「九条の会・わかやま」 164号を発行(2011年5月23日付)

 163号が5月23日付で発行されました。1面は、辺野古は米軍再編の新出撃基地だ(伊波洋一氏 ③ )、大震災に乗じ改憲への足掛り作り 参院憲法審査会規程を制定、過半数賛成で改憲発議 要件緩和の議連発足へ、九条噺、2面は、9条を守るために出来ることをするのは当り前のこと WBS和歌山放送特別番組「憲法を考える」②、民主党が憲法調査会設置 です。
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[本文から]

辺野古は米軍再編の新出撃基地だ

 4月28日、プラザホープ(和歌山市)で青年法律家協会和歌山支部主催の「憲法を考える夕べ」が開催されました。前宜野湾市長・伊波洋一氏が「普天間基地と日米安全保障条約」と題して講演されました。講演の要旨を3回に分けてご紹介しています。今回は3回目で最終回。

伊波洋一氏 ③

 アメリカ自身、日米安保があるから日本が成り立っているなどとは考えていない。アメリカは01年の同時テロ以降、地球規模の米軍基地見直しを行っている。アメリカの一番の関心は米本土防衛で、冷戦型の部隊配置を見直し、少ない数で機敏に行動する再編を行っている。日本を含む5地域に部隊を集約し、その基地から地球規模の展開をしようとしている。海兵隊が日本を守ると考えている人はアメリカにはいない。沖縄の海兵隊がグアムに移るのは、沖縄が住宅などで使い難いということだ。問題は沖縄の海兵隊8千名、家族9千名をグアムに移し、そのために日本政府は7千億円を出すという協定を09年に国会で批准したことだ。協定には海兵隊をグアムに移すことが抑止力の強化になる、そのために日本政府は金を出すと書かれている。しかし、日本政府はそんな説明はしないし、マスコミも言わない。何故なら、日本政府は海兵隊を沖縄に置き続けたい、海兵隊がいることで日米安保の価値があると思っているからだ。米軍は他国とも多国籍軍的な共同訓練をやりたいが、日本国内ではそれができない。それで海兵隊をグアムに移し、グアムの海兵隊が日本の安全を支え続けると言っている。これが本当の構造だ。だから、辺野古の基地は普天間の代替ではなく、米軍再編の新しい戦略のための新しい出撃基地だ。
 日米同盟の深化と言われる。日米安保は日本領土の範囲だったが、96年にアジア・太平洋に拡大、97年に新ガイドラインで、港湾・空港を米軍に解放して日本総基地化が進み、05年に「日米同盟・未来のための変革と再編」で日米安保を地球規模にし、米軍と自衛隊の一体化をした。これが日米同盟の深化だ。辺野古に基地を造らせないことはまさにこれらに対する歯止めだ。
 NHK特集によれば、日米安保の現状は負担過重だと国民に思われ、そして一番の問題は日本が独自の外交ができていないことだと思われている。今後の安全保障は、「日米同盟を基軸に」は19%で、「アジアの国々と国際的な安保体制を築く」は55%だ。多くの国民は今のままではアメリカに引っ張られる日米一体化に懸念を持っているが、国会の場では発言がない。そういう意味で非常に危機的な状況だと思っている。今の大政翼賛会的な日米安保に対する自公・民主の政治の流れは大きく日本の国益を損なう方向に動いていくのではないかと思う。今の外交は隣の国と仲良くするのではなく、敵対する方向で関係を作り出している感じがする。これも日米安保があるからだ。普天間が95年に合意されながらいまだに解決しないのは、この辺りにつながり、政治の世界が国民の意識と乖離した現実があるのではないかと思う。
 日米安保は本当に日本の安全を守るものなのか、日本が米国に奉仕する仕組みなのか、訳の分らないものだということが分る。実際には敵はいないのに、敵を仕立てて、アメリカにすがらなければ日本はやっていけないかのような構造を作りあげていく。実際この国はどこを向いているのだろうかと思う。こういうことが私たちの知らないところで合意されて、ひとり歩きしている。国民の大多数は中国とも、近隣諸国とも仲良くする日本を求めている。でも、今、日米同盟の深化という名の下に相手を敵と見るという、敵を作る外交、敵を作る日本政府がそこにあるということを是非知っていただきたいと思う。沖縄の状況は決して沖縄だけの問題ではなく、日本全体の問題だということを訴えたい。(おわり)

