「九条の会・わかやま」 160号を発行(2011年4月4日付)

 160号が4月4日付で発行されました。1面は、わたしたちにできること(九条の会・わかやま呼びかけ人 花田惠子さん)、憲法9条を守る運動は休んでいい情勢ではない 中国を意識し軍事力で対応(由良登信弁護士 ③)、九条噺、9条を外したら日本に何があるのか (漫才師 島田洋七さん)、比例定数80減 民主が選挙改正案検討 です。
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[本文から]

わたしたちにできること
九条の会・わかやま呼びかけ人 花田惠子さん

 東日本全域を襲った大地震と巨大津波による想像を絶する被害、さらに福島原子力発電所の事故という戦後最大の複合災害により、人々は混乱と絶望の淵に投げ入れられました。抗いようのない天災だけではなく、日々刻々悪化する原発事故の様相に私たちは翻弄され、被災地の人々の深い悲しみや恐れに寄り添う手だてさえ持てず、ただ焦燥と無力感に苛まれ続けて最初の数日を過ごしました。
 そして、時間の経過とともに想像を絶する現地の状況と多数の死者・行方不明者をふくむ被災された方々の様子がメディアに取り上げられるようになると日本中、いえ、世界中から支援の手がさしのべられるようになりました。また、被災地の過酷な現場でいのちがけの救援活動をしてくださっている方々に深く感謝するとともに、このような災害に遭遇しても失われない日本人の精神性の高さやお互いを思いやる優しさに海外からも驚きと賞賛のメッセージが続々と届けられ、大きな悲しみのなかに僅かな慰めを見出すことができました。
 そのうえで、ひとつ心に留めておきたいのは、これからの果てしなく困難で長い日本の復興の道のりを経て、私たちはどんな社会を目指すのでしょう。願わくば貧困や社会的な弱者を生みださない、子どもや若者たちが幸せで笑って暮らせる世界を築きたい。それがせめてもの、この大きな犠牲をはらってくださった全ての人々への私たちみんなの責任でしょうか。そのために何が出来るのかしっかりと知恵をしぼり、支えあい、つながりあっていきたいものです。
 今回の震災が発生した直後、私の若い仲間たちからの呼びかけがあって、被災者の支援組織「にんにこ 被災者支援ネットワーク・和歌山」が立ち上がりました。何が出来るかと考えあぐねているおじさんおばさんをしり目にドンドンと空家探しや、寄付金集め、生活用品調達など和歌山への被災者受け入れの準備に奔走しています。そんな逞しい彼らを見ていると、これからの日本の未来はなかなか捨てたものじゃないと、勇気をもらえるのです。

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憲法9条を守る運動は休んでいい情勢ではない
中国を意識し、軍事力で対応


 3月6日、「守ろう9条 紀の川 市民の会」第7回総会が開催され、由良弁護士が「『憲法9条をめぐる危険な動向』~民主党政権は何を目指しているのか?~」と題して講演されました。講演要旨を3回に分けてご紹介しています。今回は3回目で最終回。

