「九条の会・わかやま」 131号を発行(2010年5月3日付)

 131号が5月3日付で発行されました。1面は、第16回「キリスト者9条ネット和歌山」の集い―韓国の人にとっての憲法9条、戦争を拒否して中立宣言を出すのは国家の権利(井上ひさしさん講演 @)、九条噺、2面は、自分自身が一生懸命に生きること(池間哲郎氏講演)、「九条の会」7507に、井上ひさしさんの志を受けついで九条の会講演会 「日米安保の50年と憲法9条」 です。
    ――――――――――――――――――――――――――――――
[本文から]

第16回「キリスト者9条ネット和歌山」の集い開催
韓国の人にとっての憲法9条は

 4月29日、和歌山市の屋形町カトリック教会に30名近くが参加して、第16回「キリスト者9条ネット和歌山」の集いが開催されました。
 みんなで「イムジン河」を歌ってから、まず参加者が自己紹介を兼ねて日韓関係への思いや平和・憲法9条の大切さなどについて発言したのち、07年に宣教のため2回目の来和をして、この夏に帰国する予定の林京淑(イム・キョンスク)さんが「わたしたち韓国の人にとっての憲法9条」と題して講演されました。
 林さんは、「韓国人が日本を『近くて遠い国』と言うのは分かるが、日本に来て日本人も韓国を『近くて遠い国』と言うので驚いた。その歴史的背景を考えたい」と語り始めて、明治から第2次大戦までの日韓の歴史と、安重根(アン・ジュングン)のめざしたものについて話されました。まとめで、「100年前には毎年のように日韓の協定が結ばれて、そのたびに韓国は自由を奪われていった。先日のNHK番組で安重根を取り上げていたが、日本人に向けてこのように取り上げたことに感銘を受けた。安重根は『東洋平和論』で、韓中日が理解しあい遼東を交流区域に、共通貨幣を、などの理想を述べている。このような平和なアジアを目指す上で、日本は過去の歴史を反省すべきだし、戦争の反省に立ってできた憲法9条を大切にすべきだ。韓国にも9条がほしいと思う」と述べられました。
 参加者からは、「日本の近代には問題があった。石橋湛山が戦前に中国も朝鮮も捨てよと小日本主義の論陣を張ったが無視された。今こそ再評価すべきだ」「憲法9条は日本からアジアの人々への大切な約束だ」「日韓の歴史についてもっと知るべきだ」などと意見が出されました。
 最後に司会の田村悠紀栄さんが、ワイツゼッカー元ドイツ大統領の言葉「過去に眼を閉ざす者は、未来に対してもやはり盲目となる」を引いて過去を反省することの重要性を述べられ、平和と憲法9条の大切さを強調されました。

    --------------------------------------------------------------

戦争を拒否して中立宣言を出すのは国家の権利

 4月9日に亡くなった井上ひさしさんを偲び、08年6月21日に岐阜で開催された「九条の会」憲法セミナーでの井上さんの講演「ひとの都合では死なない」(要旨)を、4回(予定)に分けてご紹介します。


井上ひさしさん講演 @

 「世界の流れの中で、日本国憲法はどういう位置にあるか」ということを詳しく、分かりやすくお伝えするのが今日の目的です。
 第1次世界大戦で亡くなった方の95%は軍人、一般市民は5%です。第2次世界大戦では52%が軍人、48%が一般市民です。朝鮮戦争では軍人は16%、84%が一般市民です。ベトナム戦争では軍人が5%、一般市民が95%です。第1次世界大戦の時とは、全く逆になってしまいました。イラク戦争では、08年6月までの数字ですが、米軍の死者が釣4000名、イラクの死者は15万1千人。イラクの人口2500万人のうちの400万人が国外へ逃げて、難民になっています。それを考えると、戦争は一般市民が巻き込まれる。ほとんどの死者が一般市民であるというのが実態です。
 憲法を変えて日本も戦争できる普通の国になろうなんて言う人たちがいますが、そんなことを言えるのは言葉の上だけです。戦争が始まったら死ぬのは私たちなのです。それは、今申し上げた数字がはっきり証言しています。このことを頭のどこかに置いていただいて、この100年、世界の考え方がどう変わってきたのか、その中で日本国憲法がどういう位置を占めているのかをお話します。

