「九条の会・わかやま」 173号を発行(2011年9月15日付)

 173号が9月15日付で発行されました。1面は、九条の会貴志川 第3回「たそがれコンサート」開催、野田内閣 発足、九条噺、2面は、核と原子力と憲法改悪は全て同じ根から出ている(小森陽一さん④)、紙芝居と花火の夕べ 和歌山市ひがし9条の会  です。
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[本文から]

黄昏時に音楽を楽しむ
九条の会貴志川、第3回「たそがれコンサート」開催


 9月11日、平池緑地公園(紀の川市貴志川町)で、憲法9条の尊さを再確認しながら音楽を楽しもうと、「九条の会貴志川」が第3回「たそがれコンサート」を開催し、たそがれのひとときをみんなで楽しみました。
 今年はまだ明るい5時30分に開幕。代表の遠藤守さんは「東日本大震災、原発事故、台風12号による紀南の災害に心を寄せながら、平和な世界へ、9条を守っていきましょう」と挨拶。
 神戸からかけつけたエレキバントの演奏が佳境に入った頃、「和歌山の朝日・夕陽100選」に選ばれている夕陽が山の端に沈みかけました。次いで、紀の川市吹奏楽団が子ども向けの音楽からマーチまで、さまざまなジャンルを約1時間、たっぷりと演奏しました。ギター、津軽三味線演奏と続き、最後はまぼろしの名画といわれる「ヒロシマ」のデモビデオを上映して終了。約2時間のコンサートでした。

 







 

 
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野田内閣 発足

 民主党の野田佳彦氏が、8月30日の衆参本会議で第95代首相に指名され、9月2日に民主党、国民新党による連立内閣が正式に発足しました。
 8月31日の朝日新聞によれば、野田佳彦氏の「外交・安保・歴史観」は、
 ①米国との関係では、「我が国の外交安全保障政策は、日米同盟が基軸であり、それをさらに深化させる」「日英同盟があったから日露戦争を乗り切れた。日英同盟の解消が先の大戦の敗戦につながった。日米同盟の深化が大事だ」というものです。旧来の自民党政権や、鳩山、菅政権と同じく、何にもまして日米同盟を最優先し、アメリカの世界制覇の片棒を担ぐ姿勢を明らかにしています。
 ②アジア諸国との関係では、「中国の軍事力の増強や活動範囲の拡大は日本のみならず、地域における最大の懸念材料になっている」というものです。「中国の脅威」をことさら強調し、「東アジアの安全保障環境の悪化」を口実にイージス艦や潜水艦などの軍備を増強し、必要に応じて自衛隊をどこにでも緊急に展開できるようにし、「軍事には軍事を」と、軍事的緊張を拡大するものです。
 ③国連については、「国連といえどもさまざまな事情を抱えた国家の集まりであり、国連決議が錦の御旗になるわけではない」としています。国連憲章に基づいて平和を求めるのではなく、あくまで日米同盟で、アメリカとともに戦争の道を選択するというのでしょうか。
 ④自衛隊については、「いざというときには集団的自衛権の行使に相当することはやらざるをえない」としています。「集団的自衛権の行使に相当すること」と持って回った言い方ですが、「集団的自衛権を行使する」ということです。憲法9条を守らないと宣言するものです。
 ⑤A級戦犯の問題については、「すべての『戦犯』の名誉は法的に回復されている。『A級戦犯』と呼ばれた人たちは戦争犯罪人ではない」としており、大問題になりました。これは〝戦犯は濡れ衣〟と言っている靖国神社と全く同じ歴史認識に立つものと言わなければならないでしょう。
 さらに、「外交・安保・歴史観」ではありませんが、エネルギー問題では、「中長期のエネルギー政策を見直す。当面はストレステスト(耐性評価)で安全性を確保しながら、地元の理解を前提に定期検査中の原発を再稼働する」と、あくまで原発再稼働にこだわっています。
 閣僚も、「私は素人」などと問題発言をした一川防衛相は普天間基地の辺野古移設を進めようとしています。玄葉外相は野田首相と同じく、「日米同盟の深化」が持論です。2009年9月の政権交代以来、国民の期待を他所に、鳩山内閣、菅内閣、野田内閣とますます後退を重ね、今やかつての自民党政権と、どこが違うのかと言わざるを得ない状態です。
 野田氏自身も「私は改憲だ」と言っています。野田政権が憲法や平和・安全保障にどのような対応をしようとするのか、私たちは注意深く見つめる必要がありそうです。

