「九条の会・わかやま」 127号を発行(2010年3月24日付)

 127号が3月24日付で発行されました。1面は、核持ち込みは「暗黙の合意」、民主党政権が変わらない根本問題は日米安保(森英樹さん講演要旨A)、九条噺、2面は、憲法の示す理想に近づけるのが憲法のあり方(石津剛彦さん講演要旨A)、自衛隊イラク派兵は違憲ではない? 鳩山内閣が正当化 です。
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[本文から]

核持ち込みは「暗黙の合意」
密約は廃棄し「非核3原則」の厳守を


 核持ち込みなど「密約」を検証していた外務省の有識者委員会は9日、報告書をまとめて岡田外相に提出しました。
 今回の検証対象は@60年の安保条約改定時の「核持ち込み」A同じく安保条約改定時の「朝鮮半島有事の際の在日米軍基地使用」B72年の沖縄返還時の「核再持ち込み」C同じく沖縄返還時の「原状回復費の肩代わり」の4点です。報告書はAについては「密約」と認定しましたが、@Cは「暗黙の合意」「広義の密約」があったとしています。Bは日米両首脳の署名入り文書があるのに、「密約」とは認定していません。
 最大の焦点である「日米核密約」は、「核搭載艦船の寄港、通過」を事前協議対象外とし、アメリカは核を搭載した艦船を自由に日本に寄港させ、領海を航行できるもので、「非核3原則」の「持ち込ませず」に真っ向から違反します。「密約」疑惑は70年代からたびたび指摘されてきました。ところが日本政府は国会答弁などで「事前協議の対象になる」と説明し続け、実際に米艦船が寄港した際には、米側から事前協議の提起がないから核搭載はないという説明がされてきました。日本政府は長年にわたり、国是ともいわれる「非核3原則」で国民をだまし続けてきたことになります。
 報告書は、@について「討議の記録」という文書が発見されているのに、「暗黙の合意」「広義の密約」としています。今後政府はどういう態度をとるのでしょうか。岡田外相は記者会見で、「今後アメリカへの働きかけは」と問われて、「何もするつもりがない」と繰り返しています。鳩山政権は「暗黙の合意」だとか言っていないで、「密約」をはっきり認めてこれを廃棄し、「非核3原則」を厳守し、憲法9条が指し示す日本に進む措置をとることが求められているのではないでしょうか。

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民主党政権が変わらない根本問題は日米安保

 2月27日、和歌山市勤労者総合センターで憲法9条を守る和歌山市共同センター主催の「春の憲法学習会」が開催され、龍谷大学教授(名古屋大学名誉教授)森英樹氏が「60年安保改定から50年−憲法9条のゆくえ」と題して講演されました。その要旨を3回に分けてご紹介します。