国際条約の製造所・ハーグ

 オランダにハーグという都市があります。「国際条約の製造所」などといわれるくらい、ここで成立した国際条約はたくさんあります。
 国際法、国際条約は、それを結んだ国々を縛る堅い約束(ハード・ロー)です。宣言、行動計画とかは、緩い約束(ソフト・ロー)です。申し上げるのは、堅い国際法や国際条約がハーグで決まることがとても多いという話です。
 今からほぼ110年前の1899年に、戦争はやめよう、平穏に暮すためにどういうことが必要か話し合おうと、平和のためだけに集まった会議がハーグで行われました。これを第1回ハーグ国際平和会議と呼んでいます。1899年は世界の国は40とか50くらいで、その中の26ヵ国がハーグに集まり、2ヵ月間討論をして、決まった国際宣言が3つあります。
 まず、軽気球からの爆発物の投下禁止宣言。飛行機ができるのはそれから4年後のことです。気球の上から爆弾を落すのを禁じ合う、即ち空襲はいけないということです。参加した26ヵ国がそれを宣言し合いましたが、日本は批准しませんでした。
 次は、ダムダム弾の使用禁止宣言。ダムダム弾は当った瞬間に体の中で玉が破裂する。玉1発なら血を止めて摘出して助かる場合がありますが、ダムダム弾は中で鉄の破片が微塵になって散ってしまいますから、確実に死ぬ。そういうひどい鉄砲の玉を使うのはよそうと出されたダムダム弾使用禁止宣言というのが2番目です。
 3番目は、毒ガス使用禁止宣言です。毒ガスは吸えば死ぬ、死なないまでも神経系統がおかしくなる。そういうものを散布して戦争をするのはやめようという宣言です。
 第1回のハーグの国際平和会議は、この3つの宣言のほかに、3つの条約を成立させましたが、戦争自体をやめようということは、決まりませんでした。
 第2回は、8年後の1907年、当時のほとんどの、44ヵ国がもう一度ハーグに代表を送りました。この会議では、再びどうしたら戦争をしないですむのかというルールづくりに取り組みました。大変重要なことが決まりました。戦争をやめるということはできませんでしたが、戦争を拒否して中立宣言を出す自由がどんな国にもあるということが、初めて決まりました。

傀儡国家・満州国

 第2次世界大戦は、ドイツ、イタリア、日本など8ヵ国が国際連盟から脱退して始まります。当時、日本は国際連盟の常任理事国でした。満州を植民地にしたいが、外国の目が憚られるので、そこに傀儡国家・満州国をつくることにしました。これを日本が独立国家として承認するというわけです。自分で国家をつくって、トップは満州人、ナンバー2は全部日本人で、そこに岸信介とかたくさんの「優秀な」官僚が入って、実権は日本が持つ。国際連盟の総会で満州国を認めるか認めないかの採択をしましたが、棄権の1国を除いて、42の加盟国全部が認めず、承認は日本だけ。松岡洋右全権代表は席を蹴って飛び出し、常任理事国をしていた国際連盟から脱退する。半年後ドイツが、さらに4年後イタリアが脱退する。この脱退した国が枢軸国で、残った国は連合国です。(つづく)

