「九条の会・わかやま」 147号を発行(2010年11月3日付)

 147号が11月3日付で発行されました。1面は、日本に対する美しい誤解を誤解でなくするのが私たちの努め(中村哲さん)、何故、みんなの党が増えたのか( 渡辺治さん講演 A)、九条噺、故・本多さんたたえ遺族に平和賞贈呈 です。
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日本に対する美しい誤解を、誤解でなくするのが私たちの努め

 10月29日、和歌山市民会館で「9条ネットわかやま」「憲法9条を守る和歌山弁護士の会」共催の、「アフガン最前線報告」と題するペシャワール会現地代表・中村哲医師の講演会が開催されました。講演に先立ち、この度創立された「わかやま平和賞」が故・本多立太郎さんに贈呈されました(内容は別掲)。講演の中から中村哲さんの平和への思いをご紹介します。


中村哲さん講演

 中村医師は「平和とはなんだろうか、我々はどのように生きていったらいいのだろうか。平和は単に戦争がないということだけではない。私たちの現時点での活動から、何か得ていただくものがあるのではないか」と、現地の映像を交え、アフガンとはどのような国か、また、16年前にペシャワールでハンセン病対策活動から始まった活動が、医療以外のことに大きな力を注ぎ、井戸掘り、食料支援、水路建設、モスク(マドラッサ)の建設と進められてきた活動を紹介されました。中村医師は、アフガン問題はパンと水の問題であって、政治問題ではない。爆弾よりもパンと水だと訴えられました。講演の中で、中村医師の訴えられた平和への思いの一部を紹介します。
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 単に日本人だということで仕事がうまくいく、命拾いをすることがある。日本についてアフガン人が連想するのは、日露戦争と広島・長崎の原爆。日本は相手がどんなに大きな国であっても理不尽なことには屈しない不撓不屈の国という美しい誤解がある。原爆で破壊されても日本は見事に復活した。羽振りのいい国は必ず戦争をする。しかし、日本は経済的繁栄を誇りながら、ただの一度も海外に出兵したことがない平和な国だという、これまた美しい誤解が私たちの活動を推し進めてきた。しかし、これらは我々に望まれている国の状態を反映しており、誤解を誤解でなくするように務めることが、彼らの信じている日本に近づけることが我々の大きな役目ではないか。
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 ソ連は一度占拠した国は絶対に手放さない、アフガンもソ連の衛星国家としてとどまると国際的には思われていた。しかし、アフガンは一度も外国から征服されたことがないことが誇りになっており、ソ連軍もそのうち出て行くというのが彼らの固い信念だった。その通りになった。今、米軍がいるが、みんな楽天的に抵抗しているのは、彼らが帰っていくという自信があるからで、容易に外国軍が占拠出来ない国ということだ。
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 10万人のソ連精鋭部隊でも制圧できなかったアフガンが、わずか1万2千人のタリバンの軍勢によって9割がコントロールされたのは、アフガン人の心に訴える何かがあった。長い戦乱の中で誰でもいいから清潔な政権があらわれて国を治めてくれればいいという平和への願いがタリバン政権を誕生させた。これで治安は格段によくなった。
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 タリバン政権が倒れ、「絶対の正義の味方、永遠の自由の味方米国およびその同盟国」が何を作ったか、けし栽培が復活し世界の麻薬の90数%を供給する麻薬大国になった。米国の言う自由は、麻薬栽培の自由、街頭で乞食をする自由、外国人相手に売春する自由、飢えた人たちが餓死する自由が解放されたと言っても言いすぎではない。
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 たとえ相手が悪くでも、人間は叩いたり罰したりしても決してよくならない。かつてのタリバン政権の外務大臣はアフガン国連制裁がなければ9・11は起きなかったであろうと言っている。復讐者を支えるような土壌はなかったであろう。平和のためにも私たちが守らねばならないことは、何をすべきかよりも、何をしてはいけないかだ。殺してはいけない、盗んではいけないなどは昔から変わらぬ倫理だ。国益の名の下に自身の利益を追求するならば、人殺しをしてまで豊かになろうとは思わない。
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 国を守るとは何を守るのか、目先の利益を守るのか、国民の生命を守るのか、日本の独立を守るのか、今考えることが切実に求められているのではないか。私たちは実際の体験をもって訴える。平和は武器によっては達成できない。みんなが食えること、家族と一緒に過ごせること、こうすることが最も早道だいうことを示すことにある。そういう立場で日本政府にも提言をしていきたい。

