「九条の会・わかやま」 148号を発行(2010年11月17日付)

 148号が11月17日付で発行されました。1面は、「本多立太郎さんを偲び語る会」開催、新しい福祉の政治の見取図が求められる(渡辺治さん講演③)、九条噺、2面は、フランス大使館より返書届く、3面は、第7回憲法フェスタ(守ろう9条 紀の川 市民の会)、民主党 国会議員の定数削減先送り、武器輸出3原則を見直し です。
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「本多立太郎さんを偲び語る会」開催

 11月7日、南部公民館(和歌山県みなべ町)で、去る5月27日、96歳で亡くなった「本多立太郎さんを偲び語る会」が、立ち見が出る満員の90名近くの参加で開かれました。本多さんは、旧南部川村に移住し、「戦争出前噺」を1314回、15万人の聴講者に行い、晩年はパリで仏語訳の日本国憲法9条を配布してアピールする計画を進めながら果たせず逝かれました。
 「偲び語る会」は、開会前から本多さんの愛した曲「ボレロ」が流れ、本多さんを偲ぶ人で満員になりました。
 開会挨拶では、6月に渡仏したいという本多さんの遺志を受け継ぎ、この9月、仏語のリーフレットを、みなべ「九条の会」が在日フランス大使館に届けたこと、11月1日にその返書が大使館から届いたことなどが紹介されました。
 みなべ町長・小谷芳正氏挨拶(代読)では、本多さんの旧南部川村での成人式講演、第1回わかやま平和賞受賞などにふれ、本多さんと語り合って平和の大切さを感じて、平和市長会に加盟したことと非核の町としていく決意を披露、「みなべ『9条の会』の発展を」と結ばれました。
 本多さんの長女・永野真理子さんからの手紙が紹介され、「人と話すのが好きな父、会の様子を見て楽しんでいるでしょう」との言葉が印象的でした。
 旧南部川村の元教育長・岩本明博さんが「本多さん清川への縁」と題して、本多さんが、のえちゃん(3歳)のアレルギー治療のため、移住地を探した結果、岩本さんが推す清川小学校のある南部川村に来られた詳しい経緯、その後の戦争体験と平和を語る活動、公民館広報への寄稿の様子などを語られ、「このような立派な方に住んでいただいて光栄」と結ばれました。
 本多さんの出前噺に同行し、四国さらに本多さんが行ったことのなかった各地を車に乗せて走られた佐伯晴郎さんは、「本多さんの話があらゆる人々に聞かれたのは、温厚な人柄と透き通った声から湧き出る具体的で筋の通った話しぶりによる」と述べられました。そして、全都道府県踏破を機に本多さんが牧師佐伯さんによってキリスト教の洗礼を受けて「天国へのパスポートを与えられた」と喜ばれたことを語られ、「本多さんは、平和を守る活動を続けてカトリックの洗礼を受けた加藤周一さんと同じく、手を携えて神の天国に行き、千の風になって私たちを見守っているだろう。皆でがんばりましょう」と結ばれました。
 続いて、みなべ「九条の会」池田真作人さん、白浜九条の会・森栄一さんから「出前噺を聞いて」の思いが語られました。
 スライドショーで本多さんの履歴や活動が紹介され、みなべ「九条の会」の生みの親で初代代表世話人として、南部高校門前での朝7時半からの署名活動に山奥の地から参加されるなど、全国での出前噺とともに地元での活動も紹介されました。
 途中、メゾソプラノ独唱やヴァイオリン弾き語りも行われ、いろいろ知らなかったエピソードが多く、本多さんの人柄を偲ぶ多くの人が集まった心温まる会でした。

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新しい福祉の政治の見取図が求められる

 10月16日、プラザホープ(和歌山市)で「憲法9条を守る和歌山市共同センター結成4周年記念・秋の情勢学習会」が開催され、一橋大学名誉教授・渡辺治さん(「九条の会」事務局)が「民主党政権の新段階と構造改革、憲法の行方」と題して講演されました。その要旨を4回に分けてご紹介しています。今回は3回目。

