最近の自衛隊は
最近の自衛隊は海外活動が多くなり、自衛隊の活動が合憲かどうかの基準が曖昧になり、国民の自衛隊への憲法感覚が麻痺してきたように思います。政府は、独立国である限り、必要最小限の自衛力は持てると、知らない間に世界第2位の自衛軍を仕立て上げました。その自衛軍を、およそ周辺とは言い難い遥か離れた公海や、他国の領土にまで派遣するようになりました。憲法で、戦力と交戦権を否認し、戦争放棄を誓ったにも拘らず、なし崩し的に政治的判断のみで(解釈)改憲し、いつの間にか日本を再び戦争できる国にしようとしていると思えます。
なし崩し的な改憲の中身は
93年、北朝鮮が核拡散防止条約を脱退した時、アメリカは機雷除去を要請しましたが、日本は平和憲法の建前もあり、応じませんでした。そんな時期もありましたが、99年に日本は周辺事態法を制定し、アメリカが日本の周辺で戦争する時、日本はアメリカの後方支援をすることを明らかにしました。後方支援に関わる最初の国内法といえます。
9・11同時多発テロへの対応
アメリカは同時多発テロの犯人をアルカイダだと決めつけ、アルカイダを支援するイスラム原理主義のタリバンが元凶だとして、アフガンとの戦いを始めました。この攻撃はテロに対する自衛の戦いであると定義しました。イギリスはアメリカとの同盟関係もあり、集団的自衛権を行使するとして参戦することを安保理に通告しました。日本はイギリスと違い憲法9条がある。しかし、アメリカの要請を拒絶することもできず、01年11月にテロ特措法を制定して、インド洋での給油活動をすることにしました。
給油活動は戦争の支援では
政府はアメリカ以外にも給油をしているので、アメリカの後方支援ではないと説明しました。しかし、福田官房長官や高村外相も「洋上補給は、アフガン攻撃に向かおうとするアメリカ艦船に対する洋上補給だ」と国会で認めています。自衛隊のインド洋での補給活動はアメリカのアフガン攻撃の後方支援であることは明らかです。
イラク戦争はどうか
アメリカはイラクが大量破壊兵器を持っていると、調べもせずイラクに攻撃をしかけました。日本政府はアメリカの要請をむげに断れず、03年8月、イラク特措法を制定し、イラクの「人道復興支援」のため後方支援を行うことにしました。この後方支援は、周辺事態法やテロ特措法の制約を超えて、イラクという他国の領土に自衛隊を派遣することになりました。この場合も日本には憲法9条があり、戦争はできないので、「人道復興支援」だけとし、支援を行う場所は「非戦闘地域」に限るということで、サマワを選びました。陸上自衛隊600名を派遣するとともに、クウェートに航空自衛隊を派遣し、要員や物資の輸送にあたらせることにしました。陸上自衛隊は04年1月から約2年半駐留して、給水、医療、道路整備等の事業を行ったのち、06年7月に全員撤収しました。(つづく)
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【九条噺】
早いもので、作家で歌人の松下竜一がなくなってもう5年になる。この作家のことは長い間全く知らなかった。ある時、落合恵子さんらが推奨して著作集(『松下竜一その仕事』河出書房)が出ることを知り、たまたま書店で彼の『豆腐屋の四季』を見つけたので買い求めた▼松下竜一は、幼いときに高熱で片目を失い、肺にも大きな障害をかかえた。その身体で若くして家業の豆腐屋を継ぐ。当時の歌に、「泥のごとき できそこないし豆腐投げ、怒れる夜のまだ明けざらむ」とある。まさに苦悶苦闘の日々だったが、配達先で知り合った少女と心を通わせるようになり、これが苦労を乗り切る何よりの力となって、やがて二人が結ばれる、という心あたたまる作品だった。人としての尊厳を守り、誠実に、ひたむきに生きようとする作家の生き様も伺えて感銘を受けた▼『松下竜一その仕事』はナント30巻にもなった。海を埋め立て、コンクリート会社を建設する計画に反対する女性たちのたたかいを描いた『風成の女たち』、ダム建設に反対して根城にたて
こもり、権力に向かい合う『砦に拠る』など、ノンフィクションものが多いが、少年少女向けの小説も含めて分野は実に幅広い▼著作全体を通して、この作家の人間味あふれる心ゆたかな視点が伺える。晩年、珍しくテレビのインタビューに登場し、「やはり今気になるのは憲法9条を変えようとする動きですねぇ」と長年の労苦を物語る皺だらけの顔を一瞬曇らせたのが記憶に残る。 (佐)
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九条の会いなみ「合唱と朗読で平和を願う集い」開催
「九条の会いなみ」は12月5日、印南公民館で結成3周年記念行事「合唱と朗読で平和を願う集い」を開催しました。呼びかけ人・早田さんの開会の挨拶に続き、読み聞かせサークル「グリムの会」による群読が行われ、「消えた残雪のような希み」が読まれました。昭和16年、中国大陸で胸部を撃ち抜かれて戦死した田辺利宏が書き残した何編かの詩を構成したもの。ピアノの演奏や背後に映し出されたスライドが詩を視覚でもわかるように効果的にはたらき、参加者の胸に訴えるものでした。
次に、女声合唱団「コア・ブレーメン」の演奏。「私たちに平和を下さい」という意味のミサ曲で始まりました。金子みすゞの詩「明るいほうへ」など5曲の演奏がありました。最後に印南町で作られ、印南町の木々を歌った曲「わが町の木々たちよ」で締めくくりました。最後は、「よみきかせ9条の会」から来て下さった別院丁子さんの朗読「おかあさんの木」です。三浦健一さんのギターの音色と一体になり、約50名の参加者は皆、泣かされました。こんな悲しい思いをさせた戦争を、二度としてはいけないという強い気持ちが涙と一緒にあふれるようでした。
閉会の挨拶に立った呼びかけ人・中家さんは、「久しぶりに体が震えました。そして、その思いが涙となって流れ出しました」と切り出しました。「よかった」「とてもよかった。久しぶりに泣いた」「もっと大勢の人に聞いてもらいたい」との感想をたくさんいただきました。(事務局長・宮本浩子さんより)
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民主党案も「海外での武力行使」では自民党案と同じ
「九条の会」事務局・川村俊夫さん講演 ②
11月25日、和歌山市勤労者総合センターで「九条の会」事務局・川村俊夫さんの「新政権下での憲法をめぐる情勢」と題する講演がありました。その要旨を3回に分けてご紹介します。今回は2回目。
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