「九条の会・わかやま」 215号を発行(2013年3月21日付)

 215号が3月21日付で発行されました。1面は、「松元剛氏(琉球新報政治部長)講演会」開催、月山桂弁護士(当会よびかけ人)に「わかやま平和賞」、希望はどこに?( 澤地久枝さん)、九条の会の働きどき(鶴見俊輔さん)、九条噺、2面は、「和歌山うたごえ9条の会」総会&うたう会開催、「96条改正議連」再開 「96条研究会」設立も  です。

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「松元剛氏(琉球新報政治部長)講演会」開催

 3月14日、プラザホープ(和歌山市)で、「9条ネットわかやま」主催の「松元剛氏講演会」が開催されました。
 代表の藤井幹雄弁護士は、「昨年の総選挙で9条は非常に危険な状態になっている。私たちが知らない沖縄の状況を知り、これからの活動を広げることにつなげたい」と開会の挨拶をされました。
 「わかやま平和賞」贈呈式に引き続き、琉球新報政治部長・松元剛氏が「沖縄から民主主義の熟度問う 憲法・普天間・オスプレイ」と題して次のように話されました。
 安倍政権は4月28日のサンフランシスコ講和条約発効の日に主権回復式典をすると決定した。1952年4月28日は日本が主権を回復した日だが、沖縄はこの日に日本の施政権から分離され、米軍に差し出された日だ。沖縄では「屈辱の日」と呼ばれている。この日に式典をするという感覚を持った政権を私たちは抱えている。オスプレイの強行配備、普天間飛行場の県内移設を強める、そういう政権が、この3年間沖縄基地問題が大きなニュースになり、沖縄の負担感が報道されてきたにも拘わらず、沖縄の屈辱に思いを寄せることも一切なく、決めたことに沖縄では大きな反発が広がっている。
 嘉手納基地爆音訴訟問題、沖縄国際大学への米軍ヘリ墜落事件などを詳しく話された後、沖縄から見ると、人権、民主主義、国民主権、平和的生存権などは安保条約が出てくると、途端に憲法がその下位におかれ、憲法を凌駕した日米安保体制があると沖縄では感じる。沖縄は平時なのに県民の生活や人権が蝕まれており、この3年間の基地問題のキーワードは「沖縄は差別されている」になっている。首長や県民が何度も反対の意思表明をし、民主主義の手立てを尽くして反対しているのに、政府がそれに対応しないのは、「日本は民主主義国家である。但し、沖縄以外」と宣言しているに等しい。
 沖縄県民の命の重さとアメリカや日本本土の人の命の重さはこんなに違うのかと思う。「命の二重基準」を断ち切るべき時に来ている。憲法との関りで言うと国民主権が言われる中で、福島原発と沖縄が、負担を限られた地域に負わせることでは似ていると言われる。しかし、原発は首長・議会の同意が必要だが、沖縄の米軍基地は米軍が銃剣とブルドーザーで造ったもので、成り立ちが違う。原発は「脱原発」に大きく流れているが、沖縄の叫びはなかなか反映されず、基地の重圧を沖縄に負わせる構図が繰り返されている。こういう状況を改めるために、憲法を守る運動の先頭に立つ本土の人たちも声を一層強くあげてほしい。沖縄は日本の民主主義の成熟度を問う試金石である。沖縄は試金石であることを脱したいと思っている。沖縄の地殻変動に目を注ぎ、沖縄の問題解決に力添えをいただきたい。

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月山桂弁護士(当会よびかけ人)に「わかやま平和賞」

 松元剛氏の講演に先立ち、和歌山県内において平和運動の発展に顕著な貢献をされた活動に対して敬意を表し、これを顕彰する「わかやま平和賞」が「9条ネットわかやま」から、当会よびかけ人・月山桂弁護士に贈られました。
 月山桂弁護士は、自らの戦争体験を踏まえ、60年間の弁護士活動を通じて、平和・人権の尊さを発信してこられ、憲法9条を守る活動の先頭に立ってこられたものです。

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希望はどこに?

