「九条の会・わかやま」 119号を発行(2009年12月17日付)

 119号が12月17日付で発行されました。1面は、「9条の会」近畿ブロック交流集会に700人、月山桂さん出版記念講演会、九条噺、2面は、九条の会いなみ「合唱と朗読で平和を願う集い」、民主党案も「海外武力行使」は同じ、 です。
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「九条の会」近畿ブロック交流集会に700人
  和歌山からも23人が参加

 12月13日、「九条の会」近畿ブロック交流集会が、大阪府吹田市の関西大学千里山キャンパスで開催され、近畿の「九条の会」から700人が参加しました。和歌山県からも23人が参加しました。
 10時から始まった全体会では、関西大学法学部長・吉田栄司さんの開会あいさつに引き続き、一橋大学大学院教授・渡辺治さんが「民主党政権と改憲の行方~九条の会の新しい課題を探る」と題して講演を行いました。渡辺教授は、反構造改革、反改憲の声が政権交代を実現した。しかし、民主党は揺れ動き、改憲派の鳩山首相も明文改憲は言い出せないでいる。「九条の会」の新しい課題は解釈改憲の動きに機敏に対処するとともに、国会の非民主的な変質を許さないことだと語りました。
 続いて、2府4県の代表が各府県の状況や、所属する会の活動を報告しました。  午後からは「東北アジア・世界の平和と憲法9条」「9条改憲の動向とわたしたちの課題」「青年・学生と憲法9条」の3分科会と、経験交流をする6分散会が開催され、いずれも活発な意見交換・経験交流が行われました。
 最後にまとめの全体会が行われ、分科会の報告、閉会あいさつで交流集会を終えました。(講演要旨や分科会の様子などは次号以降に掲載予定)

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月山桂さん出版記念講演会開催される

 「九条の会・わかやま」呼びかけ人・月山桂弁護士が『法曹界に生きて平和を思う』を自費出版されました。それを記念する講演会が、12月10日に開催され、110名が参加しました。
 「九条の会・わかやま」呼びかけ人・江川治邦さんが「本を戦争経験のない若い人に読んでもらいたい。憲法9条の必要性を学んでほしい」と挨拶しました。その後、月山桂弁護士と田中志保弁護士による対談形式の講演が行われました。講演の要旨をご紹介します。

(江川治邦さん)

(月山桂さん)


最近の自衛隊は

 最近の自衛隊は海外活動が多くなり、自衛隊の活動が合憲かどうかの基準が曖昧になり、国民の自衛隊への憲法感覚が麻痺してきたように思います。政府は、独立国である限り、必要最小限の自衛力は持てると、知らない間に世界第2位の自衛軍を仕立て上げました。その自衛軍を、およそ周辺とは言い難い遥か離れた公海や、他国の領土にまで派遣するようになりました。憲法で、戦力と交戦権を否認し、戦争放棄を誓ったにも拘らず、なし崩し的に政治的判断のみで(解釈)改憲し、いつの間にか日本を再び戦争できる国にしようとしていると思えます。

なし崩し的な改憲の中身は

 93年、北朝鮮が核拡散防止条約を脱退した時、アメリカは機雷除去を要請しましたが、日本は平和憲法の建前もあり、応じませんでした。そんな時期もありましたが、99年に日本は周辺事態法を制定し、アメリカが日本の周辺で戦争する時、日本はアメリカの後方支援をすることを明らかにしました。後方支援に関わる最初の国内法といえます。

9・11同時多発テロへの対応

 アメリカは同時多発テロの犯人をアルカイダだと決めつけ、アルカイダを支援するイスラム原理主義のタリバンが元凶だとして、アフガンとの戦いを始めました。この攻撃はテロに対する自衛の戦いであると定義しました。イギリスはアメリカとの同盟関係もあり、集団的自衛権を行使するとして参戦することを安保理に通告しました。日本はイギリスと違い憲法9条がある。しかし、アメリカの要請を拒絶することもできず、01年11月にテロ特措法を制定して、インド洋での給油活動をすることにしました。

