「九条の会・わかやま」 145号を発行(2010年10月5日付)

 145号が10月5日付で発行されました。1面は、廃絶の世界条約が必要(ティルマン・アルフレッド・ラフ氏)、映画「日本の青空Ⅱ」の沢内村長の憲法解説原稿見つかる、九条噺、2面は、「アメリカばんざい」の藤本監督が基地問題で上映キャラバン、和歌山市で署名一斉行動 です。
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[本文から]

核廃絶の世界条約が必要
ティルマン・アルフレッド・ラフ氏が講演


 9月23日、プラザホープ(和歌山市)で、核戦争防止和歌山県医師の会・和歌山県保険医協会が共催したラフ氏(メルボルン大学准教授、国際核兵器廃絶キャンペーン=ICAN代表)の「『核兵器のない世界』は実現可能」と題した講演会が開催されました。講演概略をご紹介します。

 3年前に比べ核兵器廃絶の希望が大きくなったが、言葉だけの段階であり、廃絶への力を大きくしなければならない。今年1月に核終末時計が6分から7分に戻っただけだ。
(1)ICANの現在
●地雷禁止条約のような成功例に着想を得て核廃絶条約をめざしているが、NPT再検討会議やサミットでも合意に至らず危機感を持っている。
●ICANの考えは、①段階的縮小は失敗してきた。核廃絶の世界条約が必要だ②市民が政府を動かして条約を実現する。ということ。
●ICANは組織ではなく、開かれた運動であり、各団体の課題を尊重しつつ、核廃絶と核廃絶世界条約実現という目標で共通している。
(2)この3年間の成果
●条約モデルを改訂して国連に提出。潘基文(パン・ギムン)事務総長の支持を得た。
●運動のパートナーが広がった。豪州、英国、スウェーデン、フランスなど。豪州では、環境・女性・学生諸団体、教会、労組、政党など多様。
●いくつかの政党などに認められ、世界条約に至る一歩。
(3)核廃絶世界条約実現へ
●地雷廃止・クラスター爆弾廃止は、条約を求める運動と世論が各国を動かし、大国の反対を押し切って成立した。
●核廃絶は、保有国の既得権、軍需産業従事者の多さという困難があり、「米・ロが捨てなければ廃絶不可」との意見もあるが、廃絶へのリーダーシップは非保有国から始まる。
●有力なステップとして、「核兵器使用を人道的な立場から戦争犯罪とする」「核兵器の管理を厳しくして生産をしない」などがある。
(4)優先課題
●各国政府に圧力をかけ、他の政府と協力して世界条約実現に動くようにさせる。
●なるべく上のレベルのリーダーの賛成を得る。政権交代があっても粘り強く。
●政権リーダーや官僚を呼んでスピーチさせたり議員アンケートなどで意識変化を図る。
●医療など種々のルートを通じて連帯を強める。たとえば、今年4月のカレンバーガー赤十字総裁のスピーチの核廃絶アピールは各国赤十字に影響を与えた。
●核使用が食糧生産に与える深刻な影響の研究結果も重要だ。
●医療用アイソトープの原料を高濃縮ウランから低濃縮ウランに切り替えるべきだ。
●Youtube動画サイトで核廃絶を訴える「長い連鎖メッセージ」を広げているので協力を。
●ICANのインターネットサイトに掲載されているさまざまな資料の活用を。
質疑応答
①国際司法裁判所96年勧告に関しどのような取り組みがあるか。
●「保有国は善意を持って」という文言について、ICANの中の法律家グループが研究を続けている。また「他国に国が侵される危険のある場合」という核使用容認の含みを持った文言が入った事情・経緯がアルジェリ氏によって明らかにされた。
②ヒバクシャから何を学んだか。
●感動と力を与えられている。どの被爆者も恨みや報復を語らず「わたしだけで十分、これ以上被爆者を作らないで」と言われることに感銘を受ける。広島・長崎の被爆者の他にも、核実験場や鉱山の被曝者もいる。核実験被曝者は癌患者が240万人と推定され、多くは名前が分からない。
③市民との結びつきはどう進めるのか。
●「地雷廃止、クラスター爆弾廃止の成功例を参考に、運動と世論で政権、国際組織などへ力を出していく」「核兵器廃止という目標を明らかにする」ことを基本に。「核廃絶について市民の関心、知識が乏しいこともあるので、キャンペーンの中で変えて行く」ことが課題。
④医療用の高濃縮ウランは軍事転用するほどの量があるか。
●世界で年85㎏で、いくつかの核兵器を作れる。

