「九条の会・わかやま」 150号を発行(2010年12月9日付)

 150号が12月9日付で発行されました。 1面は、書籍紹介 「九条の会・わかやま」呼びかけ人・藤藪庸一さんが出版 「『自殺志願者』でも立ち直れる」、アフガニスタン 永久支援のために 〜 中村哲 次世代へのプロジェクト 〜 @、九条噺、2面は、なぜ、いま衆院比例定数削減か? これとどうたたかうか ― 改めるべきは小選挙区制 ―(小沢隆一さん @ ) です。
    ――――――――――――――――――――――――――――――
[本文から]

書籍紹介
「九条の会・わかやま」呼びかけ人・藤藪庸一さんが出版
「『自殺志願者』でも立ち直れる」

10円玉から始まる命のネットワーク!
 南紀白浜・三段壁で、飛び込み自殺から命を救う活動を続ける藤藪牧師。自殺志願者からSOSの電話があれば365日24時間、いつでも駆けつけ、必要があれば教会へ連れて帰り、衣食住を提供する。そして、共同生活を送ながら仕事を探して自立と社会復帰をめざす彼らを支援している。11年間で保護した自殺志願者は400名以上。なぜ人は自殺したくなり、そこから生還できるのか?「命の現場」で体験したエピソードを交えながら、自殺防止の対策と立ち直る力を得る方法を藤藪牧師が緊急提言する。生きる希望と勇気がわき上がるヒューマンドキュメント。(講談社)

発行日:2010年11月29日
価 格:1470円(税込)
発行所:講談社

    ---------------------------------------------

アフガニスタン 永久支援のために
〜 中村哲 次世代へのプロジェクト 〜 @


 11月24日、NHK教育テレビの「ETV特集」で標題の番組が放映されました。その番組の要旨を3回に分けてご紹介します。今回は1回目。(青字は中村さんの発言)

 この夏、中村さんはアフガンに用水路を建設するに当たり、柳川や九州各地の水利施設を回り、伝統的な治水技術を学びました。300年にわたり脈々と受け継がれてきた水路。アフガンに作った用水路をこのように残すにはどうすればいいか。中村さんは模索していました。
 中村さんが用水路建設を始めたのは7年前。この国は深刻な水不足に見舞われていました。豊かな穀倉地帯であったニングラハル州も田畑は荒地となりました。アフガンの平野部を潤していたのは標高4000m級の山々から流れる雪解け水です。しかし、1年中あった雪が夏には姿を消すようになり、井戸や水路が干上がりました。世界的気候変動が原因と考えられています。生きる術を失った多くの農民が仕事を求め都市部へ流れていきました。
 水がないから、当然彼らは出て行かざるを得ない訳で、共同体は崩れる、家族を養うために軍閥の傭兵になる、治安が悪化するという悪循環です。みんなが安心して普通の農村生活、百姓は百姓で食っていくということをやらないと、アフガンは永久に良くならないというのが我々の考えの基礎にあります。
 アフガンに平和を取り戻すにはまず何よりも農村の再生。中村さんが目をつけたのは旱魃の間も水をたたえるクナール川でした。この水を引き込めば乾ききった農地に緑を蘇らせることができます。中村さんは用水路を造る決意をしました。医師で土木の知識のない中村さんは、ゼロから河川工学を学び水路の計画を練り上げました。クナール川から引き込んだ水を乾燥地帯に誘導し、最終目的地カンベーリー砂漠を目指します。その距離25・5q。完成すれば毎秒6dの水を送り込める計画です。03年3月、水路建設が始まりました。工事の噂を聞きつけ多くの人が集まってきました。資材はツルハシやハンマーなど人力に頼る道具ばかり、掘削機やクレーンなどの重機は見当たりません。現地の人びとが自分たちの力だけで水路を維持できるようにしたい。中村さんはできるだけ機械に頼らない工法を選びました。利用したのは日本の伝統的な治水技術でした。そのひとつが「蛇籠」です。筒状の網に石を詰め、護岸造りに用いられました。コンクリートがない時代、「蛇籠」は治水の要をなす技術でした。工事には毎日600人が参加し、働いた人には日当が支給されます。こうした人件費や資材などの建設費用は、全額日本のNGO「ペシャワール会」に寄せられた寄付金で賄われました。
 建設現場はテロ掃討作戦に向かうアメリカ軍の通り道となっています。着工から半年後突然現れたアメリカ軍のヘリコプターから機銃掃射を受けました。不安と緊張の中作業が続けられました。
 春、クナール川の激流が建設現場に押し寄せ、作りかけの水路に流れ込み、苦労して積み上げた護岸が崩壊しました。翌日、壊れた護岸に住民たちが集まりました。「蛇籠」は網に石を入れれば簡単に補修できます。
 工事開始から5年後、恐れていたことが起きました。アフガンの人々に尽くしたいと働いていた伊藤和也さんが武装集団に拉致され殺害されたのです。これ以上犠牲は出せない。中村さんは日本人スタッフを帰国させました。現地には中村さんただひとりが残り、陣頭指揮をとり続けました。
 10年2月、水路は終着点のガンベーリー砂漠に到達、全長25.5qの用水路が完成しました。用水路の完成を祝う式典が行われました。岩だらけの大地と格闘した7年でした。用水路の周辺の風景は大きく変わりました。水路の護岸に植えられた柳の根が「蛇籠」の石を包み込み水の圧力から水路を守ります。何一つ作物を栽培できなかった場所に豊かな恵みが戻ってきました。用水路によって蘇った田畑は3500f。小麦とトウモロコシ27000dの生産が可能となりました。これは15万人分の食糧に相当します。水路の上流の村には、一度村を捨てた人が次々と帰ってきました。主食の小麦だけでなく、カブやニンジン、ダイコンなど野菜の収穫も始まりました。野菜を売り、現金収入を得る農民の姿も見られるようになりました。武器ではなくツルハシでアフガン人の暮らしを立て直す、その信念が実ろうとしています。(つづく)

