――「日本を取り戻す」と自民党が言うならば、福島の人に故郷を取り戻させるのが先決だと主張されています。
「日本を取り戻す」というのはたぶん尖閣諸島や竹島のことだと思いますが、原発事故が起きると、尖閣どころじゃない。日本を取り戻すといくら言っても、放射能は聞いてくれない。
安倍首相は愛国心という言葉が好きだけど、本当に愛国心をもっているならば、原発なんか日本に置いておけない。だって日本に住めなくなってしまうじゃないですか。
経済界の人たちも、原発をなくす過程で新しい産業を興していく方が長い目で見れば利益になると、発想を転換してくれないと、日本は世界に追いつけなくなります。
――自民党は「国防軍」の創設も主張しています。
いまどき、そういうことを言う人がいるのは悲しくなります。
憲法9条が現実的な課題になってきました。自分は書くことしかできないわけですが、デモをしても無視される、訴えが選挙に反映されないと思うと、むなしくなると思いますが、それが向こう側のねらいです。いくらやってもダメだと思ったら負けです。
やはりあきらめないことです。戦争はいやだという人はたくさんいます。9条は変えない方がいいという人は多数です。原発をすすめ9条を変えようとする政党の人たちを、あらゆる選挙で落としていくことです。
原発問題であれだけの盛り上がりがあったのも、身近な命の問題を肌で感じたからです。9条でも同じだと思います。人の命を大切にすること、あとに続く世代を守ることなど、人間としての基本的な立ち位置を深く考えるときです。(全国革新懇ニュース2013年2月346号より抜粋)
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【九条噺】
関東大震災から今年で90年。M7・9(東日本大震災9・0)だったが震源が首都圏に近いこともあり、被災者は約190万人、死者・不明者も10万人を超えた。しかも震災による被害にとどまらずに、とんでもない虐殺事件が勃発した。混乱のさなか、朝鮮人が「暴徒化した」「井戸に毒を入れた」「不逞鮮人が随所で蜂起」などというデマがかけめぐった。やがて情報の信憑性をめぐって官憲や軍部で疑念が生じ、第1師団が検証の結果虚報と判明した。しかしその時はすでに軍・官憲・自警団により多数の朝鮮人が虐殺されていた。正確な被害者数は不明だが、吉野作造の調べで2613人、大韓民国臨時政府の機関紙「独立新聞」調べで6415人等となっている▼日韓併合(1910年)のなか、日本軍に仕事も住居も奪われた多くの朝鮮人が職を求めて日本に逃れ住むようになった。夏目漱石が「余は支那人や朝鮮人に生まれなくって、まあよかったと思った」(「満州日日新聞」)と述べているように、当時は日本を代表するような知識人ですらこの程度だから、あとは推して知るべし。多くの朝鮮の人々は劣悪な環境のもと、差別や蔑みに耐えての暮しを強いられた。その土壌の上に震災があり、デマの氾濫と虐殺があったのである▼一昨年の「3・11」の場合、勿論虐殺はなかった。しかし、福島県・郡山の朝鮮学校は高校無償化から外され、放射能測定器も借りられなかったという。だが、小さな話と思いたくはない。(佐)
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「96条改憲」先行論が改憲策動の新たな「切り口」に
昨年末の総選挙で再び改憲派・安倍政権が発足しましたが、現在と改憲に突き進もうとした07年当時を比較すると、9条や平和をめぐる現在の情勢には特有の難しさが浮かび上がってきます。東京慈恵会医科大学教授・小沢隆一さん(「九条の会」事務局)が『月刊・憲法運動』に書かれていますので、その要旨を4回に分けてご紹介しています。今回は3回目。
小沢隆一氏 ③
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