10年1月、鳩山首相は「首相という立場においては、特に重い憲法尊重擁護義務が課せられている。私の在任中に、などと考えるべきものではない」と述べ、任期中に明文改憲はしないと言い、先送りになっている。明文改憲はしないと言いながらいろんな発言が出ている。
内閣法制局長官が国会で「憲法9条があるから出来ない」と言ってきたことに対して、09年11月に「過去の内閣法制局長官の国会での答弁に縛られない」と官房長官が言い、「集団的自衛権の行使を違憲とするこれまでの政府解釈は、踏襲はするが、無条件で内閣は縛られない」とも言った。米軍と一体となって海外で展開する集団的自衛権行使を事実上なし崩しに認めようとしているのではないかと思える。また、国連の名で行う武力行使を伴う活動にも積極的に参加する方針を持っている。
「武器輸出3原則」は揺らぎ始めている。迎撃ミサイルをアメリカと共同開発して第三国に提供することを公然と言い始めた。内閣法制局長官の国会答弁は非常に邪魔で、長官を国会に出させないように国会法改正案を提案した。
名古屋高裁違憲判決に対して10年3月には「イラク特措法は違憲であったとは考えていない」「同法に基づく自衛隊のイラク派遣についても違憲になるとは考えていない」との政府答弁書を決定した。同じことを自分たちもやるということではないかと思う。同月に日米「密約」(①核持込み②朝鮮半島有事の際の事前協議なしの米軍の出撃③有事の際の沖縄への核再持込み)に関する報告書を公表したが、それを破棄するとは言っていない。
10年4月、外交政策「外交青書」が閣議で了承されたが、「日米両国は普遍的価値及び戦略的利益を共有する同盟国であり、日米同盟は日本外交の基軸である。・・・アジア太平洋地域や地球規模の課題における日米協力を強化し、日米同盟を21世紀にふさわしい形で深化させてゆく」と述べ、これが日本の外交政策の基本だと謳っている。どこが自民党政権の外交政策と異なるのかと思う。アメリカの11年度国防予算案は、海外戦費14兆3千億円、その他の国防予算49兆4千億円だ。そういう国と一緒にやっていくことを、もっと「深化」させると言っているのだ。
米軍普天間飛行場の移設問題は、鳩山政権は、「少なくとも県外へ」という公約と移転先が見えない中での迷走し、10年5月には辺野古移設再確認で日米合意をした。ところが今年2月には、鳩山元首相はインタビューで「辺野古しか残らなくなった時に理屈付けをしなければならず『抑止力』という言葉を使った。方便といわれれば方便だった」と言った。アメリカ議会内でも「海兵隊不要論」が出ている。米軍普天間飛行場は無条件撤去しかない。日米安保条約4条では一方が求めれば随時協議をすることになっているし、10条では一方が条約の終了を通告したら1年後には終了することになっている。これを根拠にアメリカに撤去を求めることをしなかったことが民主党の一番の弱点だ。(つづく)
-----------------------------------------------
憲法改正手続き緩和を狙い、民・ 自が議連
3月9日付産経新聞は、「民主党の小沢鋭仁前環境相と自民党の山本有二元金融担当相が憲法改正手続きの緩和に向け、超党派の『憲法96条改正議員連盟』(仮称)を近く発足させることが8日、分かった。公明、みんな両党の幹部にも個別に参加を呼びかける」と報じました。
音頭を取った小沢鋭仁前環境相は鳩山派だと言います。そして、公明党やみんなの党にも参加を呼びかけるということは、民主党親小沢派と自民党、公明党、みんなの党などが「大同団結」して憲法9条を変えようということであり、さらに、民主党反小沢派も決して護憲派ではないので、この動きに加われば、極めて危険な状況になるということではないでしょうか。
-----------------------------------------------
言葉 「96条」と「硬性憲法」
憲法96条1項は、「この憲法の改正は、各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行はれる投票において、その過半数の賛成を必要とする」と定めています。
96条は、憲法は通常の法律よりも困難な改正手続きを定めることで、法律のように簡単に改正を許さないものとしています。また、憲法改正は元の憲法の存続を前提としており、元の憲法との同一性を失わせるような改正も不可能で、基本的人権尊重、平和主義、国民主権という基本原理に反する改正も許されません。
日本国憲法のように通常の法律より厳重な改正手続きが必要な憲法を「硬性憲法」、通常の法律と同じ手続きで改正しうる憲法を「軟性憲法」と言います。現在、世界のほとんどすべての国が「硬性憲法」をもっています。「硬性憲法」は、時の権力者が憲法を自分に都合のいいように変えることで権力を恣意的に行使し、国民の人権を侵害する危険性を防止しています。
民主・小沢鋭仁氏、自民・山本有二氏らの「憲法96条改正議員連盟」は日本国憲法を「軟性憲法」に変えようとする企みで、「憲法を自分たちに都合のいいように変え、平和的生存権などの国民の人権を侵害」しようとしていると言われても仕方ないでしょう。
-----------------------------------------------
【九条噺】
未曾有の大惨事となった東日本大震災。地震による津波の底知れぬパワーと恐ろしさをあらためてみせつけられたが、とりわけ原子力発電所の相次ぐ爆発事故には不安もいや増すばかりだ。なにしろ、政府や東電などの記者会見も、当初の「大丈夫」かのような発言が、会見を重ねるうちに次々変わるので、ますます説得力も弱くなる。現に会見のあとで新たな事故が幾度も生じ、会見を繰り返している間にも避難地域は30㌔圏内に拡大し、被曝状況も刻々深刻さを増してきた。さすがにここでは原発の「安全神話」も崩れた感がある▼そういえば、「紀伊半島エネルギー基地化構想」というものがあり、和歌山でも古座、日置川、日高など、ずいぶん以前から各地で原子力発電所の設置計画がもちあがってきたが、住民はそのつど大きな運動を繰り広げてすべて撤退させてきた。計画を進める関西電力はどこの「住民説明会」でも「絶対安全だ」と豪語し、筆者も偶然参加できた古座町での説明会では、「どんな地震がきても大丈夫だ」と断言していたことを思い出す▼政府や電力会社は、「地震列島」で原子力発電が本当に「持続可能」なのだとまだ言い切るのだろうか。ちなみに、ドイツは前政権の時に、「2021年までに原発をすべて停止する」と決めた。その2021年を先延ばしすると決めた現政権も、今般それを再度見直すとのことだ。(佐)
-----------------------------------------------
9条を基に日本の安全保障を考え直せ
2月25日、和歌山市勤労者総合センターで「憲法9条を守る和歌山弁護士の会」が講演会を開催。西晃弁護士(大阪弁護士会)が「日本の安全保障と日米同盟再考」と題して講演されました。要旨を3回に分けてご紹介しています。今回は最終回。
|