「九条の会・わかやま」 93号を発行(2009年2月18日付)

 93号が2月18日付で発行されました。1面は、ソマリアへ3月上旬に海自派遣、田母神問題と今日の憲法状況① 弁護士橋本敦氏講演、九条噺、2面は、子どもたちも宣伝活動、「九条の会」全国交流集会特別報告⑤、ストップ「集団的自衛権行使容認」⑱ です。
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[本文から]

ソマリアへ「3月上旬に海自派遣」 浜田防衛相

 浜田防衛相は7日、ソマリア沖へ海上自衛隊を派遣する時期について、「3月上旬には出せるようになると思う」と述べ、「海賊対策新法」の国会提出と同時期に海上警備行動を発令する考えを示し、早ければ3月中に現場で活動を開始することが確実となりました。P3C哨戒機まで派遣することについては、「否定しない」と述べ、前向きな姿勢を示しています。3月上旬の護衛艦派遣後、準備が整い次第、4月以降にP3Cを派遣する二段階となる見込みといいます。何が何でも自衛隊派兵を強行する構えです。

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歴史の真実をゆがめるものに明日はない
田母神問題と今日の憲法状況①
  弁護士・橋本敦氏講演要旨


「2009年 平和・人権・民主主義 2・11和歌山市集会」で弁護士・橋本敦さんが講演をされました。その要旨を2回に分けてご紹介します。今回は1回目。

 田母神「論文」とは

 自衛官は国家公務員であり、採用時に「憲法遵守」を宣誓する。田母神「論文」は憲法遵守義務のある公務員が歴史の真実をゆがめ、憲法に反する許せないものである。間違った歴史認識の一部を紹介すると、「朝鮮半島、中国大陸に相手の了承を得ないで一方的に軍を進めたことはない▼国際法上合法的に中国大陸に権益を得て、これを守るために条約に基づき軍を配置した▼日本は蒋介石により日中戦争に引きずり込まれた被害者なのだ▼列強と言われる国で侵略国家でなかった国はどこかと問いたい。日本だけが侵略国家といわれる筋合いはない▼日本は他国との比較でいえば、極めて穏健な植民地統治をした▼日本政府と日本軍の努力によって現地の人は圧制から開放され、生活水準も格段に向上した▼日米戦争はコミンテルンとアメリカによって慎重に仕掛けられた罠であった▼日本はルーズベルトの仕掛けた罠にはまり真珠湾攻撃を決行した▼多くのアジア、アフリカ諸国の白人国家の支配からの解放は日本の力によるものだ▼東京裁判は戦争責任を全て日本に押しつけようとしたものだ。そのマインドコントロールは戦後63年を経ても日本人を惑わせている▼我が国が侵略国家だったなどというのは正に濡れ衣である」と述べた。このような意見を述べるのは、憲法遵守義務がある国家公務員の責任者としては許せないことである。多くの自衛隊員に応募を勧め、論文募集を公のものとして打ち出したことは、田母神「論文」を最優秀賞にするためのものであった。朝日新聞は「こんなゆがんだ考えの持ち主が、こともあろうに自衛隊組織のトップにいたとは驚き、あきれ、心胆が寒くなるような事件ではないか。一部の右派言論人らが好んで使う立証的データの乏しい歴史解釈や身勝手な主張がこれでもかこれでもかと並んでいる。空幕長は5万人の航空自衛隊のトップである。そのトップがこういう感覚の持ち主でいいのか。これは文民統制の危機というべきだ」と書いた。

