「九条の会・わかやま」 138号を発行(2010年7月11日付)
138号が7月11日付で発行されました。1面は、第17回「キリスト者9条ネット和歌山」の集い 「韓国での神社参拝」と憲法九条、9条維持が求められていることであれば私たちは展望をもてる(奥平康弘さん)、九条噺、2面は、「日本に変な風」九条の会で澤地久枝さん、普天間基地用地提供は違憲 宜野湾市が提訴へ、毎日新聞が改憲路線に転向? です。
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[本文から]
第17回「キリスト者9条ネット和歌山」の集い開催
「韓国での神社参拝」と憲法九条
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7月3日、和歌山市の屋形町カトリック教会で第17回「キリスト者9条ネット和歌山」の集いが開かれました。宣教のため来日して平和や環境のために活動され、7月に帰国される、韓国の金静恵(キム・ジョンヘ)さんが、「韓国での神社参拝と憲法九条」と題して講演されました。
金さんは、「韓国(朝鮮)で日本植民地時代に神社参拝が行われた。日本では生まれるとお宮参り、結婚式は教会で、亡くなれば仏教でとか、また宗教に関係なく多くの人が神社に初詣するなどこだわりがないが、韓国では神社参拝を受け入れることは意味が違う。韓国では王朝が交替すると宗教が変わり、個人も新しい宗教に入れば前の宗教を捨てる。36年に1面(行政単位)1神社の規則改定を行うなど、皇民化政策の一つとして推進したものだ。ローマ法王庁も信徒を守るため宗教行事ではないという解釈で神社参拝を許可し、日本の牧師も朝鮮で説得にあたった。こうして、神社参拝、皇国臣民の誓詞、宮城遥拝が強制された。37年日中戦争、41年太平洋戦争と拡大する中で、創氏改名、徴兵などに進んでいった。
戦争の苦労や原爆投下などの惨禍をもたらした反省から日本人が憲法9条を作ったことはすばらしい。その日本に、安保条約があり、自衛隊ができ、91年に海外派兵、99年には国旗国歌法の制定、そして最近アメリカの圧力から改憲の動きがある。この方向は韓国人としてたいへん心配だ。
韓国では『サムライ』は刀を振り回してばかりいるという印象だったが、サッカーワールドカップでの『サムライJAPAN』を見て、勇気を持ってがんばる姿に良い印象を持った。憲法9条を持っている日本人は、武力競争の悪循環を断ち切るために、世界に9条を広げるために『サムライ』精神を発揮してほしい。
武力には世界平和への希望はなく、愛し合い友だちになることにこそ希望がある。『花たちに希望を』という歌に、青虫が、他の生き物が花にはい上がろうとして落ちて山のように積もっているのを見て、他の所で静かに待っていると、サナギから美しい蝶になるという歌詞がある。武力ではなく世界の人と友だちになることが世界平和につながる」と語られました。
意見交換では、「戦争のくわだては忍び寄ってくるので教科書などに常に警戒が必要だ」「朝鮮人にとって神社参拝は改宗の強要だった」「ネットで『朝鮮で強要はなかった』などと書き込む人と仲良くなれるのだろうか」などの発言がありました。まとめで金さんは「我々は多数派なのかとの疑問も出たが、集まることが大切だ。よく集まり話し合いまた出かけていくことが大切だ」と訴えられました。
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9条維持が求められていることであれば私たちは展望をもてる
「九条の会」は6月19日、「井上ひさしさんの志を受けついで 九条の会講演会『日米安保の50年と憲法9条』」を東京・日比谷公会堂で開催し、大江健三郎さん、奥平康弘さん、澤地久枝さんが講演しました。その要旨を「九条の会ニュース」から順次ご紹介します。今回は奥平康弘さんです。
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井上さんにはたくさんの作品があります。「憲法改正反対」とか、「9条を守れ」ということを法律学者が語っても何の力にもならないけれども、井上さんは、文学という表現形式をもって人間の世の中にある笑い悲しみ、さが等々を描きながら、武器をとってはいけないんだ、という強烈なメッセージを発しておられる。
今日のテーマは日米安保と憲法9条です。憲法9条には、私も50年以上かかわってきましたけれども、それがもっている意味、与える影響、拡がり、中味、これらがどんどん変わってきたという実感をもっております。たとえば一昨年、名古屋高等裁判所は、航空自衛隊が英米の兵隊をバグダッドからクウェートに定期的に移動させている部分に焦点をあてて、「違憲であり、違法である」としました。自衛隊の存在自体が違憲というのではなくて、その行為はアメリカその他の勢力の軍事力の一環であり、違憲・違法と判断したのです。
この4、5年、憲法9条と憲法25条といわれるようになりました。「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」ということは、憲法9条で平和的生存権を保障されていることと密接不可分にかかわるという解釈論や運動が展開されています。
もう一つ、日本は9条という独特な憲法をもっている国だということが、少しずつ世界に拡がっています。発足当時の「九条の会」でさえも予想しなかった拡がりです。
沖縄をとってもそうだと思います。沖縄で、わが国土に他国の軍事力をもつことはいけないこと、正しくないことと思い、撤去すべきという大デモンストレーションがありました。日本が9条をもっていることを知らずに基地をおいてきたが、これはいかんなということを、オバマ政権に思わせるようなものでした。
そういう流れのなかで9条を維持することが私たちに求められていることであるとすれば、私たちは展望をもてる。9条をもっていることは私たちの誇りです。
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【九条噺】
