渡辺治さん講演 ②
反構造改革、反改憲の声が何故民主党に集中したのか。3つの原因がある。1つは、日本で構造改革の悲惨な矛盾が爆発し、反構造改革の運動が始めて日本全国に広がった。餓死とか自殺とか、ヨーロッパではないことが起った。何故日本で欧米では起らない矛盾が爆発したかというと、日本は福祉国家の政治ではなかった。労働組合も構造改革に協力し、ヨーロッパのように抵抗しなかったので、すいすい進んだ。一気に大企業の大儲けの体制が出来上がるとともに、悲惨な状況も出来上がった。これが自公政権を追い詰めた第1の理由だ。2つ目に、日本で初めて反構造改革の大衆運動が起こった。日比谷の「年越し派遣村」は日本に貧困がないというのは嘘だということを示した。今までの運動を超えた、「九条の会」に匹敵するような反貧困の新しい大衆運動だった。その特徴は個人がイニシアティブを取り、労働組合と個人の新しい共同が生れたことだ。
反改憲の運動でも大きな新しい運動が起こった。06年に安倍首相が任期中の改憲を主張した背景は2つあった。1つは、あの時、改憲の世論が賛成の方向に変わり、改憲して自衛隊を海外に出さないと世界の安全は守れないという声が多数を占めたこと。2つ目は、民主党が改憲に賛成だということ。自公だけでは3分の2に足りない。この2つを前提にして、安倍政権は改憲に踏み込んだ。ところが、「九条の会」を中心とした大きな改憲反対の運動がこの2つの前提を壊した。04年4月の読売の世論調査では賛成は65%、反対は22.7%だった。3分の2が改憲に賛成しているとして踏み込んだが、「九条の会」が1年間に2千できて、全国津々浦々に広がり、それに応じて世論が大きく変わっていった。マスコミは報道しなかったが、「九条の会」が世論を変えた。ついに、08年4月には改憲賛成42.5%、反対43.1%と逆転してしまい、これでは改憲できないという状況が生れた。これに合わせて改憲賛成の民主党が徐々に後退し、改憲手続法にも最後には反対にまわった。これで2つの前提が壊れてしまい、改憲は出来なくなった。
「九条の会」はどのような特徴を持っているか。1つは、「革新」を超えて、9条改憲に反対する人はみんな手をつなごうという運動である。2つ目は、戦後の社会運動の中で初めて中高年の人が主力になって運動を起こし、この戦争をしない日本を守るんだということで立ち上がっている。これは新しい広がりをもっている。3つ目は、個人のイニシアティブで、誰でも入れる敷居の低い会を作ったということが、また世論を変えていった。
反構造改革、反改憲の声が自民党を追い詰めたのだが、それなら共産党、社民党が増えるはずだが、民主党に集中した。それは民主党が変わったからだ。06年までは構造改革を自民党と競い合う政党であったが、07年に「生活者の党」を言い、福祉を打ち出し、これが国民の支持を得た。民主党は、共産党や社民党が主張しなければ、例えば、後期高齢者医療制度の廃止などは言わない。それが皮肉にも民主党を大勝させた原因になった。でも、反構造改革、反改憲の旗を掲げた政党の存在は非常に大きかった。大都市で民主党に構造改革を進めてほしいと考える人も民主党を支えており、民主党混乱の要因になっている。さらに、財界、アメリカは民主党が勝つと決まった段階から民主党を応援し始めた。民主党を現実的な政党に変えるため、日米同盟維持、構造改革維持の圧力を一斉にかけてきた。(つづく)
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PAC3全国配備を狙う 10年度防衛予算は4.8兆円
09年12月26日付朝日新聞が報じるところによれば、鳩山内閣は10年度政府予算案を閣議決定し、防衛予算は総額4兆7903億円となりました。PAC3(地対空誘導弾パトリオットミサイル)システム766億円(PAC3能力向上127億円、PAC2システム改良639億円)を、空母型ヘリ搭載護衛艦1208億円、新戦車13両187億円も含まれています。
これは17日に鳩山内閣が10年度防衛予算編成基本方針を決定しましたが、それを受けたものです。基本方針は防衛計画大綱の先送りを受けたものですが、自公政権時代の04年度に策定された現在の大綱と変わりがありません。基本方針では「北朝鮮の核・弾道ミサイル問題の深刻化」や「周辺諸国の軍事力の拡充・近代化及び活発化が見られる」と中国を意識し、現大綱に基づき整備するとしています。
ミサイル防衛システム(BMD)では関東、近畿・東海、九州に加えて北海道、青森、沖縄へのPAC3の配備に備えて、既存のPAC2のレーダーや指揮統制システムを改良するとしています。今後、PAC3実弾や発射装置を導入すれば、PAC3として運用が可能になります。BMDでは従来、SM3(イージス艦に搭載した迎撃ミサイル)で日本全域を守り、SM3で迎撃に失敗した場合に、「政経中枢など、攻撃される危険性が高い地域の防衛」のためにPAC3を配備するとしていました。
今回の予算決定はPAC3の全国配備拡大を目指すものであり、周辺諸国への緊張を拡大するばかりです。政権が交代しても、「北朝鮮脅威」論を口実として、日米軍事同盟に頼る政策を継続・強化していると言われても仕方がないでしょう。
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謹賀新年
本年も会紙「九条の会・わかやま」をよろしくお願いいたします
2010年元旦
「九条の会・わかやま」事務局一同
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