「九条の会・わかやま」 204号を発行(2012年10月30日付)

 204号が10月30日付で発行されました。1面は、市民の意思を表明しつづけることしかない(大江健三郎さん②)、原発ゼロの日本へ プルトニウム生産は憲法9条に抵触する(小出裕章さん)、みなべ「九条の会」がピースアピール、九条噺、2面は、国連での核非合法化声明 日本加わらず、日本青年会議所(JC)の憲法草案の問題点①   です。

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[本文から]

市民の意思を表明しつづけることしかない

 「九条の会」は9月29日、「三木睦子さんの志を受けついで 九条の会講演会 ― 今、民主主義が試されるとき」を開催しました。呼びかけ人の大江健三郎、奥平康弘、澤地久枝の3氏が講演されました。講演要旨を「九条の会ニュース164号」から、順にご紹介しています。今回は2回目で、大江健三郎さんの後半部分です。

大江健三郎さん ②

 そこに民主主義があるのか。その民主主義でない政府をどのように揺るがすことができるか。選挙によって打ち崩すことが大きい方法ですが、しかし第2政党の自民党も憲法改正を心がけている人物を総裁に選んでいます。あの政党に原発の全面廃止を期待することはできない。こういう時に私たちはどうするか。それは私たちの市民の意思を表明しつづけることしかない、と私は考えます。そしてこういう九条の会の集会が開かれるということ、このようにたくさんの方が来てくださることに非常に励まされる。
 私が信頼している沖縄のすばらしい作家が、最近の新聞に談話を発表されていました。私はショックを受けました。彼はいちばん苦しいところでがんばっている人ですが、その彼が沖縄で10万を超える大集会が開かれた後に、自分は今どのようにすすんでいいかわからないと言われている。また、ある女性、家庭の主婦の方が、私たちは米軍の基地の中に乗り込んでやろうか、という気持ちさえもったという談話を発表されています。  沖縄の新聞で、そういう絶望的な感じすらする強さの市民や知識人の声を見たのは初めてです。彼らは本当に民主主義の言葉を発している。そして沖縄ではいまオスプレイ――航続時間の長い、そしてたくさんの海兵隊員を乗せることができる、しかし事故が多い――に反対する運動が激しくおこっている、それを無視して、日本政府がオスプレイを実際に働かせることをアメリカ政府に了承している。「私たちはアメリカにモノを言う立場にない」とまで言っている。それが自立した民主主義の国なのか。それを私たちはいま、沖縄の問題としてみていますが、それは日本の国全体の問題、私たちが憲法を考えるときに考えなければいけない問題である。  日本は講和条約を結んで独立するまでに9条をもつ憲法を作った。それは政治家たちが国民のことを考えたからではない。彼らが心配したのは、日本が軍備をもつことは、日本が大きな苦しみを与えた周辺の人々に受け入れられない、ということ。しかし当時は冷戦の時代で、ソビエトに対して軍事的な優位を保つためには、日本の軍隊を無くしてしまうことは困ると大筋で考えている。そこで彼らは沖縄を切り離し、沖縄をアメリカの支配のもとに置いた。大きい基地をつくらせ、核兵器もそのまま、核兵器を積んだ船が自由に出入りできるシステムだった。そして明治維新の直前、日本が独立した国だった沖縄を併合したように、今から40年前におこなわれた沖縄の施政権返還は、もう一度沖縄を自分たちの植民地にして米国に提供するための沖縄再併合であり、その現実がいまある。私の沖縄の友人たちが論じています。
 沖縄のオスプレイに反対するあの大きいデモと、私たちの原発の再稼働に反対する大きい運動、この2つとも憲法にかかわっている。私たちがいま持っている憲法第9条を守りぬく、世界に向かって守り抜く、アメリカに向かって守り抜く、あらゆる国にたいして守り抜くこと。そういうことを私たちは自分たちの問題としておしすすめる必要がある。

