「九条の会・わかやま」 186号を発行(2012年3月23日付)

 186号が3月23日付で発行されました。1面は、「広河隆一氏講演会&写真展」開催、「反核医師の会」に「わかやま平和賞」を贈呈、日米同盟深化のために進む解釈改憲(梅田章二弁護士 ② ) 、九条噺、2面は、当会呼びかけ人・森川隆之さん和歌山市文化賞を受賞、一院制議連が改憲案の今国会提出目指す、維新の会「船中八策」原案 改憲も盛り込む   です。
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[本文から]

「広河隆一氏講演会&写真展」開催

 3月20日、和歌山ビック愛(和歌山市)で、「憲法9条を守る和歌山弁護士の会」「9条ネットわかやま」共催の「広河隆一氏講演会&写真展」が開催されました。
 代表の藤井幹雄弁護士は、「橋下大阪市長が憲法9条について国民投票にかけると言っている。橋下氏は憲法9条について一番危ない人だと思っている。みんなで考えて日本の平和を次の世代に引き継ぐために何をすべきか考えましょう」と開会の挨拶をされました。
 フォトジャーナリストの広河隆一氏が「子どもたちをどう守るか?~パレスチナ・チェルノブイリ・フクシマ~」と題して講演をされました。広河氏は特に戦争と原発の犠牲となった子どもたちの映像を多く使って、子どもたちが極めて危険な状況に置かれていることを指摘しました。
 福島原発事故では、とにかく事実を隠そうとした日本政府と、それを無批判的に報道したマスメディアを厳しく告発しました。
 また、ジャーナリストとは何をする人なのか。人間には等しく生きる権利があり、生きるためには知ることが必要で、「知ること」に貢献しなければならないのが、ジャーナリストだと強調しました。
 ロビーでは同時に広河氏の写真展が行われました。

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「反核医師の会」に「わかやま平和賞」を贈呈

 広河隆一氏の講演に先立ち、和歌山県内において平和運動の発展に顕著な貢献をされた活動に対して敬意を表し、これを顕彰する「わかやま平和賞」が「9条ネットわかやま」から「核戦争防止和歌山県医師の会(反核医師の会)」に贈られました。反核医師の会は、89年の設立以来、核戦争防止と核兵器廃絶のために地道な活動に取り組んでおられます。

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日米同盟深化のために進む解釈改憲

3月3日、「守ろう9条 紀の川 市民の会」第8回総会が開催され、大阪憲法会議幹事長・梅田章二弁護士が「知らない間に迫る9条の危機~これからの私たちの課題~」と題して講演されました。その要旨を3回に分けてご紹介しています。今回は2回目。
梅田章二弁護士 ②