    ---------------------------------------------

【九条噺】

 政府は、朝鮮学校(高校段階)に対して「高校無償化制度」を適用するために、対象となる10校から適用申請を受け付けていたが、11月24日、北朝鮮による砲撃事件をうけて「(無償化適用審査の)手続きを一旦停止する」と発表した。政府は今春、「拉致問題」等を事実上口実にして朝鮮学校を無償化制度の適用外としてきたが、最近になって「(無償化制度の)適用に際しては政治・外交上の問題は考慮しない」という方針に改めて、申請があれば個別審査を経てすべて適用対象とする旨明らかにしたばかりだった。それがまたこの急変である。この政府のドタバタにふりまわされる朝鮮学校をたいへん気の毒に思う。そして、何よりも無責任な政府によって多くの在日の子どもたちの心が深く傷つけられているのではないかと危惧する▼「本国に直接影響を及ぼせない在日が、本国の状況で影響を受けるのは納得できない」「無償化が決まりかけて喜んでいた。政治家には本国の政治状勢と在日の教育はまったく別のものだということを理解してほしい」「『反日教育』というが、これでは子どもたちを日本に反感を持つように追い込んでいるのではないか」・・・。関係者や識者らの落胆・怒り・反感を新聞は伝える。「アレコレ理由をつけてまだ差別をやめないのか」とも▼この政権へのかかる思いは、普天間基地移転問題などを通して「米軍優先・県民無視の姿勢」を痛感させられた沖縄県民もまたしかりであろう。(佐)

    ---------------------------------------------

なぜ、いま衆院比例定数削減か? これとどうたたかうか
―― 改めるべきは小選挙区制 ――


 『月刊憲法運動10年12月号』に東京慈恵会医科大学教授・小沢隆一氏(「九条の会」事務局)の学習会での「なぜ、いま衆院比例定数削減か?これとどうたたかうか ―改めるべきは小選挙区制―」と題する「報告」が掲載されました。要旨を4回に分けてご紹介します。今回は1回目。