 「九条の会」事務局は1月28日、安倍内閣の登場によって憲法をめぐる情勢は極めて緊迫しており、全国の九条の会の活動を一斉に活性化させたいと、新たな重大な情勢にあたって寄せられた呼びかけ人からのメッセージを発表しました。順にご紹介しています。今回は4回目で最終回。澤地久枝さんと鶴見俊輔さんです。

澤地久枝さん

 これまで、「九条の会」を結び目にして、さまざまな土地へゆき、多くの人に会った。そしていま、衆議院選挙の自民党「圧勝」の結果にがっかりしたと肩を落す人たちに出会う。この局面で、全国の「九条の会」へのメッセージをもとめられ、一夜、『岩波基本六法』を読みかえした。
 衆議院選挙の結果、自民党は3分の2以上の議席を占めた。これから来る参議院選挙は、憲法の前途、日本の未来にとって、重要な意味をもつ。結果を決めるのは最終的にわれわれであることを確認したい。いまや憲法9条の最大の危機である。3年余り前に政権交代が実現したように、財界よりで軍事優先の政治を阻むため、わたしたちは知恵をつくすべきだ。憲法擁護、反原発で一致する候補者との協力を考えたい。かつてコンゴのルムンバ首相が窮境に直面し、悪魔の力でも借りたいと言ったのを思い出す。
 安倍内閣の動静から感じられるのは、有権者の意向がどう揺れるか、形勢をみているということ。反原発の動きに対して、核エネルギー否認は間違いという論調が目立つようになった。安倍首相は財界と批評家のきわだつ声に、安堵しているかもしれない。経済産業省正面のハンスト小屋はいまもあり、つめている人たちがいる。そして政治は、世論の動きをはかっている。
 『基本六法』に収録されている「われら一生のうちに二度まで言語に絶する悲哀を人類に与えた戦争の惨害から将来の世代を救い」の冒頭をもつ国連憲章(1945年6月)の思想は、直線的に日本国憲法前文につながっている。この憲章で「敵国」と指定されたのは日本とドイツである。
 第9条は手つけずに生きたまま、自衛隊は明日にも武力行使に出そうな形勢でますます増強されようとしている。中国の国境「侵犯」は毎日のニュースだ。だが、1972年の日中両国政府の共同声明には、「過去において日本国が戦争を通じて中国国民に重大な損害を与えたことについての責任を痛感し、深く反省する」とある。
 村山談話、河野談話の否定を声高にいう前に、日中関係の戦後の原点にかえってみればいい。それが歴史を知るということではないか。
 この国の政治は狂っている、だから投票にはゆかないと言うなかれ。その気持はわかるが、4割近くの人が棄権し、憲法史上最低の投票率になったことをわたしは恥じる。全国に9条を守ろうという市民のつながりが生れ、それは反原発の流れにかさなった。選挙結果にふりまわされず、新しい市民社会に希望をつないでゆきたい。

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九条の会の働きどき

鶴見俊輔さん

 今度の選挙結果を見ると、九条の会の働きは、これまで以上に大切になると思います。
 現在、私にできることは少ないかもしれません。しかし、まだ私たちの内に(そして私たちの未来に)希望が残っているとするならば、私はそれにひとつの石を置こうと思います。

