催され、県下から218人・憲法を守る56団体(内「9条の会」は52団体)が参加しました。
 「うたごえ九条の会」の「憲法9条五月晴れ」などの合唱でオープニング。開会挨拶で金原徹雄弁護士は「9条を守る運動の発展にとって、『排除の論理』を絶対に持ち出さないことが何より大切。自民党、公明党、民主党の支持勢力であっても、9条で共闘できる人はいくらでもいるはず。その人たちと手を繋がない限り、勝利はあり得ない」と訴えました。
 冒頭スピーチで、牧師・藤藪庸一さんは「戦力を放棄した日本国憲法は、世界の人々の良心を信じ、国民に犠牲を求めている。私は喜んで犠牲を払いたい。この犠牲は私の誇りだ」と語りました。月山桂弁護士は「海外派兵恒久法の法制化が進められている。改憲反対の世論が6割を超えたからと言って、改憲が遠退いたわけではない。地球温暖化が問題化している今こそ、軍事費減らして環境守れと、軍備放棄を進めるチャンス」と提起しました。

21の会が発言

 21の「会」が発言を行いました。「よみきかせ9条の会」はギター演奏に合せて、絵本『ほたる』を朗読。「9条ネットわかやま」は仲間の輪を広げるためメーリングリストへの参加を呼びかけ、「九条の会貴志川」は9月9日の「たそがれコンサート」の取り組みを報告し、多くの参加を要請。「9条の会美浜」はニュースを570人の会員に、「雑賀9条の会」は4千枚を市民に配る活動を報告。「憲法9条を守る和歌山弁護士の会」は「どこともくっつき、結びつける接着剤を目指している」と語り、「第9条の会わかやま」は96年結成で一番古株だが、学習以外の運動をどう進めるかが課題と述べ、「平和と憲法を守りたい市民の声」は和歌山駅頭での署名活動、成人式での活動などを報告。「みなべ『九条の会』」は会費を集める活動、自治体や地方紙へのアプローチを報告。できたての「うたごえ九条の会」は副会長が「ヒロシマの有る国で」を歌い、今後の活動方針を報告。「障害者・患者九条の会」は、障害者は平和でなければ生きられないと訴えました。署名活動やニュースの発行は多くの会から報告されました。
 以上のほか、「きのくに9条市民の会」「九条の会・かつらぎ」「九条の会・粉河」「九条の会・わかやま」「田辺・9条の会」「はしもと9条の会」「守ろう9条 紀の川 市民の会」「『九条を守ろう』那賀郡の会」「和歌浦9条の会」「和歌山大学憲法9条の会」が発言しました。子どもや若者、多くの人に訴え、広げる運動やそれぞれの会の実情、活動のヒントを学びあい、同じ志で活動する人々が会場いっぱいに集まったことに元気づけられた、楽しい集会でした。 

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集団的自衛権行使容認を求める
 「安保法制懇」が報告書提出


 「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」は6月24日、福田首相に報告書を提出しました。
 「安保法制懇」は、安倍前首相が昨年5月に設置し、「始めから結論ありきの出来レース」と揶揄されたものです。報告書は「憲法9条は明文上、集団的自衛権の行使を禁じていない」から「安全保障環境が変わった」ので「集団的自衛権は憲法上行使できる」として、憲法解釈を変更して集団的自衛権の行使を容認するよう政府に求めています。
 安倍前首相は懇談会発足時、現在の政府の憲法解釈では自衛隊の活動が困難とされる①公海上での米艦の防護②米国に向かう弾道ミサイルの迎撃③国際平和活動をともにする他国部隊の「駆けつけ警護」④国際平和活動に参加する他国への後方支援の4類型の検討を指示しました。報告書は①②は集団的自衛権行使容認、③④は憲法解釈の変更で、いずれも可能だとしています。
 しかし、福田首相は「変えるなんて話はしたことはない。憲法は憲法」と述べ、解釈変更に対して消極的姿勢を示していますが、無理やり報告書を提出したということは、何が何でも解釈改憲をめざす改憲派の執念を示すものです。

