「九条の会・わかやま」 121号を発行(2010年1月7日付)

 121号が1月7日付で発行されました。1面は、反構造改革・反改憲の声がなぜ民主党に集中したか 渡辺治さん講演A、PAC3全国配備を狙う10年度防衛予算4.8兆円、九条噺、2面は、「北朝鮮脅威論」は日米軍事協力強化策で仕組まれたもの、首相 改憲に意欲、書籍紹介『加藤周一のこころを継ぐために』 などです。
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[本文から]

反構造改革、反改憲の声が何故民主党に集中したか

 12月13日の「九条の会」近畿ブロック交流集会で一橋大学大学院教授・渡辺治さんが「民主党政権と改憲の行方−九条の会の新しい課題を探る」と題して講演をしました。その要旨を3回に分けて紹介しています。今回は2回目。

渡辺治さん講演 A

 反構造改革、反改憲の声が何故民主党に集中したのか。3つの原因がある。1つは、日本で構造改革の悲惨な矛盾が爆発し、反構造改革の運動が始めて日本全国に広がった。餓死とか自殺とか、ヨーロッパではないことが起った。何故日本で欧米では起らない矛盾が爆発したかというと、日本は福祉国家の政治ではなかった。労働組合も構造改革に協力し、ヨーロッパのように抵抗しなかったので、すいすい進んだ。一気に大企業の大儲けの体制が出来上がるとともに、悲惨な状況も出来上がった。これが自公政権を追い詰めた第1の理由だ。2つ目に、日本で初めて反構造改革の大衆運動が起こった。日比谷の「年越し派遣村」は日本に貧困がないというのは嘘だということを示した。今までの運動を超えた、「九条の会」に匹敵するような反貧困の新しい大衆運動だった。その特徴は個人がイニシアティブを取り、労働組合と個人の新しい共同が生れたことだ。
 反改憲の運動でも大きな新しい運動が起こった。06年に安倍首相が任期中の改憲を主張した背景は2つあった。1つは、あの時、改憲の世論が賛成の方向に変わり、改憲して自衛隊を海外に出さないと世界の安全は守れないという声が多数を占めたこと。2つ目は、民主党が改憲に賛成だということ。自公だけでは3分の2に足りない。この2つを前提にして、安倍政権は改憲に踏み込んだ。ところが、「九条の会」を中心とした大きな改憲反対の運動がこの2つの前提を壊した。04年4月の読売の世論調査では賛成は65%、反対は22.7%だった。3分の2が改憲に賛成しているとして踏み込んだが、「九条の会」が1年間に2千できて、全国津々浦々に広がり、それに応じて世論が大きく変わっていった。マスコミは報道しなかったが、「九条の会」が世論を変えた。ついに、08年4月には改憲賛成42.5%、反対43.1%と逆転してしまい、これでは改憲できないという状況が生れた。これに合わせて改憲賛成の民主党が徐々に後退し、改憲手続法にも最後には反対にまわった。これで2つの前提が壊れてしまい、改憲は出来なくなった。
 「九条の会」はどのような特徴を持っているか。1つは、「革新」を超えて、9条改憲に反対する人はみんな手をつなごうという運動である。2つ目は、戦後の社会運動の中で初めて中高年の人が主力になって運動を起こし、この戦争をしない日本を守るんだということで立ち上がっている。これは新しい広がりをもっている。3つ目は、個人のイニシアティブで、誰でも入れる敷居の低い会を作ったということが、また世論を変えていった。  反構造改革、反改憲の声が自民党を追い詰めたのだが、それなら共産党、社民党が増えるはずだが、民主党に集中した。それは民主党が変わったからだ。06年までは構造改革を自民党と競い合う政党であったが、07年に「生活者の党」を言い、福祉を打ち出し、これが国民の支持を得た。民主党は、共産党や社民党が主張しなければ、例えば、後期高齢者医療制度の廃止などは言わない。それが皮肉にも民主党を大勝させた原因になった。でも、反構造改革、反改憲の旗を掲げた政党の存在は非常に大きかった。大都市で民主党に構造改革を進めてほしいと考える人も民主党を支えており、民主党混乱の要因になっている。さらに、財界、アメリカは民主党が勝つと決まった段階から民主党を応援し始めた。民主党を現実的な政党に変えるため、日米同盟維持、構造改革維持の圧力を一斉にかけてきた。(つづく)

