「九条の会・わかやま」 136号を発行(2010年6月23日付)

 136号が6月23日付で発行されました。1面は、井上ひさしさんの志受継いで 「九条の会」が講演会開催、国会改革法案不成立 衆議院での継続審議に、内閣法制局長官の答弁禁止は踏襲、九条噺、2面は、民主党「憲法調査会」復活、安倍・平沼・山田氏が「改憲」で連携、中村哲氏講演会日程決定、各党のマニフェスト(選挙公約)を見る─ 日本国憲法あるいは9条をどのようにしようとしているのか ─ です。
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[本文から]

井上ひさしさんの志受継いで
「九条の会」が講演会開催


 「九条の会」は19日、「井上ひさしさんの志を受けついで 九条の会講演会『日米安保の50年と憲法9条』」を東京・日比谷公会堂で開催しました。その様子を伝える山形新聞(6月19日付電子版)の記事をご紹介します。なお、井上ひさしさんは山形県・川西町の出身です。



 川西町出身の劇作家・作家井上ひさしさんらが呼び掛け人だった「九条の会」の講演会が19日、東京・千代田区の日比谷公会堂で開かれ、4月に死去した井上さんを追悼して、一緒に活動してきた作家の大江健三郎さんと澤地久枝さん、東京大名誉教授の奥平康弘さんが、約2000人の満員の聴衆を前に「井上さんの心をそれぞれの仕方で受け継いでいきたい」などと話した。
 大江さんは、九条の会の呼び掛け人だった評論家加藤周一さんをしのんだ井上さんの昨年の講演をテーマに語った。「自分にとって大切なものは裏切ってはならない──私が加藤さんの本から学んだ大きな教訓です」。井上さんのこの言葉について大江さんは「豊かに、感情を込めて心が表現してある」、さらに「その志、心が目指すところを演劇や小説の創作にもつないだ」と述べた。
 奥平さんは井上さんの戯曲「ムサシ」に触れた。「武士は刀を取ってはいけない」という平和的メッセージは「憲法9条の精神を語っている」と指摘。
 澤地さんは、最後の作品「組曲虐殺」で、主人公の作家小林多喜二が歌う歌詞「あとにつづくものを信じて走れ」を引き合いに出し「別れはつらいけど、井上さんの気持ちを継いで生きていかなければならない」と語った。
 冒頭、井上さんが生前憲法について語った映像を上映。講演の間には、川西町フレンドリープラザ付属演劇学校で、校長の井上さんの下で教頭として指導した佐藤修三さん(秋田市)が、小説「吉里吉里人」の中から憲法9条に関連する一節を、味わい深い方言で朗読した。井上さんの妻ユリさんが、この一節を選んだ理由を「9条への深い思いが、井上ひさしにしかできない論法で、すべて表現されている」と説明した。
 九条の会は井上さん、加藤さん、大江さんらが呼び掛け人となって2004年に結成。この日は、本県を含め各地から聴衆が訪れた。

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国会改革法案不成立
衆議院での継続審議に


 小沢前幹事長が執着した、内閣法制局長官の国会答弁を禁止することを主な内容とする国会改革関連法案は、成立目途を「国会冒頭」→「4月1日」→「連休明け」と後退させ、結局、通常国会の閉会にともない、衆議院での継続審議となり、今国会では不成立となりました。

