「九条の会・わかやま」 120号を発行(2009年12月26日付)

 120号が12月26日付で発行されました。1面は、今は反構造改革・反改憲の新しい政治の第1歩「民主党政権と改憲の行方」渡辺治さん講演①、戦争は人間を人間でなくするもの(月山さん出版記念講演②)、九条噺、2面は、「九条の会・美浜」農業まつりで署名、当会呼びかけ人・宇江敏勝さん 熊野地方エッセー 全12巻完結 です。
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今は反構造改革、反改憲の新しい政治の第1歩のところ

 12月13日の「九条の会」近畿ブロック交流集会で一橋大学大学院教授・渡辺治さんが「民主党政権と改憲の行方-九条の会の新しい課題を探る」と題して講演をしました。その要旨を3回に分けて紹介します。今回は1回目。

渡辺治さん講演 ①

 総選挙の結果には3つの特徴がある。①反構造改革、反改憲の声が自公政権を押し流し、初めて政権を変えた。②しかし、構造改革、改憲に反対した社民党や共産党には行かなかった。③「民主党+自民党」の得票率は何も変わっておらず、保守二大政党制が固定化した。もし、民主党が失敗するとまた自民党に戻るかもしれない。今は反構造改革、反改憲の新しい政治の大きな第1歩のところにいる。第2歩に進むか、戻るかは今後の私たちの運動に関わる。
 民主党を勝たせた最大の力は反構造改革、反改憲の声が民主党に集中したことだ。しかし、これだけなら、ここまで大勝はしなかった。もうひとつの力は大都市の、構造改革を進めると自分たちの暮らしが良くなると考える大企業のエリートサラリーマンや上層部の人たちが、自民党では構造改革が進まないと考えたからだ。左に行こうという声と、右に行こうという声が合わさって民主党をこれだけ勝たせたのではないか。大都市では03年に既に民主党の得票率が自民党を上回っている。この時の民主党は構造改革を自民党と競い合っていた。自民党は地方の利益誘導型政治で、大企業の税金を安くするために、財政を縮減して構造改革をやることができるのは大都市に基盤をおいた民主党だと言っていた。構造改革を期待して民主党に入れている人がかなりいる。05年の小泉選挙では自民党に浮気をしたが、安倍、麻生政権でまた民主党に戻った。(つづく)

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戦争は人間を人間でなくするもの

 「九条の会・わかやま」呼びかけ人・月山桂弁護士の自費出版を記念する講演会が、12月10日に開催されました。講演の要旨をご紹介しています。今回は2回目で最終回。

アルビル定期航空便とは

 アルビルはカムフラージュで、本当の狙いはバグダッドへの輸送です。バグダッドは戦闘地域です。しかも、輸送するのは、80%以上がアメリカ軍兵士と軍事物資です。いくらカムフラージュしても、航空自衛隊の活動は後方支援どころではなく、アメリカ軍と一体となりイラクで戦争をしたと言うべきです。直接、武器を使用しないだけ。

ソマリア沖への派遣は

 テロ特措法やイラク特措法などでの出動は全て国会の承認を要しましたが、海賊対処法では国会の承認は必要ありません。そもそも、海賊退治に自衛隊の出動が必要なのでしょうか。所詮、自衛隊出動を国民に慣れさせたいという政府の思いを示したものに外なりません。

アメリカの要請を断われるか

 自衛隊の海外派遣の積み重ねで、国民は自衛隊が遠方の海外に公然と出動することに馴れてしまい、憲法感覚が麻痺し、不感症になってしまったように思われます。それに9条が政治的解釈でなし崩し的に改正されてしまった。戦後60年、日本は戦争で1人の外国人も殺さず、外国の土地を侵すこともありませんでした。アメリカから要請されても、平和憲法があると、戦争への参加を拒否してきました。今、日本が憲法9条を改正して普通の国となれば、アメリカの要請を果たして断ることができるかは力関係からして極めて疑わしい。

