「九条の会・わかやま」 212号を発行(2013年2月12日付)

 212号が2月12日付で発行されました。1面は、根本的なところを確かめるために(大江健三郎さん)、改憲勢力が増強・増大している(小沢隆一氏 A )、九条噺、2面は、もし10年前に集団的自衛権行使が可能だったら(イラク派兵差止訴訟弁護団 川口創弁護士)、自民党議員と自民党に投票した有権者の温度差が目立つ 憲法改正や集団的自衛権行使への賛成度に(朝日新聞)、改憲論者でも96条改正は否定  です。

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[本文から]

エッセンシャル
根本的なところを確かめるために

 「九条の会」事務局は1月28日、安倍内閣の登場によって憲法をめぐる情勢はきわめて緊迫しており、全国の九条の会の活動を一斉に活性化させたいとの趣旨から、新たな重大な情勢にあたって寄せられたよびかけ人からのメッセージを発表しました。順にご紹介します。
大江健三郎さん

 年末からこの年の初めにかけて、私のもとに届いた呼びかけのことを書きます。
 まず同じ町内の小澤征爾さんの手紙がポストに直接入っていて、新首相の「原発」についてのノンキな発言が、海外の市民や新聞論調の反応とは、まったくズレている、なぜか? というものでした。手紙と電話で話合いをしました。年が明けると、もうインターネットで知った、と「憲法の女性条項と平和」について力をつくされたベアテ・シロタ・ゴードンさんの最後の呼びかけ、自分の死をいたむ花のかわりに「九条の会」への寄金をという声に感動された市民たちからのお金が、シロタさんのあげていられる私のところに届き始めました。私は直接「九条の会」のアドレスをお答えしましたが、なお続いているものは、まとめて(私の小さな花輪代もふくめ)事務局に届けます。
 亡くなった井上ひさしさんの友人の憲法学者、樋口陽一さんが言い続けていられるのは、憲法9条の1項は、普通の国の常識、それを生かす本当に意味のある2項を大切に、ということです。私が12歳の時からソラでいえる《前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。》
 それがいま現実にこの国で実現されていない(という認識で絶望するのはまちがっています)、しかし、むしろそれゆえに、ここに示されている、敗戦で再出発した日本人の意志を新しくし続けるのが、私らの希望のしるしです。
 やはり私らの喪なった加藤周一さんのよくいわれたことに、これだけの反戦・平和の市民の声が、どうして選挙に直接反映しないのだろう? がありました。
 「九条の会」の大切な呼びかけの同志を、私らは次つぎに亡くして来ました。かれらの名とかれらを記憶し続ける人々の名を、生き残っている私らが思い出し続けましょう。それが具体的に「九条の会」の市民たちの大きい集まりで、共通の声として分け持たれ、かかげられることを、私らの今年の新方針としたい、と私は思い、その方向で働きます。
 そして更に、まったく新しい市民たちの全国規模での大きい動きを、もうすでに老年の呼びかけ人のひとりとして、なによりも祈念します。しっかり続けましょう。

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改憲勢力が増強・増大している

 昨年末の総選挙で再び改憲派・安倍政権が発足しましたが、現在と改憲に突き進もうとした07年当時を比較すると、9条や平和をめぐる現在の情勢には特有の難しさが浮かび上がってきます。東京慈恵会医科大学教授・小沢隆一さん(「九条の会」事務局)が『月刊・憲法運動』に書かれていますので、その要旨を4回に分けてご紹介します。今回は2回目。
小沢隆一氏 A