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PAC3全国配備を狙う 10年度防衛予算は4.8兆円

 09年12月26日付朝日新聞が報じるところによれば、鳩山内閣は10年度政府予算案を閣議決定し、防衛予算は総額4兆7903億円となりました。PAC3(地対空誘導弾パトリオットミサイル)システム766億円(PAC3能力向上127億円、PAC2システム改良639億円)を、空母型ヘリ搭載護衛艦1208億円、新戦車13両187億円も含まれています。
 これは17日に鳩山内閣が10年度防衛予算編成基本方針を決定しましたが、それを受けたものです。基本方針は防衛計画大綱の先送りを受けたものですが、自公政権時代の04年度に策定された現在の大綱と変わりがありません。基本方針では「北朝鮮の核・弾道ミサイル問題の深刻化」や「周辺諸国の軍事力の拡充・近代化及び活発化が見られる」と中国を意識し、現大綱に基づき整備するとしています。
 ミサイル防衛システム(BMD)では関東、近畿・東海、九州に加えて北海道、青森、沖縄へのPAC3の配備に備えて、既存のPAC2のレーダーや指揮統制システムを改良するとしています。今後、PAC3実弾や発射装置を導入すれば、PAC3として運用が可能になります。BMDでは従来、SM3(イージス艦に搭載した迎撃ミサイル)で日本全域を守り、SM3で迎撃に失敗した場合に、「政経中枢など、攻撃される危険性が高い地域の防衛」のためにPAC3を配備するとしていました。
 今回の予算決定はPAC3の全国配備拡大を目指すものであり、周辺諸国への緊張を拡大するばかりです。政権が交代しても、「北朝鮮脅威」論を口実として、日米軍事同盟に頼る政策を継続・強化していると言われても仕方がないでしょう。

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謹賀新年
 本年も会紙「九条の会・わかやま」をよろしくお願いいたします
  2010年元旦
  「九条の会・わかやま」事務局一同

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【九条噺】

 『反戦詩華集 生きていてほしいんです 戦争と平和』はなかなかステキな冊子だ。詩人の谷川俊太郎氏らが選んだ41編の詩が掲載されている。峠三吉、栗原貞子、与謝野晶子、石垣りん、・・・それぞれに有名な詩が紹介されているなか、異色は藤田敏雄の「約束」だろう。この詩は「題名のない音楽」というテレビ番組で紹介された。藤田が日本にはもっとドラマティックな歌があってもいい≠ニ、自ら詩を書き、前田憲男が曲をつけたのだという。愛するわが子の手を握り、微笑みながら息絶えてゆく母親、そして戦死する父親への子どもの思いを歌う。惜しいことに、この曲が6分を超える大作のために、テレビでも滅多に演奏されない▼新川和枝(詩人)が戦後現代詩の長女≠ニいう茨木のり子も2編の詩が選ばれた。一つは「鄙ぶりのうた」。それぞれの国や地域には、それぞれの土地や風土になじみ、昔から人々に愛され、歌い継がれてきた歌がある、なのに、なぜ起立してものものしく「国歌」など歌わねばならないのか∞私は立たない!≠ニ詠う。そして今一つは最も有名な詩「わたしが一番きれいだったとき」。戦争への強い怒りを、やさしいことばでゆたかに表現した、説得力溢れる詩だ▼茨木のり子(1926〜2006)は「九条の会アピール」にもいち早く賛同し、「九条の会・詩人の輪」の結成をよびかけた。今も全国各地の9条の会の集いでは「わたしが一番きれいだったとき」がしばしば朗読されている。(佐)

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「北朝鮮脅威」論は日米軍事協力強化策で仕組まれたものだ

 09年12月13日の「九条の会」近畿ブロック交流集会の第1分科会「東北アジア・世界の平和と憲法9条」で梅林宏道さん(ピースデポ代表)が話された内容の要旨を紹介します。