森英樹さん講演要旨A

 気になることは、民主党政権の中に改憲のバネがまだ残っている可能性があるということだ。不安要素を見てみると、鳩山首相が根っからの改憲論者だということだ。05年の『新憲法試案』では「明治憲法・・の伝統を受け継ぐ」「天皇を元首とする」など自民党もたじろぐ右寄りの案だ。9条では軍事力の保持を禁止している第2項を「現行憲法の最も欺瞞的な部分」だと罵詈雑言を浴びせ、これを削除し、「自衛軍を保持する」と主張している。自民党案と全く同じだ。集団的自衛権については制限的という形容詞はついているが憲法上認めるように要求している。こうした構想は鳩山一郎のDNAだと自称している。小選挙区制を導入した上で改憲へという鳩山一郎の戦略を著書の中で賞賛している。このDNAがいつ動き出すか警戒は解けない。鳩山首相には自主防衛論があり、場合によっては独自にアメリカから離れて、核武装もして日本を一人前の軍事国家にすることによって、アメリカと対等になろうという考え方も潜んでいる。憲法9条に対しては一層攻撃的になる可能性がある。
 もうひとつ懸念の小沢氏の「政治改革」の「衆院比例定数を80削減」の真意は、400議席を1人区200と2人区100の選挙区選挙にして、比例区を全廃して保守2大政党制をつくり、共産党・社民党を排除し、公明党の参議院党化を狙い、瞬間的な保守2大政党の大連立で憲法を変えてしまうのが、小沢氏の戦略だ。小沢氏の「国会改革」は自民党幹事長時代の『日本改造計画』に全部書かれている。これは国会を民主的な議論をする場ではなく、迅速な立法マシーンにしてしまうものだ。  民主党マニフェストでの憲法問題は、「足らざる点、改めるべき点を責任を持って国民に提案する」、「民主党が05年にまとめた『憲法提言』がもとになる」と書かれている。「憲法提言」には、「制約された自衛権」「必要最小限の武力行使」を明記し、「多国籍軍」も含む「国連主導の国際活動への参加」を可能とするよう憲法に位置づけると書かれている。必要最小限の憲法改正を考えている。
 民主党政権が変わろうとしない根本問題は日米安保にある。日米安保は今「同盟」と言われている。「同盟を重視する」というとそれから先は思考が停止するのが日本の政治だ。民主党マニフェスト・3党連立合意でも「同盟」関係を認め、これを変える発想はまるでない。今は「日米は同盟関係」と言われるが、50年前の安保体制の下でさえ、日米関係を「同盟」と言うことが憚られた時代が長く続いた。日本は9条があるので、「戦争しないし軍事力は持たない」というのが建前だ。アメリカは戦争もするし、軍事大国そのものだ。日米が一体的な同盟関係になることなど、憲法9条から言えばあり得ないことだ。ところが安保条約に基づく在日米軍は今や中東まで行っている。これは安保条約違反だ。「日米同盟」の野放図な拡大が9条を中心とする改憲を促している。民主党政権に「日米同盟堅持」などと簡単に言ってもらっては困る。ここがチェンジしていないことが、すべての問題の根源にあると思う。普天間問題は「同盟」というカンヌキがかかっているため、「撤去」ではなく「移設」先探しになっている。普天間は海兵隊出撃基地で、「抑止力」ではなく「恫喝力」だ。「同盟」は危ないと見抜く絶好のチャンスだが、そういう機運が出来ていない。2月24日、沖縄県議会は全会一致で初の「普天間の県内移設反対」意見書を政府に送ることを決定した。沖縄と本土の住民の温度差は克服されていくのか、政府はまともに基地撤去に向かうのか、引き続き監視が必要だ。(つづく)

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【九条噺】

 「長崎さるく」ということについて鈴木裕範先生(和歌山大学准教授)に教わった。「さるく」は「ブラブラ歩く」ことで、地域の理解には「遊・通・学」の3つの「さるく」が必要だという。「遊さるく」は地域のあちこちを散策しながら全体像とその概況を知る。「通さるく」は、地域の魅力あるところや食文化などに通じた人の案内で地域を詳しく知る。そして「学さるく」は、より専門的な大学の研究者などの指導で学問的にその地域について学び、あるいは研究する。つまり、一言で言えば「地域学」であり、長崎に限らず、地域への理解を深めていくために基本的に必要なことである▼ところが、現実には、例えば国の政治や平和に関すること、あるいは地域の政治の有り様などについて一家言あるひとでも、必ずしも地域の実情を充分把握しているとはかぎらないようだ。それどころか、例えば、「平成の大合併」問題のように、主に地域の将来に深く関わる問題を話し合う時でさえ、ややもすればその実情をまったく考慮しないで、合併の是非を論じ合うというようなことも少なくなかったようだ。和歌山でもともすればその傾向に流され気味だったと自戒する▼一体に、地域について知る、地域に暮らす人々を知り、交わるということは、何はともあれ必要なことだ。「遊さるく」で、例えば「戦争体験」を尋ね歩き、憲法9条の大切さについて論じ合うことがあっても大いによろしいのではないか。(佐)

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憲法の示す理想に近づけるのが憲法のあり方

 「守ろう9条 紀の川 市民の会」第6回総会で、「憲法9条を守る和歌山弁護士の会」世話人・石津剛彦さんが「日本国憲法9条の原点を見直そう」と題して講演をしました。その要旨を2回に分けてご紹介しています。今回は2回目で最終回。