 第二は、改憲勢力の増強と増大、とりわけ自民党の改憲政党としての自覚の高まりと、日本維新の会のような新しい改憲勢力の登場である。
 先の総選挙では、自民党は公約で、「日本国憲法改正草案」の国会提出、集団的自衛権の行使を明確化した「国家安全保障基本法」の制定、民主党の選挙公約は、「動的防衛力」の強化、日米同盟のさらなる深化、在日米軍再編に関する日米合意の実施などがうたわれた。橋下徹大阪市長率いる日本維新の会には、日本国憲法の「破棄」を公言してはばからない石原前東京都知事と12年4月に「自主憲法大綱案」を発表した「たちあがれ日本」が合流した。こうして新たな陣容となった日本維新の会の選挙公約には、自主憲法の制定、集団的自衛権の行使や領海統治などを定める国家安全保障基本法の整備、防衛費GDP1%枠の撤廃などが盛り込まれた。みんなの党は12年4月に「憲法改正の考え方」をまとめ、その中では、両院統合による一院制、首相公選制、自衛権のあり方の明確化、非常事態法制の整備の明記、憲法改正手続の簡略化などが示されていた。
 このように、今回の総選挙では、各党とも従来に増して、改憲の志向を鮮明にした。こうしたなかで自民党と日本維新の会の改憲論の露骨さが際立っている。自民党改憲案は、憲法の基本原理である立憲主義、平和主義、人権保障、統治機構の全般にわたる「体系的」なものであり、復古的性格も随所に見られる。軍事大国化と新自由主義を幅広く包括する「最大限綱領」的なものとなった。しかしこの案は、他の改憲派にこれを「丸ごと」飲ませるには無理がある。そこで、今後の実際の改憲策動は、他党派を巻き込むための一部「切り出し」先行やさまざまな修正、改変などをともなって進められていくだろうが、こうしたイデオロギーを綱領の核とし、改憲を政党としての政策の基本、原点に据え直して団結した自民党は、手強い政治集団となったと考えるべきであろう。その議員たちが絶対多数を占める憲法審査会の今後の活動から目が離せない。
 一方、日本維新の会の改憲案は、「決定でき、責任を負う統治の仕組みへ」として、現時点で国民の一定部分が受け入れやすい改憲テーマ、例えば、「決められない政治」を解消すると称しての参議院の廃止、衆議院の優位の強化、首相公選制、改憲発議の要件緩和などや、自党の当面の政治戦略に有利な論点、例えば、道州制を見据え地方自治体の首長が議員を兼職する院を摸索、地方の条例制定権の自立などを選んで押し出す「機会主義」的、「ご都合主義」的なところに特徴がある。ここに、全面的な復古調改憲論を掲げてきた「たちあがれ日本」が合流したことで、同党の改憲構想のバージョンアップが予想される。日本維新の会は、憲法審査会で改憲論議をかき回す「台風の目」となることに警戒を怠ってはならないであろう。(つづく)

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【九条噺】

 安倍政権再登場にあたり、キャッチコピーも「美しい国」から「新しい国」に変わった。何が美しくて何が新しいのかはわからないし、イメージだけで判断できるような簡単な話ではない。しかし、仔細に見ると、例えば閣僚18人のうち、右翼・改憲団体である「日本会議・国会議員団協議会」のメンバーが13人(第一次安倍内閣は12人)も占めているのだ。「新しい」どころか、過去の侵略戦争を肯定するような危ない「おともだち内閣」なのではないだろうか▼安倍首相としては何よりも先ず、過去の侵略と植民地支配の誤りを認めた「村山談話」、日本軍「慰安婦」問題について軍の強制と関与を認めた「河野談話」の見直しをはかりところだ。しかしどちらも決してなまやさしくはない。何しろ第一次の時、安倍首相は日本軍「慰安婦」問題でブッシュ大統領や米議会関係者にも謝罪表明をしなければならなかったのである。その他「靖国神社参拝」もあるが、いずれも参院選も視野に様子眺めとなりそうである▼ただ「沖縄」は待ったなし≠セ。安倍首相が訪米する前に、普天間基地を辺野古に移転するメドをたてる必要があるからである。で、2月早々安倍首相の沖縄訪問となったが、沖縄は「オスプレイ配置反対・普天間基地県外移転」一色で、琉球新報によれば9割の人たちの一致した願いとか。「新しい国」は一県まるごと踏みにじるような愚挙に手をそめるのだろうか。(佐)

