「九条の会・わかやま」 134号を発行(2010年6月2日付)

 134号が6月2日付で発行されました。1面は、「和歌山市ひがし9条の会」第3回総会&講演会、訃報 戦争出前噺・本多立太郎さん、国民の運動が守った憲法9条(東京慈恵会医科大学教授・小沢隆一氏 B)、九条噺、2面は、ひとの都合で死ぬということをやめよう(井上ひさしさん講演 C) です。
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9条を守り「環境保全的人間安全保障」へ
「和歌山市ひがし9条の会」第3回総会&講演会

 5月23日、「和歌山市ひがし9条の会」第3回総会が東部コミュニティーセンターで開かれ、40名が参加しました。
 総会のあと、日本環境学会会長・和田武氏が「環境と平和」と題して講演を行いました。氏は「地球温暖化による気温上昇を2度C以下に抑えなければ、取り返しのつかない事態になる」と、CO2の排出を抑えるためにすべきことを詳しく話されました。
 軍事活動が環境破壊の要因となっており、湾岸戦争の油田火災のCO2排出は約5億d、世界の総排出量の2.4%、湾岸戦争全体では10数億dで、日本の年間排出量を上回る。インド洋で6年間に日本が給油した燃料は49万Kg、自衛艦の燃料を合せると日本の平均的な家庭4.7万戸分に当るCO2を排出。その経費225億円を使えば15万Khの風力発電ができ、年間30万dのCO2削減が可能。F15戦闘機が1時間飛べば8千gの燃料を消費し、乗用車8年分に相当する。化石燃料争奪からの脱却が平和をもたらし、今や時代は「軍事的安全保障」から「環境保全的人間安全保障」への転換を要請している。憲法9条の理念を世界に広げる時代が到来したと話されました。
 日本のエネルギー政策は原子力を基幹としているが、原発は地震に弱く、故障も続き稼働率が上がらず、建設が進んでも発電量は増えていない。これからは再生可能エネルギーの利用拡大が地球温暖化防止に役立つ。憲法9条を守ることは地球環境保全にとっても不可欠と話されました。

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訃報
戦争出前噺・本多立太郎さん

 「戦争出前噺」を語り続けられた本多立太郎さんが5月27日にお亡くなりになりました(96歳)。昨年12月13日の「九条の会」近畿ブロック交流集会にも参加されました。謹んで哀悼の意を表し、ご冥福をお祈り致します。

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5月の風に We Love 憲法
国民の運動が守った憲法9条


 5月9日、プラザホープ(和歌山市)で「憲法九条を守るわかやま県民の会」の講演会が開かれ、小沢隆一・東京慈恵会医科大学教授が「憲法9条と日米安保50年」と題して講演されました。講演の要旨を3回に分けてご紹介します。今回は3回目(最終)。

