「九条の会・わかやま」 149号を発行(2010年11月27日付)

 149号が11月27日付で発行されました。1面は、子どもの姿が多かった「那賀9条まつり」、私たちが観客の状態に止ってはならない( 渡辺治さん講演 ④)、九条噺、2面は、基地映画、出前で上映 「アメリカばんざい」の藤本幸久監督、書籍紹介 品川正治『手記 反戦への道』 です。
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[本文から]

子どもの姿が多かった「那賀9条まつり」

 第6回那賀9条まつり「好きなんよ!9条」が11月20日、300名以上が参加して、那賀スポーツリクレーションセンターで開催されました。一昨年は雨にたたられましたが、今年は天候に恵まれ、家族連れが多く子供たちの姿も多く見受けられました。地域9条の会などの模擬店は16店舗。舞台では可愛らしい少女合唱団の歌声、年金者組合・女性部のフラダンス、「平和について」のリレートーク、じゃんけんゲームなどがあり、楽しいひと時をすごしました。

 
 
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私たちが観客の状態に止ってはならない

 10月16日、プラザホープ(和歌山市)で「憲法9条を守る和歌山市共同センター結成4周年記念・秋の情勢学習会」が開催され、一橋大学名誉教授・渡辺治さん(「九条の会」事務局)が「民主党政権の新段階と構造改革、憲法の行方」と題して講演されました。その要旨を4回に分けてご紹介しています。今回は4回目(最終回)。

渡辺治さん講演 ④

 この1年を振り返ると大きく政治は動いた。運動の力によって鳩山氏は戦後60年の政治の中でかつてない、やったことがないことをやった。しかし、その力は財界とアメリカの巻き返しに遭い、菅政権は再び古い自民党政治、構造改革の政治に戻ろうとしている。
この1年間私たちは何をやったかということが今問われている。確かに自公政権の構造改革の政治を倒して、新しい政治を作っていく上で、私たちの「九条の会」を始めとする運動の力は非常に大きな力となった。
 しかし、この1年はどうだったか。私たちが運動の主体・主人公から若干観客の状態になっていたのではないかと思う。毎日様々なことが起こる。菅・小沢決戦のようにテレビにかじりついて面白い状態になる。こういう状態が私たちの中にあったのではないか。「菅が勝った方がいいのか、小沢が勝った方がいいのか」という質問があるが、答えは「丙丁付け難い」だ。問題なのは、新しい福祉の政治、日米同盟のない政治の旗を立てなければいけないのに、こういう状態はまずい。
 「九条の会」は国民世論を大きく変えた。しかし、この1年は40しかできていない。明らかに伸びは止まっている。その結果、露骨に世論調査の変化が現れている。連続的に改憲賛成が落ちていた世論が去年の4月に逆転して、再び60%台の賛成に入った。今年はまたそれが変わったが、ともかく、改憲世論は減る一方という状態ではなくなった。これも「九条の会」がもうひとつ大きな輪が広げられていないからだが、「九条の会」も、「後期高齢者医療制度反対の会」も、「反貧困・反構造改革の運動」も基本的に圧倒的な主力は中高年。中高年が社会運動の主力になってきたのは、戦後の運動の中ではない。戦後の平和運動は明らかに10代、20代の人たちによって作られてきた。中高年の人たちは疲れやすい、ちょっと改憲の動きが大丈夫だから一服するかと、このような状態が「九条の会」の伸びの鈍化や運動の停滞になっているのではないか。私たちが観客の状態に止まっていた、これが大きく鳩山政権からの巻き返しと財界・アメリカの巻き返しを食らっている。
 私たちがもう一回ここで運動の中で巻き返しをする、そういう時代が今やってきた。そういう課題を共同センターも「九条の会」も、他の運動も全体として持っているのではないか。その柱のひとつは明らかに消費税。消費税に反対する人はみんな集まって大きな運動の中心に私たちが据わっている、今までなかったような運動でもって消費税を潰すことができれば、新しい福祉の政治に向けて大きな一歩が踏み出される。もうひとつは憲法。改憲は断じて許さない、こういう大きな運動を保守の人も含めて作ることができれば、反貧困や反派遣の運動で中心になっている若い人たちと大きく手を組んで、運動を再度盛り上げていくことができる。しかも、その運動は中央からはできない。まず地方を変えていくような運動の中で大きく中央の政治を変えていく、そういうことが必要ではないかと思う。井上ひさしさんは最後まで9条を実現する日本を作りたいと沖縄戦の戯曲を書きたいと思われていた。私たちはその想いを実現したいし、25条に至っては9条以上にバカにされている。25条を復権し、25条を実現するような日本、9条を実現するような日本を作るために、もう1回私たちがエンジンをかけ直してがんばることを訴えたい。(おわり)