コラムというのも意外に難しいものだなぁと今頃になって思う。まずは思いのままに書いてみて、最終的には無駄なものをすべてそぎ落として文章を研ぎ澄ますことができればと思うが、それも〝ことばの貯め〟があればこそである。貯えがこうもさみしくては、とてもそぎ落とすどころではない。また、作家の井上ひさしさんは「むつかしいことをやさしく、やさしいことをふかく」という。早い話、井上さんの作品がいずれもその格好の見本だと思うが、これもまた当然膨大な〝貯め〟がなければ到底できないことだ。いずれにしても、とりあえずは何よりもまずふところを豊かにしなければ、と思うのである▼これはコラムにかぎらない。ある日、和歌山の「公害教室」で講師を依頼され、いつものように、1時間程度の話をするつもりで引き受けた。ところが司会者から「今日はしっかり勉強したいので、講師の先生には、休憩を挟んで3~4時間程度の話しをしていただこうと思う」などと唐突に促され冷汗をかいたことがある。以来、話にせよ原稿にせよ、少なくともその十倍程度の含蓄は持っていなければと肝に銘じた次第である。第一、余裕のない話や文章は決して人のこころをとらえない▼もっとも、いかに量的に蓄えてはいても、本質をとらえていなければ熱弁ふるえど言葉は軽く虚しい。例えば歴代の総理大臣のことばにみるごとくである。たまにはびしっときめてくれよなぁ!(佐)
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「日本に変な風」九条の会で澤地久枝さん
6月28日付朝日新聞は「九条の会」講演会での澤地久枝さんの講演を報じました。紹介します。
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「日本列島に変な風が吹いてきた」。19日、東京・日比谷公会堂で開かれた九条の会講演会で、作家の澤地久枝さんは、日本を「大きなモグラたたきのステージ」にたとえて、こう切り出した。モグラは、たたかれてもたたかれても顔を出す護憲の勢力。「変な風」とは、憲法改正に積極的だった政治の風向きが変わってきたことを、あえてそう表現した。
九条の会は2004年、澤地さんを含む9人の呼びかけ人で発足した。地域や職場ごとにたくさんの小グループが生まれ、憲法9条を守る学習会などに取り組んできた。その数は、今年4月の時点で7507を数える。「最初のモグラは9人だったのが、今は全国で無数に増えた。権力の側がハンマーでいくらたたいても、もうつぶされないところまで6年かけて来た」
9人の呼びかけ人のうち、小田実、加藤周一両氏に続いて、井上ひさし氏が4月に亡くなった。澤地さんは「井上さんは、(最後の戯曲となった)『組曲虐殺』で、後に続く者を信じて走れ、と書いた。志を継いで、少しはちゃんと生きていきますと、約束したい」としのんだ。
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普天間基地用地提供は違憲
宜野湾市が提訴へ
騒音被害が長年続く状態は法の下の平等を定めた憲法14条に違反する
基地は街づくりを阻害し、自治権を保障する憲法92条、94条に違反する
7月3日付読売新聞によると、「世界一危険」と言われる米軍普天間飛行場を抱える沖縄県宜野湾市は2日、日米安全保障条約に基づき同飛行場用地として市内の私有地などを提供している日米間の協定は憲法などに違反しているとして、日本政府を相手どり、協定の無効確認訴訟を今年度中に那覇地裁に起こすと発表しました。基地の影響で必要以上の行政コストがかかっているとして、損害賠償も求める方針です。法務省によると、米軍用地の提供協定について自治体が憲法判断を仰ぐ訴訟は初めてとみられるとのことです。
市は今年4月に、訴訟が可能かどうか、弁護団や専門家に調査を委託していました。弁護団はこの日、訴訟は「効果的であり有効」だとする意見書を伊波洋一市長に提出しました。
発表によると、市は、同飛行場の周辺で騒音被害が長年続く状態について、他の自治体にはない特別な被害で、法の下の平等を定めた憲法14条に反すると判断。危険な基地が本土復帰後38年も存在し続ける状態は、著しく受忍限度を超え、違法だと訴えています。また、基地の面積は市の面積の約4分の1に当たる約480ヘクタールもあり、街づくりを阻害し、憲法92条、94条が保障する自治権も侵していると主張しています。損害賠償の根拠としては、基地の存在で効率良い下水道整備ができないことや、安全確保のために消防署を必要以上に設けなければならないことなどを挙げており、賠償額は今後算出するとのことです。市は、9月議会に必要な予算案を提出し、議決を経て提訴します。伊波市長は「市民の生命、財産を守るため、政府の(用地)提供のあり方を司法に問うてみたい」と話しています。
これに対して仙石由人官房長官は5日の記者会見で、「裁判で決着を付けるのは誰にでも付与された権利だ。政府も堂々と受け、裁判所でちゃんと判断してもらうのが正しい道だ」と述べ、争う姿勢を示しています。
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毎日新聞が改憲路線に転向?
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憲法に関し、改正より、その是非を問う「論憲」の立場をとってきたとされる毎日新聞社の内部で、時ならぬ〝改憲論議〟が起きていると7月2日の夕刊フジが伝えています。同紙によると、4月、菊池哲郎主筆(当時)が、組合交渉の席で「毎日新聞は憲法改正に反対だと世間ではまだ思われている。だけど、僕が論説委員長をやっていたころに『憲法改正は反対じゃない、改正としたほうがいい』というふうに変えて、そういう方向で主張してきている」と発言し、「改憲」へ舵を切るかのような主張を展開し、労組側から真意を問う声が上がるなど、物議をかもしているといいます。このやり取りは、毎日新聞労働組合の新聞研究部が発行した機関紙「奔流」(5月10日付)に「『毎日は改憲』主張」と題して報じられています。組合は「憲法論議については、より慎重な社内論議が必要と考える」と指摘、「今後、必要に応じて次期主筆に対する交渉のテーマにしていく」としています。
今後、同社の論調への注視が必要かもしれません。
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(2010年7月14日入力)
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