東京慈恵会医科大学教授・小沢隆一氏 B

 60年に安保条約が改定されてしまうが、改定反対運動を様々に繰り広げた結果によって、60年安保条約は「いびつな軍事同盟」になった。それは、@共同防衛は日本国内だけとなった。普通の軍事同盟は互いに守るものだ。A米軍は日本の防衛に関わらない「極東の平和と安全」にも寄与するとなっている。日本と関係のない地域にも日本から出て行き、日本も戦争に巻き込まれることになる。B核兵器の持ち込みなど表に出せない「密約」を満載したものになった。「いびつな軍事同盟」になったのは国民の反対の世論がプレッシャーをかけ続けていたからだ。
 60年安保の結果、日本政府はそれまでの明文改憲路線をあきらめ、解釈改憲路線を選択する。その下で自衛隊は増強され、安保体制は強化されていった。安保条約が取り決めている枠組みすら踏み越えて9条をさらに掘り崩す動きが70年代末あたりから始まる。本格的な日米軍事同盟へ入っていく時代だ。そのきっかけはベトナム戦争の敗北でアメリカの金本位体制が破綻し、同盟国への軍事分担要求が拡大した。その結果日本に対しては78年に「日米防衛協力の指針(ガイドライン)」が締結され、「思いやり予算」も始まった。「シーレーン防衛」「自衛隊による高額な装備の購入・ライセンス生産」「日本以外の極東における事態での日米共同作戦」なども進められた。
 それがさらに強まり、90年代から日米安保のグローバル化が進んだ。きっかけは湾岸戦争で、自衛隊を海外派兵しかけたが、国会で法案は通らず成功しなかった。当時の小沢一郎自民党幹事長は今も自衛隊を海外に出せる体制を狙っている。90年代は日本企業の海外進出が盛んになり、財界も自衛隊の海外派兵を求めるようになった。アメリカと財界の声が合わさり海外派兵が強化されることとなる。96年「日米共同宣言」、97年「新ガイドライン」、99年「周辺事態法」がつくられ、海外での日米共同作戦態勢構築が進んだ。それに乗じる形で明文改憲策動が「復活」した。焦点は集団的自衛権を認めることにある。90年代の海外派兵は従来の解釈に基づくもので、自衛隊の活動は後方支援で米軍の武力行使とは一体化しないということで正当化してきた。しかし、これは窮屈で、米軍と一体となった活動ができないので明文改憲の動きが出て、頂点に達したのが安倍首相の時だ。
 2000年代になって世界各地のアメリカの軍事作戦が破綻した。アフガン、イラクはいまだに治安が回復しない。自衛隊はイラクにもインド洋にも出て行ったが従来の憲法解釈を維持したままだったので、直接「戦闘参加」は出来なかった。そういう意味で9条は自衛隊の活動に歯止めをかけることを実現した。こういう状況の中で日米安保条約を見てみると時代遅れのものなってきている。米軍基地は世界のあちこちで撤去されている。いろんな国で政権交代が起こった時に7割方基地撤去が実現している。日本の政権交代をもたらしたのは「九条の会」などの改憲反対の声の拡大が国民の中に浸透してきたと言ってよい。同時に小泉政権以降急速に広がった「構造改革」路線の破綻、国民的批判の噴出で、政権交代が生れた。しかし、これはあくまで反撃の始まりで、この変化を前に進めるためにはまだまだ国民の運動、力が必要だ。
 9条を守ればアジアの国々は軍縮に進み、軍事費は国民の暮らしに充てることができる。無理な経済援助を要求しなくてもいい国づくりができるし、同時にそれぞれの国の生活水準が上がれば、日本企業も無理に海外進出する動機も減る。9条を守るということは日本もアジアもお互いに栄える共栄の関係ができあがる。そういう動きを作る上で憲法9条と25条は憲法の2つの柱だ。この2つの柱で国際社会と付き合っていく、とりわけ9条を旗印に掲げることによって、他の国と平等で友好的な経済・外交の関係がつくりだせる。(おわり)

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【九条噺】

 〔地図の上朝鮮国に黒々と墨を塗りつつ秋風を聞く〕〔何となく顔がさもしき邦人の首府の大空   を秋風の吹く〕石川啄木も鋭く批判した「朝鮮併合」(1910年)を契機に、多くの朝鮮の人びとが日本に渡ることを余儀なくされ、国籍も、氏名も奪われ(創氏改名)、長い間、差別と劣悪な労働・生活環境を強いられてきた。関東大震災(1923年)直後には、混乱のさなかに「鮮人が暴動?」などというデマが横行、多くの朝鮮人が拘束され、虐殺されるという痛ましい事件もおきた(亀戸事件)。日本のアジア諸国への侵略戦争でも、朝鮮の青年は「日本軍兵士」として出兵させられ、多くの尊い命を落とした。在日の人びとは、戦後のサンフランシスコ条約で「日本国籍」を喪失し、朝鮮半島出身者という意味で「朝鮮籍」とされた▼鳩山首相は昨年10月、日韓会談後の記者会見で「新政権は歴史をまっすぐ見つめる勇気ある政権」だと述べた。しかし、今年度から実施の高校無償化についても朝鮮学校については未実施である▼最近も、中井洽(おさむ)国家公安委員長(民主党副委員長)が、「朝総連や金正日にはやれない」などと無償化反対を明言した。不幸な歴史を顧みるとき、こんな、悲しい暴言を口にしても何ら問題にならない 今≠ノ唯、唖然とする。(佐)

