第二は、改憲勢力の増強と増大、とりわけ自民党の改憲政党としての自覚の高まりと、日本維新の会のような新しい改憲勢力の登場である。
先の総選挙では、自民党は公約で、「日本国憲法改正草案」の国会提出、集団的自衛権の行使を明確化した「国家安全保障基本法」の制定、民主党の選挙公約は、「動的防衛力」の強化、日米同盟のさらなる深化、在日米軍再編に関する日米合意の実施などがうたわれた。橋下徹大阪市長率いる日本維新の会には、日本国憲法の「破棄」を公言してはばからない石原前東京都知事と12年4月に「自主憲法大綱案」を発表した「たちあがれ日本」が合流した。こうして新たな陣容となった日本維新の会の選挙公約には、自主憲法の制定、集団的自衛権の行使や領海統治などを定める国家安全保障基本法の整備、防衛費GDP1%枠の撤廃などが盛り込まれた。みんなの党は12年4月に「憲法改正の考え方」をまとめ、その中では、両院統合による一院制、首相公選制、自衛権のあり方の明確化、非常事態法制の整備の明記、憲法改正手続の簡略化などが示されていた。
このように、今回の総選挙では、各党とも従来に増して、改憲の志向を鮮明にした。こうしたなかで自民党と日本維新の会の改憲論の露骨さが際立っている。自民党改憲案は、憲法の基本原理である立憲主義、平和主義、人権保障、統治機構の全般にわたる「体系的」なものであり、復古的性格も随所に見られる。軍事大国化と新自由主義を幅広く包括する「最大限綱領」的なものとなった。しかしこの案は、他の改憲派にこれを「丸ごと」飲ませるには無理がある。そこで、今後の実際の改憲策動は、他党派を巻き込むための一部「切り出し」先行やさまざまな修正、改変などをともなって進められていくだろうが、こうしたイデオロギーを綱領の核とし、改憲を政党としての政策の基本、原点に据え直して団結した自民党は、手強い政治集団となったと考えるべきであろう。その議員たちが絶対多数を占める憲法審査会の今後の活動から目が離せない。
一方、日本維新の会の改憲案は、「決定でき、責任を負う統治の仕組みへ」として、現時点で国民の一定部分が受け入れやすい改憲テーマ、例えば、「決められない政治」を解消すると称しての参議院の廃止、衆議院の優位の強化、首相公選制、改憲発議の要件緩和などや、自党の当面の政治戦略に有利な論点、例えば、道州制を見据え地方自治体の首長が議員を兼職する院を摸索、地方の条例制定権の自立などを選んで押し出す「機会主義」的、「ご都合主義」的なところに特徴がある。ここに、全面的な復古調改憲論を掲げてきた「たちあがれ日本」が合流したことで、同党の改憲構想のバージョンアップが予想される。日本維新の会は、憲法審査会で改憲論議をかき回す「台風の目」となることに警戒を怠ってはならないであろう。(つづく)
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【九条噺】
安倍政権再登場にあたり、キャッチコピーも「美しい国」から「新しい国」に変わった。何が美しくて何が新しいのかはわからないし、イメージだけで判断できるような簡単な話ではない。しかし、仔細に見ると、例えば閣僚18人のうち、右翼・改憲団体である「日本会議・国会議員団協議会」のメンバーが13人(第一次安倍内閣は12人)も占めているのだ。「新しい」どころか、過去の侵略戦争を肯定するような危ない「おともだち内閣」なのではないだろうか▼安倍首相としては何よりも先ず、過去の侵略と植民地支配の誤りを認めた「村山談話」、日本軍「慰安婦」問題について軍の強制と関与を認めた「河野談話」の見直しをはかりところだ。しかしどちらも決してなまやさしくはない。何しろ第一次の時、安倍首相は日本軍「慰安婦」問題でブッシュ大統領や米議会関係者にも謝罪表明をしなければならなかったのである。その他「靖国神社参拝」もあるが、いずれも参院選も視野に様子眺めとなりそうである▼ただ「沖縄」は〝待ったなし〟だ。安倍首相が訪米する前に、普天間基地を辺野古に移転するメドをたてる必要があるからである。で、2月早々安倍首相の沖縄訪問となったが、沖縄は「オスプレイ配置反対・普天間基地県外移転」一色で、琉球新報によれば9割の人たちの一致した願いとか。「新しい国」は一県まるごと踏みにじるような愚挙に手をそめるのだろうか。(佐)
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もし10年前に集団的自衛権行使が可能だったら
イラク派兵差止訴訟弁護団 川口創弁護士 「マガジン9」より
仮に10年前に集団的自衛権行使が可能となっていたら、どうだったか、想像してみたい。イラク戦争は、多くの国が反対する中で、03年3月にアメリカがイラクに攻撃を開始する形で始まった。この時アメリカは「先制的自衛権行使」という論理で戦争を正当化した。また、イギリスは、アメリカとの「集団的自衛権行使」という論理で、イラク戦争に参戦した。
自衛隊もイラクに派遣されたが、9条があったために、軍事活動を正面から担うことはしなかった。しかし、もし当時、日本に集団的自衛権行使が認められていれば、日本もアメリカの「自衛権行使」に対する「集団的自衛権の行使」として、正面から軍事行動をしていただろう。
アメリカが「先制的自衛権」を正当化しているなかで、同盟関係にある日本が「集団的自衛権行使が可能」となれば、日本はイラク戦争のような戦争に(しかも大義のない、違法な戦争であっても)参戦し、正面から軍事活動を担っていくことになる。その結果、多くの我が国の国民の尊い命が奪われるということが現実に生じるだろう。
イラク戦争におけるアメリカ兵の死者数は4400人を超えている。また、現代の民営化する戦争の中で、戦地に送られているのは、兵士だけではない。イラクやアフガニスタンには多数の民間人も送られており、アメリカ軍関係の民間人の死者数を含めればさらに多くなる。
安倍氏も石破氏も、「アメリカ主導の戦争で少なくない日本人が死ぬ」というリスクについて、どこまで覚悟と責任を持って集団的自衛権行使を語っているのか、疑問である。
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自民党議員と自民党に投票した有権者の温度差が目立つ
憲法改正や集団的自衛権行使への賛成度に
1月28日の朝日新聞は、世論調査結果を発表し、「先月の衆院選で当選した議員と有権者の間で、憲法改正や集団的自衛権行使への賛成度に開きがあることがわかった。特に前のめりな自民党議員と、同党に投票した有権者の温度差が目立つ。安倍政権の課題となりそうだ」と述べています。
相も変わらず憲法のどこをどのように変えるかを問わず、改憲の是非だけを問うても何の意味があるのかと思いますが、ともかく、選挙結果から改憲派議員が激増してはいるが、しかし、自民党に投票した有権者の多数が必ずしも改憲に賛成している訳ではないことに注目する必要がありそうです。9条を守る活動は自民党支持者にも訴えていくことが求められています。
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