「九条の会・わかやま」 159号を発行(2011年3月25日付)

 159号が3月25日付で発行されました。1面は、民主党は明文改憲を先送りし解釈改憲で(由良登信弁護士 ②)、憲法改正手続き緩和を狙い 民・ 自が議連、言葉 「96条」と「硬性憲法」、九条噺、9条を基に日本の安全保障を考え直せ(西晃弁護士 ③)、書籍紹介『いのち、学び、そして9条』 です。
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民主党は明文改憲を先送りし解釈改憲で

 3月6日、「守ろう9条 紀の川 市民の会」第7回総会が開催され、由良弁護士が「『憲法9条をめぐる危険な動向』~民主党政権は何を目指しているのか?~」と題して講演されました。講演要旨を3回に分けてご紹介しています。今回は2回目。

由良登信(ゆら・たかのぶ)弁護士 ②

 10年1月、鳩山首相は「首相という立場においては、特に重い憲法尊重擁護義務が課せられている。私の在任中に、などと考えるべきものではない」と述べ、任期中に明文改憲はしないと言い、先送りになっている。明文改憲はしないと言いながらいろんな発言が出ている。
 内閣法制局長官が国会で「憲法9条があるから出来ない」と言ってきたことに対して、09年11月に「過去の内閣法制局長官の国会での答弁に縛られない」と官房長官が言い、「集団的自衛権の行使を違憲とするこれまでの政府解釈は、踏襲はするが、無条件で内閣は縛られない」とも言った。米軍と一体となって海外で展開する集団的自衛権行使を事実上なし崩しに認めようとしているのではないかと思える。また、国連の名で行う武力行使を伴う活動にも積極的に参加する方針を持っている。
 「武器輸出3原則」は揺らぎ始めている。迎撃ミサイルをアメリカと共同開発して第三国に提供することを公然と言い始めた。内閣法制局長官の国会答弁は非常に邪魔で、長官を国会に出させないように国会法改正案を提案した。
 名古屋高裁違憲判決に対して10年3月には「イラク特措法は違憲であったとは考えていない」「同法に基づく自衛隊のイラク派遣についても違憲になるとは考えていない」との政府答弁書を決定した。同じことを自分たちもやるということではないかと思う。同月に日米「密約」(①核持込み②朝鮮半島有事の際の事前協議なしの米軍の出撃③有事の際の沖縄への核再持込み)に関する報告書を公表したが、それを破棄するとは言っていない。

 10年4月、外交政策「外交青書」が閣議で了承されたが、「日米両国は普遍的価値及び戦略的利益を共有する同盟国であり、日米同盟は日本外交の基軸である。・・・アジア太平洋地域や地球規模の課題における日米協力を強化し、日米同盟を21世紀にふさわしい形で深化させてゆく」と述べ、これが日本の外交政策の基本だと謳っている。どこが自民党政権の外交政策と異なるのかと思う。アメリカの11年度国防予算案は、海外戦費14兆3千億円、その他の国防予算49兆4千億円だ。そういう国と一緒にやっていくことを、もっと「深化」させると言っているのだ。

 米軍普天間飛行場の移設問題は、鳩山政権は、「少なくとも県外へ」という公約と移転先が見えない中での迷走し、10年5月には辺野古移設再確認で日米合意をした。ところが今年2月には、鳩山元首相はインタビューで「辺野古しか残らなくなった時に理屈付けをしなければならず『抑止力』という言葉を使った。方便といわれれば方便だった」と言った。アメリカ議会内でも「海兵隊不要論」が出ている。米軍普天間飛行場は無条件撤去しかない。日米安保条約4条では一方が求めれば随時協議をすることになっているし、10条では一方が条約の終了を通告したら1年後には終了することになっている。これを根拠にアメリカに撤去を求めることをしなかったことが民主党の一番の弱点だ。(つづく)