 次に解釈改憲の動きにも注意していく必要がある。一番の問題は集団的自衛権の問題だ。集団的自衛権の従来の政府見解は、「個別的自衛権は行使できる。但し、国連憲章の制約はある。集団的自衛権は国際法上保有していても、憲法上その行使は禁止されている」というものだ。集団的自衛権とは仮想敵国を作って軍事同盟を結び対抗しようというもので、果たしてこれが権利なのか。国連創設は軍事同盟をなくすことが目的であった。集団的自衛権が入り込むのはおかしいことになる。これは国連憲章を作る時に安全保障理事会で、ある国に拒否権が与えられると国連が動かないことになると困るので、集団的自衛権を入れて欲しいとアメリカが要求したために出来たものだ。だから集団的自衛権は権利ではなく軍事同盟だ。日本政府が集団的自衛権を肯定する論理に「国連憲章に書かれている」というが、そもそも国際社会ではおかしな制度だと理解する必要がある。
 日本は長年、集団的自衛権は行使できないという建前できた。しかし、これを外せという要求が度々アメリカから出てきた。安倍首相が次の4つの類型は集団的自衛権を認めるべきではないかと提起して、「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」に諮問し、4類型の検討をした。08年6月にその結果を報告している。4類型とは、①公海における米艦船の防護、②米国に向かうかもしれない弾道ミサイルの迎撃、③国際的な平和活動における武器使用、④同じ国連PKO等に参加している他国の活動に対する後方支援であるが、懇談会は集団的自衛権行使を認める結論を出している。憲法9条が禁止しているのは、個別国家としての日本が行う武力行使で、国連等による集団安全保障やPKOとは次元が違い、集団安全保障への参加は憲法9条で禁止されないとしている。
 これは民主党政権になっても同じ。10年8月には、「新たな時代の安全保障と防衛力に関する懇談会」の報告を作った。そこでは、日米関係を損なわない、国際的な活動での集団的自衛権を認める、国際平和協力活動に関する恒久法を持つことが極めて重要としている。自衛隊が海外で武力行使できるようにする、そのために憲法9条の解釈を変えていこうという動きはここまで来ている。
 日本は憲法9条とは別に、「宇宙の平和利用」「武器輸出3原則」「非核3原則」という平和的なシステムを作ってきた。これは9条を持つ日本という平和国家を制度的にしっかり支えるものだが、それが次から次へと覆されている現状がある。
 69年に国会決議で宇宙の利用は平和目的に限るとし、その中身は非軍事と非核であるとされた。この2年前に宇宙条約が出来て、それを受けての決議だったが、宇宙条約は宇宙の軍事利用までは否定していなかった。日本は徹底した平和利用だったが、08年5月に宇宙基本法を作り、69年の国会決議を撤回し、軍事目的利用も可能となった。その理由は、アメリカと共同開発をしているミサイル防衛(MD)システムではどうしても人工衛星との連携が必要となり、インド洋、イラクに派遣した自衛隊と大量の情報の高速での交信が必要だった。さらに偵察衛星を作る要請があって宇宙の軍事利用が行われていくことになった。三菱重工などの軍需産業からの要請もあった。現在の問題は「宇宙航空研究開発機構(JAXA)」の業務の「平和の目的に限り行う」という条項を削除する動きが本格化していることだ。
 もうひとつに「武器輸出3原則」の骨抜きがある。67年、佐藤内閣の時に「共産圏諸国、国連決議で武器の輸出が禁止されている国、国際紛争の当事国またはそのおそれのある国への輸出を禁止する」とした。76年、三木内閣当時に前進し、「3原則地域に加えて、3原則対象地域以外の地域であっても武器の輸出は慎むとし、さらに武器製造・管理設備は武器に準ずる」とした。平和国家として、紛争を助長することになる武器輸出はしないという原則が確立した。しかし、これが後退する。中曽根内閣で米軍向けの武器技術の供与を認め、小泉内閣で米国とのMDシステムの共同開発を認め、そして昨年12月、野田内閣は閣議決定で、これまでの個別的例外措置から、包括的例外措置へと進んだ。これは国際貢献・国際協力という名の下であれば武器の海外移転を認め、武器の国際共同開発を米国以外にも認めるというものだ。しかも、国会の承認は必要なしで、政府の判断で出来るとなっている。当面はMDを念頭においていると言われる。迎撃ミサイルSM3は日米共同開発でヨーロッパに配備するためのものではないかと言われる。最近の精密兵器の開発は国際共同開発になっている。日本経団連も5000社の防衛産業の国際競争力の強化のために「武器輸出3原則」の解除を求めていた。このような経過で「武器輸出3原則」は骨抜きにされてしまっている。
 以上の動きの背景は、「安保と自衛隊をめぐる環境の変化と9条の危機」という観点から見ると、96年に「橋本・クリントンの日米安保共同宣言」があった。これは「極東からアジア太平洋地域の平和と安全」ということで、安保再定義ではないかとの議論になった。それを受けて97年「新ガイドライン」が作られた。自衛隊の役割は「アメリカ軍の後方支援」という日本の役割を明確に打ち出した。さらにそれを受けて99年に「周辺事態法」が作られ、具体的に「米軍の後方支援」を明確にした。01年の「9.11同時多発テロ事件」を契機にテロとの戦いが打ち上げられ、テロ特措法、インド洋への海上自衛隊の派遣、イラク特措法、武力攻撃事態法、国民保護法などが矢継ぎ早に立法化されていく。同時にこの頃は日本も「9条を守れ」「自衛隊の海外派兵反対」の運動も大きく盛り上がった時代だった。(つづく)

