「九条の会・わかやま」 216号を発行(2013年4月7日付)

 216号が4月7日付で発行されました。1面は、「守ろう9条 紀の川 市民の会」第9回総会開催 、この4年間は日本が危険な時代に突入するかの前夜(二宮 厚美 氏 ① )、九条噺、2面は、維新 改憲を狙う綱領を決定、日弁連が「発議要件緩和に反対する意見書」発表、9条を守ることがなによりの安全保障(石田 雄さん・東京大学名誉教授)  です。

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「守ろう9条 紀の川 市民の会」第9回総会開催

(原通範代表)

 3月30日、河北コミュニティセンター(和歌山市)で70名の参加のもと、「守ろう9条 紀の川 市民の会」第9回総会が開催されました。
 原通範代表は、「昨年暮れに安倍政権が出来て、憲法をめぐる情勢が急に危うくなってきた。二宮先生のお話をお聞きして、今後の活動をどのように強めるか考えていきたい」と開会挨拶をされました。
 総会に先立ち、神戸大学名誉教授・二宮厚美氏が「さし迫る戦後最大の憲法の危機~戦争する国への企みにどう立ち向かうか~」と題して講演(要旨別掲)されました。二宮氏は、「あたかも、日中戦争から太平洋戦争に突入した1937~41年に匹敵するかのような今後の4年になる。昨年の総選挙では民主・自民とも国民から見放されて、革新勢力が伸びるはずだったのに、『消費税増税反対』『脱原発』も国民の多数世論なのに、国民は『消費税増税賛成』『原発再稼働』を掲げ、憲法問題で一番厄介な維新・みんなを選ぶという事態が起った。正しい判断が行われなかった原因は、日本の、特に若者層を襲う貧困で若い世代がある程度正常に判断できなくなってしまっていることにある。革新化する高齢者が若者の保守化を食い止めるために、若者の奮起を促し、指導することが大切だ」と訴えられました。

 続いて、総会に移り、12年度活動報告、会計報告、13年度活動方針と予算が承認され、新しい運営委員9名を選出しました。
 最後に金原徹雄弁護士が「戦後最大の憲法危機に当たり、私たちは今立ち上がらなければ、いつ立ち上がるのか。思い切って活動を広げよう」と閉会挨拶を述べられて終了しました。

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この4年間は日本が危険な時代に突入するかの前夜

「守ろう9条 紀の川 市民の会」総会で神戸大学名誉教授・二宮厚美氏が「さし迫る戦後最大の憲法の危機~戦争する国への企みにどう立ち向かうか~」と題して講演されました。要旨を3回に分けてご紹介します。今回は1回目。

二宮 厚美 氏 ①

 現在の日本の情勢は21世紀をかけて、果たして取り返しがつくかどうか分らない時代に突入しようとしている。1937~41年の4年間が今再び始まろうとする状況だ。37年7月に日中戦争が始まり、大政翼賛会が結成され、国家総動員法が作られ、41年に太平洋戦争に突入した。戦争体制に入る文字通り前夜の4年間にこれからなるかどうかの重大な転換期にあることは間違いない。昨年の総選挙で安倍政権が成立し、衆議院では憲法改正に賛成する議員が8割以上を占める。現在の安倍政権の最大の課題は7月の参院選を如何に乗り切るかだ。衆議院と同じような結果が出れば、衆参とも8割以上が改憲勢力ということになる。安倍首相は自らの手で衆院解散をすることは100%ないから、参院選の後3年間は国政選挙がない。3年間は衆参で改憲勢力が8割方を占めることになってしまう。TPP参加、消費税増税、教育制度改革などやろうと思えば何でもやれる、恐ろしいような事態が総選挙の結果生まれた。これからの4年間で残りの21世紀をどうするのかが決まるので、老いも若きも歴史をかけてがんばっていかねばならない。羽仁五郎は「憲法改正とか軍国主義とかが出てきたら、その時になったらがんばって阻止すると考えるかもしれないが、そういうものではない。一旦体制が固まり、確立したら壊さない限り、抵抗しても無駄だ」と言っている。ファシズムも同じで、そういう体制に突入すると抵抗はできない。だから、予め止めないといけない。この4年間は日本社会が危険な時代に突入するかの前夜になる。残念ながら若者層は保守化・右傾化しつつある。これが橋下一派の進出を呼び起こしている最大の要因だ。昔は、年寄りは保守、若者は革新だったが、今は逆。憲法の力を自ら体験した高齢者ががんばる必要がある。衆院選の結果を直視して4年間の流れを見据えて日々活動しなければならない。これが日本の現状の特質だ。
 だが、我々は歴史の流れに組み込まれてどうしようもないかと言うと、そうではない。何故なら、日本維新の会やみんなの党は安倍政権以上に過激な改憲派で、こういう連中は国民を敵に回してやろうとしているので、様々な弱点を持っている。弱点の中で「憲法を守れ」「9条を守れ」「戦争体制は阻止する」という動きが必要だ。差し当たり参院選前にどのように運動するのかを見据えて世の中の動きを見守る必要がある。
 何故、衆院選のあの結果が出たのか。結論から言うと、国民が大きな判断の誤りを犯したことが、安倍政権を作り出した最大の要因だ。今年は改めて憲法を隅々に生かして新しい歩みを築く出発点になるはずだったが、変なことから流れが逆の方向に一気に向かってしまった。今、日本は21世紀の3番目の転換期に遭遇している。(つづく)