渡辺治さん講演 ③

 菅政権は大敗北したが、政権を維持することになった。菅政権を潰したら、構造改革で消費税を上げる・法人税を下げる政権がなくなり、辺野古移転もやり直しで、そんなことをしている暇はないと、マスコミが一致して菅政権の責任を追及しなかった。財界は露骨に消費税増税・法人税減税に取り組むよう菅政権維持を言い、自民党にも菅政権を応援するように言った。民主党総裁選挙では再び、財界とマスコミが一斉に小沢叩きに走った。
 菅政権で憲法、構造改革はどうなるのか。構造改革は加速する。参院選で「消費税増税はNO」となったので、消費税を上げるとは言えなくなった。法人税減税は実施するが、当面消費税は上げられない。そこで社会保障を切り捨てる。地域主権改革ということで、ナショナルミニマムの責任を全部放棄し、地方にやらせる。権限と乏しい財源を地方に渡し、介護か、医療か、教育か何を切り捨てるかは自由に、しかし国はビタ一文出さない。第2の目標は、後期高齢者医療制度は廃止するが、新制度に移動させる。この新制度は後期高齢者の医療費を削減する仕組みをそのままにし、国保の都道府県化で、75歳以上にあった悪い制度を国保全体に及ぼすという改悪をやろうとしている。そして、舞台を整え直して消費税増税を必ずやってくる。民主党一党ではできないので、自民党と組む。消費税だけを出さないで、税制一体改革とか言って、所得税の累進性復活や法人税引き下げを一緒にやるという戦略でくる。
 軍事大国化、憲法の問題でも単独ではなかなかできない。民主党支持者の中には憲法や普天間を何とかしてほしいという人もいるので、いかに菅氏でもそういう人たちを切り捨てて、民主党が政権を維持できるとは思っていない。だから、ここでも大連立が出てくる。民主党と自民党の共通の舞台ができている。改憲の動きもこの中で進む。これも同じ舞台でやればできる。自民党とのつながりを常に警戒し、そういう方向に向わないようにする必要がある。
 この民主党政権に私たちはどう立ち向えばいいのか。1つは、後期高齢者医療制度、地域主権改革、自衛隊恒久法、防衛計画の大綱、何よりも重要なのは、消費税の引き上げ、こういう問題に対して私たちが機敏に反応して運動を起こして行くことが非常に重要だ。鳩山政権は戦後の政治の中でどうしてあんな新しい政治ができたのかというと、私たちの運動が鳩山政権を保守の政治から逸脱させた。あわてた財界とアメリカがそれを巻き返した。それをもう1回巻き返すためには、私たちがもう1回今まで以上の大きな運動をして、政治をもう一歩動かしていくことが大事で、菅氏の政治を止める意味では大きな力になる。菅政権はそういう動きに大きく動揺してきた経験がある。菅政権の構造改革の動きを止めるには、そうした運動が今こそ必要だ。
 2つ目に、保守2大政党の「得票7割」は壊れたが、15%の人たちは新党の方に行ってしまい、社民・共産が大きくなることはなかった。民主党も構造改革を掲げる菅政権と、古い利益誘導型政治に戻ろうとする小沢氏のたたかいは反構造改革ではあるが、新しい福祉の政治ではなく、古い自民党の利益誘導型の政治に戻ろうという政治だった。つまり、民主党を2分した力は構造改革か、古い利益誘導型政治かということだ。ここでも新しい旗が見えている、つまり、今日本で多くの国民が求めているのは、構造改革の道でもなく、利益誘導型政治でもない。この新しい福祉の政治をどうやって作るのかという見取り図がないことが問題だ。だから、民主党から離れた、自民党にも戻らない、だけど、共産党には来られないということで、新党に止まり、民主党も党内2分だけれど、福祉の政治を実現する人は誰一人としていない、こういう状態が起こっている。その中で私たちは、単に構造改革のひとつひとつの運動に機敏に反応するだけではなく、消費税を上げない、福祉を増進する、そういう政治を実現できるような見取図と展望を示さねばならない。日米同盟をなくして、九条を守った日本の安全やアジアの平和を実現する方向性を具体的に示さなければ国民は納得しない。しかも、国民はそういうものを求めている。
 菅政権が存続してから、65%の人が消費税の引き上げにやむなしと答えている。45%の人が普天間の辺野古移転にやむなしと答えている。これは明らかに国民が見通しを失っている。構造改革でもない、利益誘導型政治でもない、日米同盟でもない道を探ったが、鳩山政権はちょっと顔を示したけれど、結局できないという声が、菅政権に対する消極的な支持の声として集まってきた。私たちがやることは運動でそういう問題の本質を暴くだけでなく、私たち自身が日米同盟のない、構造改革のない日本についての、きちっとした展望・対案を示していくということが必要ではないかと思う。(つづく)

