「九条の会・わかやま」 162号を発行(2011年5月3日付)

 162号が5月3日付で発行されました。1面は、沖縄の米軍基地は日米安保の前から存在している(伊波 洋一 氏 ①)、田辺・9条の会総会&講演会、(告知)5月の風に5・21県民のつどい 伊波洋一氏講演「沖縄県民の願い・憲法9条を持つ国として」、九条噺、2面は、自民 憲法に「 非常事態条項」画策、改憲団体が改憲大会を開催 です。
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沖縄の米軍基地は日米安保の前から存在している

 4月28日、プラザホープ(和歌山市)で青年法律家協会和歌山支部主催の「憲法を考える夕べ」が開催され、約200人が参加しました。前宜野湾市長・伊波洋一氏が「普天間基地と日米安全保障条約」と題して講演されました。講演の要旨を3回に分けてご紹介します。今回は1回目。

伊波 洋一 氏 ①

 今日4月28日は沖縄にとっては特別な日、サンフランシスコ講和条約が発効して日本が独立し、沖縄が米軍統治下に入ったのが52年4月28日だ。
 日米安保を考える時、普天間基地に焦点を当てると非常に分り易い。日米安保というといかにも日本が守られ、繁栄するように思っている人もいるが、一方それがもたらしている現実の問題が普天間にある。沖縄の犠牲の上に日米安保が続いてきたが、60年の安保改定の時は沖縄県民は米軍統治下にあり、72年5月15日の沖縄返還からは、沖縄米軍基地は実態は変わらないまま日米安保の提供施設として衣替えさせられ、今日まで続いてきた。
 在日米軍基地は日米安保があるから存在していると思っている人が多い。沖縄の米軍基地は日米安保が始まる前から存在している。45年に沖縄戦が始まり4月1日に沖縄本島に米軍が上陸し、日本攻略のために新たな飛行場を造り始めた。日本軍の6箇所では足りず8箇所を増設した。普天間飛行場は6月頃から建設が始まり、完成した飛行場から飛び立ったB29は西日本を爆撃した。これらの飛行場が今日の米軍基地だ。沖縄の米軍基地は、沖縄住民が強制収容所に隔離されている中で造られていった。住民が戻ったら自分たちの集落は基地になっていた。そうして造られた基地が今日まであり、加えて「銃剣とブルドーザー」で造られたと言われる新たな基地建設があった。それは50年6月に起った朝鮮戦争の時に日本各地に駐留していた海兵隊がいろんな問題を起こし、日本の1箇所にまとめるという米軍案に日本政府が応じなかったので、結果的に海兵隊は沖縄に移すことになった。沖縄は日本ではなく米軍の統治下にあり、53年に新たな土地収用令が出来て新たな土地接収が始まった。この時に憲兵が、どうにか落ち着いた生活をしている沖縄住民を銃剣で集落から追い出して、目の前で住居がブルドーザーで壊されるという状況だった。50年代半ばは日本本土では基地がなくなっていく、部隊が少なくなるが、沖縄では基地が拡張されることになった。これが今の基地で、日米安保は全く関係がない。日本国憲法や講和条約の埒外にあった沖縄に基地の矛盾が押し付けられていった。普天間基地もそのひとつだ。それを「辺野古に基地を移さないと普天間は還さない」などと言っている。まさに沖縄は日米安保が包含している矛盾が目に見える形でずっとあり続けている場所だ。
 沖縄復帰が決まった時に「核抜き本土並み」という住民の願いが県民的スローガンだった。しかし、実際には、核こそなくなったが、基地の規模はほとんど同じで、決して本土並みにはならなかった。今その基地の周辺で住民が苦しんでいる状況があり、合わせて沖縄の発展を阻害している。基地の返還は沖縄の発展に密接に関わる問題だ。基地がなくなると沖縄の人はどのように暮らしていくのかと言う人がいるが、沖縄経済の基地への依存度は現在4%程度で、観光産業は15%だ。普天間基地は地域面積の25%だが、働いている人は207人しかいない。アメリカ人の雇用の場であって、米兵は今でも2000名がいる。返還後に利用すると年間3万2千人の雇用、年間4500億円の直接経済効果があり、520億円という税収を生むと推計されている。基地は住民生活に大きな支障をきたすだけでなく、沖縄の発展の可能性を阻害している。そういう可能性を持つ普天間基地だということを理解する必要がある。沖縄中部は30%が基地なので発展可能性が塞がり続けている。基地はそういう経済的発展をさせないままどうなっているか、ここに一番問題の日米安保がある。(つづく)