 北朝鮮の「核の脅威」論、これは「軍事的脅威には軍事的能力の強化」と、「核の傘」の保証やミサイル防衛など日米軍事協力の強化策の中で仕組まれたものである。北朝鮮の核の能力は、プルトニウムの備蓄からいって、6〜7個の核爆弾を持っているに過ぎない。アメリカは9千個、中国は2百個、ロシアは1万個。北朝鮮が核兵器を使うことは自殺行為に等しい。ミサイルというのは発射したのは誰かが、たちどころ判る兵器で、弱小国は報復能力によほど自信がないと使えない。
 横須賀を母港とする米イージス艦には892本のトマホークが積まれていること、原潜の沖縄への立ち寄りが急増していること、地上配備のパトリオットを日本はすでに買わされていることなどは、アメリカが日本にミサイル防衛を強要しているためである。それは、第1にアメリカ本土防衛のための前進配備システムであり、第2に日本は武器貿易の顧客であり、利用技術の獲得やアメリカ国内向けの説得材料などのためだ。
 こうした状況で私たちがすべきことは、第1に北東アジア非核兵器地帯の構築。第2に専守防衛地位とその地域化(注)。日本はしないこと、してはならないことを明確に規定し、国連などで国際社会に宣言しなければならない。第3に北東アジアミサイル制限体制構築である。
 今世界に5つの非核兵器地帯条約があるが、北東アジア非核兵器地帯は、核武装か「核の傘」かの選択ではなく、話し合いによる安全保障に一歩を踏み出す大きな意義がある。ピースデポでは「スリー・プラス・スリー」構想を提言する。これは日本、韓国、北朝鮮の非核兵器国3国とロシア、中国、アメリカの近隣核兵器国で非核兵器地帯条約を作り上げようとするものだ。
 草の根から今、私たちがしなければならないことは、非核自治体宣言の再宣言運動として、非核3原則に加えて、北東アジアの非核地帯を作る要求を入れていくことが必要だ。(当会事務局・松本真澄)

(注)「専守防衛地位とその地域化」とは、「日本の防衛政策は、在日米軍が日本ができない攻撃の役割を果たし、自衛隊は既に『専守防衛』の範囲を超える戦力を保持しており、『専守防衛』とは言い難い。地域安全保障のための有効な真の『専守防衛』に発展させるためには、自衛隊だけではなく、日米安保体制をも含めた『専守防衛化』が必要であり、『日本領域や限定された周辺区域に入った敵の攻撃力に対してのみ軍事力を行使する』というように『専守防衛』の地域も明確にする必要がある」といった考え。(編集部)

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首相、改憲に意欲

 鳩山首相は12月26日、「ベストな国の在り方のための憲法を作りたい気持ちはある」と、憲法改正に意欲を示しました。首相在任中に改憲に言及したのは安倍元首相以来です。首相は05年に「新憲法試案」で「自衛軍の保持」を主張するなど、9条改憲が持論です。「必ずしも9条ということではなく」と言いますが、党内での改憲論議は、9条改憲への「地ならし」につながる恐れがあります。

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書籍紹介
『加藤周一のこころを継ぐために』
なぜ、九条の会を立ち上げたのか

 2008年12月5日に亡くなった加藤周一を悼み、九条の会がひらいた講演会「加藤周一の志をうけついで」。原爆投下後に医療従事者としてみた広島の惨状、親友を先立たせた無念、親友を奪った戦争への怒りなど、加藤がなぜ実践者となったのかの原点を探る。そして、その意志を実現するために、われわれができることは何かを真摯に問いかける。 岩波書店


著者:井上ひさし、梅原猛、大江健三郎、奥平康弘、澤地久枝、鶴見俊輔、成田龍一、矢島翠
発行:2009年12月4日 第1刷発行
価格:500円+税
岩波書店(岩波ブックレットbV71)

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講師を派遣します!
憲法9条を守る和歌山弁護士の会【連絡先】金原法律事務所
TEL:073-427-0852  FAX:073-427-0853
E-mail:nwkv89851@hera.eonet.ne.jp

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(2010年1月17日入力)
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