次の大きな変化は05年の「日米同盟・未来のための変革と再編」だ。これは誰によって作られたかというと「日米安全保障協議委員会」いわゆる「2+2」だ。まさに日本の国の将来を4人で決めたのであり、国会や政府で決めた訳ではない。安保を極東からアジア太平洋に広げた「橋本・クリントン共同宣言」をさらに進め、グローバル安保に広げるものだ。米軍と自衛隊の役割・任務は、ひとつは日本の防衛及び周辺事態への対応、今ひとつは国際的な安全保障環境の改善のための取組みだ。その任務を達成するために、米軍と自衛隊は一緒に活動する。米軍基地や自衛隊基地を一緒に使う。座間の米陸軍司令部に自衛隊中央即応集団司令部を同居させる。BMDは共同で開発するなど、米軍と自衛隊は一体的に世界的な情勢に対応するという、こんな大変なことが国民が知らないまま進められている。これを実現するために日本の防衛政策は変わっていく。従来の日本の防衛政策は「基盤的防衛力構想」と言い、「専守防衛」は外から攻められた時に対抗するものだから、日本に攻め込まれない態勢を作るという構造の防衛政策であった。ところが04年の防衛大綱で「基盤的防衛力構想を引き継ぎながら、新たな脅威や多様な事態に対応できるように、即応性、機動性、柔軟性、多目的性を備える」と、機動的に対応できるように陸海空の統合幕僚監部を設置し、どこへでも何時でも移動できる海兵隊のような中央即応集団(CRF)を編成した。防衛白書によれば07年に創設されたCRFは要請があれば何時でも出て行ける、そういう編成がされている。06年に自衛隊法を改正して、専守防衛に加えて国際社会の平和と安全の維持を本来任務に格上げした。これ以前は自衛隊が海外で活動する法的根拠がなかったが、これで海外業務は正式に任務になった。同時に防衛庁から防衛省に格上げが行われた。自民党は恒久派兵法の立法化に向けて動き出した。
そこで、09年9月に民主党政権が誕生する。鳩山内閣は普天間基地の県外・国外移転、対等な日米関係、東アジア共同体を打ち出したが、これは従来の日米同盟に異を唱える政策で、我々は出来るかと期待したが出来なかった。東アジア共同体構想は正面からアメリカに喧嘩を売る話だ。アメリカは常に太平洋全体で考える発想だから、東アジアで共同体を作るなんてとんでもないということだ。鳩山内閣はものの見事喧嘩に負けてしまう。その後に続く菅内閣はTPPを承認しようとし、自民党の防衛政策を手の平を返すように急速に進めることになる。そして「新たな時代の安全保障と防衛力に関する懇談会」を作り、10年8月に報告書が発表された。それに基づいた新しい現在の「防衛大綱」が作られた。ここで新しく出てくる言葉は「基盤的防衛力構想によることなく、動的防衛力構想に変える」、つまり従来の「基盤的防衛力構想」を捨てるということだ。「動的防衛力構想」とは徹底した監視能力・偵察能力を強めるための情報収集、人工衛星の重視、イージス艦の増強、外へ出て調べて即応できる態勢、シームレス(連続的)に対応できる態勢にするということだ。「防衛力の存在」よりも「防衛力の運用能力」という国家意思を表明する防衛政策に変えた。さらに「秘密保全法」が出てきた。前に「国家機密法」が出てきたことがあるが、それ以上に悪い。対象が「日本の防衛・安全」に加えて「公共の安全」まで広げられている。
野田内閣はこのように新防衛政策で「動的防衛力構想」を打ち出し、「武器輸出3原則」を緩和し、スピードは遅いが足の長い、敵地攻撃に向いたF35を次期主力戦闘機に採用した。また、PKOでの武器使用を緩和し、「自衛隊の宿営地外で活動する民間人」に拡大しようとしている。
このように、憲法9条の明文改憲、解釈改憲や安全保障を取り巻く状況から言うと、9条は追い詰められている、外堀が次々と埋められている。「こういう状況だから仕方がない」というところに持って行こうとする状況がある。「事実改憲」とでも言うべき既成事実を作ることがあると思う。今後の見通しとしては、今年1月にアメリカの国防戦略の見直しがあり、「グローバルな指導力を持続する21世紀の国防における優先課題」が発表され、アジア太平洋を重視する政策、中国との軍事的緊張関係に転換していく。日本の防衛政策もこれに合うように修正していくと思われる。これも9条の危機につながっていくと思う。イランで何かがあれば、ホルムズ海峡に自衛隊が派遣されることになり、これにも注目する必要がある。