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【九条噺】

 アフガンからカナダに亡命したジャーナリスト(女性)に妹から手紙が届いた。「地雷で片足を失い生きることに絶望した。次の日食の前に自殺する」という。彼女は妹に思いとどまらせるために危険満載のアフガンに戻り、カンダハールへと向う・・・。イラン映画「カンダハール」(2001年)はざっとこんな展開だったと記憶する▼その映画監督(モクセン・マフマルバク氏)が「もしも爆弾の代わりに本を降らせていたら(云々)」と語るのを聞いた広島の市立大洲中学校の生徒たちが「ねがい」と題する「中学生の平和宣言」をつくった。この「宣言」に感動した山ノ木竹志氏(故人)が「宣言」をもとに編詞し、高田りゅうじ氏が曲をつけ、「宣言」が「ねがい」という歌になった。歌は、〝もしもこの頭上に落とされたものが/ミサイルではなく本やノートであったなら/無知や偏見から解き放たれて/きみは戦うことをやめるだろう〟(1番)〝もしもひとつだけ願いが叶うならば/戦争捨てて世界に愛と平和を/この願い叶うまで人類(私たち)は歩み続けることをやめないだろう〟(4番)と続く▼「ねがい」はうたごえ運動などを通して全国へ、そしてやがて「5番目の歌詞を作ってください」という呼びかけとともに世界各地に広がった。すでに45カ国を超え、5番目の歌詞もまもなく2000に到達するという。広島の中学生たちの平和への思いが世界中の多くの人々の心に響き、しっかり受け止められているのだとも思いたい。(佐)

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基地映画、出前で上映
「アメリカばんざい」の藤本幸久監督、全国各地で

 沖縄の米軍基地や駐留する米海兵隊の実像をとらえたドキュメンタリー映画が、全国各地で「出前上映」されている。監督自身がハンドルを握り、電話一本で駆けつける。「沖縄にある基地問題は、沖縄以外の人々がその実態を知らなければ解決しない」という思いからだ。
 藤本幸久さん(56)=北海道。8月から自作6作品とスクリーンを軽乗用車に積み、各地を回っている。米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設先についての日米両政府の合意にちなみ「辺野古を考える全国上映キャラバン」と名付けている。
 19日夜は石川県加賀市山代温泉の市文化会館にいた。上映したのは、海兵隊員らが新兵時代に訓練を受ける米国内のブートキャンプを撮影した「ONE SHOT ONE KILL」(一撃必殺、108分)。米国防総省の撮影許可を得て取材。若く幼い顔だちの兵士たちが、素手や銃で敵を倒す訓練を繰り返し、命令一つで人を殺せるまでに「成長」する姿を描く。ほかに、基地建設反対を訴えて辺野古の浜で座り込みを続ける住民らの姿を追った「Marines Go Home」(118分)などの作品を希望に応じて組みあわせて上映している。
 今年6月、「(普天間基地の移設先は)最低でも県外」としていた鳩山由紀夫首相が「辺野古回帰」に転じて退陣すると、本土のメディアの基地問題の報道は潮を引くようになくなった。怒りを感じた。
 「政権交代以降、辺野古に絶対に基地を造らせないという沖縄の人々の意思はこれまでにないほど堅固になっている。問われているのは、沖縄以外の人々の無関心だ」
 出前上映は50カ所を超えた。現在、来年2~3月の出前の注文を募集している。30人以上が集まるめどがつけば、個人宅でも出かける。参加費は1人千円。詳しい日程などは、影山事務所(011・206・4570か、http://america-banzai.blogspot.com/ )。(11月20日付朝日新聞夕刊 )



(ONE SHOT ONE KILL 一場面)
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書籍紹介
『手記 反戦への道』

 品川さんが初めて明らかにした自伝である本書は、氏の原点を明らかにします。生まれてから24歳までの激しくも香り高い思想形成史、自己形成史でもあります。
 軍部と天皇制が日本の支配を強めつつある中で、品川さんは、友や家族をこよなく愛し、知的好奇心が旺盛で文学や哲学に接して自己と格闘し、「国家」とは何か、「戦争」とは何かを真正面から考える青年になりました。旧制高校2年生になった品川青年は、軍部を批判した親友の責任を取るとともに陸軍大臣等に豪胆な嘆願書を出し、中国奥地の激戦地に召集されて行きます。そこで殺し殺される凄惨な戦争を経験します。
 戦闘で実感したのが、戦争を国家でなく人間の目で見るという視点でした。それは取りも直さず9条の精神であり、復員船の中で憲法草案に接した品川さんはこれこそ人類の指針となるものだと、戦友たち皆で泣きました。アジア・太平洋戦争をもって「戦争を終える(終戦)」―これが品川さんの原点になりました。戦争反対の思想の背後には人間に対する愛と真実を徹底して追求する精神が屹立しています。経歴からも感じられる自由奔放とも思える生き方は、強靭な自律の精神に裏打ちされていることが伝わってきます。
 本書の「まえがき」で、日本が真に直面している問題は憲法9条と日米安保条約との矛盾、相克であることを明快に指摘しています。「私は9条の旗の下で、真っ直ぐに進む」という品川さんの姿は、得意の剣道でいえば王道に大胆に踏み込む「面」を彷彿とさせます。(法学館憲法研究所HPより抜粋)

著 者:品川 正治
発 行:2010年9月30日
価 格:本体1600円+税
発行所:新日本出版社

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(2010年12月12日入力)
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