戦前の日本の軍隊の実態は

 最近「アメリカばんざい」という映画を見ました。発声練習の場面では、どこの軍隊も同じと思った。「もっと大きく!もっとはっきり!」、だんだんみんな絶叫調になっていく。私のいた軍隊でも同じ。軍隊では、便所に行く時でさえ「月山上等兵、厠に行ってまいります!」「はっきり言え!」とこれを4~5回繰り返えさせられます。声を出すことひとつとってもこんな調子。夜には、いじめや陰惨なしごきがあり、殴られるのは日常茶飯事です。消灯ラッパの音階は今でも忘れられません。「兵隊さんはなー、また寝て泣くのかなー」と音階に合わせて歌われたものです。軍隊の辛さに耐えかね、自殺する兵士もあったと聞きます。戦争は人間を人間でなくするものです。(おわり)

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【九条噺】

 これはたまげた。何しろ、小沢氏を代表とする〝訪中団〟は、総勢で6百人。胡錦濤国家主席を囲んでの記念写真の大きさは横幅が1.5㍍にもなったと聞く。もちろん日中友好は結構だが、国内課題も山積みのこの時期に、なぜかくも空前の規模なのか、筆者はよくわからない。当然私費もあるだろうが、国費も半端ではなかろう。他方、国内では、民主党の蓮舫議員らによる「事業仕分け」が行われ、文科省関連予算にも大ナタがふるわれた。国立大学法人への交付金は半減し、授業料の大幅引き上げも必至の様相。科学技術研究部門もバッサリやられ、江崎氏、益川氏らノーベル賞学者らも将来を憂う。芸術文化関係に至っては、「芸術は個人責任」「伝統文化を子どもに伝えるのも今さら不必要」などとされ、さらに学童保育関連予算も削られた。政策も理念も示さず、ただ〝大胆な削減〟だけを見せつけられてもなぁ、と思う▼第一、ムダを排除するのであれば、例えば、在日米軍への〝思いやり予算〟など、本来支出する必要がないものを真っ先に削るべきだと思うが、それは温存、そのうえ上記のような削減と並行して空前規模による〝 訪中団〟の派遣というから、ハテサテ新政権はどうなっているのか、と思うのである▼目下のところ、幸いにも総理持論の改憲論が持ち出される気配はない。しかし、〝集団的自衛行動は憲法上問題なし〟などとする小沢氏の色合いも日々濃くなり、〝注意信号〟は消えそうにない。(佐)

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「九条の会・美浜」農業まつりで署名活動

 「九条の会・美浜」は12月13日に開催された第28回美浜町農業まつりで「町民過半数署名活動」を行いました。
 「九条の会・美浜」の呼びかけ人が実行委員なので、実行委員会に模擬店コーナーへの出店をお願いし、粘り強くがんばっていただいき、許可を得ることができました。午前9時から3時まで2時間交代で2人ずつ計6人と呼びかけ人が、新種のオクラの種を配りながら、署名をお願いしました。参加した人たちと楽しい会話の中、110筆の署名をしていただくことができました。「戦争に反対する署名は大事や」という年配の人や孫に名前を書かせる人などもあり、活気あるものでした。
 「九条の会・美浜」はこれまで事前ビラと家庭訪問で過半数署名を集めてきましたが、このようなお祭りの中へ会が表立って対話の輪をひろげていく取り組みは、新鮮で、大いに試みていく必要を感じるものでした。(事務局長・大谷眞さんより)

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当会呼びかけ人・宇江敏勝さん、熊野地方のエッセー、全12巻が完結
 『山河微笑』を刊行

 田辺市中辺路町野中の作家、宇江敏勝さん(72)が13年かけて執筆、編集してきたエッセー「宇江敏勝の本」全12巻が、このほど刊行した『山河微笑 熊野古道の里で』(四六判、324ページ、2200円)で完結した。全国の主な書店で販売している。  『山河微笑』は、第1章=熊野古道の野菜塾▽第2章=カモシカの仔顛末(こてんまつ)記▽第3章=山の短信─の3章で構成。1章は書き下ろし、2章と3章は雑誌や新聞に長年にわたり寄稿した作品などを収めた。
 宇江さんは、炭焼きをしていた両親と山中を移動しながら成長した。県立熊野高校卒業後は森林作業員として主に和歌山や奈良の山を巡り、20歳のころ山小屋で執筆活動を開始した。これまで数多くの作品を手がけ、書き下ろしのほか既刊作品を修正して96年、新宿書房から「宇江敏勝の本」の刊行が始まった。
 『山河微笑』のあとがきで宇江さんは「全体として紀伊半島南部の熊野地方における自然、風俗、宗教、生業などの状況と、時代の変遷ぶりを自分の生活をとおして書いてきたつもり」と振り返っている。(毎日新聞和歌山版 12月18日付 )

