「九条の会」の現状はどうだろうか。かなりの会が眠ってしまっている。しかし、和歌山でこんなに沢山の方が「九条の会」に集っていることに敬意を表したい。昨年は、東日本大震災・原発事故、消費税増税、TPP、比例定数削減など大問題が次々と起り、大阪では橋下大阪市長が、次から次へと悪さをして、大阪の活動家は振り回され、9条に頭が回らない状況が続いている。「知らない間に迫る9条の危機」を話すに当り、改めて勉強したら9条は大変な状況になっている。
98~99年頃から憲法を変える動きが強まり、00年1月に憲法調査会が設置されたが、議案提出権はなく、単に調査をするだけの機関だった。07年に改憲手続法が強行採決、3年後に施行され、憲法審査会が作られた。憲法審査会は憲法改正原案を作ることになっている。ところが、審査会規程が野党の反対で出来ず、審査会はなかなか動き出さなかったが、09年6月に衆院で審査会規程が自民党の強行採決で通った。参院では10年7月の参院選で民主党が敗北し、議会運営で自民党に擦り寄るために審査会規程が制定され、衆参の委員の選任に応じた。憲法改正法案審議が始まる条件が生まれ、昨年10月から動きだした。自主憲法制定、時代が変わった、国際貢献できる憲法へ、震災を契機とする非常事態条項、改憲手続きの緩和などの議論が行われている。このまま論議が続けば、改憲気運が作り出されていく恐れがある。従来の改憲議論と異なるところは、3・11を受けて非常事態条項・国家緊急権で、基本的人権を制約し、強力な権力を一点に集約する制度を作らなければならないという議論だ。大震災や原発事故への政府の対策の遅れが、まるで政府の責任でないようなすり替えの議論が堂々と行われている。もうひとつは憲法改正発議を国会議員の半分の賛成で出来るようにした方が変えやすいと、改憲要件緩和が大きく言われているのも特徴だ。いずれにしても、このまま議論が続けば危ないという状況が始まっていることを理解する必要がある。しかし、改憲手続法実施に伴う宿題、「18歳投票年齢に伴う公選法や民法の改正作業」「公務員の政治活動制限規定の修正」が残っており、宿題を出来るだけ早く済ませたいという声が高まっていることも注目すべきだ。
各政党の動向は、自民党を中心とした「新憲法制定議員連盟」は昨年4月の大会で、大震災で非常事態条項がないという欠陥が明らかになったと主張している。「憲法96条改正を目指す議員連盟」が昨年6月に出来て、国会議員約100名で組織している。自民党は今年1月に大会を開き、4月28日までに一層保守的な色彩を強めた新たな憲法改正草案を発表する方針を出している。民主党も改憲の大綱を憲法記念日までに発表予定で、憲法審査会の動きに合わせて動いている。
これに対して世論動向は、昨年5月の朝日新聞では、「9条は変えない方がよい」59%、「変える方がよい」30%。国民世論は健全だが、残念ながら「憲法の改正の必要なし」29%、「必要あり」54%で、9条は変えないが、他の条項は変えてもいいという状況だ。このネジレの原因は選挙制度だ。今の小選挙区をベースにした制度は国民世論が国会に反映しないシステムで、さらに衆議院の比例定数を80削減すれば、護憲派の政党の議員数は減っていく。ますます国民の声が国会の議席に反映しない。だから1日も早く民主的な選挙制度に変えることを大きな運動にしていかねばならない。そのためには比例代表を原則とした制度の議論を巻き起こしていく必要がある。でないと今の状況では改憲発議を容易にしてしまうと考える。以上が明文改憲を巡る動きだ。 (つづく)
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【九条噺】
かたくなに節を曲げないというのも時として立派だと思うこともある。しかし、歴史的にも明らかな事実をかたくなに否定しつづけるというのは論外であり、ましてや公職にある者がそうであるのなら到底許されないことだと思う▼今年は日中国交回復40周年。先頃は南京市の訪日代表団が「姉妹都市交流」として名古屋市役所を表敬訪問した。その時、河村たかし市長は「南京事件」について「通常の戦闘行為はあったが、一般人への虐殺行為はなかったと聞いている」などと語った。これは当然中国でも報じられて大問題となり、他の交流の企画にも深刻な悪影響をもたらしているが、河村市長は「謝罪もしないし、〝南京事件はなかった〟という持論も変えない」としている▼「南京事件」は、中国侵略を展開する旧日本軍が1937年12月に当時の首都・南京を攻略・占領し、中国人兵士だけでなく一般市民も虐殺した事件で、その残虐非道の事実は国際的にも広く知られている。当時の日本の外務省東亜局長の回顧録にも「上海から南京に於ける我軍の暴状を詳報し来る。掠奪、強姦、目もあてられぬ惨状とある。嗚呼これが皇軍か」とある。日本政府も「多くの非戦闘員の殺害・掠奪等があったことは否定できない」とする▼河村市長が否定しても「焼き尽くし、奪い尽くし、殺し尽くした」日本の侵略の歴史は消せない。(佐)
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自民党憲法改正原案、推進本部役員会が了承
産経新聞は3月3日、「自民党憲法改正推進本部は2日の役員会で憲法改正原案を了承した。サンフランシスコ講和条約発効60周年となる4月28日までに最終案をまとめ、国会提出を目指す。自民党は今後、総務会で党議決定する方針」と報じました。
自民党改正原案は、前文を「天皇を戴く国家」とするなど、全面的に改変しています。天皇を元首として、「自衛権」「自衛軍の保持」も明記。「緊急事態条項」も新設して、改憲発議要件は「過半数」に緩和しています。いよいよ「戦争ができる国」に踏み出そうということではないでしょうか。
■現行憲法と自民党原案の主な違い
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