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大震災に乗じ改憲への足掛り作り
  参院、憲法審査会規程を制定


 時事通信は5月18日、「参院は18日の本会議で、憲法審査会の運営手続きを定めた規程を、民主、自民、公明各党などの賛成多数で可決、制定した。共産、社民両党は反対した。衆院は09年6月に規程を整備しており、07年5月の国民投票法の成立から4年を経て、憲法改正原案の審議から国民投票の実施までに必要な制度が全て整った。改憲原案や憲法関連の法案の審議などを行う憲法審査会は、国民投票法の成立に伴って07年8月に衆参両院に設置された。参院憲法審の規程によると、委員は45人。表決は出席委員の過半数によって行われ、改憲原案に関する公聴会開催を義務化した」と伝えています。
 これは民主党が、〝ねじれ国会〟のもとで審査会始動を自民党に働きかけ、国会運営で自民党の協力を取り付けたいという思惑によるものです。
 4月28日の新憲法制定議員同盟の大会では、鳩山前首相が顧問に復帰し、「国難のときに、国家の緊急事態を総理が宣言することができる憲法に」「憲法改正の大きなきっかけの年とする」と挨拶したといいます。「政権交代」前後に崩れた自民・民主の改憲協力体制を復活させるもので、「二大政党」による改憲推進に警戒が必要です。

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過半数賛成で改憲発議、要件緩和の議連発足へ

 5月3日付産経新聞は「民主、自民両党の国会議員有志が、改憲案の発議要件を現行の衆参両院の各3分の2以上の賛成から、両院の過半数の賛成に緩和することを目指す超党派の議員連盟を今月中に発足させることが2日、分かった。改憲案は衆参両院で可決後、国会が発議し国民投票で賛否を問うが、同議連は発議要件を規定した96条の改正のみに焦点を絞ったのが特徴。改憲案を早期に国会に提出し、改憲論議を活発化させたい考えだ」と報じました。自民は100人以上、民主も約50人が参加する見通しとのこと。
 「過半数賛成で改憲発議」は、取り敢えず96条を改正して改憲をしやすくした上で、その後は「憲法9条などを自分たちに都合のいいように変えよう」とするものです。

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【九条噺】

 それがどうしたと言われれば、それまでのことだが、ただその時は少し嬉しいような気持ちになったのである。朝日新聞(夕刊)が「ジャーナリズム列伝」という連載をはじめてかなり経つ。ジャーナリストの生き様などを紹介する内容で、ひと月ほど前からは報道写真家の石川文洋氏。主な経歴を記したあと、ベトナム戦争の最前線をはじめ、様々な現場で報道カメラマンとして活躍する様子を詳しく紹介し、連載もすでに22回を数えたがまだ終わらない。しかし、今までの紹介だけでも、石川氏が誠実で信頼できる〝ほんまもん〟のジャーナリストだということがよく判る▼で、冒頭のはなし。その22回目の記事に、「1972年5月15日午前0時、当時35歳の石川文洋は、那覇・国際通りの三越前にある歩道橋上で、沖縄の本土復帰を迎えた」とあった。まさにその時間、筆者(当時29歳)も沖縄の友に連れられてその国際通りを歩いていたのだ。だから記事がとても懐かしく、何かしら嬉しい気分になったのだ▼石川氏はその後、北ベトナム取材の許可を得てハノイに行き、米軍の大規模な爆撃がもたらす惨状を取材した。筆者がはじめて間近に見た巨大なB52爆撃機が連日轟音をたて、嘉手納からベトナムに向っていたのである▼そして40年、侵略の血で汚れた殺人機を数多擁する基地群は、県民に嫌がられても、政府には「抑止力」などとあがめられ、今も立ち去る気配はない。(佐)

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9条を守るために出来ることをするのは当り前のこと
WBS和歌山放送・特別番組「憲法を考える」②


