「九条の会・わかやま」 185号を発行(2012年3月11日付)

 185号が3月11日付で発行されました。1面は、「守ろう9条 紀の川 市民の会」第8回総会、大震災・原発事故で進められる明文改憲の危機(梅田章二弁護士 ①)、九条噺、2面は、自民党憲法改正原案、推進本部役員会が了承、石原都知事 新党で憲法破棄を主張、言葉 憲法「改正」「廃止」「破棄」   です。
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[本文から]

「守ろう9条 紀の川 市民の会」第8回総会開催

   (原代表委員)

 3月3日、河北コミュニティーセンター(和歌山市)で58名の参加のもと、「守ろう9条 紀の川 市民の会」第8回総会が開催されました。
 原通範代表委員は開会に当り、「東日本大震災・福島原発事故、和歌山の台風大災害で大変な1年だった。復興の名の下に、その背後で改憲への動きが強められている。我々がもっと学んで、『それはまずい』という対話を進めていくことが大事だ」と挨拶をされました。
 総会に先立ち、大阪憲法会議幹事長・梅田章二弁護士が「知らない間に迫る9条の危機~これからの私たちの課題~」と題して講演(要旨は別掲)されました。
 梅田弁護士は、「憲法審査会が始動し、議論が始まり、このまま議論が続けば改憲気運が作り出される。東日本大震災を口実にした非常事態条項、改憲要件の緩和などの明文改憲の動きとともに、集団的自衛権の行使容認、PKO活動での武器使用の緩和、武器輸出3原則の骨抜きなどの解釈改憲も進められている。このような危機的な状況であっても、9条があるということは絶対的な歯止めなので、休眠・マンネリ・高齢化を打破して『九条の会』の活動を粘り強く進めることが必要だし、格差社会や貧困社会も平和への脅威なので、憲法25条との連携を進めることも大事だ」と訴えられました。
 続いて、総会に移り、11年度活動報告、会計報告、12年度活動方針と予算が承認され、新しい運営委員6名を選出しました。
 最後に山﨑和友弁護士が「9条は我々が加害者にならないことを宣言しているのだから、9条を守る良い政治を目指し、主権者の権利を行使しよう」と閉会挨拶を述べられて終了しました。

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大震災・原発事故で進められる明文改憲の危機

「守ろう9条 紀の川 市民の会」第8回総会で行われた梅田章二弁護士の講演要旨を3回に分けてご紹介します。今回は1回目。

梅田章二弁護士 ①

 「九条の会」の現状はどうだろうか。かなりの会が眠ってしまっている。しかし、和歌山でこんなに沢山の方が「九条の会」に集っていることに敬意を表したい。昨年は、東日本大震災・原発事故、消費税増税、TPP、比例定数削減など大問題が次々と起り、大阪では橋下大阪市長が、次から次へと悪さをして、大阪の活動家は振り回され、9条に頭が回らない状況が続いている。「知らない間に迫る9条の危機」を話すに当り、改めて勉強したら9条は大変な状況になっている。
 98~99年頃から憲法を変える動きが強まり、00年1月に憲法調査会が設置されたが、議案提出権はなく、単に調査をするだけの機関だった。07年に改憲手続法が強行採決、3年後に施行され、憲法審査会が作られた。憲法審査会は憲法改正原案を作ることになっている。ところが、審査会規程が野党の反対で出来ず、審査会はなかなか動き出さなかったが、09年6月に衆院で審査会規程が自民党の強行採決で通った。参院では10年7月の参院選で民主党が敗北し、議会運営で自民党に擦り寄るために審査会規程が制定され、衆参の委員の選任に応じた。憲法改正法案審議が始まる条件が生まれ、昨年10月から動きだした。自主憲法制定、時代が変わった、国際貢献できる憲法へ、震災を契機とする非常事態条項、改憲手続きの緩和などの議論が行われている。このまま論議が続けば、改憲気運が作り出されていく恐れがある。従来の改憲議論と異なるところは、3・11を受けて非常事態条項・国家緊急権で、基本的人権を制約し、強力な権力を一点に集約する制度を作らなければならないという議論だ。大震災や原発事故への政府の対策の遅れが、まるで政府の責任でないようなすり替えの議論が堂々と行われている。もうひとつは憲法改正発議を国会議員の半分の賛成で出来るようにした方が変えやすいと、改憲要件緩和が大きく言われているのも特徴だ。いずれにしても、このまま議論が続けば危ないという状況が始まっていることを理解する必要がある。しかし、改憲手続法実施に伴う宿題、「18歳投票年齢に伴う公選法や民法の改正作業」「公務員の政治活動制限規定の修正」が残っており、宿題を出来るだけ早く済ませたいという声が高まっていることも注目すべきだ。
 各政党の動向は、自民党を中心とした「新憲法制定議員連盟」は昨年4月の大会で、大震災で非常事態条項がないという欠陥が明らかになったと主張している。「憲法96条改正を目指す議員連盟」が昨年6月に出来て、国会議員約100名で組織している。自民党は今年1月に大会を開き、4月28日までに一層保守的な色彩を強めた新たな憲法改正草案を発表する方針を出している。民主党も改憲の大綱を憲法記念日までに発表予定で、憲法審査会の動きに合わせて動いている。
 これに対して世論動向は、昨年5月の朝日新聞では、「9条は変えない方がよい」59%、「変える方がよい」30%。国民世論は健全だが、残念ながら「憲法の改正の必要なし」29%、「必要あり」54%で、9条は変えないが、他の条項は変えてもいいという状況だ。このネジレの原因は選挙制度だ。今の小選挙区をベースにした制度は国民世論が国会に反映しないシステムで、さらに衆議院の比例定数を80削減すれば、護憲派の政党の議員数は減っていく。ますます国民の声が国会の議席に反映しない。だから1日も早く民主的な選挙制度に変えることを大きな運動にしていかねばならない。そのためには比例代表を原則とした制度の議論を巻き起こしていく必要がある。でないと今の状況では改憲発議を容易にしてしまうと考える。以上が明文改憲を巡る動きだ。
(つづく)