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沢内村長の憲法解説原稿見つかる
映画「いのちの山河~日本の青空Ⅱ」の

 全国に先駆けて老人医療費の無料化に踏み切った旧沢内村の故深沢晟雄(まさお)村長が公布直後の憲法を解説した原稿が見つかった。村の青年を対象にした講座の草稿で、戦争放棄や生存権をうたった憲法9条や25条の理念を説いている。生命尊重の行政を進める上で憲法を強く意識していたことを示す資料として深沢晟雄資料館に保存される。
 原稿は08年1月に亡くなった深沢さんの妻ミキさんの遺品の中から発見され、NPO法人「深沢晟雄の会」に寄贈された。出納帳の罫紙を縦に使って鉛筆で記され、十数ページがひもでとじられていた。会では深沢さんの生涯を描いた「村長ありき」の著者で一関市に住む及川和男さん(76)に翻刻を依頼。及川さんは09年夏に1カ月かけ読み解いた。
 原稿には表題がなく、1946年11月公布、47年5月施行の新憲法を解説した内容で、47年2月ごろに書かれたことがわかった。東北帝大を卒業し、中国で敗戦を迎えた深沢氏は46年に帰国、郷里で農業に従事する傍ら、青年会の学習講座で講師役を務めていた。
 深沢氏は原稿で新憲法の性格を「民主政治の原則と平和思想の原則を基本とする」と指摘し、戦争放棄や生存権を中心に解説している。
 深沢氏が村長に就任し、老人医療費の無料化を実施したのは60年12月。この時に県が国保法に違反するとして無料化を思いとどまるよう指導したのに対し、深沢氏は「裁判されるなら受けて立つ。憲法25条に照らして私は絶対に負けない。国は必ずあとからついてくる」と反論した。
 無料化に踏み切る十数年前に憲法を解説した内容や、実施を渋る県を説得したエピソードからは、無料化が単なる思いつきではなく、憲法を深く読み込み、理解したうえで挑んだ様子がうかがえる。

 深沢晟雄の会副理事長の佐々木孝道さん(54)は「深沢さんは、豪雪、貧困、多病多死に直面する沢内の窮状を憲法で切り開こうと考えたのだろう」と語り、及川さんは「深沢村政の原点に憲法があることを裏付ける貴重な資料だ」と話している。
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 新憲法を解説した原稿の中から以下、一部を抜粋した。
▼「日本国の最高意志を決定するものは、国民自身であります。人民の意志が一番高く尊いことを意味します」
▼「主権在民の思想が表なら、人民の基本的な生まれつきの権利や自由の主張が裏になって参ります」
▼「人間がこの世に生まれたからには、誰でも同じやうに生き行く権利を持ってる」
▼「個人が尊重され、凡(すべ)てが幸福になることが民主政治の目標であり」
▼「日本は自衛の為にさへ一切戦争をしないし、従って武力さへも永久に放棄することを宣言して居ります。斯(か)かる徹底した戦争放棄は世界史始まって以来ないことであります」
▼「一度戦争放棄を宣言した以上は、国際平和の先頭に立って、理想に邁進せねばならぬ」
(朝日新聞岩手版9月16日付)

