「九条の会・わかやま」 189号を発行(2012年4月28日付)

 189号が4月28日付で発行されました。1面は、「すさみ九条の会」結成!、知る権利のために仕事をするのがジャーナリスト(広河 隆一氏 ③ )、九条噺、2面は、当会呼びかけ人・中西重裕さん LRTを中心とした地域づくり提案、5・19県民のつどい 5月の風に We Love 憲法   です。

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[本文から]

「すさみ九条の会」結成!

 「すさみ九条の会」は、3月初めから、92歳の村上宗一さんが発起人になって結成準備を始めました。3月末に、元収入役、元教育長、住職、遺族会役員など多彩な顔ぶれの23人が呼びかけ人となり、結成集会への参加と会への加入を呼びかけました。
 4月21日、すさみ町総合センターで、51人の参加で結成集会が開かれました。
 最初に、坂本文博さん(憲法九条を守る和歌山県民の会代表委員)によるミニ講演が行われ、坂本さんは、橋下大阪市長が憲法9条をねじ曲げて攻撃し、改悪しようとしていること、国会の憲法審査会が改憲をめざして動き出していることなど、具体的な例を上げて改憲の動きの危険性を指摘しました。そして、9条が果してきた役割や、九条の会を始めとする改憲を許さない運動の大切さを強調されました。
 続いて、事務局からの報告と提案。04年の井上ひさしさんらの「九条の会」のアピール、05年の「九条の会・わかやま」のよびかけを受けて、県下各地に九条の会が結成され、すさみ町でも数年前から九条の会結成への模索があり、今年に入って具体的に取り組みが始まり、今日の結成に至ったことを報告しました。会の名前や、役員体制、財政などの「申合せ」を提案し、承認されました。当面の活動として、戦争体験記を編集・発行すること、第2次世界大戦のすさみでの事実を掘り起し、まとめることなどを決めました。そして、代表・世話人・事務局を選出しました。
 最後に、田辺市の片岩春夫さんの素晴らしい歌(長崎の鐘・原爆許すまじ・ガード下のくつみがき・再会など)と御坊市の原啓司さんのいさましい和太鼓演奏をたっぷりと鑑賞しました。(加藤元昭さんより)

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知る権利のために仕事をするのがジャーナリスト

3月20日、和歌山ビック愛で「広河隆一氏講演会&写真展」が開催され、フォトジャーナリスト・広河隆一氏が「子どもたちをどう守るか? ~パレスチナ・チェルノブイリ・フクシマ~」と題し、映像を交えて講演をされました。その要旨を、やや断片的になりますが、3回に分けてご紹介しています。今回は最終回。
広河 隆一氏 ③

 チェルノブイリの事故後、60km離れたベラルーシの母親全員の母乳からセシウムとストロンチウムが出てきた。原因は食べ物だ。食べ物は生産地を2、3回移動させると、どこのものかが判らなくなる。それが母親を通じて乳児に障害を起す。日本はきちんとした対策を取らなかったので、甲状腺癌が増えていく可能性がある。甲状腺癌は早期発見で助かるが、福島では早期のスクリーニング(医学的な選別)は徹底的には行われなかった。測って放射性ヨウ素がどれぐらいあったのかが判る時期に調査をせず、今になって調査して、心配ないから2年毎に判ればいいということになっている。もっと頻繁にやらないと早期発見につながらない。
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 チェルノブイリの事故の後に「チェルノブイリ子ども基金」という運動を始めた。基金で作った施設に入るのは全員甲状腺癌の手術を受けた子どもたちだ。医者に出来ることはたくさんあるが、医者には出来ないこともある。それは、子どもたちに元気を与えることや安全な場所で安全な空気の中でストレスのない暮らし、そして楽しいことをさせ、栄養のあるものを食べさせることで、身体の中の抵抗力・免疫力を高め、病気の発症を遅らせる、止めるということが必要だ。福島の子どもたちに今必要なのはそういうことだが、福島では子どもたちを他県に出すということを県は止めている。我々は「未来の福島子ども基金」で、沖縄に保養施設を作ろうという運動をしている。福島の子どもは27万人、出来るだけ多くの子どもたちが頻繁に利用できるような施設が必要で、本当は国がやらなければならない仕事だが、腰を上げるまで待っておれない。すぐにでも取り掛からなければならない。子どもの今の1年、1カ月がものすごく大事だ。
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 ピューリッツァー賞の選考はコロンビア大学で行っている。彼らは「ジャーナリストの仕事は被写体が危険であっても現場には一切手を出さない。例え、目の前で殺されかけようとしていても、シャッターを押して伝えるのがジャーナリストの仕事だ」と言ったりする。日本でもそのように言う人の方が多いぐらいだ。だが、私はジャーナリストとは何をする人かと考える。昔、チェルノブイリで子どもたちに「ジャーナリストとはどんな仕事と思うか」と聞いたことがある。大手メディアの人も答えられないだろう。考えたことがないからだ。子どもたちに「世界中の全ての人間にひとつの権利がある。それは生きる権利だ。それを全うするのは非常に大変で、自分たちの生きる権利を守るために、自分たちの代表を自分たちの意思で決めるという選挙の制度があったり、政府が作る法に先んじる憲法があったり、そういうもので自分たちを守ろうとする。9条はその根幹をなすひとつだ。だが、そういうふうにしても自分たちの政府がいつの間にか戦争の方向に行ってしまったり、自分たちの生きる権利を奪おうとするかもしれない。その時に生きる権利を全うするために一番必要なものは何かというと、それは知る権利なのだ。政府が何を隠して戦争に行こうとしているかを知ることだ。知る権利はみんなが持っているが、みんなが行使することは難しい。だから、その仕事をするのがジャーナリストだ」と説明したことがある。「だから、我々ジャーナリストは相手が誰であろうが、対等に物を言って、軍がここは危険だから立ち入るなと言うところには、立ち入る義務がある。自分の背中を押しているのは所属会社ではなく、人々の生きる権利なのだ」「知る権利が全うされない時に、危険な原発とそこから出される放射能の被害の状態を隠すことが行われている。その結果あなたたちは病気になっている。そういうことが起らないようにする、そのために働くのがジャーナリストだ」と話した。基本的には人々の生きる権利のために行っている仕事なのだ。だったら目の前で子どもが殺されようとしている時に、助けてはいけないという恐ろしいジャーナリストは何様のつもりだ。神から与えられた特権などあるはずがない。だが、そのような気持ちを持っているのが今のマスメディアであり、世界で誤った報道をするジャーナリズムを育ててきたと思う。福島原発事故の時も、「ジャーナリストである前に日本国民だ」と、日本政府の意図に従ってやろうという内規を作ったところもある。「ジャーナリストである前に人間だ」というのが正解だ。
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 車に乗って泥道を走っている時、フロントガラスが泥だらけになることがある。ワイパーが壊れて前が見えない。その時「心配するな。アクセルを踏め」という囁き声が聞こえてくる。今の日本はそのような状況だが、その中でアクセルを踏んだらどうなるのか。ワイパーの役目をするのは歴史で、かつてこのような状態で戦争が起ったということをちゃんと伝える仕事をする人たち、思想家もそうだが、そのひとりがジャーナリストだ。車の前に子どもがいるのを伝えるのも、もう少し行ったら崖があり、そのまま進めば落ちてしまうことを知らせるのもジャーナリストの仕事だ。教師は教師で、医者は医者で、弁護士は弁護士で、いろんな人たちは、自分も生きる権利を持ったひとりの人間なんだという立場に立つ必要がある。今、ワイパーは機能しなくなっている。福島原発事故の後のメディアの惨憺たる有様、大本営発表と言われたが、国の言うことだけを繰り返すだけのジャーナリズムは大問題だと言わざるを得ない。(おわり)