 5月3日憲法記念日の15時からWBS和歌山放送が「憲法9条を守る和歌山弁護士の会」の提供で特別番組「憲法を考える」を放送しました。その要旨を2回に分けてご紹介します。今回は2(最終)回目。

長岡健太郎弁護士が出演


 障害者福祉の立場から憲法はどのように重要なのか

 例えば、9条とか平和とかいう話になると、戦争とか原爆とか私たちの生活には関係のない話だと思われることも多いが、実際にはそうではないと思う。平和とはみんなが毎日、当り前の生活をささやかにでも出来ることだと思う。例え障害がある人でも当り前の生活がきちんと出来ることが平和だと思う。障害者のことは自分のことではないと思われるが、交通事故などでいつ障害者になるか分らない。自分に介護が必要になった時には目の前のお茶を飲みたいと思うと思う。障害者のことを自分にとって身近な問題だと考える必要がある。

 東日本大震災の被災者の中での問題は

 ALSのような人工呼吸器を使用している人は計画停電で電気が停まると人工呼吸器が使えず、たちまち命の危険が生じてしまう。計画停電は人工呼吸器を使用している人のことなどがどれだけ考えられていたかは疑問に思う。

 そもそも憲法9条とは

 「戦争をしてはいけない、軍隊を持ってはいけない」ということが書かれている。守るのは、当り前のことだと思っている。毎日、平和に暮らしたい、当り前に生活したい、戦争にも行きたくない、身近な人が戦争に巻き込まれたくないと思っているが、おそらくみんながそう思っていると思う。だから、私にとって、9条は守らなければいけない、平和でなければならない、そのために自分にも出来るだけのことをしたいというのは当り前のことだと思って活動している。

 どんな活動が行われているか

 昨年はペシャワール会の中村哲さんを招いて講演をしていただいた。県内各地にいろんな会があるので、そのネットワークを作っている。「憲法9条を守る和歌山弁護士の会」も加わって広報などの活動をしている。弁護士、環境問題を扱っている人、子どもの問題を扱っている人、本当にいろんな人がいる。いろんな団体がそれぞれ特色あるイベントをして、いろんな勉強会が開催されるので、情報を共有して一緒にやっている。

 その中で何を感じているか

 環境、子ども、障害のある人とかの話をすると別の問題のように思われるが、別という訳ではなく、繋がっていると言える。ささやかであっても毎日きちんとした生活を送る、そういうことを目指しているのかなと思う。

 憲法の大切さは

 「憲法」「9条」というと、どこか遠い存在、難しいものと考える人も多いと思うが、そうでなく身近な問題だということを多くの人に思ってもらえるといいと思っている。(おわり)

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民主党が憲法調査会設置

 NHKは5月10日、「民主党は、憲法改正に関する議論を行う党の『憲法調査会』について、新たに前原・前外務大臣が会長に就任して、ほぼ4年ぶりに活動を再開することになりました。民主党の憲法調査会は、野党時代の平成17年には、専守防衛の考え方に徹することを前提に、国に自衛権があることを、憲法上、明確にすることなどを盛り込んだ提言をまとめましたが、活動を再開するのは、平成19年以来、ほぼ4年ぶりとなります。民主党の憲法調査会では、今後、東日本大震災を受け、非常事態での個人の権利の制限などをテーマに、党の提言について、改定の必要性を議論するものとみられます」と放送しました。
 岡田幹事長は、「前原氏は憲法に関して見識を持ち、代表や外相を務めた、まさしく憲法を議論するのに適任だ」「(民主党が05年にまとめた)『憲法提言』は今も有効だが、提言をベースに新たに議論をする」と述べたそうです。同提言は、集団的自衛権の行使や自衛隊の国連集団安全保障活動への参加を容認し、9条2項削除を志向したものです。前原氏は、改憲派・タカ派で知られています。「96条を改正し、憲法改正のハードル低くする」「憲法に『緊急事態』に関する規定が必要」などの主張をしており、大震災を口実とした、強権的な体制整備の考えを見せています。

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(2011年5月24日入力)
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