「九条の会・わかやま」 94号を発行(2009年2月28日付)

 94号が2月28日付で発行されました。1面は、「加藤周一さんお別れの会」鶴見俊輔さん弔辞、映画「アメリカばんざい」&藤本監督トーク(たこやき9条の会)、田母神問題と今日の憲法状況② 弁護士橋本敦氏講演、「わかやま“元気”1万人フェスタ」で「9条ネットわかやま」が署名活動、九条噺、2面は、ストップ「集団的自衛権行使容認」⑲です。
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[本文から]

  反戦貫く心棒感じた
「加藤周一さんお別れの会」 鶴見俊輔さん弔辞


 会うたび話すたびに、心棒を感じました。軍国日本に不服従だった人の心棒であり、日本の知識人にまれにしか感じないものでした。過去・現在・未来のどんな戦争に対して話すときも、感じるものでした。
 医学を学んだ加藤さんは、原爆を落とされた広島を見て、国家と結びついた科学が何をなすかを目の当たりにしました。さらにプラハの春では、戦争勢力が、国家全体主義の中から芽生えてくることを、しっかりと見据えました。そのとき育ったのが「九条の会」の構想でした。
 会の発起人会で、加藤さんは「多数派にならないかもしれない。そういうときも、旗をおろすことはない」と言いました。勝ち負けをこえた見方が心に残りました。
(朝日新聞)

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映画「アメリカばんざい」&藤本監督トーク
   「たこやき9条の会」が開催


 2月11日、「たこやき9条の会」主催で、約150人が参加し、映画「アメリカばんざい」上映会&藤本幸久監督トークを行いました。監督は上映前の挨拶で、この映画の背景や想いを熱く語られ、質疑応答では今のアメリカ軍の仕組みと社会的な背景を話されました。交流会には約30名が参加し、監督からじっくりこの作品の背景やこれからの仕事について伺い、監督も交えて議論する機会を持つことができました。
 また、アンケートでは、「マスコミからは知ることができないことが分かった」「戦争や軍の実態がよく分かった」などの感想が寄せられました。
 田辺市教育委員会の後援をいただき、学校でのチラシやポスターを掲示など、多くの方の協力で今回の企画が実現したことに、「たこやき9条の会」のメンバーは本当に感謝の気持ちでいっぱいです。
 「知ること」は、知らなかったでは済まされない世界の不条理に対し、人として責任を持って生きるための第一歩だと思います。単なる知識としてではなく、愛と深い想像力とを持って「知ろうとする」努力を怠らないようにしたいと今回改めて思いました。
(小澤友佳子さんより)

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「わかやま“元気”1万人フェスタ」で「9条ネットわかやま」が署名活動

 2月11日、和歌山ビッグホエールで「わかやま“元気”1万人フェスタ2009」が開催され、「9条ネットわかやま」が「平和活動ブース」を出展し、署名活動を展開しました。
 このイベントは、県内のNPO等の市民活動や企業の社会貢献活動を紹介し、交流を深め、和歌山の元気を発信していこうというものです。
 当日は代表の藤井幹雄さんを始め、十数名のメンバーが参加し、多数の来場者に署名を訴え、127筆を獲得するなど、大きな成果が上げられました。署名してくださった方には、限定25部で『平和のうちに生きるために』(憲法9条を守る和歌山弁護士の会編)を贈呈したり、手作  りの美味しいクッキーやコーヒーなどをふるまったりしながら、多くの人に9条を守る運動をアピールしました。署名用紙を持って知り合いのいるブースを駆け回ってくださった方もおられ、お隣のブースの女性は、閉幕前の30分足らずの間に数枚の署名用紙いっぱいの署名を貰ってきていただきました。

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歴史の真実をゆがめるものに明日はない
 田母神問題と今日の憲法状況②
   弁護士・橋本敦氏講演要旨