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【九条噺】

 シューベルトやブラームスの子守唄などと比べれば、日本の子守唄は概して淋しく哀調をおびている。それは、前者が比較的恵まれた家庭を対象に作られたのに対して、日本の場合は貧しい人々の辛さや哀しさに思いを寄せたものが多いからだろう▼例えば「島原の子守唄」。「おどみゃ島原の/おどみゃ島原の梨の木育ちよ・・・・はよ寝ろ泣かんで/おろろんばい/鬼の池ん久助どんのつれんこらるばい」(宮崎康平作詞作曲)▼かつて長崎県の島原周辺で、貧苦にあえぐ農家の娘たちが中国や東南アジアの娼館に売られていった。歌に出てくる「鬼の池(地名)の久助」は娘たちを売りとばすことを生業とした、つまり女衒(ぜげん)である。娘たちは、島原半島の口之津港から三池炭鉱の石炭を運ぶ大型貨物船の船底に詰め込まれて運ばれた。娘たちの行く先にはそれこそ地獄のような日々が待ち受けていたに違いない▼一方、この大型貨物船に石炭を積み込む作業をしたのは鹿児島県の与論島の人々だ。かつての与論島は「極貧の島」で、旱魃や再三の疫病流行で餓死者が続出し、死者を野に山積みで放置した時期すらあったと聞く。そんな島の人々が大挙して島原半島にわたり、賃金すら満足にもらえない石炭船積みの激務に従事したのは、ただ食事が何とか確保されて餓死だけは避けられたからだという。何とも悲しい話だが、しかしこれもまた日本の近代化の一断面なのである。(佐)

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当会呼びかけ人・森川隆之さんが和歌山市文化賞を受賞

 和歌山市は、和歌山の自然や歴史を題材に新しいふるさとの歌づくりなど、長年にわたる音楽文化の振興に対する功績は多大であるとして、11年度の「和歌山市文化賞」を当会呼びかけ人の森川隆之さん(和歌山大学名誉教授)に贈りました。

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一院制議連が改憲案の今国会提出目指す

 3月7日時事通信は、「超党派(民主・自民・公明・みんななど)の『衆参対等統合一院制国会実現議員連盟』(会長・衛藤衆院副議長)は7日、衆院議員会館で役員会を開き、国会を一院制とする憲法改正原案を今国会に提出する方針を決めた。議連原案によると、国会を衆参両院で構成することを定めた憲法42条を『国会は、一院で構成する』と改める。改憲原案の発議には衆院で100人以上、参院では50人以上の賛成が必要。衛藤氏によると、賛同する衆院議員129人の署名が集まっており、議連は衆院への原案提出を目指す」と報じました。
 日本の二院制は、同じ議案を別の時期に異なる選挙制度で選ばれた二院で議論することで、より国民の民意を反映させることができる民主的なチェック機構として積極的な意義を持つものです。
 「一院制」案は、衆院・参院の〝ねじれ〟で、国会審議が停滞し、「二大政党」政治がうまく機能しない状態を、民意を無視して強行突破しようというものだと言わなければならないのではないでしょうか。

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維新の会「船中八策」原案、改憲も盛り込む

 3月10日朝日新聞は、「大阪維新の会(代表・橋下徹大阪市長)は10日、衆院選向けの政策集『船中八策』原案を公表した。24日開講の維新政治塾で議論し、成案をまとめる方針。維新の国政進出への意欲をにじませた。原案は、参院廃止も視野に入れた国会改革など憲法改正も盛り込んだ」と報じています。
 原案の「外交・防衛」では、「憲法9条についての国民投票の結果で国際貢献のあり方が決まる」「日米同盟を基軸」「日米豪で太平洋を守る」などが、「憲法改正」では、「憲法改正要件を3分の2から2分の1に緩和」「首相公選制」「参議院の廃止も視野に入れた抜本的改革」「衆議院の優越性強化」が盛り込まれています。
 憲法9条については国民投票に委ね、維新の会としての政策を出さず中立的な立場を装っていますが、2月24日に橋下市長は「9条は他人を助ける際に嫌なこと、危険なことはやらないという価値観。国民が9条を選ぶなら僕は別のところに住もうと思う」と述べたように、9条改憲が、その立場であることは明らかではないでしょうか。

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(2012年3月24日入力)
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