「九条の会・わかやま」 194号を発行(2012年6月22日付)

 194号が6月22日付で発行されました。1面は、5月の風にWe Love 憲法 橋下氏は真の「日和見主義」(名古屋大学名誉教授・森英樹氏 B)、「田辺9条の会」第8回総会&講演会、今 大阪では何が?(大阪歴史教育者協議会委員長・小牧薫氏)、九条噺、 2面は、各派から続々改憲案 この異常、3面は、自民党の憲法改正草案の問題点A  です。


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[本文から]

5月の風に We Love 憲法
橋下氏は真の「日和見主義」


 5月19日、プラザホープ(和歌山市)で「憲法9条を守るわかやま県民の会」が「5・19県民のつどい」を200人の参加のもとで開催し、名古屋大学名誉教授・森英樹氏が「憲法をめぐる攻防の新段階 − 橋下・維新の会と財界・米国の思惑 −」と題して講演をされました。その要旨を4回に分けてご紹介しています。今回は3回目。

名古屋大学名誉教授・森英樹氏 B

 橋下氏の手法は、どうすれば支持が調達できるか、何で民意を調達できるかだけだ。そのために「あれこれ手を打ってみる」「下手な鉄砲も数撃ちゃ当る」「賞味期限が過ぎると、次」という「手を替え品を替え」方式だ。大阪の大衆文化的な「乗り」を十分に利用しているに過ぎない。橋下氏の政策は確かに多くは右的であるが、判断基準は民意の調達が何によって出来るかなので、内容上、首尾一貫した思想性は乏しい。その意味では文字通り「その日の日和で行動を決める」という真の意味での「日和見主義」だ。自分の信念に固執する名古屋市長は日和を見ないので、橋下氏とは距離がある。ただ、橋下氏の政策の振幅の酷さの点では、このところ「脱原発依存」を掲げ、それなりに評価されている。これも民意の多数派が今どこにいるのかを彼なりに見極めた上で、今は「脱原発依存」で多数が形成できるという読みでやっていると思われる。世論が橋下を変える、世論が橋下をダメにするという側面を見落としてはならない。論理はどんどん変わり、「脱原発依存」も最近では最後は選挙で決めると主張している。彼は「原発の安全は政治が判断してはいけない」と言っていたのに、選挙という多数決政治で判断できるという矛盾になる。大飯原発再稼働問題でも最近は、電力不足を早くも前提にして、市民に対して我慢できなければ再稼働だと、一種の恫喝発言に切り替えてきた。
 彼は大阪府知事に立候補する時に出した公約「4つのトライと17の重点政策」にはほとんど手を付けず、マスメディアが関心を持つであろう様々な施策を打ち出し、どんどん失敗していった。恐れることはないが、世間の「空気」を読んでここを訴えれば国民はこちらを向くということを見抜く能力は長けたものがある。彼が言えば振り向くという「空気」そのものを変えて、彼への関心を薄れさせれば「橋下劇場」は終わりを遂げて橋下現象も終焉(終演)すると思う。ファシズムはヒトラーがいたという側面とヒトラーを熱狂的に支持する市民があったからで、ファシズムはそれを支える社会的熱狂がなければ絶対に維持できない。この情報化社会だから、市民の関心を引き続けることを自転車操業のようにしなければならない。
 「空気」の話としては、東アジアの軍事情勢の「緊張」が改憲理由にもなっている。震災以外に、最近はこれにも便乗してきた。「中国が危ない。北朝鮮が暴発する。その時に憲法のように丸腰の話し合いだけでいいのか」という俗論に伴う危機感が憲法9条の精神を揺さぶって、そういう「空気」になりつつある。ここには「中国人や朝鮮人は何をしでかすか分らない」という、ある種の民族的差別意識が根底に流れていることを見抜いておく必要がある。つい先ほどインドがミサイルの実験をした時は誰も何も言わない。朝鮮や中国が絡むと、ものすごい身の構え方をするという、この落差は戦前から培われた差別意識が微妙に動員されていることを忘れてはならない。一方で軍事緊張が現実に高まっていることも事実無根とは言い切れない。04年以後、中国は海軍を増強して海外展開を想定していて、自国防衛だけに限定されない。そこに10年9月に尖閣諸島で漁船衝突事件が起り、ナショナリズムに火がつけられ、映像の流出で秘密保全法という新たな軍事立法が今策定されようとするそんな流れになっている。昨年1月には中国が初の空母の保有を言明した。空母は理屈の上で絶対に自国防衛用ではない。北朝鮮の核政策は冒険的で挑発的であるのは間違いなく、批判されるべきだが、問題はそれが日本の軍事力の拡大と改憲に絶好の口実を与えつつあることだ。直近のミサイル打ち上げ失敗に関って今後どうなるかは予断を許さないが、問題はこれに対する日本の対応が国民に知らされていることと実際とがかなり違うことだ。異常・過剰の一言だ。自衛隊に迎撃態勢を取らせ、テレビを使った社会的動員は新防衛計画大綱路線をそのままなぞった予行演習だった。MDシステムが如何に大事かという宣伝には絶好のチャンスであった。離島にたくさんの自衛隊員を上陸させ、海上自衛隊はSM3を搭載したイージス艦を日本海と沖縄周辺に展開した。メディアが醸し出した「危ない」という「空気」だけは出来た。そして、いざという時のために憲法を変えておく必要があるという国民の「空気」を作り出しつつあるように思う。(つづく)