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内閣法制局長官の答弁禁止は踏襲

 鳩山政権は内閣法制局長官を政府特別補佐人から外し、国会での答弁を禁止することは、既に、1月の通常国会の開会に際して、内閣法制局長官については、内閣は政府特別補佐人の申請を行わなかったので、事実上、既に実現されています。
 仙谷官房長官は6月8日の記者会見で、憲法や法律の政府解釈に関する国会答弁について菅新内閣でも鳩山内閣の方針を踏襲し、内閣法制局長官の答弁を禁止する考えを表明しました。法令解釈に関する国会答弁は仙谷氏自身が担当することも明らかにしています。仙谷氏は「憲法解釈は政治性を帯びざるを得ない。その時点の内閣が責任を持った憲法解釈を国民や国会に提示するのが最も妥当な道だ」と言い、また、枝野幹事長は「もともと内閣法制局は広い意味での意見具申機関だから、長官が何を言っても、首相や官房長官が『あれは参考意見です』と言えばおしまい」と、大問題になるような発言をしています。
 しかし、憲法解釈は、政府が政治判断で自由に変更をしてよいというものではありません。ましてや、違憲のものを合憲と解釈を変更することは、憲法改正に匹敵します。とすれば、本来、その是非は国民投票による主権者国民の同意を得るべき事柄です。これは、内閣法制局長官が繰り返し答弁してきたところです。このような見解にすら拘束されないという意思表示が、内閣法制局長官の答弁禁止の真の意味なのです。

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【九条噺】

 加藤周一さんに学んだことのひとつが「言葉の力」であり「言葉の重み」についてだった。だからというわけでもないが、鳩山前首相からは、その対極にある「言葉の軽さ・危うさ」を日々痛感させられた。あの虚ろな目とともに発せられる「言葉」はむなしく、むしろ悲しかったが、沖縄はもちろん、日本やアジアの将来を思えばとても感傷ですませるわけにはいかなかった▼前首相は初めての沖縄訪問で、普天間基地などの「抑止力」を学んだのだという。だから、「(普天間基地移転は)国外、最低でも県外」という公約も捨て、日米合意のもと「辺野古(一部徳之島)」に変更した。沖縄での9万人を超える大集会も、徳之島の有権者の過半数を大きく超える反対署名もまったく目に映らなかったらしい。もちろん、普天間基地に居座る米海兵隊が専ら先制攻撃を得意として、イラクやアフガンで無差別攻撃をおこなって、罪もない多くの人びとの生命を奪ってきたこと、そしていまもなおアフガンで攻撃を続けていることも眼中にはまるでなかったのだろう▼朝日新聞の投稿川柳に〔日米の植民地に似る島となり〕とある。植民地という言葉は重いが、沖縄の現状を思えばあまり違和感を覚えないというのも悲しい。さて、菅新政権は「沖縄を返せ」という怒りの大合唱にいかに応えるか?(佐)

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民主党、「憲法調査会」復活

 6月13日の共同通信によれば、民主党は07年の参院選後に廃止された憲法調査会を復活させる方針だといいます。
 07年、当時の民主党・憲法調査会・枝野幸男会長(現幹事長)は、「国民の多くが改憲を望んでいないから議論自体が必要ないという議論は成り立たない」と主張し、衆議院憲法調査会・中山太郎委員長らと協力して、3分の2以上の圧倒的多数で国民投票法案を可決し、「憲法審査会」での共同改憲案作成へ向けて動き出す――、そんな「構想」をしていました。ところが、安倍首相が「憲法改正を夏の参院選挙の争点に」と叫び、「まずは国民投票法案の今国会成立を」と指示したために決裂。そして強行採決――。「自公民合作での改憲」という戦略が破綻したのです。
 菅首相は15日、参院本会議の代表質問で、「日米安保体制を堅持し、適切な防衛力の整備に努める」などと繰り返し、マニフェストに「日米同盟を深化」や「日米合意に基づく普天間基地移設」を掲げています。民主党憲法調査会で、今すぐの明文改憲はともかく、解釈改憲が進む可能性があります。注意深い監視が必要ではないでしょうか。

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安倍、平沼、山田氏が「改憲」で連携

 6月11日付毎日新聞によると、自民党の安倍晋三元首相、たちあがれ日本の平沼赳夫代表、日本創新党の山田宏党首は10日会見し、①新憲法制定②集団的自衛権行使容認③教育再生──などを掲げた超党派の「日本を救うネットワーク」として共同行動すると発表しました。参院選での協力を検討し、民主党の単独過半数を阻止し、「健全な」保守政権づくりを目指すとのことです。まさに「靖国派」大連合のおもむきです。

