「九条の会・わかやま」 108号を発行(2009年8月5日付)

 108号が8月5日付で発行されました。1面は、紀州おどり 今年も九条連!!、第15回キリスト者9条ネット和歌山の集い、自民党の「提言・新防衛計画の大綱について」の問題点①、九条噺、2面は、DVD紹介「アフガンに命の水を ペシャワール会26年目の闘い」、戦後の平和を守ってきたのは自民党???、加藤周一さん追悼講演会④(鶴見俊輔さん、梅原猛さん) です。
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[本文から]

紀州おどり ぶんだら節 今年も 九条連 !

8月1日、和歌山城周辺で「紀州おどり」が開催され、今年も九条連が参加。主催者のアナウンスでも「すっかりおなじみになった九条連。憲法9条は世界の宝。9条を守りましょうと訴えています」と紹介されました。

 

  
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第15回キリスト者9条ネット和歌山の集い 開催

 7月20日午後、鳴滝キリスト教会(和歌山市園部)で「第15回キリスト者9条ネット和歌山の集い」が開かれ、約30人が参加しました。お祈りと讃美歌・聖書朗読、自己紹介などの後、金原徹雄弁護士が「憲法九条をとりまく現状と今後」と題して1時間あまり講演しました。
 講演では「世論調査で改憲反対が賛成を上回り、九条の会の増加、名古屋高裁判決など運動の成果が見られる。反面、明文改憲に至らずとも海外派兵の既成事実を積み上げ、九条の会に対抗する改憲推進団体を立ち上げる動きもあり、9条を守る運動を進める必要がある」「洋上給油活動を撤収できるか。海賊対処法の武力行使は認められるか。鳩山由紀夫氏は改憲を主張、新憲法制定議員同盟顧問、個人HPに新憲法試案を載せている。衆議院選挙は護憲派をどれだけ国会に送れるかだ」「第1次世界大戦の惨禍からのパリ不戦条約、国連憲章を経て、『戦争放棄』が日本国憲法9条1項へ。鳩山氏は、憲法の平和主義を『空想的平和主義』と決めつけ、リアリズムの名で『自衛軍』明記を主張。私たちは、9条2項こそ将来に向かって人類的『リアリズム』があることに確信を持とう」と話されました。 休憩をはさんで約1時間、鳴滝教会の稲葉牧師の司会で質疑と意見交換が行われました。

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自民党の「提言・新防衛計画の大綱について」の問題点①
   「九条の会・わかやま」事務局 南本 勲

 自民党の国防部会と防衛政策検討小委員会は6月9日、政府が年末に改定を予定している新防衛計画の大綱について「提言」をまとめ、同日開かれた国防部会、安全保障調査会、基地対策特別委員会の合同会議で了承され、政府に申し入れるとのことです。「提言」は、敵ミサイル基地攻撃能力の保有、集団的自衛権の行使についての解釈変更、武器輸出3原則の見直しなども打ち出した、憲法を無視した軍事力の一層の強化を狙う極めて危険なもので、その多くが7月31日に発表された自民党のマニフェストにも取り込まれています。その問題点を見ていきたいと思います。

  憲法改正が最も重要な前提

 04年に決定された「防衛計画の大綱」は5年後に変化が生じた場合は見直すことになっており、今年がその年です。「提言」はこの間の重要な変化として、「北朝鮮の核実験・ミサイル発射」「中国の軍事力強化とロシアの復調」「防衛庁の省移行」「国際平和協力活動の本来任務化」「インド洋補給支援活動の継続」「ソマリア沖の海賊対策」などを挙げています。これらの変化に対して「新防衛計画」は、「安全保障政策や防衛政策、特に防衛力整備・運用・管理並びに法制の整備を着実に進展させることが必要」とし、「わが国の安全保障及び防衛力の在り方を検討する最も重要な前提は、党是でもある憲法改正である。そのためには、自民党・新憲法草案にある、自衛隊の憲法上の位置づけの明確化、軍事裁判所の設置などの方針に沿った改正を早急に実現することが必要である」と、早急な改憲を提言しています。

  改憲国民運動まで提起

 また、「憲法改正は、国民の発意によるもので、国民運動に発展させる努力が不可欠であるが、平成19年5月14日『国民投票法』が参院可決以降も、衆議院憲法審査会の『規程』は制定されておらず、委員の選任も行われていない。今後は、これらの状況を打破し」と、憲法審査会始動とともに改憲国民運動まで提起しています。
(つづく)

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【九条噺】

 住民運動だ、やれ何だと毎日がむしゃらに駈けていた頃。ある日、木津川計氏(『上方芸能』編集長)の講演を聴いた。とても感動的な話だった。ただ、講演冒頭の「忙しいという字は、立心偏に亡い、つまり心を亡くすこと、同様に慌しいと心は荒びます」という話がまるで自分に向けられたように感じられ心に刺さった。日々の有り様について、一度ゆっくり見直さねばと思い、無理に休んで鞍馬(京都)へ行った▼鞍馬寺の山門からケーブルに乗らずに本殿まで登り、さらに不動堂から奥の院へと脚を延ばした。暑い盛り、汗だくだったが、風が何とも心地良かった。豊かな自然につつまれていると何もかも洗い流してくれそうな・・・かかわってきた運動も全局がよく見えるようで、仲間を信じることの大切さや、多くの仲間に巡り会えたことの喜びさえもが湧いてきたのだった。鞍馬はそんな思い出の寺院だ▼鞍馬寺の信楽香仁貫主が言う。「森の緑に包まれて、小鳥のさえずり、風のささやき、水のせせらぎ、美しい和みの音を聴きながら、ゆっくりゆったりした自然を感じてください。人間にはこのゆっくりした間が大切です。間があるから考える時間ができ、自然を感じ、命を感じることができるのです。そして命の向うには平和があるのです」(京都府職労ニュース)▼その鞍馬寺掲示板の貼り紙には「いま私たちは持っています。戦わないという勇気ある選択をした人類の至宝『日本国憲法』を」とある。(佐)