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「田辺9条の会」第8回総会&講演会開催

 「田辺9条の会」第8回総会&講演会が6月3日、田辺市・東コミュニティーセンターに30名が出席して開かれました。総会では11年度活動報告・会計報告が行われ、「事務局の増員」や「今、必要な活動を捉えた方針立案」などの意見が寄せられました。
 事務局から、@地域・市民への広がりの追求 A周辺の9条の会や市民運動との連携 B「たなべ9条通信」の定期的発行 C学習会の企画と開催 D平和ツアーの企画、という活動計画を提案、承認されました。代表世話人に木川田道子さん、田所顕平さん(事務局)が選出されました。  続いて大阪歴史教育者協議会委員長・小牧薫さんが「今、大阪では、何が?」と題して講演をされました。(講演要旨別掲)(田所顕平さんより)

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今、大阪では、何が?
大阪歴史教育者協議会委員長・小牧 薫 氏

 今、大阪では、橋下「維新の会」によるハシズムが進行している。橋下市長は「強い力で改革」を掲げ、昨年6月には「独裁は必要」と発言した。橋下市長を持ち上げるメディア、「行列のできる法律相談所」「たかじんのそこまで言って委員会」でタレントと親交を深め、「橋下ヨイショ組」の行列状態がつくられ、口汚い発言を持ち上げ続けている。そんな中、「ウソとハッタリ」で様子を見て、その後、軌道修正をする、これが彼のやり方の基本だ。
 高い生活保護率・失業率・就学援助受給率・犯罪率という貧困度の高い大阪の現実の中で、府市民の生活の苦しみに吉本のイジメ笑いを同調させ、公務員バッシングが展開された。「独裁的改革こそが必要ではないか」「独裁政治、イエスかノーか」と迫って、府市民の期待集めが企てられた。その中で府市民の中に漠然とした期待感を抱かせたのが「大阪都構想」だ。「民主主義にも拘らず、貧困が独裁を生み出す」、これが今日の大阪の状況である。
 今、給与カット・思想調査・隠し撮りなど職員や教員は、これ以上ないという攻撃にさらされ、「日の丸・君が代強制」「教育行政基本条例」「府立学校条例」「職員基本条例」など、統制と教育への政治権力の介入、教職員に絶対服従を強い、その牙は「公務員は国民に命令する立場」という発言に象徴されるように、府市民に向けられ、その視点は国民に向けられている。ここに大阪にとどまらない国民全体の問題である所以がある。  こうした暴力性は、文化・芸術の切り捨てにも直結する。文楽、センチュリー交響楽団などへの補助金削減と切捨て、普通科を中心とした府立高校の統廃合と私立校への補助金の「効率性」重視の配分への転換は低所得者層の子どもたちの高校進学窓口を縮小し、ますます貧困の中に陥れることにつながる。
 橋下市長らは国政進出を狙っているが、それに露骨に擦り寄っているのが公明と自民だ。「受益と負担の明確化」を唱え弱者切捨てを企て、「産業淘汰」「衰退産業から成長産業への人材移動」「TPP推進」「労働市場の流動化と自由化」「フラットタックス=超簡素な税制」「消費税率アップ」、改憲発議を3分の2から過半数にして改憲の容易化を図る、これらは擦り寄る人たちと同一路線である。それらを実現するために、橋下市長は「決定できる民主主義」と言い、「選挙で大きな方向性・価値観を示し、それが支持されたら、ある種の白紙委任となる」と言う。これが「国民に命令する立場=独裁」である。その「大きな方向性・価値観」は、日米同盟の強化と新自由主義政策推進によりアジアに冠たる日本・大阪をめざすと標榜する。
 今、大阪で起っている問題は全国の問題でもある。貧困に立ち向かい、抜け出すためには、貧困の原因である新自由主義的秩序の本質を見抜き、騙されない力量をつけることが必要だ。日本国憲法の平和的民主的条項を基礎に、全国的な運動の構築が求められている。