石津剛彦さん講演要旨A

 9条改憲の理由として、最近は北朝鮮問題やテロが言われる。いずれもナンセンスな議論だ。近代戦は莫大な金がかかる。今日食べる米もないという北朝鮮が近代戦をするのは無理。核弾頭を搭載したミサイルを飛ばすのはさらに無理。本当に攻撃するとすれば、アメリカと一緒になって日本が攻撃した時だけ。ということはアメリカと一緒になって北朝鮮を攻撃しなければ、攻撃されることは考えられない。テロの関係ではアメリカは年間50兆円の軍事予算があるのに、貿易センタービルやペンタゴンが白昼アタックされた。いくら大きな軍事力を持っていてもテロは抑止できない。テロは情報網や警察力や外交交渉によって抑止しなければならない。
 9条を守る方が安全である。何故なら、攻撃を加えない、核を持たない、武器を輸出しない意思を明確にすれば、他国に攻撃する口実を与えないことになる。攻撃した場合は国際的な非難や孤立が予想され、世界が密接につながっている社会では貿易も出来ず、国自体が成り立たなくなる。また、説得力を持って核軍縮や紛争解決に乗り出せて、他国からも尊敬される。
 「正しい戦争に協力」という議論があるが、「正しい戦争」は本当にあるのか。その議論は消えつつある。ひとつは戦争があまりにも残虐なものになりつつあるから。「正しい戦争」を認めると負けることは許容できず、相手を殲滅するまで戦うので、人類破滅の可能性を持っている。「正しい戦争」の肯定は非常に危険だし、悪用されるものだ。戦争をしない9条は国民の権利を守るためにも、国際貢献をする上でも重要だ。
 「備えあれば憂いなし」は何に備えるのか。「北朝鮮とテロ」は改憲機運の盛り上げのための情緒的な発言に過ぎない。「国力に見合った防衛力」は、国力があるなら、戦争ではない方向に使うべきだし、そもそも借金だらけの日本はそんなに豊かかということもある。「軍隊を持った普通の国になろう」というが、普通の国がいいことか。日本は普通の国ではない。唯一の被爆国であり、世界に類例を見ない素晴らしい9条を持つ国だ。世界にアピールするのは9条しかない。「理想論」という議論もあるが、理想を現実にする闘いが理想を実現してきた。憲法の示す理想に近づけるために何ができるか、どう実現するかが国や憲法の在り方だ。9条の精神は日本人320万人、アジア人2千万人の犠牲の上に成り立っている。それを無視して9条を変えることは犠牲者に申し訳の立つことではない。(おわり)

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自衛隊イラク派兵は違憲ではない?
鳩山内閣が戦争の検証もせず、正当化!


 イラク戦争開始から7年目の3月20日、朝日新聞は、鳩山内閣が「イラク特措法が『違憲であったとは考えていない』との答弁書を決定した。菅直人副総理は民主党代表だった04年にイラク自衛隊派遣を『明らかに憲法違反』として当時の小泉政権を批判していた。答弁書では、同法に基づく白衛隊のイラク派遣についても『同法の規定に従って行われるものである限りは、違憲になるとは考えていない』とした」と報じています。
 民主党は野党時代、イラク戦争は国連憲章をはじめとする国際法の原則に違反し、イラクへの自衛隊派遣は憲法上の疑義があるとして、イラク特措法に反対し、当時の自公政権を批判していました。鳩山首相自身も昨年11月2日の衆院予算委員会で、「イラクに対し戦争を始めること自体が誤っていた」と答弁しています。今回の答弁書は、民主党の野党時代の主張や首相答弁に反し、自公政権と何ら変わらないと言わねばなりません。
 ブッシュ政権は、安保理が対イラク武力行使を承認しなかったにもかかわらず、「先制攻撃戦略」に沿って、「有志連合」を隠れみのにしてイラクに侵攻しました。イラクの大量破壊兵器が侵攻の口実でしたが、すぐに、大量破壊兵器がないことが米国自身の手で明らかになりました。このイラク戦争での民間人犠牲者は約10万人、戦争による難民・避難民は4百万人以上にのぼると言います。米兵の犠牲者も4400人に迫ります。
 侵攻に参加したイギリスやオランダでは、イラク戦争の公的な検証作業が進められています。日本も、小泉政権下でアメリカの戦争を支持し、自衛隊をイラクに派兵した国として、戦争協力の検証と反省が求められているのに、鳩山政権は「将来の課題である」と、検証を行う考えのないことを表明したことは、極めて重大な問題であると言わなければなりません。

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(2010年3月24日入力)
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