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【九条噺】

 どちらかといえば、短詩文芸のなかでは、俳句よりむしろ川柳に親しみを感じてきたように思う。俳句は「詠む」が川柳は「吐く」という。ずいぶん違うようだが実際には双方の線引きはかなりむつかしい。例えば、「だいこ引き だいこで道を教えけり」は俳句だが、「ひん抜いた だいこで道を教えられ」は川柳である。俳句らしからぬ句も少なくない。筆者の好きな句「うしろすがたのしぐれてゆくか」(山頭火)「分け入っても分け入っても蒼い山」(同)などもそうである▼過日テレビのインタビュー番組で、俳人金子兜太さんが、俳句に対する思いにとどまらず、その過酷な戦争体験や、反戦平和への思いも語っていた。その内容はもちろん、90歳を超えてなお矍鑠(かくしゃく)たる姿にとても励まされた。番組のなかで紹介された句は「彎曲(わんきょく)し 火傷し爆心地のマラソン」「荒星遊ぶ秩父連山戦さあるな」「朝はじまる海へ突込む鴎の死」▼金子さんは云う。「反戦平和の基礎には、人が本当に自由に生きられる社会を実現したいという理想があり、その理想があったればこそ、この年齢になっても気力が萎えることなく創作を続けられるのです。若い人たちは、戦争に対して想像力を働かせてほしい。戦争や反戦を詠むことは俳人として力を広げていくことになるのです」。金子さんの句はいつもその生き様のように骨太で、それこそ「詠む」より「吐く」が似合いそうだ。(佐)

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フランス大使館より返書届く

 みなべ「九条の会」は、「憲法9条をパリの街角でまきたい」という本多立太郎さんが本年5月に亡くなり、その希望が果たせなかったため、その思いを受け継ぎ、9月20日に、本多さんの仏語訳9条と、「仏語に訳した『日本国憲法第9条』をどうか、大使館の皆さんはじめ、多くのフランス国民の方々にお知らせしていただければ大変嬉しく思います」との手紙を駐日フランス大使に送りました。11月1日付で、フランス大使館より次の返書が届きました。

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2010年11月1日
みなべ「九条の会」
平野憲一郎様

 拝啓
 9月20日付の貴信、および貴会の生みの親であられる故・本多立太郎様の、日本国憲法第九条を守ろうというメッセージを、興味深く拝読致しました。
 フランスは日本と同じように、世界平和を守ることを大変重視しています。戦争の予防や、紛争の平和裏な、各国間の対話による解決は、常にフランス外交の優先事項に掲げられています。
 フランスは日本と共に、平和のため、そして全ての人々の安全のため、この目的に向けた努力を積極的に続けて参りますことをここにお約束します。
 この場をお借りして貴殿に敬意を表したく存じます。

