「九条の会・わかやま」 175号を発行(2011年10月6日付)

 175号が10月6日付で発行されました。1面は、「9条署名全県総行動」、和歌山市共同センター5周年憲法学習会 安斎育郎氏「憲法九条、原発事故と放射能」、九条噺、2面は、財界人が語り続ける戦争と9条 「人間の目」で見よ ② 品川正治さん、原発をなくしていくのが私のビジョン ノーベル化学賞 根岸英一さん、民主 憲法審査会名簿提出へ、PKO5原則に反する南スーダンへの派遣  です。
    ――――――――――――――――――――――――――――――
[本文から]

「9条署名全県総行動」実施(続報)

 9月11日、「憲法九条を守るわかやま県民の会」が呼びかけた第4回「9条署名全県総行動」が県下5郡市で行われました。前号の日高、海南・海草に引き続き、那賀、伊都、和歌山市の活動をご紹介します。

那賀地方

 那賀地方では岩出、粉河、打田、桃山で署名活動が行われ、全体で55名の参加で、563筆が集められました。昨年5月よりも、人数・署名数とも上回っています。
 「署名行動まで少しブランクがあったので、説明しても書いてくれるやろか」「北朝鮮問題や尖閣諸島問題があるので、何と答えたらいいのだろう」など、訪問に際して少し不安はあったものの、訪問した家のほとんどで分ってもらえ、快く署名に応じてくれました。桃山ではあらかじめ署名を書いてくれていた家が多かったと聞いています。これは、数日前に事前ビラと署名用紙を配布して、そのビラに地域9条の会の呼びかけ人の名前を書いていたので、署名をする人に安心感を与えていることが大きな理由と思われます。趣旨を分ってくれても署名をしてくれない人もありましたが、これはプライバシーの問題や個人情報保護の問題が多いようです。「9条の会」の知名度が確実にアップしていることに参加者みんなが確信を持つことができたとのことです。11月20日の「那賀9条まつり」も成功させたいとがんばっています。


九条の会・かつらぎ

 「九条の会・かつらぎ」は当初から計画していた9月9日に署名活動を行いました。会員6名が参加、2名ずつ3班に別れ、かつらぎ町東西からの地図塗りつぶしの従来のやり方で実施されました。大変な炎天下で厳しい活動でし たが、署名34筆、入会者2名という成果が得られました。平日であったこと、一人住まいの高齢者が多いことでなかなか会えなかったこと、面接が出来た場合は断られることはなかったことなどが感想として出されました。

和歌山市

 和歌山市では、楠見、和歌浦・名草、四箇郷、高松、雑賀、新通の6地域と東地域のJR和歌山駅頭署名の計7カ所で署名活動が行われました。75人の参加で414筆の署名が集められました。
 その内、楠見地域での第22回憲法署名共同活動は、全県総行動ということで、高教組から地元の和歌山北高校のお2人を含む5名の先生が来てくださり、4組、12人の参加で行われました。訪問軒数は113軒、対話軒数69軒、署名をしてくれたのは34軒で52筆の署名が集められました。「わりと留守が少なかった」という組、「3人ではじめに声をかける人をローテーションにしたのがよかった」という声、「畑で農作業をしている人にも話して署名をしてもらった」、「すぐにしてもらえなかった方にも一押ししたら署名してもらえた」などの声があげられていました。

    ---------------------------------------------------

(告知)憲法9条を守る和歌山市共同センター結成5周年記念憲法学習会
日本国憲法と私たちのくらし
講演:「憲法九条、原発事故と放射能」

講師:安斎 育郎 氏(立命館大学名誉教授)

日時:10月22日(土)午後1時30分~4時
場所:和歌山市中央コミュニティセンター
     和歌山市三沢町1-2
     TEL 073-402-2678
資料代:500円(高校生以下無料)
国の原子力行政を批判し続けてきた安斎育郎先生に、原発や放射能、憲法や平和、エネルギー政策等について縦横に語っていただきます。

    ---------------------------------------------------

【九条噺】

 今年は、日本の侵略戦争の口火ともなった満州事変の開始から80年になる。06年に安倍晋三首相(当時)が中国政府に提案して実現した日中歴史共同研究の「報告書」(10年1月)によれば、満州事変は日本の関東軍の謀略によって始まったのであり、「満州国」は日本の植民地支配による傀儡(かいらい)国家であったと明記している。国際連盟はこの「満州国」を認めず、占領地から日本軍の撤退を勧告したが、日本はこれを拒否して連盟を脱退、いっそう領土拡張の野望を強め、やがて日中全面戦争、アジア・太平洋戦争へと突き進んだのは周知のとおりである▼ところが、この「報告書」を公然と否定する「教科書」が一部学校で採用されようとしている。それが「新しい歴史教科書をつくる会」系の『新しい日本の歴史』(育鵬社)である。例えば、満州事変については「排日運動の強化」を受けて、「関東軍による(日本人居留地の)治安回復への期待」が高まるなかで起きたとし、「満州国は『王道楽土』『五族協和』『共存共栄』を掲げて」大いに発展した、などとも書く。満州事変にとどまらない。要するに、「日本の侵略」という大事な視点を欠落させて、すべて当時の日本、つまり侵略者に都合のよい記述となっている▼これでは「歴史の教訓に学び、二度と誤りを繰り返さない」という、歴史学習本来の意義にもほど遠く、いつか来た暗い道に戻ることにもなりかねない。(佐)

    ---------------------------------------------------

財界人が語り続ける戦争と9条
「人間の目」で見よ ②
品川正治さん(経済同友会終身幹事/87歳)

