「九条の会・わかやま」 168号を発行(2011年7月18日付)

 168号が7月18日付で発行されました。1面は、「和歌山障害者・患者九条の会」総会&講演会開催、(告知)小森陽一氏講演会、憲法96条改正議連が設立総会、九条噺、2面は、広島・長崎への原爆投下は戦争を終らせるためではない(アーサー・ビナード氏①)、書籍紹介『助けあう 豊かさ』  です。
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「和歌山障害者・患者九条の会」総会&講演会開催

 6月26日、和歌山市ふれ愛センターで、42名が参加して「和歌山障害者・患者九条の会5周年総会と記念講演会」を開催しました。
 総会では、この1年間の取り組みを総括するとともに、5年間の取り組みを資料化して参加者に配布しました。11年度の活動方針では特に、防災や原発の学習会を開催し、他団体と共同して障害者や患者に優しい防災の街づくりに積極的に関っていくことが確認されました。
 続いて、「和歌山紙芝居9条の会」より、2本の紙芝居を披露していただきました。  後半は「障害者福祉のこれから 震災を契機に憲法25条を考える」のテーマで、和歌山大学経済学部准教授・金川めぐみ先生による記念講演が行われました。とても分りやすく、簡潔明瞭に話してくださいました。
 主な内容は「震災と憲法25条、障害者福祉の今までとこれから」についてです。「震災ではみんなが災害弱者であるが、とりわけ多くの困難を抱える人の生存権保障はさらに手厚くなされなければならない。それは国が責任をもって行うべきものであるが、国に対して抽象的でなく、何をやってほしいか具体的な要望を障害当事者団体が言っていかないと何もしてくれない。現在、障害者制度改革推進会議が開催されている。その基本的な考え方は、障害者は権利の客体から主体へ、即ち、お客さんから社会の一員になるということ。障害者自身が積極的に物を言う時代がやっと訪れた。『私たち抜きに私たちのことを決めるな』。そのためには当事者自身も勉強する必要がある」と、とても力強いお話でした。
 本会の取り組みは、障害者福祉のこれからを切り開く大変意義深いことだと実感することができました。6周年に向けて、また、日々新たに頑張っていければと思います。皆で手を携えながら。(野尻誠さんより)

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(告知)小森陽一氏講演会

新「現代日本の開化」と憲法9条
7月30日(土)13:00~
和歌山商工会議所4階大ホール
主催:9条ネットわかやま
協賛:九条の会・わかやま、憲法9条を守る和歌山弁護士の会
参加協力券:500円

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憲法96条改正議連が設立総会

 民主、自民両党などの有志議員は6月7日、憲法改正発議要件を衆参両院の各3分の2以上の賛成から両院の過半数に緩和することを目指す「憲法96条改正を目指す議員連盟」の設立総会を開きました。総会には、国民新党、公明党、みんなの党、たちあがれ日本、無所属の約100人も出席。賛同者は200人を超えたといいます。この議連は取り敢えず96条を改正して改憲をしやすくした上で、その後は「憲法9条」などを変えようとするものです。

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【九条噺】

 「天声人語」はいう。「原発は、事実を曲げ、真実を隠して『神話』という靴をはいてきた」(7/4朝日新聞)〝やらせメール(世論操作)〟もあった。ここまで仕組まないと、「安全だ」と思わせる自信がなかったのだろうか。原発推進陣営の欺瞞の数々が明らかになり、政府が「説明番組」のために選んだ出席者からも「こういう人たちにこんな危険なことを任せられるのか」との声が出たとか。しかも歴史上唯一核爆弾を投下されて30万人近くの人命を失い、今もなお多くの人々がその後遺症に苦しんでいるこの国で生じているのだ▼このほど、作家の村上春樹氏がスペインのカタルーニャ国際賞の授賞式で、「非現実的な夢想家として」と題して受賞講演をおこなった。村上氏は、「戦後長い間我々が抱き続けてきた核に対する拒否感はどこに消えたのか、一貫して求めてきた平和で豊かな社会を何によって損ない、歪めてしまったのか」と問いかけ、「急速な経済発展の途上で〝効率〟という安易な基準に流され、その大事な道筋を見失った結果、世界で3番目に多い原発を擁し、それに疑問や異論を唱える人々を〝非現実的な夢想家〟として退けてきた」「原点に戻り、力強い足取りで前進する『非現実的な夢想家』となって、国境や文化を超えた〝精神コミュニティー〟を形成しよう」と訴えた。不信を信頼と希望に変える講演だった▼そうだ、ご同輩!ものわかりがよすぎるのも考えもの。もっと怒ろうではないか!(佐)

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広島・長崎への原爆投下は戦争を終らせるためではない

 7月9日、和歌山地域地場産業振興センターで核戦争防止和歌山県医師の会主催の平和講演会が開催され、詩人・アーサー・ビナード氏が「夏の線引き―アメリカからピカドンを見つめて―」と題して講演されました。講演要旨を3回に分けてご紹介します。今回は1回目。