「2009年 平和・人権・民主主義 2・11和歌山市集会」で弁護士・橋本敦さんが講演をされました。その要旨を2回に分けてご紹介します。今回は2回目で最終。

 誤った歴史認識

 憲法前文は、「われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する」と宣言し、そのために9条で戦争を放棄し、戦力および交戦権を否認しているのである。田母神「論文」はこの日本国憲法の原点を真っ向から否定するものである。
 さらに、政府のこれまでの公式歴史見解である「村山談話」は「わが国は・・・植民地支配と侵略によって、多くの国々、とりわけアジア諸国の人々に対して多大の損害と苦痛を与えました。・・・疑うべくもないこの歴史の事実を謙虚に受け止め、ここにあらためて痛切なる反省の意を表し、心からのお詫びの気持ちを表明いたします」と述べる。「村山談話」は、憲法を変えると言った安倍首相ですら引き継ぐと言わざるを得なかったものである。田母神「論文」はこの「村山談話」にも完全に違反するものである。
 田母神「論文」の背景にある今日の情勢の基本問題は自衛隊が変わってきたということだ。安倍首相は07年1月、NATOの会議で、「わが国は今後堂々と海外活動を行っていく」と述べた。朝日新聞は「あまりにも軽率。日本国憲法を忘れたのか」と書いた。海外派兵が「付随的任務」から「本来任務」に格上げされ、防衛庁が防衛省になった。そして、最近は動きを加速し、ソマリア沖海賊対策では、領海周辺のみだった「海上警備行動」を発令し、警備活動だからと海上保安庁職員を乗せて外国船や外国人も保護するという。アメリカのいいなりに自衛隊を海外に出したいということだ。憲法9条を破壊し、「自衛隊海外派兵恒久法」に道を開くものだ。この背景には日米安保条約の重大な変質がある。
 51年のサンフランシスコ講和条約締結の数時間後に突如強行された旧安保条約は「米軍駐留容認・基地提供」の条約だった。60年の改定安保は「日本の領域で、日米協力で対処する軍事同盟」になった。96年の橋本・クリントン会談では「周辺地域」から「地球規模」に拡大された。03年の小泉・ブッシュ会談で「グローバルな世界の日米同盟」を確認し、05年の日米安保協議委員会では「世界の中の軍事同盟」と確認した。また、00年10月のアーミテージ国防報告は「日本が集団的自衛権を禁じていることは日米同盟の協力の制約・障害である」と公然と改憲を要求し、05年2月、ラムズフェルド国防長官は「血を流してこそ尊いものになる」と「血の同盟」になった。
 これらの根底にあるものは、朝鮮戦争前夜の49年の、フォレスタル米国防長官報告書「日本の限定的な軍備について」である。報告書は「極東でソ連と戦うときアメリカ人の人的資源節約のため、日本に軍隊を創設する必要がある。そのためには、憲法が大きな障害になる。今は、限定的な再軍備で間に合わせ、最終的には憲法を変えて本格的な軍隊をつくる道を考えよう」というものである。ここに、アメリカの要求に根ざす日本国憲法改悪の危険な本質がある。

 歴史の真実を学び、憲法を守りぬく気概を新たに

 戦前の暗黒の時代にも反戦平和を貫いた日本人の不屈の闘いはあった。明治34年、世界の軍備廃絶を訴えた幸徳秋水らの社会民主党結党宣言、日露戦争下で戦争反対を訴えた平民新聞、与謝野晶子の「君死にたまふことなかれ」、治安維持法弾圧に抗した反戦平和の闘い等々があった。
 小林直樹・東大名誉教授は「9条の思想の根本は西洋の思想のみならず、我が国の思想の中にも見出すことができる。平和憲法の理念は第2次世界大戦の後に突然変異のように飛び出したものではなく、人類の思想的系譜の中にキラ星のごとく輝く平和思想につながっている。ただ一国の実定憲法の形で国家エゴイズムを超えた戦争放棄の誓いを明記したものとして、第9条は人類史上格別の地位を占めている」と言っている。
 74年、ベトナム戦争終結の1年前に南ベトナムへ行った時、解放戦線の若い兵士が「韓国、フィリピン、ニュージーランドなどが軍隊を出しているのに、アメリカの同盟国の日本は何故来ないのか」と質問した。私は「ベトナム人民支援の闘いが日本全国で広がっているとともに、憲法9条があるから、佐藤首相は出したくても出せないのだ」と答えた。彼らは大いに感激し、涙ぐむ女性兵士もいた。9条の力はすばらしいものだ。私たちは歴史の真実を学び、星の数ほど「九条の会」をつくって平和憲法を守り抜こうではないか。