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【九条噺】
 韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領は、先頃開催された「3・1独立運動」記念式典で演説したが、特に「対日関係」については「両国の未来世代まで歴史の重みを背負わせてはならない。そのためにわれわれ世代の政治指導者が決断と勇気をもつべきだ」と強調した。朴大統領は「歴史は自己洞察と、希望の未来を開く鍵」であり、「加害者と被害者という歴史的立場は千年の歴史が流れても変わることはない」と指摘、「歴史を正しく直視し、責任をとる姿勢を取らなければならない」「そのとき初めて両国間に固い信頼が重ねられ、真の和解と協力が可能になり、共栄の未来に共に進むことができる」と力説した▼「3・1独立運動」は、日本が朝鮮半島全域を支配していた時代、1919年3月1日から数カ月間にわたって繰り広げられた民族自立の闘いだ。韓国ではこの日を祝日にして毎年記念式典を催しており、今年の朴大統領の演説もその歴史的記念日にふさわしいものだったと思う▼安倍首相はどうだろう。先日の衆議院予算委員会で辻元議員への答弁で、日本軍「慰安婦」問題に関して「総理大臣の私の口からそれを申し上げることは外交問題に発展していくおそれがあるので、歴史家にまかせたい」と発言した。外交問題を心配するのは、日本軍「慰安婦」そのものを否定してかかるような暴論の場合だけ。「語るに落ちた」は、この首相の答弁のようなものに使うものですよね。(佐)

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維新、改憲を狙う綱領を決定

 日本維新の会は3月30日、党大会を開催しました。新聞でも「『参院選は憲法改正で3分の2の議席を得られる可能性も出ている。憲法を変えていく勢力が3分の2を形成することも重要な参院選のテーマだ』と述べ、憲法改正では参院選後に自民党などと連携する可能性に言及した」と報じられています。
 承認された党の綱領は、8つのスローガンを並べたようなものですが、第1項目に「日本を孤立と軽蔑の対象におとしめ、絶対平和という非現実的な共同幻想を押し付けた元凶である占領憲法を大幅に改正し、国家、民族を真の自立に導き、国家を蘇生させる」と、日本国憲法を敵視し、平和主義を否定し、「押付け憲法論」に立った「大幅改正」の真の狙いは、「9条改悪」だと言わねばなりません。
 日本維新の会は過激で凶暴な改憲勢力だという正体がますます明らかなったと言えます。

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日弁連が「発議要件緩和に反対する意見書」発表

 日本弁護士連合会は3月14日、「憲法96条の発議要件緩和に反対する意見書」を発表しました。
 発議要件の緩和は、「憲法改正をやりやすくし、9条や人権規定等を改正しようとの意図を有している」「発議要件を過半数に改正すると、憲法改正発議はきわめて容易となる。政権与党は、縛りをかけられているにもかかわらず、その縛りを解くために簡単に憲法改正案を発議することができ、立憲主義が大きく後退してしまう」「立憲主義と基本的人権尊重の立場に反するものとしてきわめて問題であり、許されない」「強く反対する」としています。
詳しくは→ http://www.nichibenren.or.jp/activity/document.html の中の「意見書等」参照

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9条を守ることがなによりの安全保障
石田 雄(たけし)さん(東京大学名誉教授)

 ――安倍政権は憲法96条が定めた憲法改定の発議要件を緩和しようとしています。
 自民党の改憲案は、国民が権力をしばるための憲法から、権力が国民をしばるための憲法にするという、いわば立憲主義の否定という基本的問題があります。それをあからさまに出すと抵抗が大きいから、96条の改定という外堀から埋めていく。そこにだまされると大変に危ないことになります。

 ――自民党の改憲案は憲法9条を改定し、「国防軍」を書き込むとしています。
 「国防軍」とは殺人命令を下す本格的な軍隊です。
 私は戦争中、東京湾要塞重砲兵連隊で小さな隊の隊長をしていました。ある日、米軍のパイロットがパラシュートで東京湾に降りてきた。その米兵を捕まえて本部に報告したとき、「殺せ」と言われたら殺さないわけにはいかない。日本軍では命令違反の最高は死刑です。自分のところには来るなと願っていると、海軍が米兵を船で連れていった。
 「国防軍」をつくろうという人たちは自分たちが人殺しをしなければならないとは考えてもいない。しかし実際に「国防軍」になると、人殺しをさせられる人が出てくるということです。

 ――自民党は集団的自衛権の行使も認めようとしています。
 集団的自衛権を認めるということは、アメリカの従属下にある自衛隊が米軍と協力し、どこでも敵を殺す従属的な軍隊になるということです。すでに日本の司令部はアメリカの司令部とほとんど一体化し、軍事演習をやっている。航空自衛隊がイラク戦争のとき兵員や武器を戦場まで運んだこともあります。しかし憲法9条が歯止めになってとにかく人殺しはしなかった。

 ――安倍政権などは日米関係を日米同盟というが、その実像は日米軍事同盟です。この解消へ、国民的議論が必要だと思います。
 そうです。1つは2国間だけでなく中国やアジアなどと多様な平和的な関係をつくっていく。もう1つはそれと並行して安保条約を軍事同盟ではない、平和友好条約に変えていく。これらは容易なことではありませんが、安保は条約上、通告をすればやめられる。あとは現実の力関係、外交上の問題だと思います。要は、日本は平和的な国だと世界の人に信じてもらうことが、何よりの安全保障です。この点で憲法9条はものすごく大事です。
 実は私は日本で非暴力直接行動ができるとは思っていなかった。しかしいまはすごい。福島原発事故をきっかけにした首相官邸前の抗議のように、人びとが声を出しはじめた。これは希望の基礎になります。
 憲法を守ることも、だれかにおまかせするのではなく、主権者である国民1人ひとりがその責任を果たさなければと思います。(全国革新懇ニュース2013年3月347号より抜粋)

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(2013年4月7日入力)
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