由良登信(ゆら・たかのぶ)弁護士 ③

 尖閣諸島問題については、危険な動きが出ており、「領土を侵害する者に対しては断固として戦え」みたいな雰囲気がマスコミの中で煽られている。領有権がどちらにあるのかは大きな問題だが、領有権はそれぞれの主張があり、言い分が違っている。領有権から出発するとエスカレートして、引くに引けなくなる。日本政府の、中国の言い分に反論せず、領土問題は存在しないという姿勢が中国を面白くない気持ちにさせている。78年に鄧小平が福田首相との首脳会談で「尖閣問題は、我々よりは賢い次の世代の解決に委ねましょう」と棚上げ方式を提案し、暗黙の了解となった。民主党は非常に危険な対応をとってしまった。アメリカはリップサービスとして、尖閣諸島は沖縄施政権返還の時に還したと言うが、それ以上のことは言わない。アメリカは一方で圧力をかけるが、他方では戦争にならないように努力をしている。アメリカは「中国の国際社会における役割の拡大は歓迎する。ただ軍事力の拡大や不透明性を懸念する。米中関係は誤解を減らすプロセスをとっていく。不一致の問題は議論をしていく開かれたコミュニケーションチャンネルを設けていきたい」というスタンスを述べている。にも拘らず民主党政権は、「中国が危険だから、これまでの防衛を臨機応変に動ける動的防衛構想に変えて、南西諸島に配備の重点を移し、日米同盟を強化・深化させていく」とし、あからさまに軍事的な圧力を中国に向って発する計画を「新防衛大綱」で決定した。あわせて「中期防衛計画」でこの5年間に23兆5千億円、年間4兆7千億円の軍事費を今後も出し続け、しかも重点的に南西諸島・東シナ海方面に展開していくことを打ち出した。アメリカより分っておらず、それでいてアメリカに擦り寄りながら、けしかけている感じがする非常に危険な動きだ。アメリカもそれを見て見ぬ振りをしてやらせているのかもしれない。しかし、中国とアメリカはどうやって手を結ぼうかということを他方でやっている。

 「新防衛大綱」と「中期防衛計画」は軍事力による対応を重視する姿勢を露骨に打ち出した。アメリカの力の相対的低下の中で、そのパワーバランスの変化に対応して、またパワーバランスを盛り返すのに日本も一緒なってやるという時代遅れなものだ。これは憲法前文の「諸国民の公正と信義に信頼して」平和な国際関係を築くということと対極にある考え方だ。「周辺事態法」による日本のアメリカに対する後方支援活動では生ぬるいと、これを変えて制約のない現実的・能動的な協力を可能にする内容にしようと、「新防衛懇」が打ち出し、それがそのまま「新防衛大綱」に盛り込まれた。北沢防衛大臣は1月に「より効果的に米軍を支援できるように周辺事態法を含めた制度的な改革の検討が安全保障上の喫緊な課題だ」と述べた。自分が「しゃしゃり出て」周辺地域でことを起すのに積極的に立ち振る舞いたい、後方支援でなく米軍と一緒になってやろうという発言が出てきた。日本のPKO活動は、「武器使用は必要最小限度」などの5原則に基づかないと参加できないことになっている。これではアメリカと一緒になって即応体制でやっていけないので、PKO5原則の見直しを図ろうと言い出している。海外派兵恒久法の必要性、「武器輸出3原則」の見直しも言っている。
 民主党は国民の期待を集めて、衆議院で3分の2の議席を確保したが、国民の期待とは違う方向で、国防政策や憲法に対する考え方では自民党と変わらない内容で、もっと言えば自民党が「9条があるので出来ない」と言っていたものを、なし崩し的に突破しようと動き出している。
 衆議院比例定数80削減をマニフェストに明記し、歳費削減策と抱き合わせで6月に提示すると言っているが、官房長官は、定数削減はもっと早くても、と言っている。これが行われると40数%の得票で70数%の議席を占めることになる。自民と民主が競い合って変な方向に行こうとしている今の状況は非常に危ない。
 今、憲法9条を守る運動は休んでいいといった情勢ではなく、さらに強化・継続しなければならない。(おわり)

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【九条噺】  むのたけじ(本名・武野武治)さんは96歳の今も現役のジャーナリストとしてご活躍とか。むのさんのことはかなり以前に読んだ。戦争を煽ったケジメをつけるために朝日新聞社を辞め、郷里(秋田県)で新聞を発行して、平和や人権を発信しているという話だった。「きちんとケジメをつける記者もいるのだ」と感心したり、一方で、「でも本当はこんな人こそ記者に」と思ったりもした▼先日、朝日新聞の「ザ・コラム」欄で編集委員の外岡秀俊記者が、そのむのさんのことを詳しく書いていた。むのさんは、その後、新聞社を退社したことについて「今考えると、まったく愚かな辞め方だった」「あの時は辞めることが良心の証だと思った」が、「やっぱり、新聞記者は常にペンとの闘いを貫かなければ」と思い直したのだという。きっかけは、琉球新報が04年から14回にわたって「沖縄戦」を特集し、戦後わかった史実や証言に基づいて、戦時に検閲がなかったらどんな報道ができたかを詳細に再現したのを読んだことだった▼外岡記者は「戦争を煽った過去を忘れない。むのさんから抵抗精神を受け継ぎ、憲法に結実した『非戦』『人権』を守りぬく〝ペンとの闘い〟が私たちジャーナリストの課題だ」という。まったく異存はない。が、果たして、当の朝日新聞は、その精神で日々「今伝えるべきことを、今伝え」ているだろうか?(佐)