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中村哲氏講演会日程決定

延期となっていた「中村哲氏講演会」は次の日程に決まりました。
日時:11月25日(木) 18:30~
会場:和歌山市民会館大ホール

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各党のマニフェスト(選挙公約)を見る
── 日本国憲法あるいは9条をどのようにしようとしているのか ──


 参院選挙に向けて各党のマニフェスト(選挙公約)が発表されました。各党は「日本国憲法」あるいは「9条」に対してどのような政策を掲げているのかを見てみました。さまざまな「新党」が〝雨後の筍〟のように出来ていますが、どれがどれだか分らないと思いますので、政党名とともに党首名も付けています。なお、「新党日本(田中康夫)」については2010年度のマニフェストを見つけることが出来ませんでした。


民主党(菅直人)
 (「憲法」という文字すら見当たらない
自由民主党(谷垣禎一)
 「新しい時代にふさわしい国づくりのための自主憲法を制定」「憲法審査会の始動」「『憲法改正原案』の国会提出を目指して、着実に憲法改正に取り組む」
公明党(山口那津男)
 「現実を直視した『行動する平和主義』こそが、現行憲法の前文や9条の精神にかなうとの信念で、世界の平和実現に貢献する日本外交を展開する」
日本共産党(志位和夫)
 「現行憲法の前文を含む全条項をまもり、とくに平和的民主的諸条項の完全実施をめざす。わけても日本国憲法第9条は、恒久平和主義を極限まですすめた、世界でも先駆的な条項であり、この条項をあくまで守り抜くとともに、9条を生かした平和外交をすすめる」
社会民主党(福島みずほ)
 「平和憲法を世界へ」「ヒロシマ・ナガサキ、オキナワの悲惨な体験を持ち、世界に誇る平和憲法を持つ日本こそ、平和な世界へのリーダーシップを発揮すべきだ」「憲法審査会における憲法改正案の作成に反対」
幸福実現党(石川悦男)
 「憲法9条を改正し国民の生命を守る」
国民新党(亀井静香)
 「現行憲法は9条に代表される国防上の問題点のみならず・・・様々な問題点が指摘されている。我が国の伝統や文化を守ると共に、国際社会で期待される役割を我が国が凛として果たしてゆく為に平成の自主憲法制定を目指す」
みんなの党(渡辺喜美)
 「憲法は、これからの新たな国のあり方にあわせて見直す必要があり、憲法審査会を早急に始動して議論を開始する」
たちあがれ日本(平沼赳夫)
 「自分の国は自らの力で守る。憲法審査会を早期に始動し、・・・自主憲法制定を目指す。『たちあがれ』はその中核となる」「集団的自衛権の解釈を適正化」
日本創新党(山田宏)
 「日本の歴史や伝統を踏まえ、新しい時代の要請に応えられる『新しい日本国憲法』をつくりあげるべく、憲法審査会の早期の始動を求め、新憲法制定への具体的議論を進める」
新党改革(舛添要一)
 「現行憲法は、現実との様々な矛盾点が議論されないまま、残っている。日本を新生する、新たな時代にふさわしい憲法改正を議論していく」

9条「改正」を含む憲法「改正」を明確に言及するのは【自民】【国民新】【みんな】【たちあがれ】【創新】【改革】。「憲法審査会の始動」を言及するのは【自民】【みんな】【たちあがれ】【創新】。「集団的自衛権行使」を言及するのは【たちあがれ】。憲法「改正」案の国会提出にまで言及するのは【自民】。憲法について何も言わない【民主】は無責任。【公明】の「行動する平和主義」は何のことか分らない(現実直視だから、PKOやPKF? 日米安保堅持? 米軍抑止力維持?)。護憲が明確なのは【共産】【社民】のみ。

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(2010年7月3日入力、7月14日修正)
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