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「9条の会」交流集会での冒頭スピーチ
7月5日に開催された和歌山県「9条の会」交流集会で行われた「九条の会・わかやま」呼びかけ人お二人の冒頭スピーチの大要をご紹介します。
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この憲法のためなら私は犠牲を払いたい
牧師・藤藪庸一さん
小学校6年の時に『ビルマの竪琴』に出会った。ビルマで捕虜となった水島上等兵は友軍に降伏の説得に行くが、果たせず、総攻撃で友軍は全滅してしまう。僧侶になった水島は、一緒に日本に帰ろうという誘いを受け入れず、犠牲となった日本兵の魂を弔うためにビルマに残る。私は水島が払った犠牲に感動した。絶対に帰りたかったはずなのに、帰らないという覚悟を決めて、決断をして、行動も起して、亡くなった人の魂を弔う。私も人のために犠牲を払える人間になりたいと思った。
日本国憲法は世界のために、平和のために、日本人がまず犠牲を払おうと呼びかけている。その具体的な姿勢が9条だ。何が起るか分からないが、世界の人々の良心を期待して、まず私たちが武力を棄てようと呼びかける。憲法は理想の姿を示している。生涯をかけてもいい崇高な思いがこめられている。
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5兆円の防衛費をCO2との闘いに
弁護士・月山桂さん
世論調査で憲法改正反対が3分の2に達した。しかし、これは安倍・福田内閣の無策と失政の結果に過ぎず、9条改正の危機は決して遠のいていない。
日本の防衛費は5兆円。英・仏・独より多い。日本も国際貢献をする時に他国軍に守られるのではなく、自力でやらねばならない、そのために9条を改正し、戦争ができる普通の国になろうという一部の国民の心を動かす議論がある。災害救援に自衛隊を派遣し、国民に受け入れやすいように仕向けている。恒久法の企てもある。絶対に9条改正の危機は遠ざかっていない。我々の力を緩めてはならない。
現在の重要な課題は地球温暖化問題だ。これは努力すれば避けうる問題だ。化石燃料に代わるエネルギーの開発には莫大な費用がかかる。この際5兆円の防衛費は何の役に立つのか。自衛隊を縮小する、その力をCO2との闘いに回す工夫と努力が必要な時だ。
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憲法9条京都の会 発足
瀬戸内寂聴さん、九条の会に初参加
思想信条にかかわらず憲法9条の理念を守り広めるため連帯する「憲法9条京都の会」が6月29日、発足した。府内で活動する約340の「九条の会」の連絡会的役割を目指す。下京区のシルクホールで同日あった「発足の集い」には立ち見も含め1000人を超える参加者があり、代表世話人で哲学者の鶴見俊輔さん、作家の瀬戸内寂聴さんらの話に聴き入った。
代表世話人にはこの他、立命館大国際平和ミュージアム名誉館長の安斎育郎▽哲学者の梅原猛▽臨済宗相国寺派管長の有馬頼底▽狂言師の茂山千之丞の各氏も名を連ねた。
「集い」では鶴見さんが「9条に寄せる私の想い」と題して記念講演。戦前のアメリカ留学体験や軍隊体験を紹介しながら「みんな同じ方向に行こうとする日本人の感覚に、決して戦前のようにならないとは言い切れない恐怖を感じる」と前置きした後、「みんなで一斉に『9条を守ろう』なんて大声を上げるのは、ある意味いつか来た戦前の感覚と同じ。求められるのは、一人ひとりが自分の〝タコつぼ〟から離れず、等身大で世の中の動きを自分の感性でとらえながら行動すること。その行動を持ち寄ろう」と説いた。
瀬戸内さんは「殺すなかれ、という仏教の戒律を守ることは、普通ならそう難しくはない。しかし、戦争などの極限状態になると、守るためには命を懸けなければならない。戦争ほど許されないことはない」と訴えた。
「集い」ではこの他、賛同者が265人68団体に及んでいることが報告され、事務局長に小笠原伸児弁護士を選出。今後の取り組みとして、毎月9日に三条河原町などで街頭署名を実施▽憲法公布日(11月3日)と施行日(5月3日)に憲法集会を実施▽1万人の賛同者を目指す──などを決めた。(毎日新聞京都版 6月30日)
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【九条噺】
1996年、スペイン最西端、カナリア諸島のテルデ市(人口9万人)に「ヒロシマ・ナガサキ広場」と「日本国憲法9条の碑」が設置され、除幕式では、ベートーベンの第九のメロディーに乗せて憲法9条が歌われたという▼スペインでは80年代に米軍基地撤去とNATО脱退を求め10万人規模のデモや集会が繰り返され、米軍基地は大幅に縮小された。この過程で、テルデの市長が日本の憲法9条に感動し、市議会の同意も得て「非核地帯」を宣言するとともに、この広場と碑の設置を決め実現したもの▼以上は、「九条の会はんなん結成3周年」での伊藤千尋氏(ジャーナリスト)の講演による。伊藤氏は、64カ国を現地取材した豊富な体験から、憲法9条の大切さと大きな役割を各地で訴えている。特に冒頭の話やコスタリカをはじめとした中南米の生き生きした話が魅力的だ▼伊藤氏は、「ほかの国では、一般市民が憲法をふだんの生活で日常的に使い、また、そのような社会の仕組みができている」が「日本では憲法を使うどころか内容すらじゅうぶん知られていない」と指摘する。そして「平和憲法を持つ平和国家の役割は平和の輸出だと考え、努力するような国こそ日本のあるべき姿ではないか」と訴える▼伊藤氏は(講演活動を通じて)各地に市民活動の花を咲かせる「花咲じいさん」を自認する。私たちもこの意気で和歌山を「花咲き山」にしたいものだ。(佐)
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交流集会を「朝日新聞」「読売新聞」(和歌山版)が報道