敬具


フランソワ・グザヴィエ・レジェ・駐日フランス臨時代理大使

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「第7回憲法フェスタ」開催

「守ろう9条 紀の川 市民の会」

 11月6日、河北コミュニティセンター(和歌山市)で、「守ろう9条 紀の川 市民の会」が「第7回憲法フェスタ」を開催しました。

 午前中は、恒例となった「展示と交流の部屋」では絵手紙をはじめ、着物リフォームの作品や趣味の手作り小物、地域の方々の絵画、書、水墨画、陶芸、木工作品など文化あふれる展示と交流が行われました。毎回設置される喫茶コーナーは、ちょっと一息とテーブルのまわりに集まってコーヒーや紅茶、みかん、お菓子などをいただきながらおしゃべりの場です。「映像の部屋」では「どうするアンポ~日米同盟とわたしたちの未来~」が上映されました。この他、今年初めての試みとして、1階和室を使って「リサイクルひろば」を行いました。「楠見子連れ9条の会」の馬場さんなどが中心となり、不要になった衣類などを持ち寄り、欲しい物を貰って帰るというシステムで、初対面の人でも品定めをしながら楽しくおしゃべりができて非常に好評だったようです。来年以降も楽しみです。

 

 午後からのメイン会場のプログラムは3部構成でした。第1部は、うたごえオールスターズによるミニコンサートで、オリジナル曲の「かぞえうた」の他、「アメイジンググレイス」や「憲法九条五月晴れ」などを、会場の皆さんも一緒になって楽しく歌うことができました。

 第2部は、女性一人が人形を操る珍しい乙女文楽を、角野悦子さんが演じてくださいました。演目は「三番叟」と「先代萩」でした。

 第3部は、フリージャーナリスト・西谷文和さんの「最新アフガニスタン報告~アメリカはなぜ戦争を続けるのか?~」と題した講演で、アフガニスタン警察の訓練の様子や、横須賀、三沢、嘉手納など日本各地の基地から来ている米兵へのインタビューなど、10月の最新現地取材の映像をふんだんに見ることができました。また、小児病院でのたくさんの奇形児の姿(劣化ウラン弾の影響が強く疑われています)には、心が凍り付きそうになった人も多いと思います。

 残念なのは、広報不足のせいか、客席に空席が目立っていたことで、次回以降の反省材料となりました。(金原徹雄さんより)

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民主党、国会議員の 定数削減先送り

 13日付毎日新聞によれば、民主党は12日、国会議員の定数削減をめぐり、菅首相が9月の党代表選公約で掲げた年内の党方針取りまとめを断念する方針を固めたとのことです。
 民主党は今夏の参院選マニフェストで「衆院の比例定数を80、参院定数を40程度削減する」と明記していました。また、首相は9月代表選の公約で「カネのかからない政治の実現に向け、・・・国会議員定数削減について党内で議論し、年内に党方針をまとめる」としていました。しかし、12日の政治改革推進本部総会では、定数削減は議題にもならず、年内のとりまとめは困難となったとのことです。
 民主党が議員定数削減に固執するのは、「9条守れ」の国民多数の声を代表する少数政党を国会から締め出し、民意を排除することが狙いです。
 今回は年内の削減は遠のいたものの、削減をあきらめたものではありません。引き続き注意深く監視する必要があります。

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武器輸出3原則を見直し。国是も否定

 新聞報道によれば、民主党の外交・安全保障調査会が「国内だけで自衛隊の装備品を開発するのは、コストや性能面で限界がある」などとして見直しに向けた検討を進めています。また、防衛省は最先端の装備品を低コストで取得するため、兵器の国際共同開発・生産に参加する必要性を指摘し、PKOをはじめ海外での国際協力活動に対する自衛隊の装備品供与を一律例外で3原則から除外するよう求め、年末の新「防衛計画の大綱」に反映させようとしています。北沢防衛相は11日の衆院安全保障委員会で、「(国会の)議決は重いものだが、これをもって即、国是であるとまで昇華させるにはまだ至っていない」と述べ、武器輸出3原則が国是であることを否定する発言をしています。そして、無人偵察機・攻撃機の〝目〟にあたる「画像ジャイロ」の日米共同研究やステルス機の性能試験をフランス国防装備庁で実施するなど、なし崩し的に軍事技術協力を進めています。

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(2010年11月22日入力 9月25日修正)
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