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ひとの都合で死ぬということをやめよう
 4月9日に亡くなった井上ひさしさんを偲び、08年6月21日に岐阜で開催された「九条の会」憲法セミナーでの井上さんの講演「ひとの都合では死なない」(要旨)を、4回に分けてご紹介しています。 今回は4回目(最終回)。


井上ひさしさん講演 C

 核禁止の流れ

 「南極条約」は要約すればたった4項目の短い国際条約です。@そこに軍事基地をつくってはいけないし、軍隊はそこに立ち入ってはいけない。A科学の観測においては各国いい意味で競争しよう。B南極はどこの国のものでもない。世界の人たちの公園である。C核実験も核の持ち込みも禁止する。
 やがて、この南極条約をモデルに、「ラテンアメリカ核兵器禁止条約」(67年)ができます。中南米の国々が、核兵器をつくらない、持たない、使わないことを取り決め、各国に持ち込ませないために、核保有国に議定書を送り、「核を絶対ここに持ち込まないでほしい」と約束をとりつけるわけです。その議定書を核保有5大国は批准しています。
 次にできたのが、「南太平洋非核地帯条約」(85年)です。南太平洋には国や地域が16ほどあります。小さいとはいえ、れっきとした国があるのに、そこで核保有国は50年代からくり返し核実験する。それで「この南太平洋には核を持ち込まず、使わないでほしい、われわれはつくらないし、持たない」という条約を13の国・地域でつくりました。域内での核実験はむろん、核の投棄も禁じています。
 そして今度は、東南アジアの10ヵ国で「東南アジア非核兵器地帯条約」(95年)をつくりました。タイやフィリピンから南は全部、核兵器はつくってはいけない、持ってもいけない、使ってはなおさらいけないということで合意している。そして議定書では、域内で保有国が使用することも、使用すると威嚇することも禁じています。アフリカも、95年にアフリカ統一機構首脳会議で、「アフリカ非核兵器地帯条約」が採択されました。
 それから、宇宙空間も非核兵器地帯です。大気圏の外、宇宙空間は南極と同じようにどこのものでもなく、そこに軍事的なものは一切持ち込んではいけないという「宇宙条約」が、66年にできています。それなのに日本政府は、アメリカが宇宙基本法をつくっているのにならって、宇宙基本法を国会で通しました。民主党も賛成して、ほとんど審議することなく成立しましたが、これは宇宙開発を推進する法律です。宇宙ステーションをどう使うかということで、いつ軍事基地になるかわからず、宇宙を帝国化する構想は、すでに宇宙条約で禁止されているのです。「きぼう」を打ち上げて喜んでいますが、そんなところから何か落とされたら大問題なのです。海底にも「海底非核化条約」というのが71年にできています。

 いつか大河に

 机に地球儀を置いてみると、南半球はすべて非核兵器地帯です。なかでも南アフリカは核兵器を持っているのに廃棄して、大きな核廃絶のアフリカの条約に入っていった。これは歴史始まって以来のことです。北半球ではモンゴルが非核兵器地帯の宣言をしています。北半球でたった1つ、この国だけがそういう宣言をきちっとしています。
 地球ではほとんど6割が核兵器を使ってはいけないということになっています。南極もそうです。北極は複雑な事情があってまだ解決していません。でも海底は非核地帯ですし、宇宙空間も大気圏から外は非核地帯です。こうやって世界をながめてみると、日本国憲法がいっていることが、実は実現しているのが分かります。
 アフリカのガーナだったと思いますが、戦争放棄を掲げた憲法を持っている国があるそうです。日本の憲法9条を真似たのかどうかは確かではありませんが、そういう国がどんどん出てきているのです。こういう「盗作」は大歓迎です。ここで今、本家が引いたら、どうなるでしょうか。ここはもう愚鈍と言われようが何と言われようが、ひたすら世界の心ある人たちと運命を共にするしかない。日本にいるとなかなか先が見えなくて、すごく憂鬱になります。でもそうではない、日本の憲法9条に世界の未来を託そうという大きな流れもあるのです。その流れを大事にして、私たち一人ひとりが、ひとの都合で死ぬということをやめる、死ぬのは自分で決める、それが私のいう憲法9条を守るということであり、9条のもとに生きていく意味です。(おわり)

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(2010年6月6日入力)
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