<朝日> 「9条守ろう」団体集結
憲法9条を守る活動をしている県内の各団体が交流する集会が5日、和歌山市内で開かれた。取り組みを報告するなどしながら、活動を強めていく初めての試みで、「九条の会・わかやま」の呼びかけに応じた県内約100団体の約半数が参加した。
活動報告では22団体代表者が登壇。「9条を守ろうと訴える新聞を発行している」「守るための署名を集めている」などと発表した。
このうち、読書の楽しみを子どもに伝える活動の中から生まれた「よみきかせ9条の会・和歌山」は、特攻隊員と食堂の女性の交流を描いた「ほたる」をギター演奏に合せて朗読した。命が失われる無情さを表現した場面などではハンカチで目頭を押さえる参加者の姿もあった。
元中学教員で集会を主催した運営委員会の阪中重良副実行委員長は「戦争をしないと決めた9条は素晴らしい憲法だ。守り抜くために多くの人に参加を呼びかけたい」と話した。(7/6)
<読売> 県内「 九条の会」56団体が初交流
戦争放棄を掲げた憲法九条を守る活動をしている県内の「九条の会」56団体が、和歌山市北出島1の県勤労者福祉会館・プラザホープで、初めての交流集会を開いた。
会場に集まった218人を前に、「憲法9条を守る和歌山弁護士の会」の金原徹雄事務局長が「九条を守って生かしていくことは息の長い運動で、仲間の活動を知ることが大切です」とあいさつ。スピーチには、自殺志願者の救済活動をしている牧師の藤藪庸一さんや弁護士の月山桂さんが立ち、「世界に日本の憲法の素晴らしさを掲げるべき」「改正の危機は遠のいておらず、力を抜いてはいけない」などと呼びかけた。
各団体から、少年特攻隊の物語の朗読や、メーリングリストを使った交流、毎月「9」の付く日に活動していることなどが報告され、参加者はメモを取りながら聞き入っていた。(7/9)
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「憲法9条を守る和歌山弁護士の会」が
勉強会・研修会へ講師を派遣
講師派遣の要請は下記に
金原法律事務所・金原徹雄弁護士まで
【TEL】073─427─0852
【FAX】073─427─0853
【E-mail】nwkv89851@hera.eonet.ne.jp
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ストップ「集団的自衛権行使容認」⑯
「九条の会・わかやま」事務局・南本 勲
「集団的自衛権」と「安保法制懇報告書」①
日米同盟強化のために集団的自衛権を認めよと主張
諮問機関が憲法解釈の変更を求めるのは異例
昨年5月、安倍前首相によって設置された「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会(安保法制懇談会=集団的自衛権有識者懇談会)」は、6月24日、福田首相に報告書を提出し、集団的自衛権の行使は認められないとする政府の憲法解釈の変更を求めた。憲法解釈は内閣法制局が担当し、時々の政権によって憲法解釈を勝手に変えないようになっている。時々の政権の意向で憲法解釈が勝手に変えられるならば、公権力を縛る憲法の意味がなくなり、もはや法治国家とは言えなくなるからである。今回の報告書は首相の私的諮問機関と言いながら、憲法解釈の変更を求めるのは異例で、法治国家への挑戦といわなければならない。
今回の「報告書」はどのような提言をしているのか。2回に分けて、その内容を検証したい。
対米追随の異常な議論
今回の「報告書」は「これまでの政府解釈をそのまま踏襲することでは、今日の安全保障環境の下で生起する重要な問題に適切に対処することは困難になってきている」「安全保障環境の変化に適合し・・新しい解釈を採用することが必要である」と、「安全保障環境の変化」を最大の根拠として憲法解釈の変更を求めている。
「報告書」が言う「安全保障環境」とは、大量破壊兵器や弾道ミサイルの拡散、国際テロリズムの拡大などを口実に、アメリカが先制攻撃戦略を進めている現在の世界の情勢のことであり、「安全保障環境の変化に適合する」とは、「世界の情勢が冷戦体制からアメリカの一国覇権主義へ変化しているので、日米同盟を結ぶ日本は『日米同盟をさらに実効性の高いものに維持することが求められ』ており、アメリカの軍事戦略に協力するために『安全保障政策の法的基盤を見直』して、日本の安全保障体制を再構築しなければならない」ということである。そのために「アメリカの軍事戦略に協力する上での障壁となっている憲法解釈を変更せよ」というのである。
現在の国際社会は、6カ国協議で北朝鮮が核計画を申告し、平和的に解決の方向に進みつつあるように、紛争は戦争ではなく平和的・外交的方法で解決する流れが現在の本当の「安全保障環境の変化」である。「報告書」はこのような流れを無視し、「日米同盟強化のために集団的自衛権を認めよ」と主張しているのである。時代錯誤も甚だしい「報告書」と言わなければならない。
日米同盟強化のためだけ
どこの国にとっても憲法が最上位の規範であることは当然である。しかし、「報告書」は「憲法第9条の対象となっている戦争、武力の行使、個別的自衛権、集団的自衛権、集団安全保障等は、本来国際法上の概念であり、国際法及び国際関係の十分な理解なしには適切な解釈は行い得ないものである」という。それは国際法や日米同盟を憲法の上位におくもので、とうてい認められるものではない。「報告書」は「憲法第9条は、個別的自衛権はもとより、集団的自衛権の行使や集団安全保障への参加は禁ずるものではないと解釈すべきものと考えられる」とも言う。憲法を横から読んでも、斜めから読んでも、そんな解釈はあり得ない。「報告書」は「日米同盟をさらに実効性の高いものとする必要があるので、集団的自衛権行使を認める必要がある」と言っているだけのことである。
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