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何故、みんなの党が増えたのか

 10月16日、プラザホープ(和歌山市)で「憲法9条を守る和歌山市共同センター結成4周年記念・秋の情勢学習会」が開催され、一橋大学名誉教授・渡辺治さん(「九条の会」事務局)が「民主党政権の新段階と構造改革、憲法の行方」と題して講演されました。その要旨を4回(予定)に分けてご紹介します。今回は2回目。

渡辺治さん講演 A

 菅政権は出発の当初から鳩山氏がゴチャゴチャにしてしまった政治を保守政党の枠組み、構造改革、日米軍事同盟にもう一度戻す、財界・アメリカを安心させる、そういう政権として、明らかに「右」からの力に押されて登場した。07年のマニフェストでは福祉の問題や、構造改革はやめることが並んでいたが、菅政権のマニフェストではそれが一切なくなり、今まで言わなかった3つのことが書かれている。1つは「日米同盟の深化」、日米軍事同盟の強化を初めて言い、自民党と同じことを書いた。要するに「オバマさんごめんなさい」ということだ。2つ目は、今までは評判が悪くなるので書かなかった消費税を上げるということをはっきり書いた。3つ目は法人税率引き下げを書いた。菅政権は構造改革の政治に戻すことをはっきり約束したことになる。構造改革とは、ひとことで言うと「大企業の競争力拡大のために、既存制度を変える」ということ。競争力とは「大企業が大儲けし、儲けの一部を価格に転嫁して安くすること」だ。そのための2つの柱がある。1つは大企業の労働者の賃金を下げる、リストラをやり正規従業員を非正規に変える、規制緩和をやり労働条件を切り下げる改革をやる。2つ目は法人税を下げること。これは黙っていても大きな金が入ってくる。そのためには、財政を拡大しないこと。財政を拡大すると所得税と法人税で払わなければならず、法人税が下げられない。財政を削減するために、一番大きい社会保障、その中で一番の医療、さらにその中で一番の高齢者医療、だから後期高齢者医療制度をやった。もう1つ税金がかかる公共事業投資をリストラする。こういう形で法人税を安くする。とは言っても運動もあり簡単にはできない。だから法人税を安くする代わりに他の税金を取ればいいことになり、これが消費税だ。構造改革には必ず消費税と社会保障のリストラ、労働者のリストラが出てくる。「消費税増税は財政再建のため」は真っ赤なウソ。財政再建で税金を下げることはあり得ない。
 菅氏が意気揚々と出てきたが、参院選で大敗北した。参院選の結果は何をもたらしたのか。3つの特徴があった。1つは民主党が大敗北をした。大都市でも地方でも大きく負けたが、地方では自民党がどんどん下降し昨年の8月に民主党に初めて敗北したが、構造改革をやめてくれると思った民主党がやっぱりだめで、今年はまた逆転した。しかし、自民党は21勝8敗で勝ったが、前進したところはない。大都市では、エリートサラリーマンは民主党に構造改革をやって、自分たちの給料を上げるために、法人税を下げてもらいたいと思っているので、03年から民主党は勝っていた。今回東京で民主党は9ポイントも下がったが、自民党も下がった。菅首相が「消費税」でふらついたので、大都市はみんなの党に行き、地方でも大都市でも民主党は大きく後退した。2つ目は、自民党も増えなかった。自民党と民主党を合わせると55%となり、15ポイントも減った。ところが社民党+共産党では10%を割ってしまった。一体どこへ消えたのか、新党に行った。保守全体では75.89%で、1ポイントも変わっていない。3つ目は共産党や社民党は大きく後退した。何故後退したのか、2つの理由がある。1つは小選挙区制の害悪がはっきりと出た。入れても議席に結びつかない。もし、比例代表だけだったら、今の得票率で共産党は32議席、社民党は15議席が取れる。それなら、共産党、社民党に入れる人も増えるはず。2つ目に、この1年の間に国民がいろんなことを見つめて考えるようになった。「福祉の財源がないから消費税を上げる」というと国民はそうかなと考える。消費税増税は昨年は6割が反対だったが、今年8月には6割の人が仕方がないと言っている。消費税を上げないでも、福祉を増大しても現実的に財政は大丈夫、再建できる。日米同盟を解消しても日本の安全は守れるということについての確信を国民が持つことができなかった。みんなの党は消費税増税の前に公務員をリストラするというとんでもない方針だが、それでも対案を出しているというふうに思った人がいる。正しいけれど対案を具体的に示してくれないと本当に安心できない、これが新党に止まった大きな原因だ。(つづく)