給油活動は戦争の支援では

 政府はアメリカ以外にも給油をしているので、アメリカの後方支援ではないと説明しました。しかし、福田官房長官や高村外相も「洋上補給は、アフガン攻撃に向かおうとするアメリカ艦船に対する洋上補給だ」と国会で認めています。自衛隊のインド洋での補給活動はアメリカのアフガン攻撃の後方支援であることは明らかです。

イラク戦争はどうか

 アメリカはイラクが大量破壊兵器を持っていると、調べもせずイラクに攻撃をしかけました。日本政府はアメリカの要請をむげに断れず、03年8月、イラク特措法を制定し、イラクの「人道復興支援」のため後方支援を行うことにしました。この後方支援は、周辺事態法やテロ特措法の制約を超えて、イラクという他国の領土に自衛隊を派遣することになりました。この場合も日本には憲法9条があり、戦争はできないので、「人道復興支援」だけとし、支援を行う場所は「非戦闘地域」に限るということで、サマワを選びました。陸上自衛隊600名を派遣するとともに、クウェートに航空自衛隊を派遣し、要員や物資の輸送にあたらせることにしました。陸上自衛隊は04年1月から約2年半駐留して、給水、医療、道路整備等の事業を行ったのち、06年7月に全員撤収しました。(つづく)

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【九条噺】

 早いもので、作家で歌人の松下竜一がなくなってもう5年になる。この作家のことは長い間全く知らなかった。ある時、落合恵子さんらが推奨して著作集(『松下竜一その仕事』河出書房)が出ることを知り、たまたま書店で彼の『豆腐屋の四季』を見つけたので買い求めた▼松下竜一は、幼いときに高熱で片目を失い、肺にも大きな障害をかかえた。その身体で若くして家業の豆腐屋を継ぐ。当時の歌に、「泥のごとき できそこないし豆腐投げ、怒れる夜のまだ明けざらむ」とある。まさに苦悶苦闘の日々だったが、配達先で知り合った少女と心を通わせるようになり、これが苦労を乗り切る何よりの力となって、やがて二人が結ばれる、という心あたたまる作品だった。人としての尊厳を守り、誠実に、ひたむきに生きようとする作家の生き様も伺えて感銘を受けた▼『松下竜一その仕事』はナント30巻にもなった。海を埋め立て、コンクリート会社を建設する計画に反対する女性たちのたたかいを描いた『風成の女たち』、ダム建設に反対して根城にたて こもり、権力に向かい合う『砦に拠る』など、ノンフィクションものが多いが、少年少女向けの小説も含めて分野は実に幅広い▼著作全体を通して、この作家の人間味あふれる心ゆたかな視点が伺える。晩年、珍しくテレビのインタビューに登場し、「やはり今気になるのは憲法9条を変えようとする動きですねぇ」と長年の労苦を物語る皺だらけの顔を一瞬曇らせたのが記憶に残る。 (佐)

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九条の会いなみ「合唱と朗読で平和を願う集い」開催

 「九条の会いなみ」は12月5日、印南公民館で結成3周年記念行事「合唱と朗読で平和を願う集い」を開催しました。呼びかけ人・早田さんの開会の挨拶に続き、読み聞かせサークル「グリムの会」による群読が行われ、「消えた残雪のような希み」が読まれました。昭和16年、中国大陸で胸部を撃ち抜かれて戦死した田辺利宏が書き残した何編かの詩を構成したもの。ピアノの演奏や背後に映し出されたスライドが詩を視覚でもわかるように効果的にはたらき、参加者の胸に訴えるものでした。
 次に、女声合唱団「コア・ブレーメン」の演奏。「私たちに平和を下さい」という意味のミサ曲で始まりました。金子みすゞの詩「明るいほうへ」など5曲の演奏がありました。最後に印南町で作られ、印南町の木々を歌った曲「わが町の木々たちよ」で締めくくりました。最後は、「よみきかせ9条の会」から来て下さった別院丁子さんの朗読「おかあさんの木」です。三浦健一さんのギターの音色と一体になり、約50名の参加者は皆、泣かされました。こんな悲しい思いをさせた戦争を、二度としてはいけないという強い気持ちが涙と一緒にあふれるようでした。
 閉会の挨拶に立った呼びかけ人・中家さんは、「久しぶりに体が震えました。そして、その思いが涙となって流れ出しました」と切り出しました。「よかった」「とてもよかった。久しぶりに泣いた」「もっと大勢の人に聞いてもらいたい」との感想をたくさんいただきました。(事務局長・宮本浩子さんより)