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憲法改正手続き緩和を狙い、民・ 自が議連

 3月9日付産経新聞は、「民主党の小沢鋭仁前環境相と自民党の山本有二元金融担当相が憲法改正手続きの緩和に向け、超党派の『憲法96条改正議員連盟』(仮称)を近く発足させることが8日、分かった。公明、みんな両党の幹部にも個別に参加を呼びかける」と報じました。
 音頭を取った小沢鋭仁前環境相は鳩山派だと言います。そして、公明党やみんなの党にも参加を呼びかけるということは、民主党親小沢派と自民党、公明党、みんなの党などが「大同団結」して憲法9条を変えようということであり、さらに、民主党反小沢派も決して護憲派ではないので、この動きに加われば、極めて危険な状況になるということではないでしょうか。

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言葉 「96条」と「硬性憲法」

 憲法96条1項は、「この憲法の改正は、各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行はれる投票において、その過半数の賛成を必要とする」と定めています。
 96条は、憲法は通常の法律よりも困難な改正手続きを定めることで、法律のように簡単に改正を許さないものとしています。また、憲法改正は元の憲法の存続を前提としており、元の憲法との同一性を失わせるような改正も不可能で、基本的人権尊重、平和主義、国民主権という基本原理に反する改正も許されません。
 日本国憲法のように通常の法律より厳重な改正手続きが必要な憲法を「硬性憲法」、通常の法律と同じ手続きで改正しうる憲法を「軟性憲法」と言います。現在、世界のほとんどすべての国が「硬性憲法」をもっています。「硬性憲法」は、時の権力者が憲法を自分に都合のいいように変えることで権力を恣意的に行使し、国民の人権を侵害する危険性を防止しています。
 民主・小沢鋭仁氏、自民・山本有二氏らの「憲法96条改正議員連盟」は日本国憲法を「軟性憲法」に変えようとする企みで、「憲法を自分たちに都合のいいように変え、平和的生存権などの国民の人権を侵害」しようとしていると言われても仕方ないでしょう。

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【九条噺】

 未曾有の大惨事となった東日本大震災。地震による津波の底知れぬパワーと恐ろしさをあらためてみせつけられたが、とりわけ原子力発電所の相次ぐ爆発事故には不安もいや増すばかりだ。なにしろ、政府や東電などの記者会見も、当初の「大丈夫」かのような発言が、会見を重ねるうちに次々変わるので、ますます説得力も弱くなる。現に会見のあとで新たな事故が幾度も生じ、会見を繰り返している間にも避難地域は30㌔圏内に拡大し、被曝状況も刻々深刻さを増してきた。さすがにここでは原発の「安全神話」も崩れた感がある▼そういえば、「紀伊半島エネルギー基地化構想」というものがあり、和歌山でも古座、日置川、日高など、ずいぶん以前から各地で原子力発電所の設置計画がもちあがってきたが、住民はそのつど大きな運動を繰り広げてすべて撤退させてきた。計画を進める関西電力はどこの「住民説明会」でも「絶対安全だ」と豪語し、筆者も偶然参加できた古座町での説明会では、「どんな地震がきても大丈夫だ」と断言していたことを思い出す▼政府や電力会社は、「地震列島」で原子力発電が本当に「持続可能」なのだとまだ言い切るのだろうか。ちなみに、ドイツは前政権の時に、「2021年までに原発をすべて停止する」と決めた。その2021年を先延ばしすると決めた現政権も、今般それを再度見直すとのことだ。(佐)

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9条を基に日本の安全保障を考え直せ

 2月25日、和歌山市勤労者総合センターで「憲法9条を守る和歌山弁護士の会」が講演会を開催。西晃弁護士(大阪弁護士会)が「日本の安全保障と日米同盟再考」と題して講演されました。要旨を3回に分けてご紹介しています。今回は最終回。