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【九条噺】

 茨木のり子の詩「りゅうりぇんれんの物語」はずいぶん長い。何しろ、500行をはるかに超える詩で、こんな長い詩は他に知らない。それでも、読み始めるとたちまちひきこまれ、その長さをまるで感じさせないのだからこの詩人はすごいと思う▼この詩は、かつての日本軍による中国人強制連行をテーマとしている。劉連仁という一人の中国人(農民)が知人宅に向う途中、突如日本軍に攫(さら)われて、同様に連行された同胞(総勢800人)とともに青島から貨物船の底に叩き込まれて門司へ、さらにそこから北海道の鉱山へと運ばれた。過酷な労働にたえきれずに逃亡者も続出したが、殆どは見つかり処刑された。しかし、劉連仁だけは北海道の山野で逃避行を続け、その発見には実に13年余の歳月を要したのである。勿論、終戦も知らなかった▼そして詩は次のようにうたう。「昭和三十三年三月りゅうりぇんれんは雨にけむる東京についた/罪もない 兵士でもない 百姓を/こんなひどい目にあわせた/『華人労務者移入方針』/かつてこの案を練った商工大臣が/今は総理大臣となっている不思議な首都へ」と▼その「移入方針」は3万人の目標を定めたが、「調査報告書」(43・4〜45・5)でその「実績」は38935人と書く。劉連仁は幸いにも帰国し妻子とも再会できたが、986人中556人もが病死または殺害された秋田花岡鉱山のような例もある。「九条こそこの悲しみを繰り返さないもっとも確かな保障」と、また肝に銘じるのである。(佐)

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故・本多さんたたえ遺族に平和賞贈呈

 中村医師の講演に先立ち、「9条ネットわかやま」がこの度創設した「わかやま平和賞」が故・本多立太郎さんに贈られました。
 本多さんへの授賞理由は、「72歳の時から戦争体験を語りだされ、最後の10数年はみなべ町に住まれ、頼まれれば、全国どこへでも出かけられた。出前噺は、『人間にとって戦争とは別れと死だ』との一点に凝縮され、子どもたちにも解り易く、静かに、熱く、戦争の本質を話され、平和がどんなに大切で、みんなで守らなければならないものかを、聞く人に心から訴える力があった。09年12月までに、1314回、出前先は全国47都道府県に及んだ」と紹介されました。
 大阪市から駆けつけ、平和賞を受け取った本多さんの長女の永野真理子さんは「形になる縁が和歌山とできて、父も喜んでいると思う。特にみなべの人たちにはよくしていただいた。父はパリで憲法9条を撒くことを夢にしていたが、果せなかった。この賞はペシャワール会の中村さんにお渡しし、アフガニスタンの人々の暮らしのために役立てていただきたい」と挨拶され、副賞の10万円は「ペシャワール会」に寄付されました。



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