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DVD紹介 アフガンに命の水を ペシャワール会26年目の闘い
ドキュメンタリー作品(56分)
企画:ペシャワール会
制作:日本電波ニュース社
語り:菅原文太
定価:2500円+税 (購入は下のURLから)

 アフガンでは米軍の空爆による被害者も後を絶たない。干ばつと戦乱で疲弊していくアフガンの人々を尻目に、未だ「国際社会」は「テロとの戦い」に固執し、軍隊の増派も進められている。だが、中村哲医師はアフガンの状況をこう喝破する。「ここで起きていることは政治の問題ではなく〝パンと水の問題〟だ。アフガンに必要なのは農業ができる環境であって、軍隊ではない」と。農業の復興こそが人々の平和な営みを取り戻すことができるのだ。「国際社会」が〝アフガニスタン〟を巡り議論を繰り返す裏で、現地は一刻の猶予もない状況だ。中村医師は渾身の力で、この状況と闘いつづけている。泥沼化するアフガン問題への確かな〝解〟を示すために。

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戦後の平和を守ってきたのは自民党???

 「国を守るには平和でなければならない。あの愚かな戦争で、250万の命を失い、ヒロシマナガサキの犠牲を生んだ。戦後の平和を守ってきたのは自民党だ。勇気と自信をもってがんばろう」と、7月21日の総選挙に向けた自民党両院議員懇談会で古賀誠氏が発言したそうです。
 確かに、自民党内にも「二度と戦争はしちゃいけないんです。・・・それでも憲法は変えちゃいかんのです」「憲法を変えるといったら、それだけは断固許さない」(宮沢喜一氏)。「平和を大切にする日本の基本政策は崩すべきではない。(9条をはじめ護憲の考えに変わりはありませんか)。もちろん。とてもよい憲法ですから」(河野洋平氏)などの憲法を尊重する意見もあったし、今もあります。
 しかし、「戦後の平和を守ってきたのは自民党だ」とどうして言えるのでしょうか。憲法9条があったからこそで、もし、9条がなかったら、とっくの昔に朝鮮戦争やベトナム戦争、さらにはイラクやアフガンに引っ張り出され、多くの日本人や外国人の犠牲者を出していたことでしょう。「戦後の平和を守ってきたのは自民党」なら、どうして改憲が党是になり、イラクやインド洋に出て行くのでしょうか。今度の総選挙で、自民党は「戦後の平和を守ってきたのは日本国憲法を守ってきた多くの国民だ」と思い知るべきです。(各氏の発言は30日付朝日新聞)

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 6月2日、加藤周一さんを追悼する講演会が開かれ、よびかけ人の井上ひさしさん、大江健三郎さん、奥平康弘さん、澤地久枝さんが講演され、鶴見俊輔さん、梅原猛さんがメッセージを寄せられました。「九条の会ニュース」から順次ご紹介しています。今回は4回目(最終回)で、鶴見俊輔さん、梅原猛さんからのメッセージです。

彼の志は、運動を起し、続けること
   鶴見俊輔 さん


 晩年の彼の文章を読んで、90年に近い仕事の成熟を感じました。
 日本のこの時代の特色は鎖国です。鎖国に抗して、加藤周一は生きました。始まりは日常的な感性にあり、府立一中の生徒の頃、柔道で友達の胸ぐらを取って投げることなどに身を入れられない。教師はそれを見て一時は赤点をつけ、高校進学さえ危ぶまれたそうです。しかし教師が譲って高校、大学に進学しましたが、広島・長崎に米国が原爆を落とします。日本だけでなく、世界が鎖国になります。
 ヒポクラテスの時代には、科学知識を犯罪に使わないことが科学者(主として医学者)の心得とされたわけですが、このときから科学は国家と結びつき、何百人の人間を殺す力をもつものに変わります。医学生としての加藤周一は、このような世界の鎖国に向かって立たされることになります。
 この時代の戦争に立ち向かう、「九条の会」をおこす運動は、彼の志となります。運動を起こして、続けることです。そのように、彼は考えて、その生涯の終わりまで生きました。私もそのようでありたい。

「九条の会」の精神を大多数の信念に
   梅原猛 さん


 加藤氏は私より少し先輩ですが、世に出たのは加藤氏の方が私よりずっと早く、私は加藤氏を1世代前の人のように思っていました。加藤氏とはそれほど深いつきあいがあったわけではなく、むしろ私とは正反対の位置にある思想家であると思っていました。ところが、ある新聞の企画で加藤氏と対談し、2人の意見が意外に近いことを発見したのです。加藤氏も私も戦中派で散々苦労し、戦争というものがいかに人間を不幸にするかを深く感じ、憲法9条の理想を守らなければなないという点において2人の意見は一致したのです。
 80を超え、人類のため日本のために書かねばならない著書を残したいという気持ちが強くて、あまり「九条の会」の会合に参加できませんが、平和憲法には人類が生き延びるための必要欠くべからざる理想が含まれていて、それを絶対に守らなければならないという気持ちは些かも動揺していません。北朝鮮のこともあり、日本にも核軍備せよという意見も出るかと思いますが、私は絶対に反対です。2人の有力な発起人を失いましたが、私は「九条の会」の精神が大多数の日本人の信念になることを願ってやみません。

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(2009年8月16日入力)
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