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原発ゼロの日本へ
プルトニウム生産は憲法9条に抵触する


 「全国革新懇ニュース10月号・№343」に掲載された京都大学原子炉実験所助教・小出裕章さんのインタビュー記事を抜粋してご紹介します。

小出裕章さん

 日本は米国の属国です。米国は金もうけのために日本に原子力を売りつけ、経済界もひたすら原子力から金をもうけたいと動いてきました。しかし、政府の意見公募でも「即時原発ゼロ」が多数を占めました。首相官邸前には原発再稼働に反対して数多くの人が自分の意思で集まっている。こういう運動が広がるならば原子力をいつか止められると、希望があります。
 私の言う原子力には原子力発電所も、プルトニウムを分離して取り出す再処理工場も、核兵器も含まれています。日本では「原子力の平和利用」が宣伝され、「いいものだ」と多くの国民が信じ込まされてきました。しかし原子力はもともと核です。英語でいうニュークリアであり、原子力発電所をニュークリアパワープラント、核兵器をニュークリアウエポンと呼ぶように、同じものです。
 まず原子力発電所は危険なものです。その事故は放射性物質の放出により、とりかえしのつかない被害を生じさせます。私はそのことを警告し、事故が起きる前に原子力から足を洗うべきだと言い続けてきました。それでも国や電力会社、産業界は「絶対に安全で事故を起こしません」と言い続けてきて、福島で起こしてしまった。原子力発電所は仮に事故を起こさなくても、その使用済み核燃料(核のゴミ)の毒性が10万年、100万年と続きます。すでに日本でつくったその量は広島型原爆がばらまいた毒物の120万発分にのぼります。これを未来の世代は押し付けられることになります。
 もちろん無毒化の研究はこれからも続けなければいけませんが、すでに70年も研究し続けていても、その壁は猛烈に厚くて高い。これが科学の現状ですから、まずは毒物を生み出す行為を一刻も早くやめることが先だと思います。
 また、原子力発電所は核兵器に転用できるプルトニウムを生み出します。いま日本にはそのプルトニウムが45トンあり、長崎型原爆を4000発つくることが可能です。政府は核兵器であろうと、通常兵器であろうと、自衛の範囲であれば憲法に抵触しないというのが方針です。私は核兵器を持つことは戦力不保持などを定める憲法9条に抵触すると考えています。
 さらに私が原子力に反対する根本の理由には差別をなくしたいという思いがあります。
 原子力発電所はその危険性から都会ではなく、過疎地に押しつけられた。また原子力発電所では社会の底辺で苦しむ多くの労働者が働いています。こうした不公平・不公正を少しでも改善したいと思います。

2012年1月11日 初版第1刷発行
発行所 遊絲社 TEL 0743-52-9515
定 価 本体1400円+税

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みなべ「九条の会」がピースアピール

 みなべ「九条の会」は10月25日4時から1時間、ピースアピールを行いました。幟7本、タペストリー5枚をフェンスに立てかけて、アピールしました。そこは四つ角で、人通りも多く、信号で止まった人は、信号が青になるまでタペストリーに見入っていました。

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【九条噺】

 なんと上勝町(徳島県)という、小さな自治体の地域おこしが映画になった。題名は「人生いろどり」。御法川修監督で、出演は藤竜也、吉行和子、富司純子他。料理を引き立てるために器に添える葉っぱなどを「つまもの」というが、上勝町はそのつまものに用いる木の葉を都会の料亭などにネット販売する事業をすすめてきた。この事業を「彩り(いろどり)産業」と称し、それが映画のタイトルにもなった。里山の木の葉を売ろうという発想自体が驚きだが、この商売で今や100人を超えるおばさんたちが一人当たり年に200~250万円も稼ぐというからびっくりする▼小泉政権のもとで半ば強制的に推進された市町村合併、即ち「平成の大合併」は、自治体と地方公務員を大幅に削減するとともに、地方自治を根底から破壊して中央集権をはかるという危険なねらいをもっていた。しかし、国や府県の圧力を跳ね返し、かなり多くの自治体が合併を選択しなかった。国や府県は〝単独では財政が破綻し、何もできなくなる〟という脅しを繰り返したが、多くの自治体は、小さい自治体でこそ住民は参加でき願いも実ることを充分承知していたからである▼そして、上勝町のように、自らの知恵で元気にがんばる自治体はどこも合併など願わなかっただけでなく、合併問題で悩む全国の自治体に「町おこしのヒナ型」としての見本を示し、希望をもたらしていたのである。(佐)

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国連での核非合法化声明、日本加わらず

 10月23日の時事通信は、「核兵器の非人道性に懸念を表明し、各国に核兵器の非合法化に向けた努力を求めた国連加盟30カ国以上による共同声明が22日、国連総会第1委員会(軍縮)で発表された。日本は声明に加わらなかった。核兵器使用によって生じる人道上の問題に深い懸念を表明した上で、『すべての国は核兵器を非合法化するための努力を強化し、核兵器のない世界を実現しなければならない』と強調している。日本外交筋は、『声明にはわが国の安全保障政策と相いれない部分があった』と述べた」と報じています。
 唯一の被爆国であり、憲法9条、非核3原則を持ち、福島原発事故を経験した日本は、国際的な努力への逆行をやめ、核兵器のない世界の実現のために誠実に努力すべきです。

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日本青年会議所(JC)の憲法草案の問題点①

 10月12日に発表された日本青年会議所の憲法草案の問題点を順にご紹介しています。今回は1回目。

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(2012年11月2日入力)
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