このような状況の中で、私たちはどのようにしていかねばならないのか。まず、何と言っても憲法の明文改憲は絶対に許さないことだ。どんなに解釈改憲が進もうが、既成事実が進もうが、憲法9条がある限り歯止めになるということに確信を持っていい。この点は絶対に譲ってはならない。「九条の会」の運動を強めていくべきだ。2つ目は、中国やロシアを仮想敵国とする日米同盟関係を転換させることだ。PKOや国際協力は、そんなものはすべきでないという議論は通用しない。憲法9条の立場で、明白な国連決議に基づき、日本は非軍事の協力に徹することだ。同時に国連改革も提案する。自衛隊の任務は災害救助活動を最重点にするとして、再編成すべきだと提案していくことも必要だ。市民社会からの平和の発信として、99年ハーグ市民集会、16年バンクーバー平和市民会議、08年9条世界会議などのような市民レベルの国境を越えた平和交流も必要だ。平和教育の強化も必要。最後に、平和の問題は格差社会、貧困社会と裏腹で、この問題にきちんと取り組むことが9条への脅威をなくしていくので、25条との連携を強めていくべきではないかと思う。(おわり)
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【九条噺】
沖縄の首里城跡地には2度行った。最初の見学で今も記憶に残っているのは58年に再建されたという「守礼の門」だけである。それまでは切手や写真で見ただけなのに、一瞬、なぜか懐かしいような気持ちにとらわれたのだった。2度目は大がかりに再建・整備された直後。壮大で華々しい姿が再現されたが、その昔、創建に伴う民の犠牲もまた想像を絶するほど大きかったろうと思う▼この首里城に地下壕があり、沖縄戦を指揮した旧陸軍第32軍司令部がおかれていたということは最近まで知らなかった。琉球新報によれば、この地下壕は内部崩落が激しく危険なため、沖縄県が入口に説明板を設置することになった。文章は有識者らによる検討委員会でつくり、昨年11月には県側も含め全委員一致で決まったという。ところが仲井真知事が突然、いったん決めた文章から「慰安婦」と「日本軍による住民虐殺」を削除した。知事はそれを検討委員会にも告げず、一方的に決めたのである▼検討委員会は「史実にもとづく記述にこだわって、研究者らが記録や証言を数多く集めてつくった文書なのに、知事は検討委員会に一言の相談もなく削除を決めた。あまりにも乱暴だ」と批判。文言復活を求めているが知事は聞く耳をもたぬという▼ことは沖縄戦の本質にもかかわる大事なこと。〝基地問題なら知事の座を左右するが歴史観なら本音を言っても〟というようなことでもないと思うが、さて。(佐)
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読売新聞憲法世論調査結果
警戒! 憲法改正賛成54%、3年ぶり半数超
3月18日、読売新聞は「読売新聞社の全国世論調査(2月25~26日実施、面接方式)で、憲法を『改正する方がよい』と答えた人は54%となり、昨年9月調査(43%)から11ポイント上昇した。改正賛成派が半数を超えたのは09年(52%)以来で3年ぶり。『改正しない方がよい』は30%(昨年39%)に下がった」と報じました。
改憲派を自認する読売新聞は社説で、「憲法改正を求める声は、04年に65%に上昇し、その後、下降傾向をたどっていた。それが、再び大きく持ち直した。憲法改正賛成派は54%と、昨年9月の前回調査から11ポイントも跳ね上がった」と喜んでいます。
賛成理由(複数回答あり)を見ると、「時代の変化に憲法の解釈や運用だけで対応すると混乱する」が54%、「国際貢献など今の憲法では対応できない新たな問題が生じている」33%と、必ずしも自衛権や自衛隊の明文化(28%)より多い訳ではありません。また、9条については、「憲法第9条を厳密に守り、解釈や運用では対応しない」13%、「これまで通り、解釈や運用で対応する」39%、「解釈や運用で対応するのは限界なので、憲法第9条を改正する」39%と、9条明文改憲は昨年9月に比べて7ポイント増えていますが、まだ3分の1強です。
しかし、この状況は東日本大震災、福島原発事故などの影響もあるかとは思われますが、「九条の会」の伸びの鈍化、会員の高齢化、活動の停滞もあるのではないでしょうか。「知らない間に9条改憲の危機迫る」といったことにならないように、今一度エンジンをかけ直してがんばる時ではないでしょうか。
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