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【九条噺】
昨年の秋、『パンとペン 社会主義者・堺利彦と「売文社」の闘い』を読んだ。そのさなかに、著者の黒岩比佐子さんが膵臓がんで亡くなられたことを知りとても驚いた。何しろまだ51歳である。それでよけいにおろそかに読んでは申し訳ないように思い、いつにもまして丹念に読んだ。「あとがき」に「あとひと息というところで、膵臓がんを宣告され」「抗がん剤治療を開始」したとあった。まるで命を搾り出すように書かれた労作なのだと思った▼この本は、日露戦争を経てやがて日中戦争へと向う激動の時代を生き抜いた社会主義者・堺利彦の生涯を描いている。なかでも、自由と民主、非戦平和を唱える人々を一網打尽にするために国家権力がデッチあげた「大逆事件(1910年)」以後、つまり、「冬の時代」ともいわれる困難な時期の堺利彦の活躍に焦点をあて、社会主義運動家たちが生き抜くための「売文社」設立をはじめ、多彩でユニークな活動の詳しい紹介を通して、彼のしたたかで人間味あふれる姿を描きあげている▼堺利彦の死去(1933年)に際して、長女真柄は謝辞の中で「日露戦争非戦から今日の世界大戦の危機をはらむ戦争反対まで、皆さんの『棄石(すていし)』となり、『埋草(うめくさ)』ともなって働きたいと父は申していました。どうぞ父を『棄石・埋草』として戦争反対運動の糸口に」と述べた。憲法9条はまさにかけがえのない多くの「棄石埋草」の上に花開いたのだ。(佐)
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改憲発議要件「緩和」を狙う
安倍元首相が「改憲」大連立に言及
1月8日付産経新聞は、安倍晋三元首相がCS番組の収録で、「憲法と選挙制度を変えようという2点だけを半年間だけ一緒にやろうということはあり得る」と、憲法「改正」などに限定した民主党との大連立構想の可能性に言及したと報じています。「民主党政権の中には社会党の人もいるし、中身についての改正は無理だが、3分の2(の賛成が必要な改憲条項)を2分の1にすることに限って改正しようということはできるのではないか」と指摘したと言います。これは、国会の改憲発議要件を自分たちに都合がいいように民主・自民で「クーデター」的に改め、改憲への道をつけようというものです。
自民・有志議員、発議要件緩和案を発表
1月14日付毎日新聞は、「自民党の有志議員6人でつくる政策集団『のぞみ』代表の山本有二氏が14日、記者会見し、憲法改正の発議要件を衆参両院それぞれ総議員の『3分の2以上の賛成』から『過半数の賛成』に緩和する改憲案を発表した。改憲に前向きな超党派の議員連盟を3月中に設立し、通常国会に共同提出したいとしている」と報じています。
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なぜ、いま衆院比例定数削減か? これとどうたたかうか
―― 改めるべきは小選挙区制 ――
『月刊憲法運動10年12月号』に東京慈恵会医科大学教授・小沢隆一氏(「九条の会」事務局)の学習会での「なぜ、いま衆院比例定数削減か?これとどうたたかうか ―改めるべきは小選挙区制―」と題する「報告」が掲載されました。要旨を4回に分けてご紹介しています。今回は4回目(最終回)。
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