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【九条噺】

 東京都の石原知事は、都内にある朝鮮学校10校に対する都の補助金を「考え直したい」と述べた(9月7日)。この補助金見直しは、北朝鮮による拉致被害者家族連絡会などの要請を受けておこなわれるものだが、知事は「反日教育をするような学校に補助はできない」とも述べている。なお、同連絡会は、同様に朝鮮学校の高校無償化適用にも反対し、補助金制度を見直すよう、全国の関係する道府県にも要請すると報じられている▼中井洽前拉致問題担当大臣は、「(無償化は)まるで金正日か朝総連に金をやるようなもの」とクレームをつけ、橋下徹大阪府知事は朝鮮学校を無償化の対象から除外した理由について「暴力団に関係する企業に金をやらないのと同じ」だと述べた。こうした政治家の暴言や一部マスコミによるバッシングを契機に、ネット上でも朝鮮学校に対する誹謗中傷があふれ、今や理不尽極まる言葉の暴力が深刻な様相を呈しつつあると聞く▼日本人として、この国の歴史を誠実に学び、かつてこの国に痛めつけられてきた多くの人々の怒りや悲しみもきちんと理解するという、とても大切なことがおろそかにされつつあるのではないか、と危惧する。そしていま、人と人とをあからさまに分断するような言葉の横行は許してはならないし、人を人とも思わないような傲慢で醜い差別は断じて許してはならないと思うのである。(佐)

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基地問題で上映キャラバン「沖縄県民の思い知ろう」
「アメリカばんざい」の藤本監督が

(09年10月17日、和歌山市民会館で上映・講演会を開催しました)

キャラバンに向う藤本監督(右)

 沖縄県名護市辺野古などで撮影を続けている北海道新得町在住のドキュメンタリー映画監督、藤本幸久さん(56)が「基地問題を考えよう」と作品の上映キャラバンをスタートさせ、札幌市で23日、激励会が開かれた。基地や米軍、戦争をテーマにした6作品を携え、来年3月まで全国60カ所以上を回る予定。
 激励会では、米軍普天間飛行場の移設反対運動を追ったリポートを上映。藤本さんは「みんなで沖縄県民の思いを知り、移設問題を考え直すべきだ」と挨拶した。
 キャラバンは8月に北海道釧路市で始まった。年末には辺野古でも上映会を開く予定。キャラバンの期間中、30人以上の観客がそろい、会場の用意などができれば、全国どこでも「出前上映」するという。
 問い合わせは札幌市の影山事務所、電話011(206)4570。
(沖縄タイムス9月24日付)

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和歌山市で署名一斉行動

 「憲法9条を守る和歌山市共同センター」が呼びかけて、9月19日、第11回市内署名一斉行動が行われました。楠見、和歌浦・名草、四ケ郷、高松、伏虎・城東、ひがし地域の計6カ所で参加者50人、250筆の署名が集められました。日曜日で留守が多かったが、会えたところでは全体に反応がよく、「戦争で2人死んでいる」「戦争に反対せなあかん」「よう来てくれた」「あがってお茶飲んでいきな」など好意的に対応してくれました。しかし、中には「戦争はいけないが、どうやって日本を守っていくのか、納得が出来ない」という方もありました。
 和歌山市では、「県民の会」や「和歌山市共同センター」が呼びかけた一斉行動など、07年9月以降、11回の行動を行い、累計で1126人の参加、5923肇の署名を集めています。

楠見地域での署名活動

 私(山入桂吾さん)が参加した楠見地区では事前ビラなど入念な準備をしてくれているので「チラシ入れてくれちゃったなあ」との声がたくさん聞かれた。
 「私の親も戦争で亡なったんよお」と話をしてくれる女性や「戦争ら、あかな」と不自由な手で懸命に名前を書いてくれた男性など思いのこもった署名をいただくことができた。
 インターフォン越しに断られることもあったが、対面して話ができた方にはほぼ署名をしてもらった。「9条は大切。守らないと」と思っている人の声を集めるには積極的に働きかけることが重要だとあらためて感じた行動であった。
(「県民の会ニュース」9月29日号より)

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(2010年10月8日入力)
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