アーサー・ビナード氏 ①

 アメリカでは、原爆は本質を隠し、「すごい」ことの代名詞として使われている。私は中学校の授業で、「原爆投下は正当だった。軍国日本はいつまでも戦争をやめようとしない。通常兵器で戦っていたら、100万人の米兵の命が失われた」いう定説を教わった。
 日本に来て俳句を始め、季語では原爆忌は、広島は夏、長崎は秋だと知った。8月6日と9日の間に立秋があるからだが、季節が違うということは広島と長崎が持つそれぞれの重みが見えてくるような気がした。(演題の「夏の線引き」はこの意)
 トルーマン大統領はやむを得ず2発の原爆投下命令を出したということになっているが、何故2発で、何故その間は3日しかないのか。その疑問は95年に解けた。情報公開法でトルーマンの直筆日記が公開され、45年7月18日に「日本の天皇から平和を乞う電報が着て、日本側から戦争を終らせようという動きがあった。実際の戦争は終っていて、日本がどういう条件で降伏するかということだけが残っていた」と書いてあった。だから、原爆投下命令は戦争を終らせるためではなく、新しい戦争、ソ連を敵とした冷戦を始めるために行われたのだ。
 広島と長崎を、原爆と引っ括るめて、大雑把に見ると、原爆投下の理由が見えてこない。広島原爆の中身はウラン235、長崎はプルトニューム239だった。全く違う核分裂物質が入っていて、仕掛けも違った。明らかに2種類の核兵器の実験をした。プルトニュームの方が使い勝手がいいということも分った。
 プルトニュームは自然界には存在しない物質で、ウラン235が核分裂して出来る核生成物質だ。核兵器を作ろうと思ったらプルトニューム239を作り続けなければならない。プルトニュームを作るためにはウラン235を核分裂させる必要がある。爆発で核分裂させても集めることができないから、原爆を容器の中で、爆発を抑えながらジリジリとやる必要がある。核分裂を起こさせてプルトニュームを取り出すために開発された機械が原子炉だ。
 原子炉で核分裂させると大変な熱を出す。ほっておくとどんな容器もすぐに溶けて手に負えなくなるから、冷やしながらやる必要がある。冷やすためには水が一番手っ取り早いから水を大量に注ぎ込んで冷やして、少しずつ核分裂をさせてプルトニュームを作る。水は沸騰し蒸気ができ、その蒸気でタービンを回すと電気ができる。54機もある日本の原発は全て蒸気でタービンを回して電気をおこしているが、ついでにやっているだけで、原子炉は核兵器を作るために開発された機械だ。
 だから「原子炉=電力」と考えると、全く原子炉の本質が見えない。原子炉は付随的に蒸気を出すので使ってはいるが、元々は蒸気を出すための機械ではない。プルトニュームは核兵器を作るためのものでしかない。プルトニュームを使ってもっとすごい電気をおこす高速増殖炉を作ろうとしたが、実用化は不可能でアメリカ、イギリス、フランスも撤退した。まだ幻想を信じてやっているのは日本だけ。「もんじゅ」を諦めるとプルトニュームの隠れ蓑の使い道が消えてしまう。残るは核兵器しかないことになる。
 マンハッタン計画は原爆を作るプロジェクトだったが、国民が知らない間に20億ドル(今だと百兆円)を超える予算が注ぎ込まれた。誰も知らない間に使うことは合衆国憲法に違反する。原爆投下命令は核実験とソ連に対する威嚇だったが、計画が大成功だと演出できれば、責任を問われず、逆にヒーローになれるという判断が行われた。そこで、政府は8月に入ってマスコミも巧みに使って、日本はいつまでも降伏しないと国民に伝え、6日に原爆を投下し、それを国民に大々的に知らせて、原爆をPRし、15日に戦争が終った。当時の大人たちは、2発の原爆は、戦争を終わりにしてくれた有難い奇跡の兵器だと歓迎した。そのイメージが未だに国民の心に残っている。(つづく)

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書籍紹介『助けあう 豊かさ』

著 者:暉峻 淑子(てるおか・いつこ)(埼玉大学名誉教授)
発 行:2011年6月15日
価 格:1200円(税込み)
発行所:フォーラム・A

 『豊かさとは何か』『豊かさの条件』(いずれも岩波新書)の著者として知られる暉峻淑子教授の近著である。これは大阪中央会計事務所(所長・鳥居義昭税理士は和歌山大学経済学部67年卒業)が03年来、毎年『秋の文化行事』を開催、常に多くの参会者を集めているが、昨年開催された暉峻教授の講演内容をベースにしたものである。第1章・人は助けあって生きてきた、第2章・格差社会という「分裂」社会、第3章・助けあう豊かさ、と全3章からなる。本書で著者は、「助けあうことは、人間の本性であり、喜びなのです。市場でさえも本来は人びとが必要なものを交換しあう、支えあい補いあう行為のひとつだったのです」と述べている。
 本書の帯には、「3・11震災後、どんな社会をめざすのか そのヒントがここにある」と記されている。わが国が今日おかれている状況下で、時宜に適した好著として一読を強くお薦めする。(推薦:大阪外国語大学名誉教授・山口慶四郎さん)
本書の購入(特別価格1000円、送料・振込料別)は、大阪中央会計事務所(担当:冨田、FAX:06-6245-6326、メール::tomita@chuou-kaikei.co.jp)まで。

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(2011年7月18日入力)
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