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【九条噺】

 『なぜ国歌など/ものものしくうたう必要がありましょう/おおかたは侵略の血でよごれ/腹黒の過去を隠しもちながら/口を拭って起立して/直立不動でうたわなければならないか/ 私は立たない 座っています』(「鄙ぶりの唄」)▼まるで茨木のり子が今の大阪に憤っているかのようだ。昨年、大阪府で君が代の起立斉唱を教職員に義務づける条例ができた。今年の卒業式では校長が教頭らに指示して教員の口元を監視させ、疑わしい職員は事情聴取の上で処分も検討するという学校も出現した。橋下市長は「守るべきルール」として当然視するが、そもそも「内心の自由」まで踏みにじって何を守るというのか。教頭らが卒業生そっちのけで教員の口元チェックにいそしむ姿などもはや滑稽で嗤うしかない。そのうち「読唇術」が教頭試験の必修科目になるのかも▼橋下市長は「職員アンケート調査」においても「特定の政治家を応援する活動に参加したことがあるか」などの問いに答えるよう全職員に命じ、嘘をつけば処分すると脅した。思想・良心の自由を定めた憲法になど目もくれない。さらに新規採用市職員への発令式では「皆さんは国民に対して命令する立場に立つ」「5階にある市長室を常に意識して下さい」などと挨拶した。「全体の奉仕者」であるはずの公務員が大阪市ではひたすら上を見上げ、住民には命令を下すのだろうか▼メディアの後押しも得て〝ハシズム台頭!〟なんてとても気味が悪いです。(佐)

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当会呼びかけ人・中西重裕さん
LRTを中心とした地域づくり提案

 当会呼びかけ人・中西重裕さんが「和歌山市にLRT導入を目指す会」を結成。LRT(ライト・レール・トランジット)とは、次世代型路面電車を中心とした交通の仕組みで、自動車の渋滞を減らし、歩く人が過ごしやすい街を目指すものです。中西さんは「LRTを中心とした地域づくりを考えています。ゆったりとした環境にやさしい、高齢者や体が不自由な人にとってもやさしいまちを実現できるような提案を続けたいと思っています」と語っておられます。
会のHP http://ameblo.jp/wakayamalrt/

   (富山市のLRT)
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5・19県民のつどい
5月の風に We Love 憲法

5月19日(土)開場 13:00 開会 13:30
プラザホープ 4F 大ホール
講演 「憲法をめぐる攻防の新段階」
    - 橋下・維新の会と財界・米国の思惑 -
   森 英樹 氏(名古屋大学名誉教授)

憲法九条を守るわかやま県民の会
TEL:073-436-3520

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(2012年4月27日入力)
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