    --------------------------------------------------------------

【九条噺】

 今年は「韓国併合100年」であり、「大逆事件100年」でもある。これらは、いってみれば、   「外に侵略、内に弾圧」という、当時の国の姿を象徴する事件(出来事)だと思う。しかも、これらは、戦前=@にとどまらず、戦後≠燉l々な面で生きつづけてきたとも言える▼例えば「大逆事件」。乱暴極まる冤罪で「逆賊」の烙印をおされた人々(故人)が 名誉回復措置 を受けたのも、いわば「つい最近」のこと。また、例えば、小説『橋のない川』でも知られる作家住井すゑ(1902〜97)は、小学校3年生の時、朝礼で校長が事件について話し、幸徳秋水について、「(極悪人である証拠に)国の富を国民に平等に分配しようと言ったという話を聞かされてショックを受け」「私と同じような思いの人が(極悪人として)処刑されたことが悲しく、涙がとまらなかった」「この事件は『わたしの原点』」(『わが生涯』岩波書店)としてその心に終世生きつづけてきたのである▼「韓国併合」も歴史認識問題や日韓関係をはじめ、つとめて今日的な多くの課題をなげかけている。先日のNHKテレビ「シリーズ日本と朝鮮半島」は、日本がアジア侵略の拠点として朝鮮半島を植民地支配する経緯を描いた。しかし、例えば1905年の第2次日韓条約や、1910年の韓国併合などの評価においては「両論併記」という逃げの姿勢≠ェ見受けられた。植民地支配をする側とされる側の「中立」なんてありえないと思うのだが・・・。       (佐)

    --------------------------------------------------------------

自分自身が一生懸命に生きること
池間哲郎氏講演

 青年法律家協会和歌山支部は4月28日、和歌山県民文化会館・小ホールで「憲法を考える夕べ」を開催しました。NPO法人アジアチャイルドサポート代表理事・池間哲郎氏が「懸命に生きる人々 〜日本人こそアジアの人々から学んでほしい〜」と題して講演をしました。
 池間氏は、アジアの貧困地帯で暮らす人々の状況を紹介しながら言います。現在世界には約65億人が暮らしており、その中で豊かな日本、アメリカ、ヨーロッパなどで暮らしている人々は20%程度、残りの80%、50億人は貧しい国に暮らしている。6億もの人々は貧しさのために食べ物が手に入らない、安全な飲み水がない、安い薬も買えないなどが原因で3秒に1人、1日4万人以上、年間1千万人もの命が失われている。しかも、失われる命の90%は子どもと赤ちゃんだ。彼らが苦しんでいる原因は私たち豊かな国とも大いに関係がある。たった2割の人が世界の食料の7割を食べている。残りの3割の食料を8割の人が食べている。日本人は食料のうち20%を残飯として捨てている。
 池間氏はフィリピン、カンボジア、ミャンマー、タイ、モンゴル、ネパールなどの貧しい人々の状況を具体的に映像で示しつつ、食料、井戸、学校などの支援を紹介し、貧しい中でも人々は懸命に生きている、将来に希望を見出す人々も多く出て来ていると紹介しました。
 池間氏はボランティアということについての、3つの大事なこととして、@「知ることも大切なボランティア」です。毎日、貧しさのために多くの命が失われていることを知ってください。A「少しだけ分ける」ことです。皆さんの優しい心を少しだけ分けてください。B「最も大事なボランティアは自分自身が一生懸命生きること」です。と指摘しました。
 もし、これらの国で戦争が起これば、もはや「懸命に生きる」ことすら不可能です。日本国憲法前文は「全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。・・・いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであって・・・」と謳っています。「知ってしまった」問題に「少しだけ分ける」とともに、9条を守り絶対に戦争はさせないこともやらなければ、と考えさせられるものでした。

    --------------------------------------------------------------

「九条の会」7507

 九条の会事務局は4月22日、全国の草の根の九条の会の結成数が7507に達したと発表しました。これは昨年6月と比べて、64の増加となっています。

    --------------------------------------------------------------

井上ひさしさんの志を受けついで
九条の会講演会 「日米安保の50年と憲法9条」

日時:6月19日(土)13時30分開会
会場:日比谷公会堂(東京)
講演:大江健三郎(作家)、奥平康弘(憲法研究者)、澤地久枝(作家)、鶴見俊輔(哲学者)

    ――――――――――――――――――――――――――――――
(2010年5月3日入力)
[トップページ]