 歴史家の反論

 昨年12月19日、歴史家有志143名が田母神「論文」に反論した。その一部を紹介すると、「日本は侵略国家でなかったという論拠は極めてずさんで評価に値しない。このような『論文』が最優秀賞に選ばれたことは、政治的な作為によるものと感じざるを得ない▼朝鮮や台湾に鉄道が敷設され、教育が普及したとしても、それはこれらの地の開拓によって日本自身の経済発展を図るためである▼アジア諸民族の独立は日本の功績ではなく、諸民族の独立の闘いの結果である。戦後日本は平和国家としての道を歩み始めたことにこそ誇りをもたなければならない。このような見解を持つ人物が自衛隊のトップにいることは、日本の国際的信用を失墜させ、日本への警戒心を高めるだけである▼『論文』はその狙いが改憲キャンペーンの一環であることを表している。このような時期に過去の侵略を美化する言説が、こともあろうに自衛隊の最高幹部によって主張されたことには、日本の将来を誤らせるものとの強い危惧の念を抱かざるを得ない」と反論した。国会で問題となった時、さすがに防衛大臣もいいとは言えず、「この論文は村山談話に示されている先の大戦をめぐる政府の見解、認識とは明らかに異なるものである」と言ったが、懲戒解雇にはしなかった。(つづく)

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【九条噺】

 昨年11月の参院外交防衛委員会で田母神・前空幕長が「ヤフーで58%が私を支持している」と述べたという。ヤフーのネット投票のことだ。投票総数約9万7千、「ほとんど問題ない」「まったく問題ない」が合わせて58%だったという▼同月のNHK世論調査では「大いに問題」「ある程度問題」で65%にのぼったというから驚く。ネット上で世論のように見える意見。それで思い出した▼07年1月、安部首相が年頭会見で「私の内閣で憲法改正を目指す」と表明したとき、ヤフーが「憲法改正に賛成ですか? 反対ですか?」とネット投票を募った。結果は「反対」が53%、「賛成」が45%で、憲法改悪の世論づくりが失敗したという意味で、「良かった」ということだったが、このネット投票は極めて問題が大きい▼ネット投票は統計学的な精度を全く担保していない。こんな方法では、投票する人はパソコンを持つ人に限られるし、結果的に高齢者や格差社会の底辺で暮らす人は排除される▼パソコンの専門的な知識を持つ人なら、クッキーの削除やIPアドレスの変更で何回でも投票ができるとも聞いた。現に07年の時も投票最終日の最後15分は「賛成」がすさまじい勢いで投票された。いわゆる「ネット右翼」といわれる存在がある。この連中が手を組んで世論を乗っ取ろうとした▼ヤフーがこのような投票を実施する意図は不明だが、こんなネット投票は「憲法九条改悪支援システム」と言われても仕方がないだろう。 (南)

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「 9条守ろう」ここにも
 子どもたちも宣伝活動


 1月18日午後1時から、JR和歌山駅前での、宣伝・署名行動に参加してきました!
 当日は昼過ぎから、雨が降り始め、子ども連れの参加だったので、「やめようか」と思ったのですが、子どもたちが「行きたい」と目を輝かせているので、行くことにしました。雨だったので、署名行動はせず、チラシ配布を行いました。
 子どもから渡されるチラシを、中・高生が「かわいい~」と言いながら受け取ってくれました。子どもたちが「読んでください」と言ってチラシ配りをしたので、チラシを受け取り、その場で読んでくれる人も何人かいました。残念ながら、子どもが視界に入らず、〝無視〟して通り過ぎる人も何人かいて、子どもたちは「なんでもらってくれへんの~?」と不思議そうに私に尋ねたりもしました。
 毎月9日にJR和歌山駅前で宣伝・署名行動をしていますが、残念ながら、小さい子を連れた私たちと同世代の人は、チラシも受け取ってくれず、署名もしてくれない人が比較的多いように感じます。だから、今回は同世代にも興味を示して欲しくて、子ども連れで参加してみました。「寒いのに大変やなぁ~。ジュースでも買っちゃろか?」と言ってくれたおじさんもいました。
 子どもには、憲法フェスタで考えた2歳児バージョンの9条の条文と、「せんそうイヤや」と書いたプラカードをリュックのように背負ってもらいました。
 子どもたちは「寒かったけど、楽しかった」と言っていました。子どもは何でも楽しめるんだな~と嬉しく思いながら宣伝行動を終わりました。(「楠見子連れ9条の会」ブログより転載)

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日本は憲法9条を持っているからこそ国際貢献ができる
「九条の会」全国交流集会特別報告 ④
  日本国際ボランティアセンター代表理事・谷山博史さん

九条の会第3回全国交流集会が11月24日に開かれました。谷山博史さんの特別報告を「九条の会ニュース」からご紹介します。(最終回)