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【九条噺】

 中村哲医師のペシャワール会が現地で活動をはじめて、今年で30年になる。今年秋には、ミュージカル「ドクター・サーブ」の公演が近畿各地の劇場で計画されている。これは、砂漠化の進むアフガンの荒涼たる大地で、水と緑を取り戻し、多くの人々の心を絶望から希望へと変えてきた中村医師らによる30年の活動の軌跡を描いたものだ▼また、ペシャワール会のDVD「アフガンに生命の水を」も日本土木学会映画コンクールでこのほど最優秀賞に輝き、「現地の石組みなどの在来技術を極力活かし、持続的なメンテナンスを地域の人々がまかなえるように配慮/命を守り生活を支える土木技術者の魂を伝えるもので、まさに大地の医師と呼ぶにふさわしい内容」と激賞された▼同会の「2010年度事業報告」に際して、中村哲医師は述べている。「われわれの良心的活動が、立場を超え、国境を超えて躍動しているのは、自然の理に適っているからだ。己が何のために生きているかを問うことは徒労である。人は人のために働いて支えあい、人のために死ぬ。そこに生じる喜怒哀楽に翻弄されながらも、結局はそれ以上でもそれ以下でもない。だが自然の理に根ざしているなら、人は空理を離れ、無限の豊かな世界を見出すことができる。そこで裏切られることはない」(「会報」№108)▼「(この活動は)憲法9条の具現化」だともいう中村医師の言葉をあらためてかみしめてみる。(佐)

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核と原子力と憲法改悪は全て同じ根から出ている

 7月30日、和歌山商工会議所で「9条ネットわかやま」主催、「九条の会・わかやま」「憲法9条を守る和歌山弁護士の会」協賛の講演会が開催され、約300名が参加しました。「九条の会」事務局長・小森陽一さんが「新『現代日本の開化』と憲法9条 ─夏目漱石 和歌山講演から100年目に考える─」と題して講演されました。講演要旨を4回に分けてご紹介しています。今回は4回目で、最終回。

小森陽一さん ④

 もし、第5福竜丸が焼津に3月3日より先に帰っていたら原子力予算は付かなかっただろう。日本の原発開発は始まらなかったはずだ。だから、核と原子力と憲法改悪は全部同じ根から出ている。その意味で私たちは今漱石が言う「言語道断の窮状」の中にあると言わざるを得ない。しかし、憲法と同年に生まれた沢田研二は「我が窮状」という歌を作って歌っている。沢田さんはこの現代日本の開化の「言語道断の窮状」という漱石の言葉を意識していたそうだ。そのように認識は受け継がれていると思う。私たちが何故9条を持てたのか、それは唯一の被爆国として戦争がどのような惨禍をもたらすか、アメリカとソ連が核兵器を開発する対立の状況の中で、もし、戦力を持ってしまったらどうなるのかということを明確にその時代の人々が考えていたからこそ、「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない」と言った。にも拘らず53年の朝鮮戦争の休戦で米軍の主力が撤退し、主力は空軍だったので、アジアに空軍がいなくなった。その時米軍は日本も空軍を持てということで、陸海空を持った自衛隊が創設されたのも、54年7月1日のことだった。54年という年の3・1(第5福竜丸事件)と3・3(原子力予算)と7・1(自衛隊創設)の、その重みを、改めて私たちは3・11以降問い直すことが必要だと思う。今現実的に私たちは原発を全部止めることができる。労せずして来年の春まで定期点検で全部止るので、再稼働させなければいい。玄海原発で「やらせ」があったことが暴露され、原子力保安院までが「やらせ」をしていたことが今日明らかになった。国を挙げての原子力政策は国民を騙すものであったことが、多くの人に明らかになった。だからこそ、原発推進派の巻き返しが凄まじい。一旦「脱原発」と言った菅政権がわずか数日で「減原発」に後退するという、そういうせめぎ合いだ。だから私たちにとって今大事なことは、草の根で世論を変えることだ。04年に「九条の会」を作った時、読売新聞の世論調査では60数%の人が憲法を変えた方がいいと言っていた。それを呼びかけ人が「積極的開化」で全国をまわり、津々浦々に「九条の会」が出来てきた。そして08年には憲法を変えない方がいいという人が上回った。私たちの運動は草の根で世論を変えることによって2大政党の片方の政策を変えた。今はこういう運動しかない。その変わった民主党をもう一度、官僚と財界とアメリカが変えたのが菅政権だ。これをもう一度草の根から変えるためには、9条の問題を3・11以降における私たちの思想として、25条、13条、22条と合わせながらやっていく必要がある。今本当に被災地の人々を救う力は日本国憲法を思想として捉えなおし、それをきちっと政策として実現することだ。そこが私たちの大事な運動になってくる。改めて一緒にがんばっていきたい。(おわり)

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紙芝居と花火の夕べ
和歌山市ひがし9条の会


 8月28日午後6時30分から、麦の郷高齢者地域生活支援センターの駐車場で「和歌山市ひがし9条の会」主催の紙芝居と花火の夕べを開催いたしました。参加者は26名でした。灯火管制のない平和な世でこそ出来る花火をみんなで楽しんで下さいとの主催者あいさつの後、神谷さんによる紙芝居2本に引き続いて、8時頃まで花火を楽しみました。展示していた和歌山大空襲のパネルの前では若いお母さんが「和歌山城も焼けてしまったのですね。恐ろしいことです」と話されていました。(事務局長・石垣保さんより)





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(2011年9月16日入力)
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