逆さ別れの子に問われ教えられ

 「負うた子に教えられ浅瀬を渡る」と言います。子は未熟な者という前提ですが、私の場合、息子は大したものだと感心してています。いつも、息子に教えられている気がします。
 一人息子は12年前、49歳で亡くなりました。その7年前、息子は妻を亡くしており、小学6年生だった一人娘が残されました。息子は娘に膨大な遺書を残していました。がんで死を悟った時から書き始め、ノート10冊分でした。私あての遺書に「誕生日ごとに1冊ずつ渡してほしい」と書いてありました。13歳から22歳まで、1冊ずつ油紙に包んであり、年齢に応じて、ここまでならできるだろうという希望、目標を書いています。17歳のノートには「もうあなたは、戦争のことを知らないといけない。おじいさんに戦争の話を聞きなさい」と書いてありました。
 さらに、息子は娘に沖縄を通じて戦争の実態を伝えようと、生前最後の旅行で娘と沖縄の戦跡を巡りました。以来、娘は沖縄を日本の聖地と考えているようです。時間ができると、まず沖縄に行くことを望みます。
 息子は父の考え方、行動をしっかりと見ていたのだと思います。何かを判断する時、判断に迷う時、いつも「これでいいんですか? 人間の目で問題を見ていますか?」と、息子に聞かれているように感じます。
 孫娘を家に迎え、娘としました。75歳でもう一度子育てです。授業参観にも、PTAの会合にも行きました。老いを感じる暇がなかったですね。
 その娘も24歳になりました。大学を卒業し、就活を経験し、婚活もメドがついたようです。それと同じくして、私は足腰が弱くなり、耳が遠くなり、本を読むのも遅くなりました。それも仕方ないことと受け入れようとしていたら、東日本大震災が起きました。日本は大きな岐路に立っています。まだまだ考えなくてはならない、声を上げていかなくてはならない。老いるのは、もう少し待ってもらいましょう。
(おわり)(毎日新聞9月13日)

    ---------------------------------------------------

原発をなくしていくのが私のビジョン
ノーベル化学賞受賞者・根岸英一さん


 9月29日、ABCテレビ「報道ステーション」で10年度ノーベル化学賞受賞者のパデュー大学特別教授・根岸英一さんが、「原発 私はこう思う」と語られた発言内容をご紹介します。

 物理的なものと化学的なもの、原発はまた別なものです。単なる化学ともいえないし、単なる物理とも言えない。核をいじるわけですから。これは本質的に非常に危険性を伴うものであることは、科学者あるいはエンジニアは誰でも知っているはずです。古くからやってきた物理、化学、それに戻って、それをさらに基本的に発展、発達させることで、原発を少なくしていくというか、なくしていくというのが私のビジョンです。
 特に使用済み燃料の処理法などが、私の知っている限りでは、まだ本当に十分には確立されていないと思うんですね。この地球に生存している者が、近視眼的に我々の生きている間さえよければいい、そんなことを思う人はいないでしょうけれども、そういった長期的なビジョンを持たずに、いろいろ行動していくのは、私は危険だと思います。やはり、そういう責任はサイエンティスト、エンジニア、われわれの責任だと思います。
 (原発は)根本的に、抜本的に見直す時期が、残念ながらこの震災ということでようやく目が覚めたというか、それに目が向くようになったということなんじゃないでしょうか。私は物理・化学的にもっとエネルギーを作ることはできるはずだ。今この世界が必要としているものは、それでもっとまかなえるはず。その中には生化学的なものも入れてもいいわけです。ですから、炭酸ガス、二酸化炭素も化学的にも、生化学的にも燃料に変えることができるわけですから。太陽電池ってものがありますね。これも多分に化学的なものが入ってきていますが、とにかく、あの手この手で物理学者、化学者、そういう我々、私も含めてですけれど、力を合わせていろいろ発見、それからさらに発見に基づいた展開を進めていく時期が来たと思います。

    ---------------------------------------------------

民主、憲法審査会名簿提出へ

 9月29日、読売新聞は「民主党は29日の参院議院運営委員会理事会で、参院憲法審査会の委員名簿を次期臨時国会の冒頭に提出する方針を表明した。同党は、衆参両院で同時に委員名簿を提出できるよう、党内調整を進める方針だ。野党側も委員名簿を提出するとみられ、休眠状態の同審査会の始動に必要な条件が整うことになる」と報じています。
 東日本大震災から7カ月にもなろうというのに、震災からの復興、原発事故の収束も見えない中、憲法審査会を始動させる必要など全くありません。どさくさに紛れて「過半数賛成で改憲発議」や「緊急事態対応」などの改憲策動に警戒が必要です。

    ---------------------------------------------------

PKO5原則に反する南スーダンへの派遣

 野田首相は自衛隊を南スーダンにPKO派遣をしようとしています。PKO5原則は当事国の停戦合意成立、当事国の活動受入れ同意、中立性厳守、以上の原則が崩れた場合の独自撤退、武器使用は生命防護に限定としています。南スーダンは、スーダンとの国境地帯で衝突が起きるなど不安定な状況で、部族対立もあります。国連安保理は、一般市民の保護に「必要なあらゆる手段を用いることを許可する」と武力行使を容認しており、自衛隊が戦闘に関与しない保障はありません。明らかに従来のPKOとは違います。日本の貢献は軍事力ではなく、憲法が認める平和的な手段で行うべきではないでしょうか。

    ――――――――――――――――――――――――――――――
(2011年10月7日入力)
[トップページ]