 私はNGOで活動してきた23年のうち12年を、カンボジアやアフガニスタンなど紛争地域で、平和について考えてきました。私たちの信念は、「非暴力による問題解決は可能だ」ということであり、対話が最も重要です。「対テロ戦争」は対話の否定です。最近のアフガンの情勢を見ると、展望はまったくありません。民間人の犠牲も増え、空爆による犠牲者は今年も242人も出ています。タリバンなど、さまざまな武装勢力が盛り返し、外国軍の犠牲者を減らすために空爆の頻度が拡大しています。
 援助関係者の被害も拡大しています。ことし9月の時点で援助関係者の被害者は26人。イギリスのシンクタンクがまとめたレポートでは、アフガンの人たちは、「外国軍は自分たちを守るのではなく、自分たちを攻撃する」「自爆テロは自衛のためにしょうがない」という認識があるといいます。
 ジャララバードで米軍の空爆があり、37人が亡くなり、7人が行方不明になりました。赤十字国際委員会の調査でも民間人に対する空爆でしたが、米軍は「テロリストを空爆した」と言い張っています。
 OEF(「不朽の自由作戦」)とISAF(国際治安支援部隊)の活動が統合され、中立であるべき人道支援活動が軍事活動の「武器」とされ、私たちも軍と関係あるのではと反発を受けるようになりました。
 昨年、自民党はインド洋で自衛隊の給油活動を継続する法案、民主党はアフガン本土に自衛隊を派兵する法案を出しました。どちらも現場の状況を全くみていません。
 日本はアフガンの紛争当事者が参加する包括的な和平による解決を目指し、その仲介を行うべきです。日本は憲法9条と前文を含む平和の原理・原則を持っているからこそ、自衛隊によらない紛争の解決、その他の国際貢献ができるという前向きなチャンスを、アフガンで生かしていただきたい。

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ストップ「集団的自衛権行使容認」⑱
  「九条の会・わかやま」事務局・南本 勲
 「集団的自衛権」と「ソマリア海賊対策」①
   何故そこまで自衛隊派兵にこだわるのか


 政府はソノリア沖の海賊対策に、「海上警備行動」を発令して海上自衛隊の護衛艦を派遣することを決定した。しかし、海賊行為は犯罪であって、それを取り締まるのは警察機関の役割であり、日本の場合は海上保安庁である。海上保安庁の治安維持の実績は国際的に高い評価がなされている。ところが、ソマリア沖の海賊に対しては海上保安庁の巡視船派遣は最初から除外され、自衛艦を出動させ、対潜哨戒機まで派遣するという。
 「海警行動」は本来、日本近海での危機への自衛隊の対処を想定したもので、99年の能登半島沖不審船事件、04年の中国原潜領海侵犯事件の2度しか発令しておらず、いずれも日本近海である。ソマリアのような遠隔地や、海賊対策という予防措置に発令されることは想定していない。アフリカにまで派遣するのは「法の趣旨を逸脱する」といわなければならない。
 そもそも軍隊には警察権がない。ソマリアに行っても自衛隊は警察権がないので海賊を逮捕できない。そのため政府は、自衛艦に海上保安官を乗せ、その保安官をつうじて取り調べや逮捕、護送などの警察権を行使するという方法を編み出した。そこまでして警察権を持たせても、軍隊が海賊を取り締るのは問題がある。いくら重装備の海賊でも、国家がもつ軍隊との戦力との差は比較にならず、犠牲がかえって増える心配がある。
 何故そこまでして自衛隊派兵にこだわるのか。ひとつは自衛隊の「本来任務」となった海外派兵の実績を減らしたくないということがある。もうひとつは、自衛隊は今までイラクやインド洋に派遣されたが、「武力行使はしない」「他国の軍隊と一体化しない」といった制約を課せられてきた。それを「海賊対策は軍事行動ではない」という理屈の下に、国際貢献のためには「他国と協力しなければならない」「武力行使をしなければ海賊船の停船もさせられない」という議論で、この制約を大きく緩和しようという思惑があるということである。(つづく)

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(2009年2月19日入力)
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