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もし10年前に集団的自衛権行使が可能だったら
イラク派兵差止訴訟弁護団 川口創弁護士
「マガジン9」より

 仮に10年前に集団的自衛権行使が可能となっていたら、どうだったか、想像してみたい。イラク戦争は、多くの国が反対する中で、03年3月にアメリカがイラクに攻撃を開始する形で始まった。この時アメリカは「先制的自衛権行使」という論理で戦争を正当化した。また、イギリスは、アメリカとの「集団的自衛権行使」という論理で、イラク戦争に参戦した。
 自衛隊もイラクに派遣されたが、9条があったために、軍事活動を正面から担うことはしなかった。しかし、もし当時、日本に集団的自衛権行使が認められていれば、日本もアメリカの「自衛権行使」に対する「集団的自衛権の行使」として、正面から軍事行動をしていただろう。
 アメリカが「先制的自衛権」を正当化しているなかで、同盟関係にある日本が「集団的自衛権行使が可能」となれば、日本はイラク戦争のような戦争に(しかも大義のない、違法な戦争であっても)参戦し、正面から軍事活動を担っていくことになる。その結果、多くの我が国の国民の尊い命が奪われるということが現実に生じるだろう。
 イラク戦争におけるアメリカ兵の死者数は4400人を超えている。また、現代の民営化する戦争の中で、戦地に送られているのは、兵士だけではない。イラクやアフガニスタンには多数の民間人も送られており、アメリカ軍関係の民間人の死者数を含めればさらに多くなる。
 安倍氏も石破氏も、「アメリカ主導の戦争で少なくない日本人が死ぬ」というリスクについて、どこまで覚悟と責任を持って集団的自衛権行使を語っているのか、疑問である。

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自民党議員と自民党に投票した有権者の温度差が目立つ
憲法改正や集団的自衛権行使への賛成度に


 1月28日の朝日新聞は、世論調査結果を発表し、「先月の衆院選で当選した議員と有権者の間で、憲法改正や集団的自衛権行使への賛成度に開きがあることがわかった。特に前のめりな自民党議員と、同党に投票した有権者の温度差が目立つ。安倍政権の課題となりそうだ」と述べています。
 相も変わらず憲法のどこをどのように変えるかを問わず、改憲の是非だけを問うても何の意味があるのかと思いますが、ともかく、選挙結果から改憲派議員が激増してはいるが、しかし、自民党に投票した有権者の多数が必ずしも改憲に賛成している訳ではないことに注目する必要がありそうです。9条を守る活動は自民党支持者にも訴えていくことが求められています。

憲法改正賛成者の比率


集団的自衛権行使賛成者の比率


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改憲論者でも96条改正は否定

 改憲派の論客として知られる慶応義塾大学教授・小林節氏が96条改正について語っています。
 憲法というのは、国民大衆という非力な者どもが、権力者である政治家、公務員に対して権限の根拠と権限の枠を与えるものです。
 私は改憲論議を動かさなきゃいけないと思っているんで、今は鷹揚に構えています。でも動き出したら、自民党にいっぱい文句をつけようと思っています。
 9条について言えば、国会の多数決で簡単に海外派兵できるようにしちゃうのはまずい。もしかすると国が滅ぶかもしれない重大なことなんですから、憲法の中にその条件を書くべきです。
 国を愛せとか家庭を大事にしろとか、憲法に盛り込むのも考え物です。憲法で道徳を語っちゃったら法学じゃなくなります。
 何より大反対なのは96条の改正です。憲法を改正するのなら国民を説得して賛成を得るべきで、それができないから手続きを変えるというのは邪道です。
 本来、権力者を制限する、権力者を不自由にするのが憲法ですから、こんなことが許されたら憲法は要らないということになる。憲法は基本法であって、「硬性憲法」と言われるように簡単には改正できないものなんです。
 説得力のある改憲案でハードルを越えてこそ、国民の意思として定着する。裏口入学みたいな改憲は、やったらダメです。

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(2013年2月14日入力)
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