小沢隆一さん @

はじめに

 民主・自民は、2党合わせて70%程度の得票で85〜90%の議席を衆議院で占めている。十分に2党による「独占状態」といえる。比例代表部分を削減すれば、第3党以下は衆議院から閉め出されてしまう。しかし、民主+自民が圧倒的多数の衆議院で、抜本的な選挙制度改革の実現は容易ではない。両党とも今の制度の恩恵にあずかっており、民主・自民が身勝手に結託すれば、衆議院の比例定数の削減を強引に押し切ることも不可能ではない。こうした党利党略の「悪だくみ」をやめさせるためには、主権者国民が一斉に声をあげ、世論で包囲して「数の横暴」を断じて許さない状況をつくる必要がある。
 「比例定数削減で、どの党の議席がどうなるか」といった「推計」は、小選挙区制と比例定数削減の害悪を如実に示すインパクトあるデータではあるが、それだけを強調すると、そこに個別の政党の利害得失への「思惑」を嗅ぎ取るような人にとっては、あまり説得力を持たず、「共同の闘い」を妨げる恐れがある。幅広い共同を実現するためには、「すべての人が納得し、同意できる現在の衆議院の選挙制度の害悪」を明らかにして、選挙制度をより民主的なものに作り変えていく視座を共有する必要がある。

1.第1党に「二重取り」を保障する重複立候補制

 民主・自民の2党による「独占状能」は、小選挙区制がその原因の一つであることは言うまでもない。比例代表定数が00年の法改正で20削減され180にされたこと、11のブロックに「寸断」されて行われる比例代表選挙が少数政党に不利なものとなった影響も大きい。加えて、衆議院独特の「重複立候補」制も1つの大きな要因である。
 衆議院選挙では、「重複立候補」制度があることで、小選挙区で投票した候補者を確実に国会に送りたいと思うならば、比例代表では、所属する政党に投票するのが自然な成り行きとなる。それゆえ、比例代表での民主や自民への投票は、小選挙区での両党の落選候補の「復活当選」の「保険」となる。小選挙区制が「自民か民主か」の選択を有権者に強いることに加えて、「重複立候補」制による比例選挙での当選の期待可能性が比例代表選挙でも「自民か民主」に投票するよう有権者を「誘導」している。小選挙区と比例代表で「民主と民主」か「自民と自民」の投票が増える制度圧力があらかじめ働いている。05年は自民が、09年には民主が、得票率では40%程度であるにもかかわらず、60%を超える300議席の大台を占めたのは、こうした「重複立候補」制にも助けられて、小選挙区でも比例でも議席を積み上げた結果である。
 今の衆議院選挙では、民主と自民への票は、小選挙区と比例代表とで別々の政党に投票することが起きにくい。これは、「重複立候補」制を取っていない参議院と比較すれば明瞭だ。今年の参議院選挙では、選挙区では自民が39議席を獲得して、28議席の民主に圧勝したが、比例代表では自民は12議席、民主は16議席であった。選挙区での自民の躍進は、比例代表には「連動」していない。また、両党の比例代表での得票率は、合計で57%に過ぎず、衆議院の約70%よりかなり下回る。これは、参議院が「重複立候補」制を採用していないことにも一因があると思われる。現在の衆議院の選挙制度は、「重複立候補」制によって、第1党に大幅な「超過議席」をもたらしているということができる。これでは、第1党に議席の「二重取り」を保障しているようなものであり、得票率という形で示された民意を著しく歪める不公正なものと言わなければならない。
 第1党による過半数議席の確保を容易にする現行制度は「政権の安定」に寄与するという反論があるが、比例代表で40%程度の得票の第1党に60%を超える議席をもたらしており、度を超した議席を保障している。自民と民主の間で議席数と議員の顔ぶれが大幅に入れ替わり、かえって「不安定な衆議院」となっているのである。(つづく)

    ――――――――――――――――――――――――――――――
(2010年12月12日入力)
[トップページ]