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【九条噺】  かたくなに節を曲げないというのも時として立派だと思うこともある。しかし、歴史的にも明らかな事実をかたくなに否定しつづけるというのは論外であり、ましてや公職にある者がそうであるのなら到底許されないことだと思う▼今年は日中国交回復40周年。先頃は南京市の訪日代表団が「姉妹都市交流」として名古屋市役所を表敬訪問した。その時、河村たかし市長は「南京事件」について「通常の戦闘行為はあったが、一般人への虐殺行為はなかったと聞いている」などと語った。これは当然中国でも報じられて大問題となり、他の交流の企画にも深刻な悪影響をもたらしているが、河村市長は「謝罪もしないし、〝南京事件はなかった〟という持論も変えない」としている▼「南京事件」は、中国侵略を展開する旧日本軍が1937年12月に当時の首都・南京を攻略・占領し、中国人兵士だけでなく一般市民も虐殺した事件で、その残虐非道の事実は国際的にも広く知られている。当時の日本の外務省東亜局長の回顧録にも「上海から南京に於ける我軍の暴状を詳報し来る。掠奪、強姦、目もあてられぬ惨状とある。嗚呼これが皇軍か」とある。日本政府も「多くの非戦闘員の殺害・掠奪等があったことは否定できない」とする▼河村市長が否定しても「焼き尽くし、奪い尽くし、殺し尽くした」日本の侵略の歴史は消せない。(佐)

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自民党憲法改正原案、推進本部役員会が了承

 産経新聞は3月3日、「自民党憲法改正推進本部は2日の役員会で憲法改正原案を了承した。サンフランシスコ講和条約発効60周年となる4月28日までに最終案をまとめ、国会提出を目指す。自民党は今後、総務会で党議決定する方針」と報じました。
 自民党改正原案は、前文を「天皇を戴く国家」とするなど、全面的に改変しています。天皇を元首として、「自衛権」「自衛軍の保持」も明記。「緊急事態条項」も新設して、改憲発議要件は「過半数」に緩和しています。いよいよ「戦争ができる国」に踏み出そうということではないでしょうか。

■現行憲法と自民党原案の主な違い

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石原都知事、新党で憲法破棄を主張

 NHKは2月24日、「東京都の石原知事は、24日の会見で、『占領のために作られた憲法と称する法律体系を続けることは、歴史的にも例がなく正当性がない。時の政府が破棄して新しい憲法を即座に作ったらいい。改正なんて手間取る』と述べ、新党が結成された場合、憲法の破棄に取り組みたいという考えを示しました」と放送しました。
 憲法には「改正手続き」条項(第96条)はありますが、「破棄」条項などありません。公務員である石原都知事には憲法尊重・擁護義務があります(第99条)。「破棄」を主張することは、その義務を乱暴に投げ捨てた無茶苦茶な主張と言わなければならないのではないでしょうか。

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言葉 憲法「改正」「廃止」「破棄」

 そもそも「廃止」や「破棄」などあるのでしょうか。「改正」でも憲法の基本原理を変える「改正」は、現憲法の否定であり、改正手続きを踏んでもできないというのが法曹界・学会の通説です。現憲法の基本原理とは、国民主権、基本的人権の尊重、平和主義と言われます。ですから、「自衛軍保持」などは、本来、通説に従えば、改正案とは呼べません。憲法を制定する権利は誰が持っているのでしょうか。それは国民です。その国民が国民主権や基本的人権の尊重を否定することなどありえないと考えられます。「廃止」は現憲法の基本原理も廃止することですから、仮に、両院の3分の2以上で発議し、国民投票で過半数の国民が日本国憲法を「廃止」することに賛成したとしても、それを法的に有効なものと解することは(通説によれば)できないということになります。石原都知事の「破棄」は、そういう「改正手続き」という形さえも無視した、「クーデター」を呼びかけているのだと解釈するより仕方がないのではないでしょうか。

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(2012年3月11日入力)
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