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【九条噺】

 明治から昭和初期にかけて、幸徳秋水や堺利彦など、多くの社会運動家たちと親交をもち、彼らを財政的に支えた人が京都にいた。岩崎革也(1869~1943年)である▼かなり前に、大逆事件や堺利彦などについての書籍を読んだ時にその名は知った。けれども、詳しくは知らなかった。それが最近、高校時代に親しくしていた友の便りで偶然知ることになった。友は京都の大学を卒業したあと府立高校の教諭になったのだが、須知(しゅうち)高校の教え子のなかにナント岩崎革也の曾孫がいたのだという▼で、彼も「大逆事件」についてはかねてから関心をもっていたことから、「これを機会に岩崎革也を」となった次第。以来、革也に関するアレコレの情報を伝えてくれるようになり、つい先日は、岩崎革也邸が京都縦貫道延伸によって取り壊されることになり、地元の文化財研究者らも惜しんでいると伝える新聞(切り抜き)を送ってくれた。新聞掲載の岩崎邸を見ると、堂々とした風格が漂う邸で、1887年頃建築とある▼岩崎家は江戸時代から続く「丹波の名家」とのこと。革也は須知町(現京丹波町)の初代町長や、京都府会議員、須知銀行頭取などをつとめた。そして、足尾銅山鉱毒事件でもよく知られる田中正造らとも親交を深め、さらに、歴史学者らが「日本の初期社会主義を支えたパトロン」とも評価するような働きを続けたのだ。この際、革也自身の思いや発言等の資料もぜひ見たいと思う。(佐)

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「和歌山うたごえ9条の会」総会&うたう会開催

(井澤副会長挨拶)  3月9日、「和歌山うたごえ9条の会」の第7回総会&うたう会が和歌山市児童女性会館で開催されました。
 今年の総会は、安倍内閣誕生により憲法9条をめぐる情勢がより危険度を増したこともあり、「憲法9条を守る和歌山市共同センター」事務局長・深谷登さんに、情勢、運動の状況などを話していただきました。
 続いて活動報告では、会員拡大を昨年、一昨年と方針化しなかったこともあり、会員が増えていないという反省がありました。今後の活動方針として、①「お花見&うたう会」を成功させよう。②会員拡大を積極的に進めよう(会員拡大用のチラシ、申込書を新規に作り、取り組みを進める)。③「9の日宣伝」に「うたごえ9条の会」として参加しよう。④うたごえ祭典in大阪を成功させるため積極的に関ろう(11月2~4日、大阪城ホール)。⑤うたごえ新聞を読もう。が確認されました。構成団体の活動予定の紹介の後、昨年通りの役員体制が承認されました。楠見副会長の挨拶で総会を終了し、そのまま、村木副会長の司会進行で「うたう会」が始まりました。
 「うたう会」では、まず東日本復興支援ソングになっている「花は咲く」を歌い、その後、今年のメーデー歌集に新しく掲載される3曲、「こころひとつに」「冗談じゃない税」「想いを寄せて」を歌いました。特に「こころひとつに」は、みんなが覚えられるように、繰り返し練習しました。その後は、リクエストにより進行、例年のように歌いまくり状態で、「うたう会」を終了しました。
 最後は、小野原副会長の「うたごえの力、音楽の力を実感しました」という挨拶で締めくくりました。(事務局長・中北幸次さんより)

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「96条改正議連」再開、「96条研究会」設立も

 3月8日の時事通信は「自民、民主、維新、みんなの4党有志は7日夜、休眠状態だった『憲法96条改正を目指す議員連盟』の役員会を開催。月内に総会を開くことを確認した。与党は現在、衆院で3分の2の勢力を持つものの、参院では過半数にも満たない。自民党は、96条改正に賛意を示す維新やみんなを与党側に引き付けたい考えだ」と報じています。
 一方、「民主、維新、みんな3党の有志でつくる『憲法96条研究会』の設立準備会合も7日、衆院議員会館で開かれ、それぞれ党内に参加を呼び掛けて、14日に初会合を開くことを確認した。将来的には、先行する96条改正議連との連携も想定する」とも伝えています。日本維新の会の橋下徹共同代表が会見で、「価値観が分かれていながら一つの党にまとまるなんて、国民に失礼だ。ぴしゃっと分かれた方がいい」と挑発しているように、憲法問題で腰が定まらない民主党を「96条改定をテコに」分断しようとするのが、その狙いとみられます。

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(2013年3月21日入力)
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