 そういうことをやりながら、東アジア諸国と付き合っていくことが必要で、自らは軍事的脅威にならない決意や過去への真摯な反省が本当の意味で必要だ。毅然とした姿勢、国際法の規範強化を真剣に目指す国家になることも必要だ。例えば、尖閣諸島問題のような国際紛争をどのように解決するか。日本の主張は論理的に理屈があってできると思うが、相手と立場が違うので、日本政府のように「領土問題は存在しない」というのではなく、まず紛争地域であることを認める必要がある。私は、この問題は知恵の問題として、しばらく棚上げにした方がいいと思う。 その地域での操業は認めない、海上保安庁はいつも展開していて違法があれば追い返す、しかし、それまで。その線引きを考えないといけないのではないかと思う。「火種」が「大火事」にならないように手当てすることが大切と思う。アメリカと結託して「一戦を交える」より、如何に「ソフトランディング」させるかの知恵を出す、その知恵やノウハウは日本にいっぱいある。そんなことをひとつひとつやることによって、脅威を生まない国家の先頭に立って国際社会の信頼を集めること出来るのではないかと私は思う。アメリカが目指して失敗した投機マネーやぼろ儲けをする国家を目指す必要はない。節度ある経済の安定成長と、成熟した福祉国家を目指すべきだろう。新興国の平均年齢は30歳代前半だが、日本は現在46歳でまれにみる長寿大国になっている。知恵と知識をつけた大人の国になってこなければならないのだ。その基盤になるのが憲法9条であって、9条を基に日本の安全保障、外交政策、日米安保を考え直すとしたらどうなるのか、これが私の対案だ。この対案と民主党政権が進める日米同盟深化の路線とどちらがより日本のためになるのかが国民の間で本当に議論できるようなマスコミ、国会議員になってほしい。どちらを目指すかの論点提起、議論の素材提供をしてほしい。
 今は安保再考のチャンスだ。私たちの生存と安全の基底をどこに求めるのか、日本国憲法は「諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した」ときちんと書いている。私たちが血の滲むような努力をして、本当に平和を求める海外の人たちと手を携えて、平和の文化を作り、戦争の芽を摘んでいくという努力の過程で平和的生存権が確保できると宣言しているものだ。だから、アメリカを敵とせず、追随もせず、友好関係を何とか維持しながら、成熟した大人の国になるべく、大いに議論と実践を積み重ねていくことが何よりも大事なことだ。既に憲法9条の趣旨がアジア地域では東南アジア友好協力条約(TAC)の条文に謳われている。
(おわり)

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書籍紹介『いのち、学び、そして9条』

 「教育子育て九条の会」は、憲法の精神を子育てと教育の現場に生かすことを目的として、①平和な社会を教育によって実現すること、②子ども一人ひとりの学び発達する権利を保障すること、③保育園、幼稚園、学校の組織と運営に民主主義を実現すること、の3つの課題を中心に活動しています。
 本書では「教育子育て九条の会」の呼びかけ人のうち、池田香代子氏(翻訳家)、池辺晋一郎氏(作曲家)、上原公子氏(元国立市長)、尾山宏氏(弁護士)、香山リカ氏(精神科医)、佐藤学氏(教育学者)、田中孝彦氏(教育学者)、堀尾輝久氏(教育学者)、三上満氏(元全教委員長)、山田洋次氏(映画監督)が、子ども・平和・憲法などについて語っています。
 国連子ども権利委員会は「子どもの権利条約」の各国内における実施状況について各国政府に報告書の提出を義務付けています。本書では日本政府の報告書についての国連子ども権利委員会における審査の際の「子どもの声を国連に届ける会」の子どもたちによるプレゼンテーションの一部や、高校生の学ぶ権利を守る運動や平和運動など、子ども自身の声も紹介されています。(法学館憲法研究所HPより)

編著者:佐藤学・田中孝彦・小森陽一・教育子育て九条の会
発 行:2010年12月20日
価 格:本体1100円+税
発行所:㈱高文研 (℡.03-3295-3415)

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