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米軍への〝思いやり〟は被災地へ
田辺・9条の会総会&講演会開催

 4月17日、田辺市民総合センターで、田辺・9条の会第7回総会と講演会が開催されました。総会では、「田辺市非核平和都市宣言の復活を望む」署名活動の進展や昨年から取り組んでいる「紀南ピースフェスタ」について意見交換などが行われました。
 続く講演会では、大阪で「新聞うずみ火」を主宰し、沖縄戦の取材や「大江岩波裁判」の支援にも関わってこられたジャーナリスト・栗原佳子さんに、『沖縄の心と今』というテーマで講演していただきました。栗原さんは東日本大震災の取材から戻られたばかりで、まず被災地の状況や米軍がそこで展開している「トモダチ作戦」の様子を報告されました。その中で、震災以降、いかに軍隊が活躍しているか、といった記事が目立つ報道の陰で、実は日米同盟の関係強化に向けたさまざまな動きが「この機に乗じ」「火事場泥棒的に」行なわれていることを指摘されました。最たるものは、この震災への対応のドタバタの中、米軍への巨額の「思いやり予算」が国会でそのまま承認されたことですが、驚いたのは3月11日に更迭されたはずのあのメア氏が、今では米軍と日本政府の調整役として「返り咲いて」いるとのこと。日本の大手2紙は最近、メア氏の「自分の発言は学生たちによって歪曲されて日本に伝えられた」という釈明をわざわざ掲載したとのことです。栗原さんは、沖縄と日本全体に対して侮蔑的な発言をしたメア氏にすり寄る日本のマスコミの、「ある種、植民地根性的」なありようも指摘されました。そしてこの間に限らずこれ以前からずっと続いてきた、基地に苦しめられてきた沖縄の人たちの暮らしの実態や、沖縄での基地反対を訴える声が、地元紙以外ではほとんど報道されない現状を写真を交えて話されました。
 こんな中、4月12日の普天間合意15年の日には、女性たちが普天間飛行場のすぐ近くで風船を飛ばして基地問題を訴えたそうです。普天間は、法律上の飛行場ではなく提供施設に過ぎず(だからこそ米軍は住民の上を飛び回れる)、米軍を規制することができないそうで、そこを突いた見事な作戦ということです。またつい最近、基地反対を訴える沖縄の女性2人が「〝思いやり〟は被災地へ」という署名運動を始めたそうです。数年分の米軍への「思いやり予算」約1兆円で、被災者50万人に3年間、毎月5万円ずつ支給できるといいます。栗原さんは、沖縄の人たちは、辛い立場に置かれている被災者への共感が強いと言います。嫌なものを地方に押し付け、賛否で地域を分断させ、交付金への依存度を高める構造が原発と基地で重なるのだと思います。基地や原発の問題は、それを他人事にもできる私たち自身の問題でもありますが、沖縄の女性たちのしなやかで力強い運動を知り、逆にこちらが励まされる気持ちがしました。連帯していける方法を考えたいと思います。(田辺・9条の会の木川田道子さんより)

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(告知)5月の風に「We Love 憲法」5・21県民のつどい
伊波洋一氏講演「沖縄県民の願い・憲法9条を持つ国として」