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【九条噺】

 童謡詩人〝金子みすゞ〟(本名テル、1903~30)の晩年は余りにも若く、哀しい。20代前半のわずか3~4年間に512編も創作し、西条八十も「若き童謡詩人の中の巨星」と絶賛していた▼〝朝焼小焼だ/大漁だ/大羽鰮(いわし)の大漁だ/浜は祭りのようだけど/海のなかでは/鰮のとむらいするだろう〟(「大漁」)。「わたしと小鳥とすず」とともに大好きな作品のひとつだ。勝利に歓喜する光景のなかで、敗者(あるいは被害者)にも思いを向ける、その感性にほんものの優しさが伺える▼だが、みすゞが義父に抗えずに結婚した相手は不幸にもおよそ文学を理解しない男であり、理不尽にも詩作すら禁じてしまう。さらに、一女をもうけた後は女遊びに明け暮れ、おぞましい病気をみすゞにまでうつして離婚止むなきに至るが、男が娘の親権を強行に求め続けたため、みすゞは抵抗し、ついに母親に娘を託して服毒自殺に及んだというから痛ましい。有能な才能はこうして摘み取られ、みすゞの名もやがて忘れ去られていくが、80年代になって児童文学者矢崎節夫らの努力が実り、みすゞの名と作品の数々が脚光を浴びるようになった▼近頃、家人は家でも合唱の練習に余念がない。♪この道をゆこうよ/この道のさきには大きな森があろうよ/みんなでみんなでゆこうよ(「この道」)♪と金子みすゞを歌う。歌はまるで「九条の向うにはゆるぎない平和があろうよ」とでも呼びかけているようで心地よい。(佐)

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ストップ「集団的自衛権行使容認」⑲
    「九条の会・わかやま」事務局・南本 勲

「集団的自衛権」と「ソマリア海賊対策」②
   「自衛隊海外派兵恒久法」に道を開く


 政府はソマリア沖の海賊対策に、「海上警備行動」を発令して自衛艦を3月にも派遣するという。しかし、「海警行動」は海上保安庁の任務の代行であり、武器の使用は警察官職務執行法の範囲、正当防衛と緊急避難の場合に限られる。海賊船が自衛艦を攻撃しない限り、武器の使用はできないし、「海警行動」では外国船の保護もできない。

 任務遂行のための武器使用

 そこで、政府は「海賊対策新法」を3月にも国会に提出するという。この「新法」の大きな問題のひとつは、「武器使用」の問題である。自衛隊を海外に派遣する法律の武器使用基準はPKO協力法(92年)、周辺事態法(99年)では「自己または自己とともに現場に所在する他の隊員/職務に従事する者」、テロ特措法(01年)、イラク特措法(03年)では「職務に伴い自己の管理の下に入った者」の生命・身体の保護の場合に武器が使用できるとし、少しずつ範囲を拡大しているが、いずれにも「正当防衛・緊急避難以外は人に危害を加えてはならない」と規定されている。「新法」ではこの制約を取り除き、海賊の船体を射撃する「任務遂行のための武器使用」を認めるのである。つまり、攻撃されなくても武器を使用するというのである。「海賊対策」という理屈を付けたとしても、軍隊による「武力行使」以外のなにものでもない。従来の政府の憲法解釈でも、海外で武器を使用すれば憲法9条に違反するとしてきた。

 外国船・外国人の保護

 いまひとつは、外国船・外国人の保護である。例え、「海賊対策」であっても自衛隊は外国人を助けることはできない。日本が攻撃されていないのに外国のために戦うのは「集団的自衛権の行使」にあたり、憲法9条に違反する。

 集団的自衛権合憲解釈の危険

 麻生首相は「自衛隊を派遣したけれど効果がなかったでは意味がない」と、「集団的自衛権行使」を違憲とする政府解釈の変更の姿勢を見せている。「海賊対策」という国民の合意を得やすいことで、「任務遂行のための武器使用」の道を開き、危害射撃を拡大し、「自衛隊海外派兵恒久法」に連動させ、「集団的自衛権行使」の合憲解釈に進む危険性が高いといわなければならない。

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(2009年3月1日入力)
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