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民主党案も「海外での武力行使」では自民党案と同じ
「九条の会」事務局・川村俊夫さん講演 ②


 11月25日、和歌山市勤労者総合センターで「九条の会」事務局・川村俊夫さんの「新政権下での憲法をめぐる情勢」と題する講演がありました。その要旨を3回に分けてご紹介します。今回は2回目。

 民主党「憲法提言」や鳩山首相「新憲法試案」は自民党の改憲案とはっきり違うところがある。憲法には「近代憲法」と「現代憲法」があるが、戦前の憲法はどちらにも該当しない外見的立憲主義に過ぎないものだった。自民党の改憲案は外見的立憲主義の体質を強く残すものだ。例えば、「愛国心」「国防の義務」を謳っているし、「基本的人権は公共の福祉のために行使する義務を負う」と、権利が義務になっている。これに対して民主党の改憲案は「近代憲法」だが、「現代憲法」ではない。9条についてはどちらも改憲で一致している。民主党案は「日本国憲法に(国連憲章第51条の)『制約された自衛権』を明確にする」としている。51条に記された「自衛権」は、国連の集団安全保障活動が作動するまでの間の、緊急避難的な活動に限定されているものとされるが、「集団的自衛の権利」も認めており、51条を云々することは集団的自衛権も行使できるということだ。また、「(時間的に)制約された」というが、ベトナム戦争は10年以上もかかったし、アメリカは拒否権で国連安保理の議題にすることさえ阻止できる。だから、国連はいつまでも必要な措置を講じられず、実際は制約されていないことになる。それを承知で小沢幹事長は「国連を中心とした平和活動に積極的に参加しなければならない」と言っている。「国連を中心とした」と言いながら多国籍軍を認めており、「国連が何かを言えば、やっていいのだ」という論法だ。
 鳩山「試案」も、「日本国は、国連その他の確立された国際的機構が行う平和の維持と創造のための活動に積極的に協力する」「日本国は、自らの独立と安全を確保するため、自衛軍を保持する」となっている。だから、日本を守るためだけというのではなく、海外で自衛隊に武力行使をさせるという点では自民党と共通している。違うのは基本的人権の条項がたくさんあることだ。例えば、名誉権、プライバシー権、子ども・高齢者・障害者の権利等々だが、「そのための義務を国が負う」とは書いていない。「現代憲法」ではないという意味は、「近代憲法」は人権を書くが、国は積極的に介入しない。介入する人権は、契約の自由とか財産権だ。つまり、資本家の権利を守るために人権が憲法に書き込まれた。資本家はできるだけ安い賃金で長時間労働者を働かせようとする。働かされる労働者は命がけだ。闘いが起り、社会保障や労働時間の制限が考えられた。アメリカは未だ「近代憲法」の国だ。
 日本で問題を考えるときに、25条成立の背景を考えないと、いくら権利を並べ立てても「絵に描いた餅」になってしまう。大企業の内部留保は10年で2倍になっているのに、どうして失業者がいっぱいいるのか。簡単に首が切れる仕組みを作ったから、これだけの内部留保ができたとも言える。国際競争力をつけるということで法人税率はどんどん下げた。よその国の国民に肩代わりさせるというやり方では日本経済は決して回復しない。そういう構造を変えていかないと憲法を生かした国にはなっていかない。(つづく)

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(2010年1月17日入力)
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