5月21日(土)開会 13:30
プラザホープ 4F大ホール

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【九条噺】

 「六二三、八六八九八一五、五三に繋げ我ら今生く」(西野防人)▼昨年、第27回朝日歌壇賞に選ばれた歌である。一見、漢数字ばかりで不思議な気もしたが、しばらく見つめるほどに、「そうか、なるほど」と感心させられた。「六二三」は「六月二三日」、つまり、戦没者が15万人にも達したという、あの「沖縄戦」終結の日である。これが分ればあとは速い。「広島」「長崎」ときて、八月一五日と続く。そうして、我らは「日本を二度と戦争する国にはしない」という決意のもとに今の憲法をつくり、その誓いのもとに生きてきたと作者は歌うのである。「五三」は、憲法施行日(五月三日)というより、むしろ憲法そのものをさしている▼つい仕事や雑事に追われて、日々何となく過ごしているが、せめてこの歌にある日ぐらい、つまり年に幾日かは、世界に誇る我が国の憲法について、あるいはこの憲法につながる過去についてゆっくり考えたり、学習したいものだ。ことに戦争にかかわっては、被害にとどまらず、アジア諸国などに多くの惨劇をもたらした「加害」の事実についてもしっかりみつめなければと思う▼かつて藤沢周平も書いた。「一方的な論理で他国を蹂躙した事実に心がいたむかいたまないか・・・加害の意識を欠き、事実の糊塗にも眼をつむり、うちのまとまりだけを言うとき、きわめて危険なものと化しかねない」(「村の論理」82・9・21毎日新聞)。この指摘がますます重みを増してきた。(佐)

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自民、憲法に「 非常事態条項」画策

 5月2日の朝日新聞の報ずるところによれば、「東日本大震災を受け、憲法に非常事態条項を盛り込もうとする動きが自民党内に浮上している。4月27日の自民党憲法改正推進本部の役員会で、保利耕輔本部長が『非常事態について憲法に記述することを考えてみてはどうか』と提案し、賛同意見が相次いだ」とのことです。非常事態条項とは、武力攻撃・テロや大規模災害時に政府の権限を拡大し、国民の権利や自由を制限しようというものです。28日に開かれた新憲法制定議員同盟(中曽根康弘会長)の大会でも「大規模自然災害にも即応できる憲法をつくろう」とスローガンに付け加えられています。
 これは「東日本大震災」を口実に憲法の改定を進めようとするもので、憲法で基本的人権を制限しようとする極めて危険な動きです。
 「東日本大震災」の被災者支援や復興に人権制限条項が何故必要なのか、個別の法律で充分対応が可能です。今、必要なことは改憲論議ではなく、政府や国会などが英知を集めて迅速で充実した支援策を推進することではないでしょうか。

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改憲団体が改憲大会を開催
憲法記念日に合わせて


新憲法制定議員同盟

 新憲法制定議員同盟(中曽根康弘会長)は4月28日に永田町の憲政記念館講堂で「平成23年度 新しい憲法を制定する推進大会~『自立と共生』に向けて」を開催します。第1部はジャーナリストの櫻井よしこ氏が「日本の進路と誇りある国づくり」と題した記念講演で、第2部では中曽根康弘氏をはじめ、各党や日本経済団体連合会代表らによる挨拶が予定されています。

自主憲法制定国民会議

 新しい憲法をつくる国民会議(=自主憲法制定国民会議)は5月3日に牛込箪笥区民ホールで、尖閣諸島問題、北方領土問題などを根拠に憲法改正すべきと、「新しい憲法をつくる国民大会(第42回)」を開催します。高乗正臣氏(平成国際大学大学院教授)が、「危機管理・安全保障と憲法改正」と題して講演します。

民間憲法臨調

 「21世紀の日本と憲法」有識者懇談会(民間憲法臨調)は、5月3日に砂防会館別館で「第13回公開憲法フォーラム」を開催します。森本敏氏(拓殖大学海外事情研究所長)、勝股秀通氏(読売新聞編集委員)、石川水穂氏(産経新聞論説委員)、西修氏(民間憲法臨調運営委員長)、大原康男氏(國學院大學教授)、百地章氏(日本大学教授)が発言します。

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(2011年5月3日入力)
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