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野田内閣 発足
民主党の野田佳彦氏が、8月30日の衆参本会議で第95代首相に指名され、9月2日に民主党、国民新党による連立内閣が正式に発足しました。
8月31日の朝日新聞によれば、野田佳彦氏の「外交・安保・歴史観」は、
①米国との関係では、「我が国の外交安全保障政策は、日米同盟が基軸であり、それをさらに深化させる」「日英同盟があったから日露戦争を乗り切れた。日英同盟の解消が先の大戦の敗戦につながった。日米同盟の深化が大事だ」というものです。旧来の自民党政権や、鳩山、菅政権と同じく、何にもまして日米同盟を最優先し、アメリカの世界制覇の片棒を担ぐ姿勢を明らかにしています。
②アジア諸国との関係では、「中国の軍事力の増強や活動範囲の拡大は日本のみならず、地域における最大の懸念材料になっている」というものです。「中国の脅威」をことさら強調し、「東アジアの安全保障環境の悪化」を口実にイージス艦や潜水艦などの軍備を増強し、必要に応じて自衛隊をどこにでも緊急に展開できるようにし、「軍事には軍事を」と、軍事的緊張を拡大するものです。
③国連については、「国連といえどもさまざまな事情を抱えた国家の集まりであり、国連決議が錦の御旗になるわけではない」としています。国連憲章に基づいて平和を求めるのではなく、あくまで日米同盟で、アメリカとともに戦争の道を選択するというのでしょうか。
④自衛隊については、「いざというときには集団的自衛権の行使に相当することはやらざるをえない」としています。「集団的自衛権の行使に相当すること」と持って回った言い方ですが、「集団的自衛権を行使する」ということです。憲法9条を守らないと宣言するものです。
⑤A級戦犯の問題については、「すべての『戦犯』の名誉は法的に回復されている。『A級戦犯』と呼ばれた人たちは戦争犯罪人ではない」としており、大問題になりました。これは〝戦犯は濡れ衣〟と言っている靖国神社と全く同じ歴史認識に立つものと言わなければならないでしょう。
さらに、「外交・安保・歴史観」ではありませんが、エネルギー問題では、「中長期のエネルギー政策を見直す。当面はストレステスト(耐性評価)で安全性を確保しながら、地元の理解を前提に定期検査中の原発を再稼働する」と、あくまで原発再稼働にこだわっています。
閣僚も、「私は素人」などと問題発言をした一川防衛相は普天間基地の辺野古移設を進めようとしています。玄葉外相は野田首相と同じく、「日米同盟の深化」が持論です。2009年9月の政権交代以来、国民の期待を他所に、鳩山内閣、菅内閣、野田内閣とますます後退を重ね、今やかつての自民党政権と、どこが違うのかと言わざるを得ない状態です。
野田氏自身も「私は改憲だ」と言っています。野田政権が憲法や平和・安全保障にどのような対応をしようとするのか、私たちは注意深く見つめる必要がありそうです。
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【九条噺】
中村哲医師のペシャワール会が現地で活動をはじめて、今年で30年になる。今年秋には、ミュージカル「ドクター・サーブ」の公演が近畿各地の劇場で計画されている。これは、砂漠化の進むアフガンの荒涼たる大地で、水と緑を取り戻し、多くの人々の心を絶望から希望へと変えてきた中村医師らによる30年の活動の軌跡を描いたものだ▼また、ペシャワール会のDVD「アフガンに生命の水を」も日本土木学会映画コンクールでこのほど最優秀賞に輝き、「現地の石組みなどの在来技術を極力活かし、持続的なメンテナンスを地域の人々がまかなえるように配慮/命を守り生活を支える土木技術者の魂を伝えるもので、まさに大地の医師と呼ぶにふさわしい内容」と激賞された▼同会の「2010年度事業報告」に際して、中村哲医師は述べている。「われわれの良心的活動が、立場を超え、国境を超えて躍動しているのは、自然の理に適っているからだ。己が何のために生きているかを問うことは徒労である。人は人のために働いて支えあい、人のために死ぬ。そこに生じる喜怒哀楽に翻弄されながらも、結局はそれ以上でもそれ以下でもない。だが自然の理に根ざしているなら、人は空理を離れ、無限の豊かな世界を見出すことができる。そこで裏切られることはない」(「会報」№108)▼「(この活動は)憲法9条の具現化」だともいう中村医師の言葉をあらためてかみしめてみる。(佐)
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核と原子力と憲法改悪は全て同じ根から出ている
7月30日、和歌山商工会議所で「9条ネットわかやま」主催、「九条の会・わかやま」「憲法9条を守る和歌山弁護士の会」協賛の講演会が開催され、約300名が参加しました。「九条の会」事務局長・小森陽一さんが「新『現代日本の開化』と憲法9条 ─夏目漱石 和歌山講演から100年目に考える─」と題して講演されました。講演要旨を4回に分けてご紹介しています。今回は4回目で、最終回。
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