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【九条噺】

 沖縄復帰40年である。72年5月15日、那覇市民会館では政府主催の「沖縄復帰式典」が行われ、その道ひとつ隔たった与儀公園では土砂降りの雨の中、1万人余の県民が集り、「復帰に抗議する県民総決起大会」が行われた。雨は、「基地のない平和な沖縄」という切なる願いを踏みにじられた県民の悲憤の涙≠セと地元紙も書いた▼筆者は復帰前後のひと月近く那覇にいた。人々は穏やかで、行く先々で多くの人たちと仲良くなった。まるで異なる時間が流れているような戸惑いもあったが、やがてここではこうなのだ≠ニおおらかに受け止めるようにした。で、15日の集会も例によって♀J始時間はかなり遅れた。しかし、集会が始まると私語は殆どなく、万余の人々が集中し、デモ行進もフランス方式で道一杯に広がり、絶え間なくシュプレヒコールをあげ、あるいは歌うのである。銃を持つ米軍にも立ち向かってきた、その凛とした姿の一端を垣間見たようで、その記憶は今もあせない▼復帰に伴う通貨切り替え(前日ドルが変動相場制に。1ドル=360円から308円に急落)で地域経済は大混乱。倒産も相次いだ。農連市場をのぞいた。いつもなら陽気に野菜や魚を売り捌くおばあらが店のシートもとらずに地べたに座り込んだり、哀しい顔で真新しい10円硬貨を見つめていたりする。そんなやりきれない光景をみて、為政者への怒りはなお大きくなった。哀しいおばあらの顔は記憶の光景から今も消えない。(佐)

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各派から続々改憲案、この異常

 自民党、みんなの党、たちあがれ日本、一院制議連など、改憲各派による改憲案具体化の動きが加速しています。各派が次々と改憲案とりまとめの動きを見せているのは、改憲原案の審査が可能な憲法審査会が始動したことと無縁ではありません。
 一院制議連は、改憲原案を衆院議長に提出。改憲原案が国会に提出されるのは初めてです。
 9条改正と軍隊の保持が各派の共通項となり、保守・復古、緊急事態法制導入の動きが強まりを見せています。また「決められない政治の打破」を口実に、二院制廃止や首相公選制など統治機構「改革」が前面に出てきていることも特徴です。

※自民党草案は本紙193号、194号をご参照ください。

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自民党の憲法改正草案の問題点A

 自民党は4月27日、新たな憲法改正草案を発表しました。
 9条を「戦争放棄」から「安全保障」に変えて、「自衛」戦争を容認し、「国防軍」という名の軍隊の保持を明文化しています。また、「公益及び公の秩序」を守るためには国民の自由や権利が制約されることを盛り込んだ、人権より秩序優先の極めて問題の大きい改憲案です。
 早稲田大学教授・水島朝穂氏は、ホームページで、その問題点を解説されています。また、日本体育大学准教授・清水雅彦氏の解説「自民党『日本国憲法改正草案』の内容と問題点」での指摘も含めて、それらを分りやすいように一覧表にまとめて、2回に分けてご紹介しています。今回はその2回目(最終)です。

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