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【九条噺】
 「正当な判断と受け止め」「今後も自律した編集に基づき番組制作を進める」(NHK広報室6/12)。NHK教育テレビが旧日本軍の従軍慰安婦問題を取り上げた番組で、取材に協力した市民団体が「放送直前に内容が改変され、当初の趣旨と異なるものになった」としてNHKと制作会社を提訴した。この裁判で、最高裁が二審東京高裁の判決を破棄、一転原告敗訴となった。そこでNHKが冒頭の見解を出した▼また、安倍晋三前首相も「最高裁はNHKの主張を全面的に認め」、「(安倍・中川両衆院議員が同番組に)『政治的圧力』を加えたことを否定した」云々と述べた(朝日6/13)▼ともにあきれはてたというしかない。東京高裁は、番組放送前にNHKの幹部らが安倍官房副長官(当時)らに会って意見を聞き、急きょ内容を変えた経緯を明らかにして「NHKは国会議員らの発言を必要以上に重く受け止め、その意図を忖度(そんたく)して番組を改変した。編集権を自ら放棄した行為に等しい」と断じたのである。ところが最高裁は、番組改変に至る最も肝心なこの事実経過にふれず、改変をNHKの「自主(自律)性」の範囲にとどめるという不当極まる判断をしたのである▼とまれNHKが「政治的圧力」に屈した事実を消し去ることはできない。悲惨極まる侵略戦争に係る歴史認識をゆがめ、今もなお心の傷が癒えない多くの人々の悲しみに追い討ちをかけたことも確かだ。今やなりふりかまわぬ「改憲派」とマスメディアの関係・動向にいっそう留意したい。(佐)

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08年憲法世論調査にみる民意 ④
   長谷川千秋氏
(元朝日新聞大阪本社編集局長・木津九条の会)

 マスコミには真実の報道を要求しよう

 ミサイル防衛(MD)についても、国民の間に抵抗感が薄いことを世論調査が示しています。ちょっと古いですが、06・12・16付読売新聞朝刊に載った同社と米ギャラップ社による「日米共同世論調査」で、アメリカと協力してMD整備を急ぐべきだと思うかどうか聞いていますが、「そう思う」「どちらかといえばそう思う」合わせた回答は6割に達しています。北朝鮮脅威論がここでも幅をきかせているのです。自公政権などは、さらに歩を進め宇宙の軍事利用に道を開く宇宙基本法の制定を企図しています。
 この2つに問題について、日本のマスコミは、全体として為政者の言い分をうんざりするほど流す一方、真実を伝える努力を怠ってきました。一例をあげれば、イラク戦争での自衛隊報道。イラク特措法は自衛隊の仕事として「人道復興支援活動」と「安全確保支援活動」の2本柱をあげていますが、日本のメディアの大半が含まれる日本新聞協会と民間放送連盟は、最初から防衛庁との間で取り決めたイラクでの自衛隊活動の取材ルールの中で、「安全確保支援活動」を外してしまいました。以来、自衛隊といえば「人道復興支援」が枕詞のように使われてきたのです。マスコミの視野から逃れた「安全確保支援活動」にこそ、違憲・違法な行動(航空自衛隊の他国の武力行使と一体化した空輸活動)が今も続いている実態は、名古屋高裁判決が解明した通りです。マスコミには、声を大にして、真実の報道を要求しましょう。
 最後に、私は、憲法擁護の運動と核兵器廃絶の運動は「車の両輪」と確信しています。いま、原爆症認定集団訴訟が最大の山場を迎えています。被爆者たちが、「自分のような体験を2度と世界中の人に味合わせたくない」と、残り少なくなった命をかけて「自分の病気は原爆によるものと認めよ」と迫り、地裁段階では国が6連敗、政府を追い詰めています。これは、被爆の実相を戦後一貫して隠蔽し続けてきたアメリカの核兵器戦略の核心を揺さぶる壮絶な闘いです。憲法擁護の市民の皆さんの支援を心から訴えます。