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「九条の会」は保守・革新の違いを超えて
  「九条の会」事務局・川村俊夫さん講演 ③


 11月25日、和歌山市勤労者総合センターで「九条の会」事務局・川村俊夫さんの「新政権下での憲法をめぐる情勢」と題する講演がありました。その要旨を3回に分けてご紹介します。今回は最終回。

 さらに、民主党改憲案が自民党改憲案と全く違うところは、国会、内閣の改革が大きな焦点になっているところだ。小沢幹事長の『日本改造計画』では、「政治改革の主要な課題の一つは、名実ともに首相がトップに立ち、政治をリードしていく体制を作ることである」と述べている。小沢氏の官僚答弁の禁止は、内閣法制局長官が狙いだ。湾岸戦争の時、「国連平和協力法案」が廃案になったのは、法制局長官が「例え、国連決議があっても自衛隊を戦地に送ることは憲法に違反する」と答弁したからだ。ということで、民主党の政府になったので、内閣法制局長官が答弁に立てないようにしようとしている。集団的自衛権が認められると、「9条があると何が不便か」というと、アメリカ本国に自衛隊が出かけて戦うこと以外に考えられない。首相が憲法解釈の権限を握るということは、大変なことだ。この問題を重視した大きな取り組みが必要だ。小沢氏の発想は「多数であれば何をやってもいい」という国会運営の権限を首相に与えようというものだ。さらに邪魔になる政党に口出しさせないために、比例定数を180から80を減らそうとしている。国会の会期制廃止、委員会の定数削減などをしようとしている。小沢氏の「日本改造計画」が既に始まっている。
 鳩山「試案」では、国会の最高機関性を否定、首相の権限強化を目指し、首相をトップに祭り上げた政治体系を作ろうとしているが、小沢氏がモデルにするイギリスでは、「議会は立法せず合法化するだけ」という諺がある。しかし、強権政治に批判が起り、比例代表制採用の動きが、ウェールズ、スコットランド、EUなどに広がっている。
 今後の日本の憲法運動をどうするかという問題だが、今主流になってきたのは、各国が平和を願うだけでなく、地域国家が協力しあうようになったことだ。一番最初はEUで、最初は経済協力から、政治・外交・軍事を含むEUに発展させた。今やヨーロッパで戦争が起る可能性はほとんどない。東南アジアでは、ベトナム戦争でアジア人同士が殺しあったことから始まり、東南アジア友好協力条約(TAC)を6カ国が作り、現在では52カ国、世界人口の68%が参加している。最近ではEU、米国が加盟した。さらに「南米共同体」が04年に発足し、来年にはアメリカ、カナダ抜きで、33カ国3億8千万人の「中南米カリブ連合」に発展する。そのような時代にあって軍事同盟を強化しようという動きは日米関係ほど顕著なものはない。こういう道を進めばアジアで孤立せざるを得ない。鳩山首相は「友愛」を言うが、かつての日本の「友愛」はどんなものであったかをアジアの人は忘れている訳ではない。
 最近、困っていることは「九条の会」の性格が曖昧になってきているのではないかということだ。「九条の会」の最大の特色は、「九条を中心に、日本国憲法を守る」という緩やかな線で広範な人々が結集する場だ。憲法を守るということでは、「保守」「革新」の区別はない。そうしなければ、過半数の揺るぎない多数を結集することはできない。いざ、草の根でせめぎあいになった時、本当に私たちが多数派でいられるためには「保守」「革新」の違いを超えて話し合いの場を作ることだ。「天気やおかずの話をするように9条の話を」する「九条の会」が必要だ。自民党の地域支配が崩れつつある今こそ大胆に「九条の会」作りをやっていく必要がある。(おわり)

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(2010年1月17日入力)
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