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9条を外したら日本に何があるのか
漫才師 島田洋七さん

  ずっと話し合いを

――多くの被爆者が核兵器廃絶を訴え続け、世論が世界に広がっています。
 うん。少し前に進んでいるね。いっせいに「せーの(核兵器やめよう)」でやればうまくいくと思う。なんでしないのかな。簡単なことだと思いますけどね。
 国は石油がほしいとか支配したいとか、欲や金のために相手の国を攻撃する。人間として一番みっともないと思いますよ。日本だって中国や韓国を攻めてむちゃくちゃをした。自分のやったことは知らん顔だけど、歴史を学んだらびっくりします。
 なんで国同士は互いを信じられないのかな。話がつかなければずっと話し合いをすればいいやん。おれはロシア人の友だちがいるけど、ええやつですよ。観光で日本に来る中国人だってしゃべるとすごくおもしろい。人対人で考えればみんな友だちになる。

  9条守らなくては

 武器なんかいらん。「(国を)守る」といっても、その武器を使って攻撃しますから。そんなのつくるんだったら、その金で国民を救ってくれ、他にやることはいっぱいあるだろうと思います。
 政局ばかりやっている国会議員は国民のために働いていない。一般市民の方が平和主義だし、よっぽど頭がいいと思いますよ。

――日本国憲法9条は戦争放棄と戦力の不保持をうたっています。
 日本が一番守っていかなくてはいけないと思いますね。これを外してしまったら、日本に何があるのかと。
 外国の人と話をしても、「日本はいいね」と言われる。憲法9条に対して「よくぞ、つくった」と思ってくれている。どの国も日本のように「戦争はしません」という憲法をつくればいい。9条がモデルになっていってほしいですね。(全国革新懇ニュース・11年3月号より抜粋)

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比例定数80減、民主が選挙改正案検討

 3月25日付朝日新聞は、「民主党は、衆院選の小選挙区の『1人別枠方式』を廃止し、比例区の定数を80削減する選挙制度の抜本改正案をまとめる方針を決めた。今国会中に参院の制度改革とあわせた公職選挙法改正を目指す」と報じています。
 23日、最高裁は1票の格差が2・30倍だった09年の衆院選を「違憲状態」と判決し、「1人別枠方式」を「投票価値の平等に反する」「速やかに廃止する必要がある」としました。しかし、小選挙区制では区割りをいくらいじっても、1票の格差は根本的には解決しません。
 ところが、民主党は「1人別枠方式」だけを外して小選挙区制を維持するだけでなく、比例定数を現行の180から100に80削減する方針を決めました。
 09年の総選挙では民主党は40%程度の得票で60%を超える300議席の大台を占めました。比例定数を80削減すれば70%を超えると言われます。40%程度の得票で3分の2以上の議席を占めることができ、「憲法改正」の発議もできるようになります。1票の格差是正を口実にした党利党略の危険な方針と言わなければなりません。民意を正確に議席に反映させ、1票の格差を是正するには、小選挙区制をやめて比例代表制に改める以外に根本的な解決策はありません。

1人別枠方式
衆院小選挙区の定数300のうち、47都道府県に1議席ずつを配分し、残りを人口比で都道府県に振り分けて区割りを決める方式です。当然、人口の少ない県に配分が増え、格差拡大の原因になります。

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(2011年4月5日入力)
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