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和歌山うたごえ九条の会 結成

 6月29日、「歌える自由を未来まで」を掲げて、「和歌山うたごえ九条の会」結成総会が開かれ、79名が参加しました。団体加入が7団体、出席以外の加入申込が10名と報告されました。
 集まりは、参加者が声をそろえて歌う「歌い交わそう」をまじえて進み、結成総会では由井勝会長他の役員を選出。総会記念演奏とミニ講演(うたごえ新聞編集長・三輪純永さん)に続いて、結成宣言・運動方針採択を行いました。
 ミニ講演で三輪さんは、著書『世界をつなぐ歌「ねがい」』を紹介しつつ、広島の大州中学での平和学習から生まれた歌「ねがい」の歌詞の続きが世界各国語で作られ歌われていること、平和な世界への「ねがい」が広がっていることを語り、参加者に感動と確信を与えました。
 結成宣言は「戦争の時代、音楽は、国家権力に統制された。(中略)日本は憲法九条を持つ、平和と民主主義の国になった。音楽は今、私たちの手にある」として、「平和の歌」を「憲法を守る力に」と訴えています。
 総会では、会長挨拶と副会長の閉会挨拶も歌で行われ、この会らしさを演出していました。
 「九条の会・わかやま」柏原事務局長が祝辞とあわせて、「7月5日、和歌山県『9条の会』交流集会で産声を聞かせてください」と参加を訴え、司会からも「参加しましょう」と呼びかけられました。

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ストップ「集団的自衛権行使容認」⑭
   「九条の会・わかやま」事務局・南本 勲

「集団的自衛権」と「自衛隊派兵恒久法」②

 与党のプロジェクトチームが恒久法案「要綱」をまとめようとしたが、6月21日に閉会した通常国会では合意に至らなかった。今回合意に至らなかった大きな問題のひとつは、自衛隊の「活動メニュー」の①停戦監視②人道復興支援③後方支援④警護⑤治安維持⑥船舶検査のうち、④⑤⑥である。いずれも実施には武力行使が伴うため、これまでの海外派兵では見送られてきたものである。自民党が追加を強く求めたこれらのメニューとはどのようなものであろうか。
 自民党は④警護のメニューとして「随伴(移動する人や物に付き添って護る)」「配置(建物、施設などに張り付いて護る)」「巡回(見回り)」「駆けつけ(危機に陥っているところに応援に駆けつける)」をあげている。「配置」や「巡回」も攻撃される恐れがあるから実施するのである。「随伴」は、例えば砂漠を移動する車列を自衛隊が付き添って護るなど、活動範囲が極めて広範囲で何が起こるか分からない危険なものである。「駆けつけ」にいたっては、文字通り弾が飛び交っているところに駆けつけて、戦闘に加わるということである。いずれも、ことが起これば当然武器が使用される。これに対して政府は「非戦闘地域」という限定があるから「武力行使」には当らないと説明している。警護活動の必要な地域がどうして「非戦闘地域」なのか。政府の「非戦闘地域」が虚構なのは、名古屋高裁がバグダッドを「戦闘地域」と認定したことでも明白である。
 ⑤治安維持では不審人物の停止・身体検査・拘束や住宅、建物への立ち入り、捜索・押収などの強制措置が行われ、それに抵抗されたら武器が使用される。
 ⑥船舶検査では停船命令に従わない場合は危害射撃が行われ、乗船検査で抵抗されれば武器で反撃することになる。
 いずれの場合も、任務として武器が使用されるのであり、正当防衛や緊急避難ではない。その地域が「虚構の非戦闘地域」であれば、「武力の行使」と言わずして何と言えばいいのか。アフガンのようにアメリカが個別的自衛権の発動と言い、それに応え恒久法で自衛隊を派遣すれば、集団的自衛権の行使ということになる。これらのメニューが憲法違反なのは明々白々と言わなければならない。

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(2008年7月10日入力 11日修正)
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